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「平成23(2011)年度医療安全支援センター総合支援事業 ジョイントミーティング(JM)全国大会」

東京大学大学院医学系研究科医療安全管理学講座は、平成19(2007)年から厚生労働省の委託を受け、医療安全支援センターの円滑な事業運営のための支援(医療安全支援センター総合支援事業)を行っている。同講座が1月31日、東京大学小柴ホールで平成23年度のジョイントミーティング(JM)全国大会を開催した。本年度は3支援センターの報告のほか、医療機関からは秦野赤十字病院の相談窓口の現場報告、地域医療の現場からは東京新宿区で訪問看護に取り組む秋山正子氏の報告を受けた。

はじめに、主催者を代表して児玉安司特任教授があいさつ。児玉氏は、「メディアの論調は医療不信、医療崩壊、医療政策と大きく変遷してきた」とセンターの設置初期からの社会背景を振り返り、「昨今は終末期医療や医療機関の地域連携など、医療・介護・福祉全体の枠組みを再考するような話題に事欠かない。病院・地域の優れた活動報告も受け、今後の連携について考えてほしい」と主催趣旨を述べた。

3つの支援センターからは、センターの基本活動のひとつである「患者の声相談窓口」業務の現段階が報告された。

東京都の相談窓口の活動については東京都福祉保健局医療政策部医療安全課の桂桂子氏が報告。東京都には都庁と多摩地域の5つの保健所に患者の声相談窓口があり、平成22年度の1年間で相談件数は約13,000 件。相談対象の診療科別内訳を示すとともに相談内容の分類統計を報告した。相談内容は、「相談」に区分されるものが全体の51.5%、「苦情」に区分されるものが全体の46.4%。「苦情」の内訳では「なぜ最初に行った診療所ではその病気を発見できなかったのか」など医療行為・医療内容に関するものが28.6%、次が医療従事者の接遇14.6%で、内容は職員の言動に対する不信や受付の態度などである。以下、医療費、医療従事者の説明不足、差額ベッド代金、個人情報に関するもの、診療拒否と続く。苦情対応の約7割は相談者への説明・助言で対処しているが、医療機関に患者の苦情を伝達・指導などすることもある。また、相談を受ける職員へのアンケート調査を通じ、パーソナリティの問題を抱える相談者への対応が難しく、職員の技術向上の必要性があると提起した。

熊本市医療安全センターの岩浩思氏(熊本市保健所地域医療課)は、「医療施設との連携強化作戦」をテーマに、熊本市内の96病院、1,016診療所と支援センターの連携の現状と課題を報告した。同センターへの相談件数は年間約1,500(平成22年度)で、そのうち苦情は30%弱。苦情は医師の言動に傷ついたなどさまざまだが、相談・苦情があったことを、対象の医療機関に情報提供してほしいという相談者の割合が増える傾向にある。実際に、情報を提供した医療機関は改善策を検討し、「解決法を聞きたい」「困った方への対応法を知りたい」など医療機関側から相談されることも増えているという。医療施設の相談員の研修の場が少ないこと、センターによる情報提供・研修を実施してほしいという要望が高いことから、岩氏は医療機関の相談窓口職員を対象にした実務者研修会を行った。その経験から「参加できない職員もいるため、動画配信なども利用すれば、研修の機会を増やせるのではないか」と提案した。

北海道医療安全センターからは、栗原安成氏が報告。北海道中央および7つの地域のセンターの相談は年間約900件(平成22年度)で、同じ人が相談してくるリピート率を算出している。リピート率は0%から最高24%まである。栗原氏は診断ミス、治療法に関する相談、副作用の相談などの対応ケースを、失敗例も含めて紹介した。また、30分〜1時間という傾聴の時間も重要であると述べるとともに、クレーマーによる相談員のストレスについて、組織的対応、早期研修などの対策を提案した。

一方、医療機関からは、秦野赤十字病院の幸田有子氏(総合相談室主任相談員)が、医療安全支援センターからの情報提供が患者と医療機関の信頼関係向上に役に立っている例などを紹介した。幸田氏は、患者が治療中の医療機関に苦情や不満をぶつけられない現状の中で、センターとの連携が重要であること、苦情をクレーマー対策と限定せず、信頼関係づくりのきっかけにする姿勢が必要であることを訴えた。地域医療の現場からは、東京新宿区で訪問看護に取り組む秋山正子氏(白十字訪問看護ステーション)が、患者だけでなく地域住民の健康・医療・介護相談できる「暮らしの保健室」を立ち上げ、「自分でできることを見つける支援も大切だと感じている。相談事業への環境設定、看護師の活用が活動強化のカギになる」と実践を踏まえて報告した。

全国の支援センターの相談数は毎年増え、平成21年度で約92,000件。支援センターはこれまでの「傾聴から対話促進・相互理解」の取り組みから「地域の情報拠点」として、情報収集、情報発信、情報補完機能を備えることが求められている」と提示した。

取材者感想

「苦情」「困った方」「リピーター」など、表現は違えど、医療に対するクレームに相談員が苦労している実態が浮き彫りにされたが、患者の声に耳を傾け、必要な対策をとることは医療安全上、大きな課題である。センター総合支援事業の今後の支援活動は、その意味でも重要性を増すに違いない。


2012年2月24日(取材・山崎ひろみ)