判例速報
※この記事は、2007-07-23にメール配信されたものと同じ記事です。Medsafe会員各位 今回は,Eが,くも膜下出血の治療のために前交通動脈瘤に対 するクリッピング手術を受けるなどした後,平成14年6月7日 からリハビリテーション治療を受けるために被告病院に入院して いたところ,7月5日に急性呼吸不全のために死亡したことにつ いて,Eの相続人である原告らが,被告に対し,被告病院の担当 医師らには,Eの気管支喘息の治療や喘息発作の予防管理を怠っ た過失があり,これによりEは気管支喘息の重篤発作に基づく急 性呼吸不全により死亡したものであると主張して損害賠償請求し た事案です。 ■年月日・裁判所 H19.6.21 東京地裁 平成16年(ワ)第20408号 損害賠償請求事件(医療過誤) ■当事者 原告側:原告Aは,Eの夫であり,原告B・C・Dは,原告Aと Eとの間の子(なお,Eの子には,このほかに,非嫡出子Gがい る) 被告側:東京都国分寺市に被告病院を開設する財団法人 ■診療経過 ・平成14年2月25日午後11時30分ころ,Eは,東京都P 町の自宅で倒れた。 ・2月26日午後4時30分ころ,ヘリコプターで東京都武蔵野 市の武蔵野赤十字病院に搬送。Eは,武蔵野赤十字病院において, くも膜下出血と診断され,直ちに前交通動脈瘤に対するクリッピ ング手術を受けた。 ・Eは,その後も武蔵野赤十字病院に入院して治療を受けた。 ・6月7日,くも膜下出血に対する治療が終了したことを受けて, 武蔵野赤十字病院を退院し,リハビリテーション治療を受けるた めに被告病院に入院。入院時,Eは,意識障害があり,住所を尋 ねる質問に答えることができず,自発語はあってもつじつまの合 わないことが多く,コミュニケーションは困難な状態。 ・6月10日,Eに対し,理学療法によるリハビリテーションが 開始されたが,質問に対して正しい返答が返ってこず,内容不明 のことをつぶやいていることもあった。また,同日提出された血 液検査の結果,CRPは2.48(正常値0.3未満)であり, 炎症所見が認められた。 ・6月12日,Eは,訓練中に眠ってしまうことがあり,質問に 対する反応もあいまい。 ・6月13日,Eに対し,作業療法が開始されたが,反応が遅く, 質問に的確に返答できないことがあった。 ・6月19日,Eは,作業療法中,発語はあるものの,訓練とは 無関係の意味不明な発語が多く,会話は成り立たなかった。 ・6月21日,Eは,理学療法中,自分の名前を言えたが,つじ つまの合わない会話が著明。 ・6月22日,Eから息をすると左胸が痛いとの訴えがあり,喘 鳴が認められた。 ・6月24日強い喘鳴が認められたため,担当看護師がベッドアッ プをしたところ,5分くらいして喘鳴は落ち着いた。Sp02 (パルスオキシメーターで測定された酸素飽和度)は99%。担 当医師であったI医師は,担当看護師から,Eに胸部が苦しいよ うな感じがあり,夜間喘鳴が聴取された旨の報告を受け,Eを診 察したところ,両肺で軽度のパイピング音が聴取された。そこで, I医師が,Eの家族に対し,Eに喘息の既往があるかを尋ねたと ころ,同家族は,喘息の既往はない旨答えた。I医師は,Eの症 状について,誤嚥,気管支炎,気管支喘息等の可能性を考え,気 道狭窄の改善を目的に,テオドール(100mg)1日1錠7日 分を処方。 ・6月26日,Eに喘鳴が認められたが,Eは,看護師に対し, 「苦しくない」旨を述べた。Sp02は96%。 ・6月28日午前3時,Eに喘鳴が認められたが,担当看護師が Eの体位を右側臥位に変換したところ,喘鳴は消失した。午前9 時30分,Eは,喘鳴が認められ,軽度の呼吸苦の訴えがあった。 担当看護師は,ベッドアップを行った。Sp02は96〜97%。 ・6月29日夜間,Eは,寝息と喘鳴を交互に発し睡眠していた ところ,午前5時15分,喘鳴が認められたため,担当看護師は, Eに対し,メプチンエアーを施行した。Sp02は97%。午後 8時,担当看護師は,Eに対し,テオドール1錠を投与した。E は,喘鳴が認められたが呼吸苦の訴えはなく,ベッドアップをし ていたが,体動が激しく,喘鳴が増強してきた。Sp02は96 %であった。午後9時10分,担当看護師は,Eに対し,メプチ ンエアーを施行した。午後9時25分,Eは,喘鳴が軽減し,入 眠していた。午後11時,いくらか喘鳴が軽減した。Sp02は 96%。 ・6月30日午前1時,Eは,喘鳴があったが入眠していた午前 10時,Eに軽度の喘鳴が認められた。Sp02は87%に低下。 午後8時,Eに喘鳴が認められたが,呼吸苦の訴えはなかった。 Sp02は93%であった。担当看護師はベッドアップを行い, テオドール1錠を投与した。午後8時30分,Sp02は99%。 午後11時,担当看護師がEに対し呼吸苦の有無を尋ねたところ, Eは,「苦しくない。おやすみ。」と答えた。 ・7月1日午前6時,Eは,Sp02 99%。午後8時30分, Eは,喘鳴が認められず,Sp02 96〜97%。午後11時も 喘鳴はなかった。 ・7月2日午前1時,Eに喘鳴が認められたが,担当看護師がE の体位を右側臥位に変換したところ,喘鳴は軽減した午後8時, Eに軽度の喘鳴が認められた。担当看護師はベッドアップを行っ た。Sp02は93〜94%。 ・7月3日午前5時,Eは,良眠していたが,軽度の喘鳴が認め られた。午前7時,Eは,朝方,やや喘鳴が強くなっていたが, 以前よりは落ち着いていて軽度であった。Sp02は95%。午 後6時30分,Eは,喘鳴が認められなかった。午後9時も喘鳴 はなかった。午後11時,Eは,軽度の喘鳴が認められたが,苦 悶表情はみられなかった。 ・7月4日午前1時,Eは,喘鳴が認められ,担当看護師に対し て「苦しい」と訴えた。Sp02は97%であった。担当看護師 は,Eに対し,メプチンエアーを施行した。午前1時10分,E はSp02 98%。 ・午前7時,Eに著明な喘鳴が認められた。Sp02は99%で あった。午前7時30分,担当看護師が,Eを車椅子に乗車させ たところ,喘鳴は認められなくなった。 ・午後8時50分,Eに喘鳴はなく,呼吸苦の訴えもなかった。 Sp02は99%。 ・午後10時30分,苦悶表情,著明な喘鳴があった。担当看護 師は,Eの体位を左側臥位に変換し,メプチンエアーを施行した が,喘鳴は段々と著明になった。担当看護師は,さらにEの体位 を右側臥位に変換し,ベッドアップを行い,様子をみることとし た。 ・午後10時40分,Eは,1,2分で喘鳴の軽減が認められた が,看護師がさわると再び喘鳴が強くなる傾向があった。Sp0 2は98%。湿気があったため,担当看護師は,窓を開けた。 ・午後11時,Eは,喘鳴が治まらず,苦悶様表情となった,担 当看護師は体位変換を行った。 ・午後11時30分,Eは,喘鳴が多少軽減し,Sp02 93〜 95%であった。担当看護師は,様子をみることとした。 ・7月5日午前零時20分,Eと同室の他の患者からナースコー ルがあり,看護師がEの病室に向かったところ,病室外から喘鳴 がはっきり聞こえたため,看護師は他の看護師の応援を求めた。 ・午前零時25分,Eは,著明な喘鳴,努力様呼吸,顔面から全 身にかけての発汗,顔色不良,手指末端,爪床のチアノーゼが認 められ,Sp02は81〜84%に低下。看護師は,当直であっ たJ医師をコール。 ・午前零時30分,ベッド移動が行われ,Eは210号室に移さ れた。Sp02は77%に低下。 ・午前零時32分,Eは,努力様呼吸から下顎様呼吸の状態であ り,Eに対して,マスクで酸素4リットルの投与を開始。また, 血管を確保して,ラクナック,ネオフィリンの点滴での投与が開 始され,ソルコーテフ,ビソルボンの静脈注射がされた。しかし, Eの症状は改善せず,呼吸苦は増大。 ・午前零時40分,Eに全身チアノーゼが認められ,Sp02が 72%に低下したため,Eに対して,ボスミンの投与を開始。 ・午前零時41分,気管内挿管が施行された。気管内から,喀痰 が塊となっては吸引されず,水様性の痰のみが吸引された。 ・午前零時42分,下顎様呼吸で,自発呼吸が10〜15回あっ たが,間もなく心停止。心臓マッサージ開始。 ・午前零時46分,心臓マッサージを中止すると,脈拍なし。 ・午前1時42分,死亡確認。 ■Eの病態及び死因 「・・・Eは,2月25日,自宅でくも膜下出血で倒れ,翌26 日,武蔵野赤十字病院において前交通動脈瘤に対するクリッピン グ手術を受けたが,見当識障害,中枢神経系の障害が残った状況 で,6月7日,被告病院リハビリテーションセンターに転院となっ た」 「6月10日から,理学療法によるリハビリテーションが開始さ れ,同日提出された血液検査の結果では,CRPの上昇が見られ, 炎症所見が認められた」 「その後,Eには,6月22日から,度々喘鳴が認められるよう になったが,体位変換などで改善する状態が続いていた。同月2 4日には両肺に軽度のパイピング音が聴取され,同月27日には, 強い喘鳴と,Sp02の84%,88%までの低下が見られたが, これらも,ベッドアップや体位変換と深呼吸などで回復した」 「その後も,喘鳴が頻回に見られ,その間,6月30日には,S p02の87%への低下が認められたが,これも回復していたと ころ,7月4日午後10時30分,Eに著明な喘鳴が見られ,翌 5日午前零時25分には,著明な喘鳴,努力様呼吸等が認められ, Sp02が81〜84%に低下し,午前零時30分には77%に 低下して,その後,酸素投与,気管内挿管等が施行されたが,午 前1時42分,Eの死亡が確認された。なお,7月5日の気管内 挿管後も,痰は塊となっては吸引されず,水溶性の痰が吸引され たのみであった」 「以上の経緯に照らせば,Eは,くも膜下出血の後遺症として, 中枢神経系の障害という素因を有していたところ,その後,被告 病院において,気管支喘息による喘鳴,低酸素血症が見られるよ うになり,7月5日に気管支喘息の重篤発作を起こして,呼吸不 全により死亡したと認めるのが相当である」 「しかしながら,気管支喘息は,可逆的な気道収縮を特徴とする ところ,症状が悪化と回復を繰り返しており,また,夜間に喘鳴 がひどくなることが多かったという経過は気管支喘息の病態と整 合しているといえる。また,気道内分泌物の貯留等が生じていた 可能性や気管支喘息としては全体の経過が短いことについては, くも膜下出血の後遺症として神経障害が背景にあったためである と考えることができ,これが気管支喘息の存在を否定する事情と まではいえない。しかも,Eが死亡に至った7月4日から同月5 日にかけての発作についていえば,気管内挿管を施行した際に痰 が塊となっては吸引されなかったことから,分泌物による気道閉 塞が生じていた可能性が高いとはいえない。そして,6月24日, Eの両肺には喘息に見られるパイピング音が聴取されていること, 現にEを診察したI医師が,レントゲン,心電図,血液検査を踏 まえたうえで,気管支喘息が一番考えられると述べていることか らすれば,Eには,気管支喘息が発症していたと見るべきであり, 7月5日の呼吸不全の直接の原因は,気道内分泌物の貯留という よりは,むしろ気管支喘息であったと考えるのが相当」 「以上によれば,Eの死因は,直接には気管支喘息であるが,こ れに中枢神経障害に起因する誤嚥や気道感染が影響を与えていた と見るのが相当」 ■6月24日時点における注意義務違反の有無 「原告らは,被告病院の担当医師には,6月24日の時点で,ピー クフロー値の測定等の検査を実施して,的確にEの気管支喘息の 重症度を診断した上で,長期管理薬として吸入ステロイド薬(又 は経口ステロイド薬若しくは経静脈ステロイド薬)の連用を開始 すべき注意義務があった旨主張する」 「そして・・・,6月22日午前6時,被告病院において初めて Eの喘鳴が確認され,以後6月24日まで3日間続けて,Eに, 1日に複数回,喘鳴が生じていたことが認められる」 「この点から,原告らは,Eの気管支喘息の重症度が,6月24 日時点で,重症持続型か軽くとも中等症持続型であったと主張す る。しかし,本件ガイドラインは,喘息発作として喘鳴のみが週 3回ある場合の重症度を軽症間欠型としていること,EのSp0 2は90%台後半で保たれており,著明な喘鳴はみられなかった ことなどからすれば,6月24日の時点におけるEの症状は,こ れを気管支喘息によるものとしたとしても,せいぜい軽症間欠型 と評価される程度のものであり,重症持続型又は中等症持続型に 至っていたとは認められない」 「以上を前提に,ステロイド薬の連用を開始すべき義務の有無に ついて検討する」 「N医師は,6月24日の時点で,気管支喘息の確定診断をする ことができ,吸入ステロイドの使用を始めると思う旨証言する」 「しかし・・・,6月24日の時点では,I医師は,Eの症状に ついて,気管支喘息だけでなく,誤嚥,気管支炎等の可能性も考 えていたことが認められるところ・・・,Eの病態は,気管支喘 息に中枢神経障害による誤嚥や気道感染が影響を与えていた,気 管支喘息としては非典型的なものであったことが認められる。現 に,6月24日までの時点においても,Eにはくも膜下出血の後 遺症として意識障害が生じており,誤嚥を生じやすい状態にあっ たこと,6月10日時点で炎症所見が認められていたこと,喘鳴 が体位変換やベッドアップにより容易に消失したことなどからす れば,6月24日時点でのEの症状が,誤嚥による気管支炎ない し気道狭窄,気道内分泌物の貯留等によるものであった可能性も 否定できず,6月24日時点におけるEの症状が,気管支喘息に よるものであったとまでは断定できない状況であったと認められ る。そうであるとすれば,同日時点で気管支喘息の確定診断がで きたとはいえず,同日からステロイド薬連用による気管支喘息の 長期管理を直ちに開始すべきであったともいえない。また,仮に 気管支喘息としての長期管理を考えるとしても,本件ガイドライ ンによれば,吸入ステロイド薬による長期管理が基本とされるの は軽症持続型以上であり,軽症間欠型の場合は,徐放性テオフィ リン薬,吸入β 刺激薬又は経口2 β2 刺激薬の頓用が推奨され, 吸入ステロイド薬は,あくまで症状により併用を考慮するとされ ているにすぎない。そして,・・・6月24日の時点で,せいぜ い軽症間欠型と評価される程度の症状しかなかったことに照らせ ば,気管支喘息の長期管理としても,テオドールの処方,投与で 十分であったということができ,それ以上にステロイド薬を併用 すべきであったとは認められない」 「したがって,N医師の前記証言は採用することができず,被告 病院の担当医師には,6月24日の時点で,ピークフロー値の測 定等の検査を実施して,的確にEの気管支喘息の重症度を診断し た上で,長期管理薬として吸入ステロイド薬(又は経口ステロイ ド薬若しくは経静脈ステロイド薬)の連用を開始すべき注意義務 があったとは認めることができない」 ■6月27日時点における注意義務違反の有無 「原告らは,6月27日におけるEの気管支喘息の重症度は重症 持続型に達していたというべきであり,被告病院の担当医師には, 同日から吸入ステロイド薬(又は経口ステロイド薬若しくは経静 脈ステロイド薬)の連用を開始すべき注意義務があった旨主張す る」 「Eは,6月25日を除き,6月22日から同月27日まで継続 的に喘鳴が生じていたことが認められ,殊に6月27日午後8時 30分には,ガーガーと音を立てる強い喘鳴が生じて,Sp02が 84%まで低下し,同日午後11時,Sp02が再び88%まで 低下し,同日午後11時15分,再びガーガーと音のする強い喘 鳴が認められた。これらを気管支喘息の重症度に当てはめて評価 すれば,Eは,慢性的に喘息発作を生じる状態にあり,6月27 日夜間には著明な喘鳴やSp02の著しい低下といった激しい発 作も起こっていることから,6月27日夜間の時点で,Eの重症 度は,軽症持続型ないし中等症持続型に至っていたとみることが 可能である。そして,軽症持続型以上の場合は,本件ガイドライ ンにおいて,吸入ステロイド薬による長期管理が推奨されており, L鑑定人は,Eが6月27日夜間にSp02が80%台に低下し たことを担当医師が認識した時点で,担当医師は吸入ステロイド 薬の投与を試みるべきであったとの意見を述べている」 「しかしながら,吸入ステロイド薬の使用については,以下の事 実を指摘できる」 「Eは,武蔵野赤十字病院において,くも膜下出血,水頭症等を 背景として見当識障害等の意識障害を生じ,作業療法訓練の指示 が入りにくい状態にあったところ,被告病院に転院した6月7日 の時点においても,意識障害があり,医師や看護師の問いかけに 対してつじつまの合わない内容を答えるなど,意思疎通を図るの が困難であり,また,起きあがりや排泄等の日常生活動作の多く についても介助を要する状態であった。また,6月10日以降の リハビリテーションにおいても,Eから的確な応答が得られず, 会話が成立しないことがたびたびあり,6月28日にはトイレッ トペーパーを食べるといった行動もみられた。これらによれば, 武蔵野赤十字病院入院中に生じていたEの意識障害は,被告病院 入院中においても,明確な回復をせずに遷延していたものと推認 することができる」 「そして,ステロイド薬の吸入療法が奏功するためには,患者が 吸入器を用いての吸入手技を習得する必要があるところ,高齢の 患者は吸入を上手にできないことが多いと指摘されていること, ・・・Eは,意識障害が残存しており,日常生活動作の多くにつ いて介助が必要な状態にあったことからすれば,Eが十分な吸入 を行うことができたとは考え難い」 「さらに,ステロイド薬の吸入後には,口腔内の真菌感染等の副 作用を防止するために,うがいを行う必要があるが,神経障害, 意識障害があったEは十分なうがいができなかった可能性があり, 誤嚥による感染拡大を招く危険性もあったと認められる」 「以上によれば,Eについては,吸入ステロイド薬を投与するこ とは難しく,その適応がなかったというべきであり,被告病院の 担当医師に,Eに対して,吸入ステロイド薬の連用を開始すべき 注意義務があったとは認められない」 「原告らは,Eに対して吸入ステロイド薬の投与が困難だったの であれば,経口ステロイド薬又は経静脈ステロイド薬を投与すべ きであった旨主張する」 「この点について,N医師は,ステロイド薬の確実な吸入が期待 できない症例については,ステロイド薬の内服又は筋肉注射を行 うという選択も合理的であるとの意見を述べる。また,L鑑定人 も,吸入ステロイド薬の有効性がないか,吸入ができない状態だっ たのであれば,点滴又は内服でのステロイド薬投与によるコント ロールを開始すべきであったとの意見を述べている」 「そして,Eに対して吸入ステロイド薬を投与するのが困難だっ たことは,・・・判示したとおり」 「しかし,他方で,Eの病態が,気管支喘息としては非典型的で, 中枢神経障害に起因する誤嚥や気道感染が影響を与えていたと認 められることは・・・述べたとおりであるところ,6月27日ま でにEにみられた症状についても,以下の点を指摘することがで きる」 「Eは,6月27日午後8時30分及び午後11時,Sp02が 80%台まで低下したが,担当看護師がベッドアップや体位変換 をしたことにより,Sp02は間もなく94ないし99%まで回 復した。Sp02が80%台まで低下するのは致死的にもなり得 る重大な事態であるところ,これが気管支喘息により生じたもの であるとすれば,ステロイド薬を投与することなくベッドアップ や体位変換のみにより直ちにSp02が90%台中盤から後半ま で回復するのは非常にまれなことである。むしろ,気道内分泌物 による気道狭窄等の他の原因が生じていたと考える方が,Sp0 2の短時間での回復を説明しやすい」 「また,Eは・・・,6月22日以降,喘鳴が出現と消失を繰り 返していたが,ベッドアップ,体位変換,車椅子への乗車により 喘鳴が消失するという経過が頻回にみられた。特に,6月24日 午前2時55分,6月27日午後8時30分,同日午後11時及 び同日午後11時15分には,ガーガーと音を立てるような強い 喘鳴や苦悶様表情ないしSp02の著しい低下を伴う激しい発作 が生じたが,いずれもベッドアップや側臥位への体位変換等によ り喘鳴,発作が消失又は軽減したことが認められる。この点も, 意識障害,神経障害を背景として,分泌物等の貯留により気道狭 窄が生じていたのが,ベッドアップや体位変換に伴って,分泌物 が移動したか,あるいは気道が開いたことにより,狭窄が改善し, 喘鳴が治まったとみる方が自然であり,気管支喘息だけによって 強い喘鳴,発作が生じていたとは考え難い」 「さらに,看護記録の記載では,6月27日午後8時30分及び 午後11時15分に認められた強い喘鳴が「ガーガー」という音 で表現されている。しかし,通常の喘息では,パイピング音のよ うな高い音が聴取されるのが典型的で,「ガーガー」という音は 通常の喘息で聴取されるものではなく,むしろ,分泌物等による 気道狭窄を思わせる音である。この点からしても,上記各時点で 認められた強い喘鳴が気管支喘息のみによるものであったとは考 えにくい」 「以上指摘した点によれば,6月27日までに認められた顕著な 喘鳴やSp02 の著しい低下は,分泌物貯留による気道狭窄等, 気管支喘息以外の原因が関与していた可能性が高く,気管支喘息 のみの病態としては極めて非典型的であったと認められる」 「次に,原告らは,6月27日におけるEの気管支喘息の重症度 は重症持続型に達していたと主張するので,同日までにみられた 症状が気管支喘息によるものであるとして,その重症度を検討す る」 「・・・Eは,慢性的に喘息発作を生じる状態にあり,6月27 日夜間には著明な喘鳴やSp02の著しい低下といった激しい発 作も起こっていることからすれば,6月27日夜間の時点で,E の重症度は,軽症持続型ないし中等症持続型に至っていたとみる ことはできる。しかし,他方で・・・,強い発作が生じても,ベッ ドアップや体位変換により,容易にSp02が回復し,あるいは 喘鳴が消失又は軽減したことからすれば,『発作症状が持続し… 治療下でも,その症状が増悪する』状態にあったとまではいえず, 重症持続型に達していたとは認められない。以上を前提に,ステ ロイド薬の連用による長期管理について検討するに,本件ガイド ラインによれば,軽症持続型及び中等症持続型では,吸入ステロ イド薬の連用が推奨されているにすぎず,経口ステロイド薬の連 用が推奨されるのは重症持続型の場合のみである」 「そうであるとすれば,Eに対して吸入ステロイド薬の投与が困 難であったことを考慮したとしても,6月27日から,経口ステ ロイド薬又は経静脈ステロイド薬の連用を開始するという選択は, 本件ガイドラインの基準にそのまま合致するものとはいえない」 「以上のとおり,(1)6月27日までに認められた症状は,気管支 喘息以外の原因により生じた可能性が高く,気管支喘息のみの病 態としては極めて非典型的であったこと,(2)その症状が気管支喘 息によるものであったとしても,重症度は軽症持続型ないし中等 症持続型であり,この場合,経口ステロイド薬又は経静脈ステロ イド薬の連用は本件ガイドラインで推奨されていないことからす れば,被告病院の担当医師に,6月27日の時点で,経口ステロ イド薬又は経静脈ステロイド薬の連用を開始すべき注意義務があっ たと認めることはできない」 「したがって,被告病院の担当医師には,6月27日から吸入ス テロイド薬又は経口ステロイド薬若しくは経静脈ステロイド薬の 連用を開始すべき注意義務があったとの原告らの主張を採用する ことはできない」 ■6月30日時点における注意義務違反の有無 「原告らは,Eが,6月30日午前10時,喘息発作が生じたこ とによりSp02が87%にまで低下し,午後8時の時点でも, Sp02が93%にまでしか回復していないことが認められ,気 管支喘息の症状が悪化していることは明らかだったのであるから, 被告病院の担当医師には,同日時点で,ピークフロー値の測定等 の検査を実施して,的確にEの気管支喘息の重症度を診断した上 で,同日から吸入ステロイド薬(又は経口ステロイド薬若しくは 経静脈ステロイド薬)の連用を開始すべき注意義務があったと主 張する」 「吸入ステロイド薬の連用についてEに吸入ステロイド薬を投与 することは難しく,その適応がなかったことは・・・判示したと おりであり,この点は,6月30日の時点についても同様に解す ることができる。よって,6月30日の時点で吸入ステロイド薬 の連用を開始すべき注意義務があったとは認められない」 「N医師は,6月30日,Eが再びSp02が80%台に低下し たことを受けて,長期管理の治療法を修正する必要があった,ま た,6月28日の時点から経口ステロイド薬又は経静脈ステロイ ド薬によるステロイド全身投与が開始されているべきであったと 証言する」 「L鑑定人も,6月27日午後8時30分及び午後11時にSp 02が80%台に低下し,さらに6月30日午前10時にもSp 02が80%台に低下したことからすれば,高度喘息発作が起こっ ていたものとして,6月28日から,重症度に応じてステロイド 薬の点滴又は経口投与が開始されるべきであったとの意見を述べ ている」 「そして・・・,I医師は,6月28日,担当看護師から,6月 27日夜,EにSp02が正常より低下する喘鳴が認められたこ との報告を受け,テオドール(100mg)1錠を追加処方し, 発作治療薬としてメプチンエアー(5ml)1日4回までの使用 を処方したこと,6月28日午後8時,6月29日午前5時15 分及び午後9時10分,Eに対して,メプチンエアーが投与され たこと,6月30日午前10時,EのSp02が87%に低下し たことが認められる」 「確かに,以上の経過によれば,Eは,6月28日,テオドール の処方量が200mgに増量され,さらに発作時の対処としてメ プチンエアーが6月28日から翌29日の間に合計3回施行され たにもかかわらず,6月30日午前10時に,6月27日午後8 時30分及び午後11時の時点と同じく,Sp02が80%台ま で低下する中等度の発作が生じたものであるから,6月30日の 時点では,テオドールの増量及びメプチンエアーの施行によって は十分な喘息のコントロールがされていないものとして,長期管 理薬の変更が考慮される余地もあったといえる」 「しかし・・・,Sp02が80%台に低下したにもかかわらず, これがステロイド薬の投与なしに容易に回復するのは気管支喘息 の病態としては非常にまれであるところ,6月30日午前10時 に87%まで低下したEのSp02は,やはりステロイド薬を使 用することなく,同日中に90%台まで回復しており,気管支喘 息の発作によるものであったのか疑問が残るところである。しか も,被告病院の担当医師は,6月30日の時点では,6月27日 におけるSp02の低下がステロイド薬を使用しないでも容易に 回復している事実を認識していることからすれば,なおさら分泌 物の貯留によるものと考えやすく,前回と同じように,ステロイ ド薬を投与しなくても,Sp02が容易に回復するものと考えた としても不合理とは言えない」 「また,気管支喘息に対する長期管理薬の変更を考えるにしても, 点滴又は内服によるステロイド薬の連用には脳梗塞等の合併症の 危険があることに照らせば,抗ロイコトリエン薬の併用といった 他の長期管理薬を選択することも合理的であるといえる。よって, テオドールの増量及びメプチンエアーの施行ではコントロールが 不十分であったからといって,直ちに点滴又は内服によるステロ イド薬の連用を開始すべきことにはならない」 「以上のとおり,(1)6月30日の時点でも,同日におけるSp0 2低下等の症状が気管支喘息以外の疾患によるものと考えること もできる状況にあったこと,(2)長期管理薬の変更を考慮するにし ても,副作用の危険を考えれば,直ちに点滴又は内服によるステ ロイド薬の連用を選択すべきであったとはいえないことからすれ ば,被告病院の担当医師に,6月30日の時点で,経口ステロイ ド薬又は経静脈ステロイド薬の連用を開始すべき注意義務があっ たと認めることはできない」 「したがって,被告病院の担当医師には,6月30日から吸入ス テロイド薬又は経口ステロイド薬若しくは経静脈ステロイド薬の 連用を開始すべき注意義務があったとの原告らの主張を採用する ことはできない」 ■喘息発作時における治療を尽くさなかった過失による不法行為 の成否について 「原告らは,Eが,7月4日午後10時30分の時点で,喘鳴が 顕著となり,苦悶の表情を浮かべ,左側臥位でメプチンエアーを 吸入されてもまったく効果を示さないという重症発作を生じてい たのであるから,被告病院の担当医師には,同時点で,直ちにボ スミン皮下注射,アミノフィリンの持続点滴,経静脈ステロイド 薬の投与,吸入β2 刺激薬の投与,酸素投与等の治療を開始すべ き注意義務があった旨主張する」 「・・・Eは,6月27日午後8時30分及び午後11時,Sp 02が80%台に低下する中等度の発作を生じ,I医師は,6月 28日,担当看護師から,6月27日夜,EにSp02が正常よ り低下する喘鳴が認められたことの報告を受け,テオドール(1 00mg)1錠を追加処方し,発作治療薬としてメプチンエアー (5ml)1日4回までの使用を処方し,6月28日午後8時, 6月29日午前5時15分及び同日午後9時10分,Eに対して, メプチンエアーが施行されたが,6月30日午前10時,再びE のSp02が87%に低下し,7月4日午前1時,Eに対して, メプチンエアーが施行されたが,同日午前7時,著明な喘鳴が認 められ,同日午後10時30分,苦悶表情を伴う著明な喘鳴があ り,担当看護師が,Eの体位を左側臥位に変換し,メプチンエアー を施行したが,喘鳴が段々と著明になり,担当看護師は,Eの体 位を右側臥位に変換して様子をみることにした」 「以上の経過によれば,6月27日,中等度の発作が生じたEに 対し,6月28日,テオドールの増量及びメプチンエアーの施行 による喘息管理が開始されたにもかかわらず,6月30日,再び Sp02が80%台に低下する中等度の発作が生じ,また,7月 4日午前7時及び午後10時30分に著明な喘鳴を伴う発作が生 じ,特に午後10時30分には,メプチンエアーを施行し,体位 変換を行っても喘鳴が治まらなかったのであるから,7月4日午 後10時30分の時点では,もはや体位変換やテオドールの増量 及びメプチンエアーの施行によっては喘息発作をコントロールで きないことが明らかになっていたといえる」 「そして,(1)午後10時30分時点のSp02の記録はないもの の,Eに著明な喘鳴又は苦痛様表情が見られていた6月27日午 後8時30分及び午後11時の発作時には,EのSp02が80 %台に低下していたことからすれば,著明な喘鳴及び苦悶様表情 がみられた7月4日午後10時30分の時点でもSp02が有意 に低下していたと推認されること,(2)メプチンエアーを施行して も喘鳴が段々と著明になったことからすれば,中等度の発作が生 じていたと評価することも可能であること,(3)本件ガイドライン 上,軽症症状(小発作)に対する処置(吸入β2刺激薬,テオフィ リン薬を頓用)を行っても症状が改善しない場合は中等度症状の 処置(吸入β2刺激薬反復,β2刺激薬(ボスミン)皮下注射, アミノフィリン点滴,ステロイド薬静注,酸素吸入)にステップ アップするものとされていることからすれば,7月4日午後10 時30分の時点では,中等度発作に対する処置に準じ,Eに対し, ステロイド薬の静注を行うべきであったということができる」 「この点について,K鑑定人は,7月4日午後10時30分の時 点でも気管支喘息が第一に疑われる状態ではなかったとの意見を 述べている。そして,確かに,それまでの経過において,体位変 換やベッドアップなどにより発作が軽減又は消失するという気管 支喘息としては非典型的な所見があったことは,前記判示のとお りである。しかし,7月4日午後10時30分の発作時は,担当 看護師が,Eの体位を左側臥位に変換し,メプチンエアーを施行 しても,発作は軽減せず,かえって喘鳴がさらに著明になったの であるから,この時点では,体位変換によって容易に改善する一 過性の気道狭窄であるとは考えにくく,加えて,夜間に著明な喘 鳴が継続して起こってきたのであるから,そうであれば,気管支 喘息による発作を念頭におき,それに対する対処を行う必要があっ たというべき」 「また,K鑑定人は,仮に気管支喘息による発作であったとして も,7月4日午後8時50分の時点では喘鳴もなく,Sp02も 99%であったことからすれば,ステロイド薬の静注をすべきで あったとまでは言い切れないとの意見も述べている。しかし,前 記のとおり,7月4日午後10時30分時点でのSp02の記録 はなく,Sp02が80%台に低下した6月27日午後8時30 分及び午後11時の発作時と対比すれば,10時30分時点では Sp02が有意に低下していたと推認して不自然とは言えないこ とに鑑みれば,午後8時50分の時点で喘鳴がなく,Sp02が 99%であったからといって,午後10時30分時点でステロイ ド薬の静注をすべき義務の有無が左右されるものではない」 「また,被告は,Eが,7月4日午後10時30分にメプチンエ アーを投与されると,その1,2分後には症状が軽減して,Sp 02 が98%に達し,また,同日午後11時30分にも,Sp0 2 が93〜95%と測定されていることから,午後10時30分 の時点で当直医を緊急にコールする必要はなかった旨主張する」 「確かに・・・,Eは,午後10時40分時点で,1,2分で喘 鳴の軽減がみられ,Sp02は98%であったこと,午後11時 30分時点のSp02は93〜95%であったことが認められる」 「しかし,事後の経緯から午後10時30分時点での気管支喘息 への対処義務が解除されるものではなく,他方で,午後10時4 0分時点では再び喘鳴が強くなる傾向もあったこと,午後11時 には喘鳴が治まらず,再び苦悶様表情となったこと,7月5日午 前零時20分には顕著な喘鳴があり,午前零時25分にはSp0 2が81〜84%に低下し,その後,症状は急激に悪化し,午前 1時42分の死亡確認に至ったことに照らすと,Eが,7月4日 午後10時40分時点で喘鳴の軽減がみられ,Sp02が98% であったこと,午後11時30分時点のSp02は93〜95% であったことをもって,喘息の症状が落ち着いていたとは認めら れないのであって,被告の主張は採用できない」 「以上によれば,被告病院の担当医師には,7月4日午後10時 30分時点で,経静脈ステロイド薬の投与を行うべき注意義務に 違反した過失が認められる」 ■因果関係 「因果関係の有無を判断する前提として,Eの死亡原因について 検討する。L鑑定人及びM鑑定人が死亡原因を気管支喘息の重篤 発作とするのに対し,K鑑定人は,Eの死亡原因となった疾患と しては,気管支喘息よりも,中枢神経障害を背景とした気道内分 泌物の貯留に伴う呼吸不全が考えやすいとの意見を述べている」 「そして,確かに,Eの臨床経過においては,喘鳴やSp02の 著しい低下が体位変換やベッドアップのみで回復するなど,気管 支喘息以外の疾患が併存していた可能性が十分にあることについ ては,・・・述べたとおり」 「しかしながら,Eが死亡に至った7月4日から同月5日かけて の発作についていえば,気管内挿管を施行した際に痰が塊となっ ては吸引されなかったことから,分泌物による気道閉塞が生じて いた可能性が高いとはいえず,担当医師であったI医師自身が, 死亡原因は気管支喘息の重篤発作による急性呼吸不全であった可 能性が最も高いとしていること,K鑑定人も死亡原因を気管支喘 息とすることが臨床経過に照らして矛盾するとまでは述べていな いことなどを考慮すれば,Eの直接の死亡原因が,気管支喘息の 重篤発作による急性呼吸不全であったと推認するのが相当である ことも・・・述べたとおり」 「そこで,被告病院の担当医師が,7月4日午後10時30分の 時点で,Eに対し,経静脈ステロイド薬の投与を開始していれば, 本件死亡結果を回避できたといえるか検討する」 「文献によれば,経口ステロイド薬又は経静脈ステロイド薬の明 らかな効果発現が得られるまでの時間は,一般的に約4時間程度 と考えられていることが認められるが,2時間以内に効果が発現 することが証明されたとする報告もあり,鑑定人らも投与から2 時間程度で目に見える形で効果が出てくると思う旨の意見を述べ ている」 「しかし・・・,Eは,7月5日午前零時20分の時点で病室外 から認識できるほどの著明な喘鳴が確認されており,午前零時2 5分,手指末端,爪床のチアノーゼが認められ,Sp02が81〜 84%に低下し,さらに午前零時30分には,Sp02が77% まで低下し,その後,マスクでの酸素投与,ボスミン投与等が行 われたにもかかわらず,間もなく心停止に至り,蘇生措置に反応 することなく,午前1時42分に死亡が確認された」 「このように,(1)Eは,短時間のうちに喘息発作が増悪し,急激 な転機をたどったものであること,(2)7月4日午後10時30分 の2時間後(7月5日午前零時30分)にはすでにSp02が7 0%台という致命的なレベルまで低下していたことに加え,(3)6 月27日及び7月4日午後10時30分の2時点において,ステ ロイド薬を点滴で投与していたと仮定した場合についてさえ,鑑 定人らの意見は,救命は難しかったとの意見で一致していること に鑑みると,被告病院の担当医師が,7月4日午後10時30分 の時点で,Eに対し,経静脈ステロイド薬の投与を開始していれ ば,本件死亡結果を回避することができたとは認められないもの といわざるを得ない」 「よって・・・,注意義務違反と本件死亡結果との間に因果関係 を認めることはできない」 ■判決主文 (請求棄却)