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医療の質・安全学会第4回学術集会 シンポジウム
「アラーム機能を備えた医療機器の安全使用〜一般病棟での使用環境〜」

2009年11月21日(土)から22日(日)にかけて医療の質・安全学会第4回学術集会が東京ビッグサイトで開催されました。21日に行われたシンポジウム「アラーム機能を備えた医療機器の安全使用〜一般病棟での使用環境〜」の概要をレポートします。座長・永池京子氏(社団法人日本看護協会・常任理事)の進行で、河野龍太郎氏(自治医科大学医学部メディカルシミュレーションセンター・センター長、医療安全学教授)、金子恵美子氏(東京女子医科大病院・医療安全対策室)、綿引哲夫氏(横浜市立脳血管医療センター・臨床工学室)、飯村康夫氏(厚生労働省医薬食品局安全対策課安全使用推進室・室長補佐)4名の講演の後、座長を含む5名で討論が行われました。

座長・永池京子氏は開催趣旨について「看護職が関与したアラーム機能を備えた医療機器に関する事故報道が増えている。報道では、看護師が適切に対応できなかったことが問題とされ、事故発生の本質的な問題は明らかにされていない。そこで、本シンポジウムにおいて、その要因や防止対策について考えたい」と説明しました。

シンポジウムの様子

シンポジウムの様子

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アラーム機能をもつ医療機器使用の現状と課題、その限界 河野龍太郎

代表的なアラーム機能を持つ医療機器は心電図モニターです。病棟ではこれまで心電図のアラームに関する多くのトラブルや事故が発生しています。それらを分析すると原因は3つあります。

  • (1)「狼が来たぞ!」型警報による意図的な警報の無視。
  • (2)複数のモニターのため、音が重なり合い、マスキングされてアラームに気がつかない。
  • (3)物理的に離れていてアラームが聞こえなかった。

―です。

ヒューマンエラーは、古典的には次のように考えられていました。

  • ・一人前のプロはエラーをしない。
  • ・初歩的なミス。
  • ・精神がたるんでいる。
  • ・注意力が足りない。
  • ・こんな偶然はしかたない。

―など、個人の資質や努力不足を責めていました。しかし現実は有名な外科医でさえエラーをします。エラーは起こるもの、という前提に変わってきました。

エラーを防ぐためには予想される事故やトラブル回避方法をシステムに組み込まなければなりません。医療現場(ユーザー)とメーカーが連携し、アラームを有効的に活用し、医療安全の向上を図る必要性があります。設計主導ではなく、人間の特性に基づいた人間中心のシステムの構築です。それと同時に扱う側の人間が、タスク遂行能力条件を満たし、機器を扱うのにふさわしいレベルの知識や技能を兼ね備えていなくてはなりません。その両方向から安全を追求していくべきだと思います。

心電図のモニター番導入について
〜その運用と実施・課題について医療安全の視点から 金子恵美子

心電図による不整脈の早期発見と治療対処は、患者の予後に大きく影響します。それにも関わらず心電図が鳴っていても、どこで、だれの心電図かわからない場合があります。女子医大のある病棟の師長は心電図モニター運用基準を見直し、誤アラームの発生を減らしアラームへ対する環境を整える必要性を感じ、その対策として患者さんがいつどこで何をしているか、何のモニターが鳴っているのかを「モニターするモニター番」の役割を看護師で作りました。

看護師ひとり1回30分ずつの交代制です。通常業務だけでも人手が足りないところに、さらにひとり抜けることで、現場の負担は大きくなります。しかし、ひとりひとりが業務整理をして時間を作り出すことにより実現しました。それだけモニター番の果たす役割は大きいと考えています。

モニター番を導入することで、看護師はモニターを見る習慣がつき、波形に敏感になりました。アラームへの対処がスムーズになり中断作業が減りました。何より不整脈の患者を意識しチームで情報を共有しやすくなるなど、導入前後と明らかに違いがでています。モニターを読める看護師が増えたことは大きな収穫です。今後の課題は看護師全員が異常波形や重症不整脈の早期発見ができるようなることです。

安全使用の環境づくりへのチャレンジ
〜職種横断チームの活動とその評価について 綿引哲夫

平成19年7月に当院で、アラームに気付かず対応が遅れたことによる医療事故がありました。これを機にアラームを通して患者の安全確保を目的とするMACチーム(医師、看護師、安全管理担当者、臨床工学技士らで構成)を結成。週に1度病棟を巡回し、モニターに関してコンサルテーションを行うことを始めました。病棟の看護師から問題点をヒアリングして対処し、機器の使い方がわからないときは丁寧に説明するなど、小さな問題の目を摘んでいきます。また必要があれば主治医を交えて解決策を講じます。その結果、事故直後、1年後、2年後では看護師の意識が大きく変化しました。アンケート調査の結果、看護師のアラームに対する意識が高くなったことがわかりました。

今後はMACチームがなくても現場でアラームを管理できるようになることが課題です。

図1 業務に意識が集中しているときアラームに気づきにくいと思うことがありますか?

図1 業務に意識が集中しているときアラームに気づきにくいと思うことが
ありますか?

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図2 ステーション内で業務中にフッと気づくとアラームが鳴っていたことがありますか?

図2 ステーション内で業務中にフッと気づくとアラームが鳴っていたことがありますか?

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アラームが鳴っているとき、「他の看護師が対応しているだろう」「処置中だろう」などと思うことがありますか?

図3 アラームが鳴っているとき、「他の看護師が対応しているだろう」「処置中だろう」などと思うことがありますか?

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図4 アラームが鳴り周囲の看護師が対応しないとき、自分だけが対応することにためらいを感じることがありますか?

図4 アラームが鳴り周囲の看護師が対応しないとき、自分だけが対応することにためらいを感じることがありますか?

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医療機器の安全対策について 飯村康夫

私は医療機器に関する医療の安全対策を推し進める部署にいます。医療機器には添付文書が義務付けられており、アラーム機能のついた医療機器にも添付文書が存在します。添付文書には、最も基本的でかつ重要なことが記されています。書かれている取り扱いが守られていれば、防げたと思われる医療事故も報告されております。添付文書などを活用した安全対策をお願いします。

また医療法により、すべての医療機関において、医療機器の安全管理体制を義務付けています。

具体的に安全管理体制は4つあります。

  • ・医療機器安全管理設置者を義務付ける
  • ・研修の実施(新しい医療機器の導入時、定期的な研修等)
  • ・保守点検の計画の策定と実施
  • ・添付文書等の情報管理と周知

さらに「医療機器使用者のための警報装置(アラーム)ガイドライン」(平成13年度 厚生労働科学研究)も参考にして、安全対策を講じていただければと思います。

現場で安全管理を推進しつつ、機器に改善すべき点があれば、その旨をメーカーに積極的に伝えてください。メーカーと現場が一緒になって医療機器を改善していくことが大事ではないでしょうか。

質疑応答

フロアの聴講者(メーカー)より「(1)事例分析・機器改良はどのメーカーも努力しているが、残念なことに改良した点がユーザーにあまり伝わっていない。我々の努力も足りない(2)業界団体での安全の発想が必要。事例分析など、医療の現場と業界団体が一緒に進めていきたい」といった趣旨の発言がありました。また、放射線技師から「現在心電図波形等の記録に関する規格が決まっておらず、記録保存に苦慮している。世界的にもレギュレーションが乱立し統一されていない。記録の規格が必要」という発言があり、それについて飯村氏が「厚労省としてもISOなどの規格化を進めている。担当者に伝える」旨回答がありました。

最後に永池氏より「(1)アラーム機能を備えた医療機器の安全使用は、医療現場だけの問題ではなく、メーカーの協力、行政の支えとさまざまな立場から改革を進めていくのが望ましい(2)ガイドラインをそろそろバージョンアップしてはどうか。さらなる活用を望む」といったまとめの発言がありました。


2010年1月13日(記事:阿部純子)