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ウエストナイルウイルス関連情報

米国内科専門医、米国感染症科専門医、英国熱帯医学専門医
日本医師会総合政策研究機構 海外駐在研究員 五味晴美
2002年10月30日


 日本国内でも、ニュースなどで報道されているように、ウエストナイルウイルス脳炎が、米国で多発している。日本と米国の非常に頻繁な行き来を考慮すると、米国でのウエストナイルウイルス脳炎は、他国のことでは済まされない。
 以下のホームページでは、最新の情報を随時、公開しているので、日常診療にあたって参照することが必要である。とくに発熱、頭痛など髄膜炎などを疑わせる症状のある患者には、米国への旅行歴などを確実に取る必要がある。

  • 米国医学雑誌 New England Journal of Medicine2002年10月17日号掲載記事
    www.nejm.orgを参照。

以下は、PDFファイルによるサイトである。

ウエストナイルウイルスの米国での現状につき
http://content.nejm.org/cgi/reprint/NEJMp020128v1.pdf

ウエストナイルウイルスによるポリオ様症状につき
http://content.nejm.org/cgi/reprint/NEJMc021587v1.pdf
http://content.nejm.org/cgi/reprint/NEJMc026043v1.pdf


 以下では、2002年10月17日号のNew England Journal of Medicineに掲載された内容のポイントを簡単に解説する。

 ウエストナイルウイルスは、1999年に米国ニューヨーク州で、筋力低下(muscle weakness)に関連する脳炎として米国内ではじめて報告された。ウエストナイルウイルスは、1937年に、アフリカのウガンダでヒトの患者から初めて同定された。ウエストナイルウイルスは、基本的にはトリと蚊に感染症を起こすウイルスであるが、ヒトやウマも、偶然の宿主(host)となることがある。今回の米国での、ほぼ全米におよぶヒト症例の報告は、このウイルスの持つトリ-蚊-トリの感染サイクルと、トリが自由に移動しうるという特徴から生じたものと考えられている。季節的には、早春から秋にかけ蚊が出現するため、この時期にリスクが高いといえる。
 米国では、このウエストナイルウイルス脳炎に似た脳炎で、セントルイス脳炎(St. Louis Encephalitis)という疾患があるが、この2つは生態学的および疫学的に非常に類似している。
 また、今回、米国で非常に問題になりつつあるのが、臓器移植をうけた患者に、ドナー患者がもつウエストナイルウイルスが“移植”されたことである。これは1人のドナーから4つの臓器が移植された際に、この4つの臓器の移植にウエストナイルウイルスの伝播が関連していたことが報告された。そのため、現在では、輸血、血液製剤の使用によりウエストナイルウイルスが伝播するリスクが調査されているところである。
 症状では、ウイルスに感染した5人のうち1人に、軽度の発熱症状が起こり、3-6日間継続する。また、150人に1人に、髄膜炎または脳炎が発症する。潜伏期間は、2-14日間である。
 発現する臨床症状には、倦怠感、発熱、眼痛、消化器症状、発疹などがある。若年者に脳髄膜炎が発症することはまれである。50歳を越えると脳髄膜炎の発症のリスクが極めて高くなる。そのほか、症状では、重度の筋力低下が特徴である。これは、Guillain-Barre Syndromeに類似しているが、急性弛緩性麻痺(acute flaccid paralysis)を起こした症例で、ポリオウイルス様の前核細胞障害(Anterior horn cell 障害)が報告された。

 診断方法には、
  1. 血清中、あるいは髄液中でRNAを同定すること
    RT-PCR (Reverse-transcriptase polymerase chain reaction)
    Real time PCR
  2. 細胞培養でウイルスを培養する
  3. 血清中または、髄液中のIgM抗体の測定
  4. ウイルス抗原を死後病理解剖時の脳組織で染色する
 がある。

 診断方法の注意点としては、
  1. PCRのみでは、感度が低いので、これのみで診断することは勧められない。
  2. 存在するウイルス量によるが、細胞培養によるウイルスの培養は3-7日かかる。
  3. IgM抗体は、フラビウイルス属による脳炎の場合、発症後4日以内に75%の患者で検出可能である。発症7-8日後ではほぼ全員で検出可能である。
  4. IgM抗体が検出された患者でも、これだけでは“確定”診断とはならない。
    急性期と回復期で抗体価を測定し、4倍以上上昇していれば、ほぼ間違いない。
  5. ウエストナイルウイルスと、日本脳炎ウイルス、セントルイスウイルス、デングウイルスなどでは、血清抗体には、交差反応があるため、血清のみしか検体が存在しない場合(脳脊髄液の検体がない場合)は、ウイルス中和試験をする必要がある。
  6. 細胞培養を利用したウイルス培養では、組織が新鮮凍結されていないと感度が低い。
 以上、簡単に要点を述べたが、原本を合わせて参照していただきたい。

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