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患者の安全に関する宣言案


 日本医師会が提案している「患者の安全に関するWMA宣言案」が、今年10月の世界医師会(WMA)ワシントン総会に付託されることが決定しました。
 ここでは、これまでの経緯と、宣言案をご紹介いたします。

(これまでの経緯)
  • 2000年10月、第52回世界医師会(WMA)エジンバラ総会において、日本医師会の坪井会長が第52代WMA会長に就任した。その就任挨拶で、坪井会長は、WMA会長として「先端医療技術とその制御」をその活動理念とすることを表明した。
  • 翌11月、東京において、WMAの主要メンバーを招聘し第1回東京会議を開催、「高度医療技術と医の倫理」をテーマに議論を繰り広げ、決議文を採択した。
  • この決議は、日本医師会よりWMAへ「高度医療技術と医の倫理に関するWMA宣言案」として2001年5月の第159回WMA中間理事会に提出され、医の倫理委員会、理事会を経て同年10月の第53回WMAインド総会へ採択のため付託されることが決定された。(2002年ワシントン総会に持越し)
  • 前述の中間理事会の会期中に第1回東京会議のフォローアップ会議が開催され、議論が行われた中で、オブザーバーとして出席したデンマーク医師会のプールセン会長から、同文書に取り上げられている「患者の安全」というトピックを取り上げ、WMAの文書化を測る旨の提案が行われた。
  • 坪井会長は、この提案を受け、2001年6月第2回東京会議を開催、テーマを「患者の安全をめぐってー」として、WMA主要メンバーと議論を交わし、「患者の安全に関する東京決議」を採択。
  • 2001年10月の第53回WMAインド総会は、NYの同時多発テロの影響を受け、第160回理事会としてフランスで開催された。よって、当該文書は、当理事会における医の倫理委員会及び理事会で検討され、本会主導により、アメリカ・イギリス・デンマークを含む4医師会で作業部会を構成し、再草案を実施。
  • 2002年5月作業部会草案を第161回WMA中間理事会に提出、医の倫理委員会、理事会を経て若干の文言修正を受け、2002年10月に行われるワシントン総会へ採択のため付託されることが決定した。

<宣言案>

患者の安全に関するWMA宣言案

第161回WMA理事会

ディボンヌ・レ・バン、フランス

2002年5月2-5日

序文

  1. 医師は、患者に対して、専門職として最高水準の医療を提供するよう努めてきた。
  2. 医学および関連科学技術の進歩によって、現代医学は高度で複雑なシステムの上に成り立つこととなった。
  3. 臨床医学は本来的にリスクを抱えるものである。現代医学の発展は新たなより大きなリスク―避けられ得るものやその他不可避的なもの―を生む結果となった。
  4. 医師は、これらのリスクを予見し、回避しつつ治療を行うよう努めなければならない。

原則

  1. 医師の義務は、医療上の意思決定にあたっては常に患者の安全を確保することである。
  2. 一個人ないしひとつの過程だけが原因でエラーが起ることはまれである。むしろ、別々の要素が結びつき、それらがいっしょになってハイリスクの状態を作り出すのである。それゆえ、ヘルス・ケアでのエラーを報告するための非懲罰的な環境が必要であり、これによりシステムの欠陥を予防し改善し、個人や組織の過失にしないようにするべきである。
  3. 現代医療に内在するリスクの現実を踏まえて、医師は、医療専門職という立場を超えて、患者を含むすべての関係者と協力して、患者の安全のために、プロアクティブ・システムズ・アプローチに取り組まなければならない。
  4. 組織的アプローチを構築するためには、医師は、絶えず、一連の最新科学的知識を吸収し、システムを恒常的に進化させるよう努力しなければならない。
  5. 患者の安全に関わるすべての情報は、患者を含むすべての関係者と共有しなければならない。同時に、患者の秘密は厳密に保持されなくてはならない。

勧告

  1. それゆえWMAは各国医師会に以下のとおり勧告する。
    1. 各国医師会は、個々の医師による努力の総和によって患者の安全が確実に守られるよう、あらゆる方策を探るべきである。
    2. 各国医師会は、個々の医師、その他ヘルスケア従事者、そして患者と協力して、患者の安全を確保するために必要なシステムを構築するべきである。
    3. 各国医師会は、生涯教育/専門能力開発によって、患者の安全を促進する効果的なモデルを形成するよう啓発に努めなくてはならない。
    4. 各国医師会は、協力して各国における患者の安全確保の取り組みが実りある成果をあげるよう、エラーの原因、その解決方法、そして「学んだ教訓」についての情報を交換するよう努めなければならない。