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診療行為に関連した患者の死亡・傷害の報告について(外科関連学会協議会まとめ)



 外科関連学会協議会は、「診療行為に関連した患者の死亡・傷害の報告」についてのガイドラインをまとめ、「日本外科学会誌9月号」に発表しました。
 本ガイドラインでは、医療過誤の存在が疑われたり、明らかな「死亡」とともに、医療過誤の存在が明らかな「傷害」も届出の対象としています。
 また、医療における安全対策に関しては、患者の死亡・傷害について、警察の届出によらない専門的機関と制度を創設することにより、一元的・総合的解決を図るべきだという考えを示しました。
 警察への届出基準に関しては様々な問題があり、今後深く研究される必要があります。
 参考までに、外科関連学会協議会として望ましいとしている警察への届出基準を、以下に記しました。
 



 以下に該当する患者の死亡または重大な傷害が発生したと判断した場合には、診療に従事した医師は、速やかに所轄警察署への報告を行うことが望ましい。

.患者の死亡の場合

1.何らかの重大な医療過誤の存在が強く疑われ、
 または何らかの医療過誤の存在が明らかであり、
 それらが患者の死亡の原因となったと考えられる場合
  1. 「重大な医療過誤」とは、患者誤認、薬剤名・薬剤投与量・薬剤投与経路の過誤、異型輸血、診断用あるいは治療用機器操作の誤認などのうち、死亡の原因となったと考えられるものをいう。
  2. 重大な医療過誤の存在が「強く疑われる」とは、診療関係者により重大な医療過誤の疑いが確認され、かつ、診療行為直後の生命兆候の急激な変化、死亡時・死亡後の異常な随伴性変化、異常な検査所見などの客観的事実に基づいて、重大な医療過誤の存在が疑われることをいう。
  3. 「医療過誤の存在が明らかである」とは、患者が死亡するに至った経過、状況、その他の客観的事実に基づいて、診療関係者によって医療過誤の存在が確認されることをいう。
  4. 「それらが患者の死亡の原因となったと考えられる」とは、医療過誤の存在によって患者の死亡を合理的に説明することができ、他の事実によっては合理的な説明が困難なことをいう。
2.診療に従事した医師は、患者の遺族に対し、
 患者の死亡の原因について十分な説明を行い、
 所轄警察への報告について理解を得るように努めなければならない。


.患者の傷害の場合

1.何らかの医療過誤の存在が明らかであり、
 それが患者の重大な傷害の原因となったと考えられる場合
  1. 「医療過誤の存在が明らかである」とは、患者が重大な傷害を受けるに至った経過、状況、その他の客観的事実に基づいて、診療関係者によって医療過誤の存在が確認されることをいう。
  2. 「重大な傷害」とは、対象部位(臓器や左右の別)の誤認に基づく外科的操作などによる創傷、無酸素症による中枢神経障害、及びその他の不可逆的と考えられる臓器機能障害などをいう。
  3. 「それが患者の重大な傷害の原因となったと考えられる」とは、医療過誤の存在によって患者の重大な傷害を合理的に説明することができ、他の事実によっては合理的な説明が困難なことをいう。
2.診療に従事した医師は、患者本人または家族に対し、
 患者の重大な傷害の原因について十分な説明を行い、
 所轄警察への報告について理解を得るように努めなければならない。


 
 上記報告に関して、新島仁先生から解説を頂きました。どうぞご参考になさって下さい。
 

(解説)
 患者死亡時の警察への届出について臨床現場で何より問題となるのは、その基準が曖昧であることです。いざ予想外で死亡した患者を目の前にすると、さて警察へ届けたものかどうか、いろいろ今後のことが頭に浮かんできてしまうと、不安になることが少なくありません。しかし、警察へ届けたが故に却って不具合が起きたケースも多く生じています。
 この警察への届出基準としては、これまで法医学会のガイドラインがありましたが、臨床現場の実情からは離れたものであり、認知も低いものでした。今回の外科関連学会のガイドラインは、より臨床的に納得性の高いものであり、同時に、刑法上の責任である業務上過失致死や業務上過失傷害を問われるべき最大範囲を、臨床医学に即して示すことにもなっています。
 今回のガイドラインのポイントは、
  1. 医療「事故」は届出の対象とせず、医療「過誤」のみに限定していること。そして「重大な過誤」としては、ヒューマンエラーにほぼ限定していること。
  2. 届出の判断として、「可能性がある場合」や「疑いのある場合」といった曖昧で弱い条件ではなく、「強く疑われる場合」あるいは「明らかな場合」と強い条件を示していること。
  3. 死亡に至らない傷害の場合の届出について、新たに言及していること。
 です。
 たとえば、術中血管を誤って切ったためとされる手術死が、今年立て続けに警察扱いとなっていましたが、今回のガイドラインに則れば、事実上これらの殆どは届出の対象とはならないことになります。
 臨床現場の不安を軽減するためにも、今後は外科以外の分野においても、こうしたガイドラインが作られる事が望まれます。その一方で、「警察の届出によらない専門的機関と制度」の構築は急務と言えます。

新島 仁 (日医総研)