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保険医療機関等の指導及び監査の実施状況

 平成14年12月19日の厚生労働省保険局医療課医療指導監査室の報告によると、平成13年度に保険医療機関等から返還を求めた額は、66億3,857万円であることがわかりました。
 主な返還金の内容は医療従事者数の水増しによる不正請求だそうです。
 以下、過去のデータも合わせて概況を見ていきたいと思います。


【指導・監査とは】
 データを見る前に、まず指導、監査とはどういうものなのか確認しておきたいと思います。
 保険医療機関等及び保険医等の指導及び監査は、保険診療の質的向上及び適正化を図ることを目的とし、「指導大綱」「監査要綱」により実施されています。
 概要を対比して示しました。


指導大綱 監査要綱
目的 診療の内容や診療報酬の請求に冠する指導について基本的事項を定めることにより、保険診療の質的向上及び適正化を図ることを目的とする。
方針 保険診療の取扱い、診療報酬の請求等に関する事項について周知徹底させることを主眼とし、懇切丁寧に行う。 保険医療機関等の診療内容又は診療報酬の請求について、不正又は著しい不当が疑われる場合等において、的確に事実関係を把握し、公正かつ適切な措置を採ることを主眼とする。
形態 1.集団指導
2.集団的個別指導
3.個別指導
選定 原則としてすべての保険医療機関等及び保険医等を対象とする。 次のいずれかに該当する場合に行う
  1. 診療内容に不正又は著しい不当があったことを疑うに足りる理由があるとき。
  2. 診療報酬の請求に不正又は著しい不当があったことを疑うに足りる理由があるとき。
  3. 度重なる個別指導によっても診療内容又は診療報酬の請求に改善が見られないとき。
  4. 正当な理由がなく個別指導を拒否したとき。
担当者 都道府県が行う指導については、原則として都道府県の保険主管課、国民健康保険主管課及び老人保健主管課の課長、指導医療官、技術吏官、事務官及び吏員並びに非常勤の医師、歯科医師、薬剤師及び看護師が担当する。

 また、これらを大まかな流れで見ると下図のようになります。




【指導の状況】
 まず、指導の実施状況の年次推移をみると下記のとおりでした。

保険医療機関等への指導の実施状況(単位:件)




保険医等への指導の実施状況(単位:件)




【監査の状況】
 次に監査の実施状況をみていきます。

●保険医療機関等

 まず、保険医療機関等の監査の実施件数とその構成割合を年度ごとにみると、下記のとおりでした。歯科の増加傾向と薬局の激減が目立ちます。

件数 医科 歯科 薬局 合計
平成7年度 45 11 48 104
平成8年度 35 11 43 89
平成9年度 43 29 4 76
平成10年度 29 17 4 50
平成11年度 34 21 9 64
平成12年度 34 25 3 62
平成13年度 41 28 9 78



 
 それでは監査を受けて、指定取消となった医療機関等はどれぐらいあるのかというと、下記のとおりでした。

件数 医科 歯科 薬局 合計
平成7年度 9 6 0 15
平成8年度 13 11 16 40
平成9年度 27 17 0 44
平成10年度 13 12 0 25
平成11年度 21 13 8 42
平成12年度 15 16 0 31
平成13年度 26 19 4 49

 これを全監査件数に占める指定取消割合で見ると次のようになります。合計で見ると、ここ数年は監査を受けた5〜6割が指定取消になっているようです。






●保険医等

 続いて、保険医等の監査の実施状況を人数と構成割合でみると下記のとおりでした。

人数 医師 歯科医師 薬剤師 合計
平成7年度 150 16 54 220
平成8年度 142 12 133 287
平成9年度 144 35 5 184
平成10年度 39 21 8 68
平成11年度 45 26 15 86
平成12年度 40 29 6 75
平成13年度 78 36 25 139


 それでは監査を受けて、登録取消となった保険医等はどれぐらいいるのかというと、下記のとおりでした。

人数 医師 歯科医師 薬剤師 合計
平成7年度 12 6 0 18
平成8年度 11 12 1 24
平成9年度 22 19 0 41
平成10年度 9 15 0 24
平成11年度 13 16 2 31
平成12年度 14 20 0 34
平成13年度 19 21 7 47

 これを全監査人数に占める登録取消割合で見ると次のようになります。合計で見ると、ここ数年は監査を受けた3〜4割が登録取消になっているようです。






【返還額】

 以上、みてきた指導によるものと監査によるものの返還額の推移をみると、下記のとおりでした。
 冒頭に記載したように平成13年度の返還額は66億3,857万円であり、1973年度の集計開始以来、1989年度に次ぎ過去二番目の多さ。ただ、これは平成14年12月現在のものであり、現在精査中のものは含まれていません。従って、この金額より増加する可能性があると思われます。
 ちなみに、返還遡及期間は、原則として指導月前の一年以上とすることになっています。




【返還金の内容】

 不正内容としては、医療従事者数の水増し等、架空請求、付増請求、振替請求、二重請求、無効な処方箋による調剤が挙げられています。それぞれ具体的にどういうケースなのか、参考までに過去の例示を記載します。

(医療従事者数の水増し等)
  • 看護師等の員数を水増しした虚偽の報告を行い、老人病棟入院医療管理料を不正に請求していた。
  • 医師等の員数を水増しした虚偽の報告を行い、入院時医学管理料等を不正に請求していた。
(架空請求)
  • 実際に受診していない患者を診療したとして、診療報酬を不正に請求していた。
(付増請求)
  • 実際に行った診療に、行っていない充てん、検査料などを付け増して診療報酬を不正に請求していた。
  • 実際に行った診療に、行っていない金属冠装着に係る一連の処理を付け増して診療報酬を不正に請求していた。
  • 実際に受診した日数以上に診療したとして、診療報酬を不正に請求していた。
  • 使用していない特定保険医療材料を使用したとして請求していた。
  • 看護補助者以外の者による介護を特別介護として請求していた。
  • 保険医等が交付した処方箋を確認することなく、薬剤師に調剤を行わせ、調剤報酬を不正に請求していた。
  • 服薬指導を行っていないにもかかわらず、薬剤服用歴管理指導料を不正に請求していた。
(振替請求)
  • 実際に行った診療を他の高額な金属冠を装着して診療したとして、診療報酬を不正に請求していた。
  • 実際に投与した薬剤ではなく、別の高価な薬剤を投与したとして不正に診療報酬を請求していた。
(二重請求)
  • 自費診療して患者から料金を受領したにも拘わらず、同診療を保険診療したかのように装い、診療報酬を不正に請求していた。


 なお、平成13年度において最も多額だった医療機関の返還額は1,414,931千円。内容は、看護師等の員数を水増しした虚偽の報告を行い、老人病棟入院医療管理料を不正に請求していたものでした。処分は保険医療機関の指定取消となっています。
 
 こうした指定取消に係る発端は、保険者等からの通報と内部告発(保険者、医療機関従事者等からの情報、医療費通知)が大半を占めていることも明らかになっています。 



 保険医療機関の指定取消や、保険医の登録取消といった事態は、医療従事者にとって最大のリスクといっても言い過ぎではないでしょう。内部告発の増加により、取消件数、また監査から取消に至る割合は、増加傾向にあるようです。もちろん、不正請求があってはならないのは言うまでもありません。その上で、日頃から従事者間のコミュニケーションをよくしておくことが大切でしょう。リスクマネジメントに取り組むにあたり、こうした事実を把握しておくことは重要なことだと思われます。