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自動認識と医薬品包装 -麻酔科医ができる身近な医療安全-

祖父江和哉氏

祖父江和哉氏

前回に引き続き株式会社岩田レーベル主催の技術講習会での講演をご紹介する。

今回は名古屋市立大学病院 麻酔科・集中治療部・救命救急センター 祖父江和哉氏の講演「麻酔科医ができる身近な医療安全」の概要である。

「麻酔科医ができる身近な医療安全」 ‐当院手術室の誤薬防止対策を中心に‐

名古屋市立大学病院 麻酔科・集中治療部・救命救急センター 祖父江和哉

麻酔科医は劇薬や毒薬を使用する機会が多く、常に即断と即決の判断が要求される環境で仕事をしている。誤薬・誤投与は患者に著しい悪影響を及ぼすため、慎重な対策が必要である。これまで多くの調査が行われ、対策が練られてきたが、依然としてエラーはゼロにはならない。

当院の手術室と集中治療部(以下ICU)では、電子カルテを経由したオーダが不可能であるため、薬剤のシリンジラベルの印字ができず、手書きで作成していた。

手書きラベルには

  • 字が読みづらい
  • すべて同じラベルに見える
  • (アルコールがかかると)字が消えてしまう
  • 多くの情報を記載しにくい
  • 作成に手間がかかる

などの問題があり、誤薬・誤投与の危険性が高いため、手書きシリンジラベルの廃止を計画し、2つの対策を実施したので紹介する。

まず、手術室とICUへ「セーフラベルシステム(SLS500i)™(コドニックス・リミテッド(株))」を導入した。SLS500iはマサチューセッツ総合病院で開発されたシリンジラベル印刷装置で、薬剤アンプルやバイアルのバーコードを読み取り、薬剤名と濃度を画面と音声で知らせ、カラーラベルを印字する。ラベルの薬効別の色は、アメリカ麻酔科学会(ASA)のカラーガイドラインなど世界標準の色に準じている。二次元バーコード上にラベルのすべての情報を記録し、将来的には電子麻酔記録システムなどとの連携も可能である。当科で日本語版の開発協力を行った。

SLS500iの導入により、シリンジラベルが印字により見やすく、色分けで薬効がわかりやすくなり、さらに人的介在を削減したため、ヒューマンエラーを防ぎ、作業の効率化にも貢献できるものと考えている。

SLS500iを資金や設置場所の問題で導入できない場所では、薬効別の色分け印字ラベルを使用するため、「名市大麻酔科シリンジラベル」を開発中である。使用頻度の高い薬剤について、あらかじめ薬剤名と希釈濃度を印字し、薬効別に色分けをしたラベルである。視認性が高くなるよう、文字のフォントや位置を工夫し、ラベルサイズもシリンジサイズに合わせたものとしている。

「名市大麻酔科シリンジラベル」の色には、日本ではシリンジラベルのカラーガイドラインが存在しないため、ASAのものを採用した。施設ごとにシリンジラベルの色が異なると危険なため、日本でのガイドライン制定を日本麻酔科学会に提言している。

なお、「類似薬剤の存在(名称・外見)」も薬剤取り違えの原因となる重要な問題である。使用施設での防止策だけでは不十分なところもあり、製薬会社には以下の内容を要望したい。

  • ラベル色の標準化(薬効別)
  • 差別化による視認性向上
  • ITのさらなる活用
  • さらなる規格統一
  • 外観のデータベース化
  • 医療機器メーカーとのコラボレーション

医療安全対策は「身近にあるべき」「やれることから」「楽しく美しく」と考えている。

今回は、薬剤シリンジラベルの改善を紹介したが、名市大麻酔科ではこの他の身近な問題も、やれることから、医療スタッフ全員で楽しく対策を行なっている。


2012年6月21日