判例速報
※この記事は、2007-04-02にメール配信されたものと同じ記事です。Medsafe会員各位 今回は,嘔吐等の症状を訴えて被告の開設する病院を受診し, 血液吸着療法,輸血等の治療を受けた患者が,受診から約17時 間後に死亡したのは,(1)抗凝固剤の使用方法を誤った過失,(2) カテーテル挿入の際に,血管を損傷した過失,(3)ヘパリン500 0単位を投与した過失,(4)出血に対する止血措置を怠った過失, (5)適切な輸血を怠った過失によるものであるなどと主張して,損 害賠償請求した事案です。 ■年月日・裁判所 H18.9.11 千葉地裁 平成15年(ワ)第202号 損害賠償請求事件(医療過誤) ■当事者 ・原告B・Cは,平成13年1月1日にA病院を受診し,治療を 受けた後に死亡したD(昭和58年生・当時17歳)の両親。 ・被告は,A病院を開設する医療法人。 ■診療経過 ・Dは,2歳ころから喘息の持病あり。治療のためA病院に入通 院を繰り返し,本件当時,A病院において処方されたテオロング を服用。 ・Dは,1月1日午前1時ころ,嘔吐して悪心等の症状を訴え, 午前4時30分ころ,A病院を受診した。A病院においてはE医 師が診察し,血液検査を行ったところ,午前8時ころ,血中テオ フィリン濃度が,致死量域を超える103.50μg/mlの高 値であることが判明。 ・被告は,胃洗浄,活性炭投与を実施した上で,1日午後2時2 3分ころから,抗凝固剤としてフサンを使用して,活性炭による 血液吸着療法を開始したが,午後2時50分ころ,回路内で血液 が凝固したため,これを中止。 ・午後3時40分ころから,抗凝固剤をヘパリンに変更し(投与 量は,開始時に1000単位をワンショット投与,その後,1時 間当たり1000単位を持続注入),再度,血液吸着療法を開始 したが,午後4時ころ,回路内で血液が凝固したため,これを中 止。 ・血液吸着療法を中止した後に行った血液検査では,血中テオフィ リン濃度62.88μg/mlとの結果であった。 ・午後4時20分ころ,3分間ないし4分間にわたり,全身性硬 直痙攣発作。 ・午後4時40分ころにも,同様の発作を起こした。 ・午後4時45分ころ,中心静脈ラインを確保するために,Dの 右鼠径部にカテーテルを挿入したところ,シリンジ内に凝血塊が 認められた。また,カテーテル挿入の数分後から,血尿が出現し, 以降,止まらなくなった。 ・午後5時10分ころ,肺塞栓等の発症を考慮して,心エコー検 査を実施したところ,肺塞栓,冠動脈塞栓は否定的であったが, なお,血栓による肺動脈主幹部の閉塞の危険性を考慮して,ヘパ リン5000単位をワンショット投与した。また,出血源を精査 するためのCT検査をした結果,骨盤内に血腫が認められた。 ・午後6時40分ころ,Dの収縮期血圧が70mmHg台となり, 血尿も続いていたため,被告は,出血性ショックと判断し,プラ ズマネートカッターを投与し,ICUに移した上で,右橈骨静脈 にラインを確保して,アルブミン,ヘスパンダーを投与。 ・午後7時ころから全身性の痙攣が見られたが,セルシンの投与 により改善。また,E医師は,このころ,人赤血球濃厚液(MA P)の準備を指示し,クロスマッチを実施したが,結論が出ず。 ・午後8時35分ころ,Dのヘモグロビンが2.9まで低下した ため,被告は,クロスマッチの結果を待たずに,MAPの輸血を 開始。 ・午後8時40分ころ以降,Dの心拍が低下し,被告は心臓マッ サージ,ボスミン,硫酸アトロピン,キシロカインの投与等を実 施したが,午後9時28分,死亡確認。 ・死亡診断書においては,死因は出血性ショックによる肺出血と された。 ・A病院のF医師は,同日から翌2日にかけて,Dの剖検を行い, 小骨盤腔内並びに両側腎下極に至る後腹膜腔内出血,小骨盤腔か ら腹腔内への血液の波及,膀胱壁全層の瀰漫性出血等を認めたが, 血管壁破綻を思わす所見は認められず,Dの直接死因につき,テ オフィリン中毒による急性左室不全並びに出血性ショックと推定 されるが,血液凝固能低下に基づく出血とテオフィリンとの直接 の因果関係については,明快な結論が得られていないなどと報告。 ■抗凝固剤の使用方法を誤った過失の有無について 「この点についての3名の鑑定人による複数鑑定(討議方式)の 結果(補充鑑定を含む。以下同じ。)は,以下のとおり」 「本件での血液吸着療法において,フサンを使用しても,回路内 の抗凝固作用を示さないから,その使用は必ずしも適切であった とはいえないが,患者の生命予後に影響を及ぼすものでもないか ら,禁忌であったとはいえない。また,ヘパリンの投与量も不十 分であった可能性が高いが,患者の出血傾向,出血性病変の有無 が不明な状態では,可能な限り少量から使用したことはやむを得 なかった」 「体外循環維持の回路内血液凝固の際,当初から患者血液自体に 過凝固,血栓形成傾向を認めることはあるが,強制的に返血を試 みない限り,患者生理に影響することは通常考え難い」 「これに対し,G医師作成の意見書の意見は,以下のとおり」 「活性炭療法においては,フサンはほぼ100パーセント活性炭 に吸着され,抗凝固剤としての役割を果たさないから,使用は禁 忌とされており,このことは文献にも明記されている。また,ヘ パリンは,開始時に2000ないし3000単位を使用するよう 指示されているにもかかわらず,被告は,1000単位しか使用 しなかったのであるから,抗凝固剤の使用方法に誤りがあった」 「前記のとおり,抗凝固剤の使用方法に誤りがあった結果,回路 内での血液凝固系の活性化と血栓形成,消費性凝固障害を生じ, 出血を招いた」 「そこで検討すると,本件において,フサンの使用が,回路内の 抗凝固作用の観点からは無意味であったことについては,複数鑑 定及びG意見書が一致して認めている。さらに,G意見書は,文 献の記載からすれば,フサンの使用は禁忌であったとしているが, 同文献の記載部分は,活性炭療法においては,フサンはほぼ10 0パーセント活性炭に吸着されるため,抗凝固剤として効果がな いことを示すにとどまり,これにより何らかの悪影響を生じると の趣旨を含むものとは解されないから,フサンの使用が禁忌であっ たとまでは認めることができない。また,ヘパリンの使用につい て,G意見書は,同文献上,血漿交換療法開始時におけるヘパリ ンの投与量が2000ないし3000単位とされていることを指 摘するものの,同文献には,『患者の血液凝固系の状態に応じて 投与方法は医師の指示に従って決定して下さい。』との付記がさ れていることからすれば,上記投与量は絶対的基準ではないもの と解される。したがって,患者の出血傾向,出血性病変の有無が 不明であったことを理由に,可能な限り少量から使用したことは やむを得なかったとした複数鑑定の結論を覆すものではないとい うべきであるから,ヘパリンの使用量が不適切であったと認める こともできない。よって,被告に,抗凝固剤の使用方法を誤った 過失があったと認めることはできない」 「したがって,この点についての原告らの主張は,採用すること ができない」 ■カテーテル挿入の際に,血管を損傷した過失の有無について 「この点についての複数鑑定の結果は,以下のとおり」 「(1)CT画像及び腹部単純写真において,カテーテルが右大腿静 脈及び下大腿静脈内に認められないこと,(2)CT画像において, カテーテルを中心に血腫の形成が認められること,(3)造影後のC T画像において,カテーテル周囲の血腫内に造影剤の血管外漏出 が認められており,出血が疑われること,(4)カテーテル挿入後に, 肉眼的血尿,ヘモグロビン値の低下,代謝性アシドーシス等が出 現していることからすれば,カテーテル挿入時の手技等に不適切 な点があったため,穿刺の際に動脈を損傷し,また,穿刺部位よ り約3cm頭側で静脈を損傷し,静脈外に留置されている可能性 が高い」 「これに対し,H医師作成の意見書の意見は,以下のとおり」 「(1)CT画像上,一見すると,カテーテルが静脈外に留置されて いるかのように見えるものの,パーシャルボリューム効果(単位 体積中に吸収値を異にする複数の物質が含まれている場合に,そ の内容物が占める割合に応じて,CT画像上で表現される吸収値 が変化し,その結果,組織の辺縁が不明瞭になる現象)及びビー ムハードニング(連続X線が物質を通過する際,低エネルギーの 方がより多く吸収され,結果的にエネルギーピークが高い方に移 動することにより,異常画像が発生する現象)を考慮すれば,直 ちに静脈外にあると判断することはできず,仮にカテーテルが静 脈外に出ていたのであれば,カテーテルから注入された液体が漏 出したはずであるにもかかわらず,剖検の際に,このような事実 は確認されていないこと等の事情を考慮すれば,カテーテルの先 端は,下大静脈内にあったと考えるほかないこと,(2)血腫は様々 な方向に広がるため,カテーテルを中心に血腫が存在することを もって,当該部位から出血があったものと認めることはできず, 膀胱周囲の後腹膜付近に,新しい出血に一致する血管外の造影剤 の溜まりがあることからすれば,出血部位は上記部位であったと 考えられること,(3)カテーテルから造影剤が直接漏出した場合, 原液のまま漏出することになり,この場合,ハレーションを引く 程の高信号が認められるはずであることからすれば,本件CT画 像で見られた造影剤は,カテーテルから直接漏出したものではな く,肺や心臓を通って希釈されたものであると考えるのが整合的 であること等の事情を総合すれば,複数鑑定の示す根拠はいずれ も合理性を欠いており,カテーテルによる静脈損傷等があったと は考えられない」 「以上のとおり,複数鑑定とH意見書は,CT画像の読影方法に 関し,複数の点において一致していないので,以下に検討する」 「(1)の点につき,複数鑑定は,CT画像上,カテーテルが右大腿 静脈及び下大腿静脈内に認められないことから,カテーテル挿入 時に血管損傷が生じたとの結論を導いているのに対し,H意見書 は,CT画像上,カテーテルが静脈外にあるかのように見えるも のの,パーシャルボリューム効果及びビームハードニングを考慮 すれば,直ちに静脈外にあるものと断定することはできず,剖検 時に,漏出した液体が認められなかったことを考慮すれば,むし ろ,静脈内にあったと考えるのが妥当であるとしている。そこで 検討すると,CTの構造上,パーシャルボリューム効果,ビーム ハードニング等による偽像が発生する可能性があるとの一般的知 見は認められるものの,これが本件のCT画像について,具体的 にいかなる影響を及ぼしたかはH意見書によっても明らかではな いこと,複数鑑定は,カテーテルが穿刺部では静脈内にあるが, より頭側のスライスでは大腿静脈の腹側に,さらに頭側のスライ スでは大腿静脈の左側に位置しているとするなど具体的かつ説得 的であること,このような判断は,ハレーションを考慮してもな お,穿刺部位より約3cm頭側で静脈を損傷し,カテーテルが静 脈外に留置されている可能性が高いとするものであって,CTの 構造上生じ得る誤差を考慮した上での結論であると解されること 等の事情を総合すれば,CT画像上の所見としては,カテーテル が静脈外に留置されている可能性が高いというべきである。また, 剖検の際に漏出した液体の存在は確認されていないものの,Dに ついては,鼠径部のほか,右橈骨静脈にもルート確保がされてお り,いずれから,どの程度の量の輸注がされたかについては明ら かではないこと,剖検時点は,カテーテルからの液体の漏出は特 段考慮されていなかったと考えられるから,漏出が存在しなかっ たと断定することはできないこと等の事情を考慮すれば,上記事 実から直ちに,カテーテルが静脈外に出ていたとの事実を覆すこ とはできないというべき」 「さらに,H意見書の(2)の点について,血腫が様々な方向に広が る場合があるとしても,カテーテルの中心に血腫が存在すること は,出血部位がその付近であることを推認させる事実であること は否定できないこと,(3)の点について,造影剤がいずれの部位か ら投与されたかは明らかではない上,本件のCT画像が,カテー テルから造影剤が直接漏出した場合の所見と矛盾するものである ことを裏付けるに足りる的確な証拠はないことに加え,カテーテ ル挿入以前から,Dに凝固異常が生じていたとしても,肉眼的血 尿等が生じたのは,カテーテル挿入の直後であったとの時間的経 過からすれば,カテーテルによる血管損傷を推認させる事実であ ることは否定できないこと,研修医として本件診療に関与してい たI医師が,剖検時の記録において,『小骨盤に大きな出血塊が あり,右鼠径部からのWルーメン挿入時,血管を損傷したことに よる出血であろう』と記載していること(なお,証人Fは,上記 記載は,I医師が勝手に書いたものである旨証言するが,研修医 が,医療記録に,自己の判断を他の医師に無断で記載することは 考え難いから,上記証言は,直ちに信用することができないとい わざるを得ない。)等の諸事情を総合すれば,Dの鼠径部に挿入 されたカテーテルの先端が,静脈に入った後,血管を損傷して, 静脈外に留置されたものと認めるのが相当であって,上記認定を 覆すに足りる証拠はない」 「そして,一旦はカテーテルを正常に静脈内に留置したにもかか わらず,痙攣等により移動して血管を損傷するということは,通 常考え難いというべきであるから(被告は,構造上このような事 態もあり得る旨を主張するようであるが,その具体的機序につい ては何ら主張がない上,カテーテル留置後血尿ないし血腫が生じ るまでの間に,痙攣が起きたことを認めるに足りる証拠もないか ら,被告の主張は採用することができない。),被告には,カテー テルを適切に挿入しなかったために血管を損傷するに至った点に おいて,過失があったといわざるを得ない」 「 したがって,この点についての原告らの主張には理由がある」 ■因果関係の有無について 「この点につき,被告は,(1)テオフィリンによる脳血管の収縮に より生じた脳虚血に起因する中枢性ショック,(2)テオフィリンの 心筋毒性により生じた肺水腫に起因する心不全,(3)テオフィリン による血管拡張による循環量の減少に起因するショックのいずれ か又はこれらが複合的に発生したことにより心不全に陥ったもの であり,仮に出血性ショックがあったとしても,大きな影響はな かった旨を主張する。しかしながら,A病院において剖検を担当 した証人Fが,明確に,テオフィリンの心筋毒性により心筋損傷 を生じて,急性左室不全に陥ったとの機序を認めるに足りる所見 はなく,死因は出血性ショックであった旨証言していること,J 医師作成のテオフィリン中毒に関する意見書は,本件でDに見ら れた症状が,いずれもテオフィリン中毒により生じたものである との説明が可能であるとするにとどまり,Dが死亡した具体的機 序については何ら言及していないこと,Dの出血量は少なくとも 2000ccを超えており(証人F,複数鑑定の結果),同人の 体重から推定される循環血液量を考慮した場合,出血性ショック を生じ得る程度の出血があったものと考えられること,死亡診断 書作成時点では,出血性ショックとの診断がされていたこと等の 事情を総合すれば,Dの死因は,出血性ショックであったと認め るのが相当」 ■出血性ショックの原因について 「この点についての複数鑑定の結果は,以下のとおりである」 「血管損傷による急性出血があれば,大量の凝固因子,血小板の 消費を引き起こし,血液凝固障害に影響を与えるとともに,腹腔 内大出血と血尿を生じ,出血性ショック,重症代謝性アシドーシ スから,肺出血,多臓器不全へと進展し,死亡した可能性がある」 「文献において,テオフィリン中毒により出血傾向又は血液凝固 障害を生じた例は報告されていないこと,剖検において認められ た出血が,後腹膜腔,腹腔内,膀胱周囲に限局していることから すれば,テオフィリン中毒は,出血の原因及び程度に影響を与え ていない」 「これに対し,H意見書及びF証言を総合すると,概要,以下の とおりである」 「仮に血管損傷があったとしても,カテーテルが留置されたまま の状態であれば,カテーテルにより穴が塞がれるため,出血性ショッ クに至る程度の出血を生じることは考え難い」 「・・・血管が破綻したことによる出血が生じていないとすれば, Dの出血の原因は,凝固異常と考えられるところ,その原因は, テオフィリン中毒以外に考え難い」 「そこで検討すると・・・,A病院入院中の2回の検査において, Dの血中テオフィリン濃度は,1回目が103.50μg/ml, 2回目が62.88μg/mlとの結果であったことが認められ るところ(なお,原告らは,上記検査結果は誤りである旨を主張 するが,血中テオフィリン濃度が100μg/ml程度まで上昇 した後に,回復した例も報告されていること,他に上記測定の正 確性を疑うに足りる事情はないこと(複数鑑定の結果)等を考慮 すれば,上記検査結果が誤りであったと認めることはできない。), 血中テオフィリン濃度は40ないし60μg/ml程度で,すべ ての患者の中毒域とされることからすれば,Dは,A病院受診時 点で,テオフィリン中毒の状態であったと認められる」 「しかしながら,テオフィリン中毒により,出血,血液凝固異常 等を生じ,出血性ショックを発症し得るとの医学的知見が存在し ないことについては,証人Fも認めるところであり,さらに,D の血中テオフィリン濃度は,A病院受診時以降,改善傾向にあっ たことをも考慮すれば,Dの死因となった出血性ショックが,テ オフィリン中毒により生じたものであることを積極的にうかがわ せる事情はないというべき」 「これに対し・・・,カテーテル挿入時に血管損傷が生じている こと,一般的には,カテーテルにより血管が塞がれることにより, 大量出血には至らないとしても,本件では,カテーテル挿入時の 動脈損傷も疑われる上(複数鑑定の結果),カテーテル挿入以前 に2回にわたり血液吸着療法が実施され,その際に,抗凝固剤と してフサン及びヘパリンが投与されたことにより,出血傾向が助 長されていた可能性が高いことを考慮すれば・・・,動脈及び静 脈血管の損傷による出血が,出血性ショックの原因であったと認 めるのが相当」 「なお,証人Fは,剖検において,後腹膜腔,腹膜内,膀胱壁及 び膀胱内の4か所に出血が認められたところ,後腹膜腔の出血に ついては,大腿静脈の破綻による出血と考えることが可能である が,その他の部位の出血については,後腹膜腔の出血が逆流して 膀胱内等に入ることは考え難いから,上記原因によるものではあ り得ないことからすれば,上記出血はいずれも,血管損傷による 破綻性の出血ではなく,凝固異常による瀰漫性の出血であったと 考えられる旨を証言している。しかしながら,仮に同証言の医学 的知見が正当であったとしても,大腿静脈の破綻性出血とは別個 に,腹腔内,膀胱壁及び膀胱内の出血を惹起する原因が存在した ことも考えられるところ,この点につき同証人は,『膀胱壁がばっ と壊れて,血管が破綻してどっと漏れたような漏れ方では全然な い』とするのみで,具体的な説明はしていない上,膀胱壁の出血 原因が破綻性出血ではないことから直ちに,大腿静脈に破綻性出 血があったことを否定することはできないというべきであるから, この点についてのF証言は,直ちに採用することができないとい わざるを得ず,少なくとも後腹膜腔に生じた出血は,血管損傷に 起因するものであったと認められる」 「そして,仮に腹膜内,膀胱壁及び膀胱内の出血が,血管損傷以 外の原因によるものであったとしても,後腹膜腔のみでも,20 00ccを超える猛烈な出血があったのであり,Dの体重から推 定される循環血液量を考慮すれば,後腹膜腔からの出血が,出血 性ショックの主たる原因であったものと認めるのが相当であるか ら,結局,前記認定を覆すものではないというべき」 「したがって,被告がDの血管を損傷した過失と,同人の死亡と の間には因果関係があるというべきであるから,この点について の原告らの主張には理由がある」 ■損害額 (1)逸失利益 ・基礎収入を562万3900円 ・就労可能年数を18歳から67歳までの49年間。ライプニッ ツ式(50年間の係数は18.2559,1年間の係数は0.9 523) ・生活費控除率50パーセント 562万3900円×(1−0.5)×(18.2559−0. 9523)=4865万6858円(1円未満切捨て) (2)慰謝料 ・D本人につき2000万円 ・原告らにつき各200万円 (3)葬儀費用 ・150万円 (4)弁護士費用 ・各370万円 (5)損害賠償額 ・((1)4865万6858円+(2)2400万円+(3) 150万円)÷2+(4)370万円=4077万8429円 ■判決主文 1 被告は,原告らに対し,各金4077万8429円及びこれに 対する平成13年1月1日から支払済みまで年5分の割合による 金員を支払え。 2 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 <以下略>