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危険学からみた医療安全プロジェクトシンポジウム

読者から事務局にシンポジウムの報告が寄せられましたのでご紹介いたします。


2008年3月23日、六本木アカデミーヒルズで行われた「危険学からみた医療安全プロジェクトシンポジウム」から、「危険学プロジェクト」代表・畑村洋太郎先生の「危険学から医療現場を診る」を報告する。

日本で何が起こっているのか

  • 社会が成熟してくると多くのシステムがすでに出来上がっており、「マニュアル化」の時代となる
  • マニュアルを作っているときは、どこにどんな危険があり、どのように回避するかが議論され、知識が蓄積され、それぞれの行為の意味が分かってる
  • マニュアル化時代では、条件変化についていけない人が多くなることが懸念される
  • ヒトと機械の分担領域が変っているのに、十分認識されず、「すきま」で事故が起きる
  • 従来、ヒトは外界へ働きかけ、情報を獲得し、頭に知識や知恵が蓄積されてきたが、機械化が進むことにより、周囲のシステムに情報や知識が移転され、ヒトの頭の中は、何もなくなる(電卓を使うと計算が出来なくなる、ワープロを使うと字がかけなくなる、炊飯器がないとご飯が炊けない、カーナビを使うと頭から地図が消える、など)
  • 「見えない・考えない・歩かない」時代
  • 医療現場では、裁判対策で記録を残すことばかりに時間が費やされる
  • 患者をみず、PCとその後ろの配線ばかり見ている(スパゲティ現象と言うそうです)
  • 産業界でも同様の現象が起きているが、医療現場においても、管理者はコンピュータに向かった管理業務ばかりとなり、現場での「口出し」「見回り」の業務が圧倒的に減っている
  • また、患者にとって本当に必要な治療が法律の妨げにより行われていない。法律が事件が起きている医療現場と乖離してしまっている

ヒューマンエラーはなぜ起きるか

  • 「気」に囲まれている。すなわち、自分達の社会に閉じこもっている限りは気がつかない
  • 外から見ている人のみが気付くので、「外からの参加」が重要である
  • 同じ言葉でも考えていることが違うと真意は伝わらない
  • 伝えたつもりでも伝わっていないこと、伝えてもいないのに伝えられたと思っていることがあり、事故の原因となる
  • ヒトの注意力には限りがあり、あまり細かいことを注意すると最も重要なところから注意が欠落してしまうことがある「細かいことに注意を集中すると一番大事なことが抜け落ちる」
  • 1件の「世間で問題とされる設計の失敗」の陰には29件の「軽度の顧客からのクレーム程度の失敗」があり、その陰には300件の「クレームではないが設計者が秘かに危ないと思った体験」がある

どうすればいいのか

  • 「3現」の実践。現場を見る、現物を見る、実際にその人に会ってみる(現人:げんにん)
  • 愚直な努力を続けること
  • 同じ失敗は、3日、3月、3年、30年ごとに繰り返される
  • 何もしないと事故が起きるが、地道な努力で、安全の程度が多少増減しても事故には至らない
  • そうして事故が減っていくが、その事故減少の要因を良く分析すること
  • ありえることは起こりうる。思いつくことは、現実に起こりうるので対策を考えておくこと
  • 視点を変えれば危険が見えてくる。どこに危険があるか知りたいと思い、アプローチしていけば危険が見える。見たくない人には見えない
  • 共有知を持つこと。共有知がなければ言葉は伝わらない
  • 暗黙知は表出することで共有できる
  • 逆演算する。起こる事故を想定する。それが起きる前には何が起きるのか考える。その前には何が起きるのか、また、その前には何が起きるのか・・・。仮想演習の実施
  • 行動を起こして出力すると脳に思考回路ができる
  • 「知っている」だけでなく、言葉にして話す。軸策が太くなり、脳に思考回路ができる
  • 自分でしっかり考え、思考回路を作っておけば、人の考えもその思考回路に乗せて理解できる
  • 危険地図の作成。どこに危険があるか考え、表出し、危険を共有する
  • 特に、ヒトと機械の作業分担の変化に気付かす、その隙間での事故が多いので注意
シンポジウムの内容
4月19日、16時からのNHK衛星第2で放映予定
医療事故事例に基づくパネルディスカッションの内容
桐蔭横浜大学コンプライアンス教育センター発行「季刊コーポレットコンプライアンス第14号(2008年5月初旬発行予定)」に収録予定