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「都立広尾病院事件」二審も有罪に


 都立広尾病院の入院患者が誤って消毒液を点滴され死亡した事件で、医師法違反などの罪に問われた元院長の控訴審判決が、5月19日、東京高裁であった。 裁判長は1審・東京地裁判決と同じく、懲役1年、執行猶予3年、罰金2万円の有罪判決を言い渡した。
 今回は、法的な意味合いが不明確だった「検案」についてどのように判決が下されるのかが注目の的になっていた。
 医師法21条の規定によれば「医師は、死体又は妊娠4月以上の死産児を検案して異状があると認めたときは、24時間以内に所轄警察署に届け出なければならない」ことになっている。
 しかし、「検案」の定義について、現状では公的な統一見解はない。今回の裁判をどのように受け止めるか。
 日医総研の新島仁客員研究員にコメントを頂いた。



 今回の裁判は、元院長に意図的な医療過誤隠しがあったのではないか、その罪責を問うものでした。
 しかしその際に検察が、医療の問題とは本来縁遠かった医師法上の「異状死の届出義務」を問題の本質とは関係なしに持ち出し、同法違反として罪を問うたのは、実はそもそもが奇異なことでした。法律の条文を強引に解釈したようなこの理屈は、常識からは相当無理のあるものであって、専門家の間にも当時非常に唐突な印象を与えました。「何か使える法律は無いか」と法律の本を探してにわか勉強で思いつきで仕立てたかのような、いわば「素人くさい」ものだったのです。
 結果として一審の判決は、被告人の医師法違反を認めたものの本質的な論点に対する言及は避けられ、無理を通せば道理が引っ込むかのような、論理的に様々な不備のあるものとなりました。こうした議論の未熟さは、たとえば二審の詰めの段階になって今さら「検案」の定義について審理をする、などというお粗末さに現れています。

 ただ今回の事例は、死亡に至った医療過誤であること、因果関係がほぼ明らかで医学上の争点が無いこと、組織的に意図的な隠蔽があったと疑われたことが相まって、理屈よりも責任追及を優先するようなムードの中で、届出義務が強く問われたという事情があるものと考えられます。そのためこれを医療事故の扱いの議論に安易に一般化することはできません。法的制度的に不整備な中で、なお先送りされた論点は多く、医療事故や医療過誤の扱いについてのコンセンサス作りが望まれます。


 
 なお、新聞報道によると、今回の判決で、「検案」については「診療中であるか否かを問わず、死者の外表(裸体)を検査すること」と定義づけられた。

 参考までに、この事件の経緯(概略)を記載する。

1999年
1月8日
関節リウマチに罹患していた主婦(当時58歳)が、左中指の痛みが増したために都立広尾病院整形外科を初めて受診。
2月8日
同病院に入院。
2月10日
手術成功。
2月11日
抗生剤点滴終了後に、消毒液を血液凝固阻止剤と取り違えて点滴され死亡。
2月12日
病院側は、警察へ届け出ないまま、病理解剖開始。
10月8日
東京都は当時の病院関係者ら10人を処分。岡井院長には停職一ヶ月の処分を決定。院長は処分後辞職を申し出て受理された。
2000年
9月22日
遺族は、元病院長らに賠償請求。
12月27日
東京地裁の裁判長は、当該看護婦(消毒液入りの注射器を用意)に業務上過失致死罪で禁固1年(執行猶予3年)、看護婦(消毒液を点滴器具に注入)に禁固8ヶ月(執行猶予3年)を言い渡した。
2001年
8月30日
東京地裁の裁判長は、岡井清元院長に対し、医師法違反・虚偽有印公文書作成などの罪で懲役1年(執行猶予3年)、罰金2万円を言い渡した。
9月3日
岡井元院長は東京地裁判決を不服として東京高裁に控訴した。