判例速報

※この記事は、2007-05-28にメール配信されたものと同じ記事です。
Medsafe会員各位


 今回は,C型慢性肝炎に罹患してインターフェロン注射による治
療を受けたところ,副作用であるうつ病に陥り自殺したとして損
害賠償請求した事案です。
 このうち,甲事件は,原告bの妻である訴外a(以下「a」と
いう。)が,C型慢性肝炎に罹患して被告が設置・運営するe病院
においてインターフェロン注射による治療(IFN治療)を受けたと
ころ,IFN治療の副作用であるうつ病に陥り自殺したとして,損害
賠償請求した事案です。
 丙事件は,aがe病院におけるIFN治療終了後,参加人が経営す
る精神病院で2回にわたり診療を受けたが自殺を防げなかったと
して,損害賠償請求した事案です。
 また,乙事件は,訴訟告知を受けた参加人が独立当事者参加し
て,参加人のaに対する診療行為について,原告らに対しては不
法行為または診療契約上の債務不履行に基づく損害賠償債務が存
在しないことの確認を求め,被告に対しては共同不法行為に基づ
く求償債務が存在しないことの確認を求めた事案です。

■年月日・裁判所
H19.4.25 東京地裁 平成16(ワ)15288号等 損害賠償等請求事件(医療過誤)

■当事者

原告:原告bはa(昭和23年生まれ,平成12年2月20日死
亡)の夫。原告cはbとa夫婦の長男。原告dはbとa夫婦の二
男。

被告:e病院(被告病院)を設置・運営。f医師は,平成10年
にaが被告病院を受診した当時,被告病院に勤務する内科医であ
りaの担当医。

参加人:g病院(参加人病院)を経営。h医師は,平成11年1
2月と平成12年1月にaが参加人病院を受診した当時,参加人
病院に勤務する精神科医であった。

■診療経過

・aは,平成9年3月に子宮内膜症,子宮頸部前がん状態の診断
で被告病院婦人科で手術を受けたが,その後同科で経過観察中に
C型慢性肝炎に罹患し肝機能障害が存在することが判明し,平成1
0年5月27日,被告病院内科を紹介されf医師を受診。

・被告病院内科を毎月1回定期的に受診し血液検査(肝機能検査)
を受けていたが,IFN治療の適否を決定するために,エコー下肝生
検を目的として,平成10年11月10日から11月20日まで,
被告病院内科に入院(第1入院)。

・平成10年11月10日第1入院時の看護師による病歴聴取の
際に「病気・手術・検査 ・治療についてどう聞いて,どう思って
いるか」という質問に対し,「C型肝炎聞きなれず,症状もわから
ない」と回答。「心配なことはあるか」という質問に対し,「治
療」と回答。「自分の性格についてどう思っているか」という質
問に対し,「短気(普通)」と回答。(他方,平成11年6月1
日第2入院時の看護師による病歴聴取の際には,「病気・手術・
検査・治療についてどう聞いて,どう思っているか」という質問
に対しては回答がなく,「心配なことはあるか」という質問に対
し「副作用」と回答し,「自分の性格についてどう思っているか」
という質問に対し,「クヨクヨしてしまう」と回答)

・aは,第1入院時に日記をつけていたが,当該日記には,入院
初日の平成10年11月10日欄に,肝生検の目的が肝組織を針
で採取し,慢性肝炎の進展度を評価する→治療の方針を決めるこ
とであること,具体的手順,合併症として(1)出血,(2)ショック
(血圧下がる),(3)気胸,(4)感染がある旨記載。

・f医師は,平成10年6月11日に腹部エコー検査をした際に,
aに対して,C型慢性肝炎のIFN治療に関するパンフレットを3種
類交付し,口頭でおおまかにIFN 治療の内容等について説明した
うえ,自宅でaだけでなく家族にもじっくりと読んでもらい,何
かわからないところがあれば家族もaに同行して来院し同医師に
対して質問するように伝えた。

・長野県では,C型慢性肝炎の治療費の一部を県が負担するウイル
ス肝炎医療費給付制度があり,f医師は,ウイルス肝炎医療費受
給者証の申請に必要な書類であるウイルス肝炎臨床個人票に記入
して,平成10年10月7日,aが被告病院の外来を受診した際
にaに対して交付し,aは,k保健所に対して申請書を提出して
ウイルス肝炎医療費受給者証を取得した。

・f医師は,一般に,通常の外来診療では,多数の外来患者を診
察するため患者一人当たり短時間しか診察時間が確保できず,腹
部エコー検査の際には外来診療よりは長い診察時間を確保できる
ので,IFN治療を予定している患者に対しては,同検査終了後前記
パンフレットを交付したうえ,口頭で治療内容や副作用等につい
て説明し,自宅でも患者本人が繰り返して読むだけでなく家族に
も読んでもらうよう指示する扱いをしていた。

・平成11年4月7日,aが被告病院内科外来を受診したが,同
年3月3日の血液検査の結果では白血球数が3400まで回復し,
IFN治療が可能な状況に近づいてきたので,白血球数が3500を
超えれば5月か6月にIFN治療をすることを計画し,aに対して,
次回診察日に家族を同行するよう依頼した。しかし,aは,同年
5月12日に被告病院内科を受診した際も一人でf医師を受診し,
原告bが仕事やマラソンで忙しく心配させたくないという理由で
原告bを同行することを拒み,家族もIFN 治療について了解して
いるとして,6月からIFN治療を開始することを求めた。

・aは,5月12日被告病院内科外来を受診したが,前回受診し
た同年4月7日に受けた血算の検査結果が判明しており,4月7
日には白血球数が4800と3500を超えるまで回復していた
のでIFN投与を開始することとなり,6月1日から同月15日まで
被告病院内科に入院(第2入院)。

・aは,6月1日から,インターフェロンα製剤であるイントロ
ンA1000万単位の筋肉注射を毎日受けていたが,IFN治療に伴
い,発熱,頭痛,頭重感,胃のむかつき,体のだるさといったIFN 
の副作用が出現したものの,次第に発熱も治まり,同月15日,
被告病院内科を退院し,外来で月水金の週3回,IFN投与を続ける
ことになった。

・第1入院及び第2入院を通じて,原告bが入院中のaを見舞っ
たことがカルテ上明らかとなっているのは,平成11年6月7日
のみである。

・aは,6月16日から週3回,IFN投与のために被告病院内科に
通院し,月1回は採血して肝機能検査を受け,GPT値によって肝炎
の状況を評価されるとともにf医師の診察を受けていた。

・6月30日と7月28日にf医師の診察を受けた。

・8月3日には発熱と咽頭痛,咳,食欲不振を訴えてf医師の診
察を受け,咽頭の発赤があり風邪の診断でかぜ薬を処方され,8
月6日には食欲不振,下痢を訴えてf医師の診察を受け,整腸剤
等の投薬を受けた。

・aは,8月13日には食欲不振と2,3日前からの下腹部痛を
訴えて,f医師の診察を受けた。f医師は,IFN治療の中断も含め
てaの意向を確認したところ,aはIFN治療の継続を望んだので,
同月13日からイントロンA を600万単位に減量して,週3回
のIFN 治療を継続した。aは,8月25日f医師の診察を受けた
が,インターフェロン減量後は上記症状が軽減していた。aは,
9月22日,f医師の診察を受けたが,大腸の集団検診で異常を
指摘されたためバリウム注腸検査を予約し,集団検診の結果に対
してかなり神経質になっていた。aは,9月29日,バリウム注
腸検査を受けたが,その際に,看護師に対してストレスによる不
眠を訴え,看護師から連絡を受けたf医師は,当日は診察日では
なかったが睡眠薬レンドルミンを処方した。注腸検査の結果は,
大腸には異常はなかった。

・aは,同年10月13日,f医師の診察を受け,心配事がわい
てくると訴え,IFN治療の中止を希望した。f医師は,aがかなり
神経質になっている様子が見られたため,IFN投与を継続するとう
つ状態や精神症状が出現すると考えて同日でIFN 投与を中止し,
レンドルミンを処方した。aは,4か月以上の期間合計64回に
わたってIFN投与を受け,総投与量は相当な量に達していたので,
f医師は,aに対し,予定された6か月間の投与が完了できなく
ても,ウイルスの遺伝子型やウイルス量からすればC型肝炎ウイル
スを排除できてIFN治療の目的を達成できる可能性が十分あり,
IFN治療を中止したことを悲観する必要がないこと及び今後も月1
回はf医師を受診するように伝えた。

・aは,10月22日にもf医師を受診し,イライラ感が強まっ
ていることを訴えたので,f医師は,不安神経症やうつ病が発症
することを懸念して抗不安薬であるセルシンとレンドルミンを投
与し,専門の精神科医を受診することを勧め紹介状を書くことを
伝えた。しかし,aは,精神科を受診することは抵抗があるので
拒否した。原告bも精神科を受診することについては抵抗感があっ
た。aは,同年11月5日,f医師を受診し,前回受診日と比べ
て表情や目つきはかなりよくなっていることが認められ,f医師
は精神科受診を打診したが,aは調子が良くなってきたとして拒
絶し,セルシンも服用していないと述べたため,f医師はレンド
ルミンのみ処方した。aは,同年12月17日,f医師を受診し,
状態は前回受診日と変わらず,まずまず眠れることを伝え,f医
師はレンドルミンとセルシンを処方。

・aは,平成12年1月28日,最後にf医師を受診したが,状
態は前回受診日と変わらないと述べ,f医師は,レンドルミンと
セルシンを処方した。aは,f医師に対して,全診療経過を通じ
て,参加人病院を受診したことはもちろん,死にたいといった希
死念慮や自殺念慮についても話したことはない。

・aは,原告bとともに,平成11年12月11日,参加人病院
を受診し,h医師の診察を受けた。原告bは,h医師に対し,a
はC 型慢性肝炎であり,被告病院で平成11年6月から10月ま
でC 型慢性肝炎のIFN治療を受けたこと,最初の2週間は入院し,
その後は1日おきに通院したことを話した。aは,h医師に対し,
隣家が家を建てたので自分にはお金がないと思い出しストレスで
あること,頭が締め付けられるようなこと,IFN治療が原因かどう
かわからないが食欲不振であること,日常生活で不都合な点とし
ては,あたったりわめいたりすること,ぼーっとすることなどを
話した。aは,h医師の質問に対し,あまり眠れないこと,心配
事ばかりであることを答えたが,お金以外のことで具体的な心配
事の内容は告げなかった。

・aは,h医師が「生きていく自信はあるか」と尋ねると「自信
はない」,「死にたいと思うことがあるか」と尋ねると「死にた
い」と答えた。原告bは,h医師に対し,aが2年前に子宮筋腫
の手術を受け,更年期障害ということで婦人科からホルモン療法
を受けていたこと,婦人科ではもう必要ないといわれていたが,
IFN 治療を受ける平成11年6月までホルモン療法の薬を服用し
ていたことを話し,h医師は,aの気分変調の原因がホルモン療
法の薬をやめたことにあるのではないかと原告bが考えているよ
うに受け取った。原告bは,h医師の質問に対して,自宅は20
年前に建築して住宅ローンはないことを告げたので,h医師がa
に対して,住宅ローンもなく自宅があるから心配する必要がない
のではないかと質問すると,aは,原告bから受け取った生活費
を全部使ってしまうのでお金がないのであると自責の言葉を述べ
た。これを聞いた原告bは,h医師に対し,aが言うことは事実
と異なるとして,自身はあと3年で定年退職するが確かに蓄えは
ないこと,しかしその原因は,平成10年1月に当時の勤務先の
会社が倒産したため同年4月から別の会社に勤めたが給料が前の
会社の3分の2に減額になったためであり,aの責任ではないこ
とを述べた。

・aは,被告病院内科で処方されている薬を持参しており,h医
師は,持参した薬を見て抗不安薬のセルシンと睡眠剤が処方され
ていることが分かった。aは,薬に頼りたくないので服用してい
ない旨話したので,h医師は,aに対し,良い薬なので服用する
よう説得したが,aは強く拒絶し,薬を服用するように説得する
ために相当の時間を費やした。h医師が,aに対し,薬をやめて
いて日常生活に支障が出ないか尋ねると,aは食事の支度もきち
んとできると答え,h医師が仕事がきちんとできるか尋ねると,
aはミスは少し多いかも知れないが仕事はしていること,同僚と
話すのは億劫だが仕事は続けていること,仕事は十数年続けてお
り,平成11年6月に2週間休んだだけであると回答した。h医
師は,aには混乱が少しあるので混乱をとる薬を処方すると説明
して,向精神薬クロルプロマジンであるコントミン5mgとセル
シン0.5mgを7日分投与し,被告病院内科で処方された薬を
飲むのが嫌でも,自分が処方した薬だけは量も少ないので飲むよ
うに指導。

・aは,平成12年1月15日,参加人病院を受診してh医師の
診察を受けた。aは,h医師に対し,不眠,頭の中でいつもぐる
ぐる回っている,一日中やる気がないと訴え,ばい菌があたって
心配であると述べた。aは,前回受診時と同じく薬を服用したく
ないと主張し,h医師が理由を尋ねると,「友人から,睡眠薬を
飲んでいると効かなくなること,友人の母が睡眠薬を飲んで死ん
だことを聞いたので服用したくない」と答えた。h医師が仕事の
ことを尋ねると,aは,「会社でのミスは他の人がかばってくれ
る」,「どこかで自分のことを,医者に行った方がよいのではな
いかと言っているようだ」と回答した。さらにaは,「昔は心配
性ではなかったが,最近は全てが心配である」と述べ,被告病院
内科で処方された薬は余っていると答えた。h医師は,aに対し
て,混乱状態に変化がないので薬を服用する必要があることを説
明し,コントミンを20mgに,セルシンを1mgにそれぞれ増
量したが,aが薬の服用に抵抗を示しているので,1包の2分の
1か3分の1から服用を始めてかまわないことを告げた。h医師
は,薬を7日分処方するつもりでカルテに7TDといったん記載し
たが,aが仕事が忙しく1週間後に来院することが難しいと述べ
たので,14日分処方することに決め,7TDと記載したのを二重
線で消して14TDと書き直した。h医師は,aを精神病性うつ病
とカルテの病名欄に記載しているが,これは,うつ病に妄想を伴っ
た状態を指していて,どちらかというと精神分裂病に近い病態を
指していた。aは,この後,死亡するまで参加人病院を受診する
ことはなかった。

・aは,平成12年1月末頃,包丁で手首を軽く切って手首に絆
創膏を貼っていたことがあった。aは,そのころ原告bに対して,
「死ぬことは怖くないか。」と質問したことがあり,原告bが
「自分は怖い。」と答えたのに対し,aは,「自分は死はさほど
怖くない。この前ブラウスのベルトでちょっと首を絞めてみたこ
ともあった。」と原告bに語った。aは,原告bに対し,死亡す
る1週間ほど前の平成12年2月13日前後頃に,モミジ湖に連
れて行って上から落としてくれ,灯油をかけて火を付けてくれ,
殺してくれ,原告bが殺しても誰も悪いと思わないからなどと話
したことがある。

・原告bは,aが手首を切った当日は,遅く帰宅して既にaは就
寝していたが,寝室に血が付いたティッシュペーパーが散乱し,
手首に血がにじんだ絆創膏が巻いてあり,室内に包丁が落ちてい
たので,aが包丁で手首を切って自殺を図ったことを理解した。
しかし,原告bは,落ちていた包丁を隠しただけで,aに対して,
なぜそのようなことをしたのか理由を問いただしたり,二度とし
ないよう求めたりしなかった。原告bは,aが死ぬことは怖くな
いと言ったり,ベルトで首を絞めてみたと言ったときも,aが自
殺について検討しているとは思いもよらなかったし,モミジ湖へ
連れて行ってaを殺すよう求められたときも,aが本気で自殺を
考えているとは受け取らず,いずれについてもなぜそのような言
動をするのか理由を尋ねることもしなかった。

・原告bは,初めて参加人病院を受診した際に,h医師が参加人
病院で処方した薬だけでなく被告病院から処方された薬もきちん
と服用するよう相当の時間をかけて説得したにもかかわらず,そ
の後aが処方された薬をきちんと服用しているかどうか,参加人
病院についても被告病院についても全く確認していない。

・aは,平成12年2月20日,昨日までと様子が朝から異なり,
いつもと違う形相で「マッチをくれ」と原告bに対して要求した
ので,原告bはマッチは日常生活では使う必要がないものである
からそんなものは渡せないと言って取っ組み合いになった。

・原告bは,当日は松本市で自らが参加する予定の駅伝の合同練
習があり,自分の自動車に他のメンバーを同乗させて会場まで同
行することになっていたため,aを自宅に置いたまま午前7時か
8時頃自宅を出た。ただ,原告bは,自宅を出る際に,長男や母
に対して,aの様子がおかしいので見ているように伝えた。しか
し,aは,その後長男からマッチを受け取り,車庫の自動車内で
灯油をかぶって火を付けて死亡した。

・原告bは,50歳を超えていた平成11年にフルマラソンを2
時間45分台で完走した長距離ランナーであり,市民ランナーと
しては全国的に見ても成績上位グループに属し,毎年全国の多数
のマラソンや駅伝大会に出場していて,勤務先では平均すると毎
日2時間程度の残業があり,完全週休2日ではなく第1及び第3
土曜日が休みであるという厳しい条件の下でも,走らないのは週
1日か2日で毎週8時間くらいは常時練習時間を確保していた。

・原告bは,aが参加人病院を2回目に受診した平成12年1月
15日は,伊那市の壮年ロードレースにエントリーしていたがキャ
ンセルしてaに同行した旨陳述していたが,平成12年は伊那市
の壮年ロードレースが同月9日に開催されたことが判明すると,
レースに参加したことを認めた。原告bは,a死亡後もマラソン
や駅伝大会に出場している。

・原告bは,平成12年9月2日,参加人病院を訪れて,社会保
険からaの葬儀費用を給付してもらうため,aが故意による行為
で死亡したのではなく精神病で死亡したことを証明するように依
頼した。原告bは,平成16年2月3日,再度参加人病院を訪れ
て,参加人病院を訴えることは考えていないが,他の病院を訴え
るために必要であるのでカルテの写しを交付するよう求めた。

・原告らは,当初,被告病院を経営する被告のみを相手方として
損害賠償訴訟を提訴し,参加人が独立当事者参加した後の段階に
至って,反訴により参加人を相手方として損害賠償請求の訴えを
起こした。

■医学的知見(うつ病の入院治療と外来治療について)

・うつ病治療の原則は,外来通院治療であるが,入院治療の方が
望ましい場合もあり,症例の条件に合わせて入院治療を選択する
か,外来治療を実施するかを判断しなければならない。外来治療
により約90%の症例では良好な経過が見られるが,約10%の
症例では外来治療の効果が乏しく,入院治療をせざるを得ない場
合がある。

・うつ病の入院治療が必要な条件を示すと,以下のとおりである。
(1)外来通院治療で症状改善が得られない場合
(2)反復性うつ病,難治性うつ病
(3)薬物療法が十分に遂行できない症例
(4)不安,焦燥,苦悩の強い症例
(5)病識欠如の症例
(6)老人の症例
(7)身体的合併症のある症例
(8)症候性うつ病
(9)家族のうつ病への理解に乏しい時
(10)通院の距離的,時間的問題がある症例
(11)自殺の危険の強い症例

■争点1−1 IFN治療に際して同治療以外の治療法・同治療を行
う至適時期・副作用としてうつ症状や自殺企図が起こり得ること
に関する説明を欠いていたかについて

「・・・f医師は,IFN治療開始前である平成10年6月11日に,
aに対して,C型慢性肝炎のIFN治療に関するパンフレットを3種
類交付しているところ,・・・C型慢性肝炎に対する治療法には,
いわゆる原因療法としてのIFN療法のほかに対症療法があることや,
その選択基準として,治癒が見込まれる患者に対してはまずIFN治
療を行うことなどが記載されているし,副作用についても,うつ
症状や自殺企図があることや医師を受診すべきことが記載されて
いる。そうすると,医師から患者に対して説明する方法としては,
口頭の場合に限られるものではなく,適切な方法でされれば足り
るものであることに照らすと,上記のように必要な情報を記載し
た書面を患者に対して交付することによっても,説明義務は果た
されたというべきであるから,aに対しては,原告の主張する諸
点についての説明はなされたものと認められる」

「もっとも,医師の説明は,一度すれば事足りるものではなく,
患者が理解していないと認めるべき事情があるようなときは,医
師の説明義務の趣旨が患者の自己決定権に資することにあること
からすれば,再度説明をする等の義務が生じるものと解される。
しかしながら・・・,aは,第1入院時にはC型慢性肝炎やIFN治
療について十分な知識を有していたとは言い難いが,第2入院時
にはC型慢性肝炎やIFN治療について必要な一通りの知識を有して
いたと認められ,IFN治療によって自身に副作用が生じることを心
配していたものである。このような変化が生じるためには,aにC 
型慢性肝炎やIFN治療に関する知識を得る機会が存在する必要があ
るところ,aが第1入院と第2入院の間に外来通院していること,
同女に対してパンフレットが交付されていることからすれば,a
が上記知識を得る機会はこの2点に限られ,他に何らかの機会が
あったことを窺わせる証拠は見あたらない。そうするとaは,第
1入院時から第2入院時までの間に,f医師から交付された3種
類のパンフレットを何度も読み返し,他方で第1入院時や退院後
の外来通院時にf医師の口頭による説明を受けたと推認するのが
相当である」

「従って,f医師は,aに対して,原告らが主張する点について
説明をし,aはこれを理解していたと認められるから,この点で
原告らの主張には理由がない」

■争点1−2 副作用について原告ら家族に対する説明をすべき
なのにこれを欠いたことをもって説明義務に違反するかにについ
て

「・・・IFN治療の際には,患者だけでなく患者の家族に対しても
精神神経症状発現の可能性について説明する義務が存在するとこ
ろ,患者の家族に対して具体的にいかなる方法で説明するかにつ
いては,医師の裁量に委ねられている」

「患者の家族にとっては,口頭による説明にとどまるよりは説明
書面を受領した方が後で繰り返し読むことによって理解が深まり,
わざわざ医師を訪ねて医師に質問しなくとも疑問点を解消しやす
いという利点がある。そして・・・,aがf医師から交付された
3種類のパンフレットは,図表入りでわかりやすく説明がなされ
ており,抑うつ症状が出たときは早めに主治医に相談すべきこと,
うつ病,自殺企図が出たときにはすぐに主治医を受診すべきこと
が明記されていること,うつ病の早期発見の徴候は不眠,イライ
ラであり,このような症状があったときは早めに主治医に相談す
べきであると明記されていること,副作用の出方はIFN製剤の種類
によっても違うので何かおかしいなと思ったらすぐ主治医に相談
すべきであることが明記されている。また・・・,原告bは仕事
やマラソンの練習で毎日忙しく,f医師が第2入院前に家族を一
度同行して受診するように求めたのに対し,aは原告bを同行し
て被告病院内科を受診することを拒絶したと認定できること,a
の入院中も原告bが見舞いに来院はしているもののその頻度はさ
ほど多くなく来院時刻も夜遅くではないかと推認されること,外
来診療では多数の患者を診察するため一人当たりの患者に割ける
時間は数分に限られることに照らすと,f医師が,家族に対する
精神症状発現の可能性の説明方法として,aに対して交付したパ
ンフレットを家族にもよく読んでもらって何か疑問があれば来院
して質問するように指導するという方法で十分その目的を達成す
ることができると認められ,そのような方法を採用しあえて入院
中に説明のためにaに対し家族を呼ぶように申し入れなかったこ
とをもって,同医師に注意義務違反があったと認定することはで
きない」

「原告bは,抑うつ症状がいかなる症状か,うつ病の症状とはど
のようなものかが分からなかったので医師に相談しなかったと主
張するが・・・,パンフレットには不眠やイライラが出たときは
早めに主治医に相談するよう明記されており,この部分は原告b
にも理解できないはずがなく,原告bがaに不眠やイライラが出
現したと気づけばその時点で医師に連絡することも可能であった
ことになる。原告bの主張は,同人がaの話を聞き流したりパン
フレットをきちんと読んでいなかったために抑うつ症状やうつ病
の症状が理解できなかったにすぎないと認めるのが相当」

「従って,原告らの主張する説明義務違反は認められない」

■争点2 被告病院の医師がインターフェロンを適切に投与しな
かった過失の有無について

「・・・aのC 型慢性肝炎は,ウイルス量や遺伝子型に照らすと
IFN治療の効果が高いタイプであり,IFN治療によってC型肝炎ウイ
ルスを体内から完全に排除できる確率が9割近くあると認められ
る。そして,C型肝炎ウイルスを体内から排除できた場合には,C
型慢性肝炎を完治させることができ,将来肝硬変や肝細胞癌を発
症する恐れがなくなることを意味した。他方,何も治療せずに放
置した場合は,近い将来,相当高い確率で肝硬変や肝細胞癌を発
症し,死亡する危険性が非常に高かった」

「そして,IFN以外の従前から存在する強力ネオミノファーゲンC
等の薬剤による治療は,肝臓の炎症を抑える効果はあってもC型肝
炎ウイルスを排除する効果はない治療法であること,IFN治療が唯
一の原因療法であることに照らすと,aにとってはIFN治療が最も
優れた治療法であり,IFN治療を受けることが最も合理的な選択で
あるといえる」

「・・・aがIFN治療を受けた平成11年当時は,IFN治療に対し
ては健康保険の適用が認められるもののその期間が6か月間に限
られていたため,一度IFN治療を受けたにもかかわらず再燃した場
合には,再度のIFN治療によってC型肝炎ウイルスを排除できる可
能性があっても自費で再度IFN治療を受けるよりほかなく,高額な
自己負担が生じること,再度のIFN治療の際はIFNの総投与量を増
やす方針がとられること,IFN治療の効果は,患者の年齢が若いほ
ど,肝臓の繊維化が進んでいないほど高い効果が得られることが
判明していたことが認められ,これらのことに照らすと,年齢が
若い時点で総投与量を増やすという意味で最初から投与量の上限
である1000万単位を投与する方が高い効果が期待できるうえ,
患者が自費で再度のIFN治療を受けざるを得なくなる可能性を減ら
すもので望ましいといえる」

「従って,aの場合,若い時期に最初から1000万単位を投与
したことをもって過失があったということはできない。また,複
数存在するインターフェロンα及びβ製剤の中でインターフェロ
ンα2b製剤の方が治療効果が高いという報告が存在していた以
上,同製剤であるイントロンA1000を選択したことが過失であ
るとはいえない」

「インターフェロンβ製剤は,6週間にわたり連日静脈投与がな
されるもので,毎日通院することは通常容易ではないことから6
週間にわたって入院せざるを得なくなり,患者にとって投与方法
の負担が大きく効果の面でインターフェロンα製剤を上回るとは
いえないことから,会社勤めをしているaは,インターフェロン
β製剤を選択しなかったと認められる」

「・・・f医師は,平成11年8月13日には,aが食欲不振や
持続する下腹部痛を訴えたので,IFN投与の中止を含めてaと相談
した結果,aの要望を容れてIFNを600万単位に減量してIFN治
療を継続したもので,その後症状は改善している。f医師は,同
年10月13日には,心配事がわいてくるとのaの訴えを受け,
同年9月22日から集団検診の結果を巡ってaが神経質になって
いたことも考慮して抑うつ状態やうつ病を発症することを心配し
てIFN治療を中止したものであり,IFN治療の中止後も定期的に診
察して,同年10月22日にaがイライラ感を訴えると,抗不安
薬及び睡眠薬を処方するとともに精神科受診を勧めている」

「従って,f医師は,aの訴えを受けて副作用を防止するために
最も根本的な対策であるIFNの減量,さらには中止をしたものであ
り,f医師が実際に減量したよりも前の同年8月上旬の症状は風
邪によるものであって,これよりも前の時期にaにIFNの減量ある
いは中止をするほどの副作用の訴えは認められない。そして,同
月13日にIFN治療の中止ではなく減量を選択したのはaの要望を
受け入れたためであり,この時点ではaは不安やイライラといっ
たうつ病の症状を訴えていないから,同日IFN治療を中止しなかっ
たことをもって,f医師に注意義務違反があったとは認められな
いし,IFNの減量によって症状がいったん軽減していた以上,同年
10月13日よりも前の時期にIFN治療を中止すべき理由はない」

■争点3 被告病院の医師の療養指導義務違反ないし転医勧奨義
務違反の有無及び争点4 被告病院の過失行為と亡aの死亡との
間の因果関係の有無について

「・・・f医師は,aに出現した症状を聞いて,平成11年8月
13日にはIFN を600万単位に減量し,さらに同年10月13
日にはIFN治療を中止したものであり,IFN治療中止後も定期的に
aを受診させており,同月22日には,aの訴えを聞いて,抗不
安薬と睡眠剤を投与し,精神科受診を勧めていて,その後も定期
的に受診させている」

「・・・かかるf医師の対応は,aの症状に応じて適切な対応を
とったものと評価できる。すなわち,IFN治療を受けた患者の精神
症状がある程度重くなれば,内科では対応できず,精神科医の指
示に従って向精神薬の投薬や入退院させるという治療をするより
方法はないのであり,内科医師であるf医師としては,抗不安薬
の投与は本来であれば専門外であるにもかかわらず,aの症状と
同女が精神科受診を拒否したことを踏まえてあえて投与に踏み切っ
たものと認められる」

「従って,f医師は,IFN投与の中止という自ら可能な措置をとり,
抗不安薬と睡眠剤も投与していて,精神科も受診するよう勧める
などしている本件においては,自ら可能な措置は全て実施したも
のというほかない」

「・・・被告病院には精神科が存在せず精神科医もいないから,
aの精神症状の治療のために被告病院内科に入院させても精神科
医の診察も受けられず無意味である。・・・うつ病の治療の9割
は外来通院治療で可能であり,IFN治療を中止した平成11年10
月13日あるいは同月22日の時点では,aに自殺企図は出現し
ておらず,うつ病の治療は未だ開始されていないから,(1)外来通
院治療で症状改善が望めないという事由には該当せず,イライラ
感が同月22日初めて出現したことに照らすと,(4)不安,焦燥,
苦悩が強い症例という事由にも該当しない」

「従って,aは,平成11年10月13日あるいは同月22日の
時点では,うつ病で入院させて治療する要件を欠いていたもので
あり,f医師に,aを入院させる義務があったとはいえない」

「上記のとおり,この点についてはf医師に過失が認められない
ので,争点4について判断するまでもなく原告らの被告に対する
請求は理由がないことに帰するが,念のため争点4(因果関係の
有無)について付言する。aの症状は,平成11年8月13日に
が600IFN万単位に減量された後,同月25日の時点では症状が
改善していること,同年10月13日にIFN治療が中止された後の
同年11月5日には,表情や目つきがよくなっていること・・・,
aの自殺企図が出現したのは平成12年1月末頃であることが認
められる」

「そして,平成11年10月22日の時点では,f医師の精神科
受診の勧めをaは拒絶し原告bもこれに同調したにもかかわらず,
同年12月11日になっていったん抵抗が強いとして拒否した精
神科を二人そろって受診したことに照らすと,その間にaの精神
症状が悪化し,原告bもaも困って抵抗があった精神科を受診す
ることもやむなしという決断をしたものと推認するのが相当」

「従って,aの精神症状は,IFNの減量及び中止によっていったん
は改善したものと認められ,aに自殺企図が生じたのはIFN中止後
3か月も経過した後のことであること・・・,IFN 治療中にIFNと
は無関係にうつ病が発症する例が存在しIFN惹起性のうつ病との鑑
別が問題となること,IFN中止後もIFNによるうつ病からの回復が
遅れる例が存在するものの,原因となった薬剤を中止したにもか
かわらず何か月も経過した後になっていったん改善しかけた精神
症状が悪化することは薬剤以外の別の要因がない限り通常は考え
にくいことに照らすと,本件では,IFNが中止され投与されなくなっ
て相当長期間経過した後にうつ病が急激に悪化をきたして自殺企
図を生じていることから,aの自殺企図と被告病院内科によるIFN
治療との間に相当因果関係があったか否かについても,疑問が残
る」

■争点5 参加人病院の医師の家族に対する説明義務違反及び療
養指導義務違反の有無について

「・・・h医師は,aが平成11年12月11日に初めて参加人
病院を受診した際には,1週間分の薬を処方し,1週間後に再び
来院するよう求めたと認められる。なお,原告らは,平成12年
1月15日の第2回受診時にも原告bがaに同行した旨主張し,
同原告は本人尋問でその旨の陳述をしている。しかし,丙A 第1
号証によれば,平成11年12月11日にaが受診した際には,
原告bが発言した内容についてはカルテに(夫)と記載された部
分が存在するが,平成12年1月15日の第2回受診時にはカル
テに(夫)の記載がないこと,原告b本人尋問において,原告b
は平成12年1月15日に参加人病院でaやh医師が話した内容
について記憶が乏しいことがそれぞれ認められるところ,これに
加えて・・・,原告bは,aが平成12年1月15日に参加人病
院を2回目に受診した際は同行せず,同日はaが単独で参加人病
院を受診したものと認められる」

「・・・まず,IFNによるうつ病であるとの診断義務があるか否か
について検討する」

「・・・参加人病院を初めて受診した平成11年12月11日時
点で,aには貧困妄想が存在し薬の服用に対する抵抗が強い状態
であり,死にたいという希死念慮も口にしたが具体的な自殺企図
ではなかったばかりか,平成12年1月15日に2回目に受診し
た際は,aは,逆に死にたいということを否定する趣旨の発言を
したものである。そうすると,これらの症状は,希死念慮や自殺
企図といった重大な行動に発展する可能性を低減させる方向に解
釈すべき事情であるとも考えられる」

「さらに・・・,IFNによる精神症状のうち妄想が出現するのは約
11%と少数であり,IFN投与終了後1か月以上経過してから精神
症状が悪化していることに照らすと,いずれもIFNによる精神神経
症状としては非典型的であり,IFN投与と受診した時点のaの症状
が関連しているとは疑いにくい。また,うつ病が重症になれば,
家事や仕事はほとんどできなくなるのが通常であるのに,aは,
食事の支度等家事もこなしているし会社勤めも続けていることか
らすれば,この点においてもうつ病とは疑いにくい症状が出てお
り,診断は容易ではない」

「そうすると,うつ病であると診断するためには,抗うつ剤を投
与してみてどのような反応を示すか確認すること等追加的な検査
等が必要となるところ,aは,処方された薬をきちんと服用して
おらず,参加人病院を受診したのもわずか2回にとどまり,投与
した薬の反応を観察するには受診回数が少なすぎるのであるから,
参加人病院における診察時において,aがIFN治療によるうつ病を
発症していることを認識することはできないと言わざるを得ない」

「のみならず・・・,h医師が投与したセルシンもコントミンも,
いずれもうつ病の不安や焦燥に対して投与する適応がある薬剤で
あり,仮にaの精神症状がうつ病であるとしても,不適切な薬剤
が投与されたわけではないから,この点においても,うつ病に対
する治療義務に反するということはできない」

「ところで,参加人病院のh医師は,aの診察当時の病状がうつ
病ではなく精神分裂病(統合失調症)を疑うべきものである旨述
べており,仮にこの点において誤診が存在すると判断されれば,
aに対する診療義務に違反するとの判断に達する余地がある。し
かしながら,上記のとおり,セルシン及びコントミンがうつ病に
対する適応があることからすれば,上記診断が仮に誤診であった
としても,結果的には適切な治療を行っていることから,診療義
務違反がないことになり得るのであって,他に上記診断の誤り及
び診療義務違反を基礎づける証拠はない。(なお,この点に関し,
原告らは,立証について鑑定の申請はしない旨明言している。)」

「他方,aの精神症状から同女を入院させる義務があったか否か
について検討するに・・・,うつ病の入院治療が必要となるのは
1割程度で少数であり,入院治療を要する事由のうち,aが薬の
服用を拒み続ければ(3)薬物療法が十分に遂行できない症例に該当
する可能性があるが,参加人病院をわずか2回受診しただけであ
るから,未だかかる事由に該当すると判断するには時期尚早であ
るし,参加人病院を2回目に受診した時点でも(4)不安,焦燥,苦
悩の強い症例に該当するほどの不安,焦燥は出現しておらず,死
にたいと一度言っただけで全ての患者が(11)自殺の危険の強い症
例に該当するものでもない」

「これに対して・・・,aは,参加人病院を最後に受診した平成
12年1月15日の後の同月下旬になって,急に自殺企図が生じ
ており,h医師も包丁で手首を切ったことを聞いていればaを入
院させたと述べるとおり,この段階に至れば,入院治療の必要性
があるといえる。しかしながら,その後死亡するまでの間,aは
参加人病院を受診していないので,h医師は,自殺企図という決
定的な情報に接していない」

「以上によれば,aは,平成12年1月下旬以降になって急激に
焦燥が強まり自殺企図を生じたものと認められ,h医師は,自殺
企図が生じて以降aを診察する機会がないから,具体的な自殺の
予見可能性はなく,aを入院させるべき注意義務違反は認められ
ない」

■参加人の原告に対する債務不存在確認の訴えについて

「乙事件のうち参加人の原告に対する債務不存在確認の訴えにつ
いては,丙事件で原告の参加人に対する訴訟物を同じくする損害
賠償請求の反訴が提起されている。このように訴訟物を同じくす
る消極的確認請求の本訴と給付請求の反訴が提起された場合には,
反訴について判断がなされる以上給付訴訟で終局的解決を図るべ
きであり,消極的確認請求の本訴については訴えの利益が存在し
ないので不適法として却下すべきである(最判平成16年3月2
5日民集58巻3号753頁)」

「従って,乙事件のうち参加人の原告に対する債務不存在確認の
訴えは,不適法として却下を免れない」

■判決主文

1 原告らの被告及び参加人に対する請求をいずれも棄却する。

2 被告と参加人との間において,参加人の訴外aに対する診療行
為に関して,参加人の被告に対する,不法行為または診療契約上
の債務不履行に基づく損害賠償債務が存在しないことを確認する。

3 参加人の原告らに対する訴えをいずれも却下する。

<以下略>