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「院内感染と医療経済」


 

 2003年9月7日(日)、木村哲先生(国立国際医療センター、エイズ治療・研究開発センター長)を講師とする「院内感染と医療経済」セミナーが都内で開催された。

 院内感染の経済的リスクに関するお話が、会員の皆様にも参考になると思われたので、一部をここに紹介する。



 解説の中では、「院内感染防止対策は、お金がかかるものとして、とかく後回しにされがちであるが、結果的にはかえって経済的であり、経営改善につながる。重大な院内感染が起こったらそれこそ病院の死活問題である。」として、訴訟になった二つのケースが紹介された。
 
(セラチア菌による院内感染〜患者が感染〜)
 2001年12月〜2002年1月、世田谷区の病院で起きた、セラチア菌による院内感染で入院患者12人が発症し、うち6人が死亡したとされる事故。同院はヘパリン生理食塩水(ヘパリン生食)を当初1日分として100CCで毎日作っていたが、毎日作るのが面倒な為、500CCのボトルに、数日から1週間分作り置きし室内で常温保存し、使用していた。何回も穿刺して使っているうちにセラチアが混入し増殖したため、以後の患者さんが感染したと推定される。
 2003年8月29日、警視庁は同病院長と看護師長を業務上過失致死傷容疑で書類送検した。院内の衛生管理がずさんだったとして管理責任者2人の刑事責任を問われた。

(准看護婦の針刺しによるC型肝炎感染〜医療従事者が感染〜)
 C型肝炎の患者から採血した際、注射針を誤って指に刺してC型肝炎に感染した准看護婦が、病院に対して安全配慮義務違反で提訴。1999年3月、大阪地裁は、原告看護婦に対する損害賠償として27,421,614円を認定した。その後病院側が控訴し、2000年4月14日に大阪高裁で和解。

 また、病院感染症は患者の在院日数の延長をもたらし、必然的に医療費が増加する。今後、定額払いの包括医療が普及してくると、病院は極めて不利になる。そこで、院内感染者の在院日数の増加により年間どのくらいのコストがかかっているのか、その試算結果が報告された。


 つまり概算ではあるが、この病院では院内感染により、年間約14億円の費用が過剰に必要となっていることになるのである。

 院内感染対策を導入するためには、サーベイランス(データの調査・分析結果)が重要であるが、まだまだ整っていないのが現状である。本セミナーでは、剃毛の廃止、閉鎖系尿路カテーテルの導入、安全翼状針の導入により事故が減少したというデータも紹介されたが、今後こうしたデータをさらに増やしていくことが課題としてあげられた。

 最後に、「管理者・事務責任者と医療職員が院内感染対策の必要性の認識を共有すべきである。院内感染対策費はコスト増に見えるが、患者の安全と職員の安全が大切である。こうした費用は、訴訟・和解によるコスト増を抑える保険でもある。」と締めくくられた。