HOME >> コンテンツ一覧 >> ほっと情報・ほっと商品 >> 「続・フランス酷暑の夏」

続・フランス酷暑の夏


 敬老の日を前にこのコーナーでお届けした「フランス酷暑の夏」。多くの犠牲者を出した熱波の余波はいかに?その後のレポートが届いたので、掲載します。


日医総研海外駐在研究員 奥田七峰子


 フランスのジャン・フランソワ・マテイ保健相は9月23日、医薬品の保険償還額の引き下げや、入院の患者自己負担引き上げなどを盛り込んだ、2004年度社会保障予算骨子を発表した。04年度予算の対前年度伸び率は4%になる見通し。発足当初は医療制度の抜本的改革へ強い意気込みをみせていたラファラン内閣。しかし、今年夏の熱波対策の出遅れへの批判で、改革のメスを思うように振ることができず、社会保障財政の赤字は来年度さらに拡大するとみられている。

 社会保障(医療保険、老齢年金、労災手当、家族手当)の今年度末の赤字額は、総額95億ユーロ(1兆2350億円 1ユーロ=約130円)に達する見込み。赤字を縮小するため、政府は予算骨子で、(1)後発医薬品がある先発医薬品について、後発医薬品の価格までしか保険で償還しない、一律償還料金制度(Tarif Forfaitaire Remboursement=TFR制度)を導入(2)たばこ税の引き上げ(3)入院の患者自己負担を1日あたり10.67ユーロ(1387円)から13ユーロ(1690円)へ引き上げ(4)製薬企業の広告への課税−などを打ち出した。

 社会保障予算のなかで唯一黒字を保っている「開業医予算」にも切り込む。標準的治療や医薬品の適正使用についてのガイドラインを作って支出を抑えこむ考えで、8億ユーロ(1040億円)の財政効果を見込んでいる。

 今年夏、フランス全土で1万4802人の犠牲者を出した熱波では、診療よりも「バカンス」を優先させた開業医達に非難が集まり、政府が来年度予算の編成に向けてどのような対策を打ち出すのか、国民は固唾を呑んで見守っていた。

 今回の予算骨子発表に先立って、フランス議会は熱波で多くの死者が出た原因を調査。2つの研究グループが調査にあたったが、どちらの結果も、バカンス期間中にほとんどの開業医が休診になる「休日診療体制の不備」が最大の原因、というものだった。調査結果を受けて政府は急遽、省令を改正して、開業医に休日診療への参加を求める「努力義務規定」を設けた。

だが、治療ガイドラインも、休日診療体制への参加も、罰則はなく、効果を疑問視する声が早くも出ている。政府は98年に過剰投薬や重複投薬を減らす目的で罰則つきのガイドラインを制定したものの、医師の猛反発にあって頓挫したことがあり、今回も「不発」に終わるのではないかとの見方が大勢を占めている。(参考文献:Le Quotidien du Medecin)