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「医療事故から学ぶ」

 「NPO法人 患者のための医療ネット」葛飾支部が主催するシンポジウム「医療事故から学ぶ」が、平成16年11月13日(土)、都内で開催された。座長は弁護士の藤田康幸氏。パネリストは医療事故の遺族である永井裕之氏、川添明子氏、豊田郁子氏の3名。コメンテーターは加部一彦氏(愛育病院新生児科部長)、和田ちひろ氏(いいなステーション代表・HCRM研究会代表)、清水陽一氏(新葛飾病院院長)の3名。
 すべての人々が安全でより良い医療を受けられるために、患者と医療従事者の相互理解と協力関係を進める活動として開催された、シンポジウム当日の内容の一部をお伝えする。



 まず、医療事故の遺族であるパネリスト3名から、事故当時の心境や現在までの経過が語られた。

 永井裕之氏の妻は、1999年2月11日、点滴時に消毒薬を誤投薬され、急死した(都立広尾病院事件)。
 この事件に関する裁判では、民事判決(今年1月30日東京地裁、9月30日東京高裁)で、真相の隠蔽、真相解明の妨害について、その責任者の個人責任が問われ、説明義務違反として賠償責任が認められた。
 また、今年4月13日の刑事事件判決(最高裁)で「警察への届出は憲法38条に違反しない」とともに、「診療中の患者であっても異状な死は届けなければならない」という見解が示された。
 
 川添明子氏の夫は、1999年9月28日、胃内視鏡検査中にショック死した(町田病院事件)。
 この事件に関する民事裁判は、「死因は不必要な胃内視鏡検査による心破裂であり、早期にCCUに搬送され、再環流療法が行なわれていれば、予後良好となり、余命は十分あった」との訴えが認められ、今年7月22日に和解(病院が倒産したため、二人の医師と和解)した。

 豊田郁子氏の子息は、2003年3月9日、医師の誤診により十分な経過観察をしてもらえず、腸閉塞を放置され死亡した(東部地域病院事件)。
 事故後1ヶ月経っても何の説明も謝罪もない病院に対し、カルテ開示を申し出た。そしてそのころ、新聞社数社に内部告発文書が届き、マスコミ報道となる。その後、病院側が突然、謝罪したいと来宅したが、それは当事者の医師ではなく、新しく赴任してきた病院長であった。現在、何の解決も何の答えも見つからないままだが、今年、警察に告訴状ではなく、被害届けを提出した。
 豊田氏は現在、新葛飾病院の医療従事者として医療安全に携わっている。

 途中、会場にもマイクが向けられ、参加者として来場していた他の医療事故の遺族の方から、事故後のつらい思い、医療の隠蔽体質に対する残念な思いなどが語られた。
 
 皆に、共通している思いは 
  • 真実を明らかにしてほしい。
  • ミスだったならきちんと謝罪してほしい。
  • 二度と同様な事故を起こさないようにしてもらいたい。そのために今後どうするか示してほしい。
 というものであった。

 続いて後半は、こうした医療事故を防止するためにはどうしたらよいか、また事故後の医療機関の対応などについて、コメンテーターを中心に次のような意見が交わされた。

(事故防止のために)
  • 意識がしっかりしている患者であれば、自分が何の点滴をされるのか、これからどんな処置をされるのか確認できる。これからは、医療処置を確認するプロセスに患者も参加できるようにしたらよい。
  • 医師は致命的な疾患を見逃してはいけない。そのために患者の話を聞く問診は大事である。
  • 医師という職業は重い責任があることを自覚すべきである。

(第三者機関について)
  • 現在、医療関係の学会が中立的な外部機関を作るとしているが、医療関係者ばかりで本当に「中立的」なものが作れるか、疑問である。
  • 中立的な第三者機関は必要であるが、すぐには無理であろう。
  • 第三者機関を作っても、密室になってしまえば同じこと。プライバシーの保護は必要だが、内容を公開すべきである。
  • 厚労省は2005年度から、診療関連の患者死亡を第三者機関が分析するというモデル事業を実施する。事故の公開、構成メンバー、結果の判断をどうするかなど、事業の今後の動向に関心を持って欲しい。

(事故後の医療機関の対応について)
  • 院長はもっとリーダーシップを発揮して、先頭に立ち病院を改革していくべきである。リーダーの考え方が大事である。
  • 誠意を持った対応が大切。
  • 隠蔽は信用をなくすだけ。
  • 東海大学病院では、全職員の前で、同院の医療事故の遺族に話をしてもらうということをやったが、これはかなり勇気ある行動だと思う。こうしたことにより、職員の意識を変えることも必要である。
  • 医学生や看護学生の授業で、遺族が話をするということも行なわれている。学生からは熱心に質問が寄せられる。授業にとりこまれるのは良いことだと思う。



 事故のことは思い出すだけでもつらいのに、皆の前で話すのはどんなに切ない思いだっただろう。途中、声を詰まらせながらも話してくれたのは、やはり二度と繰り返して欲しくないという強い願いの表れにちがいない。
 最近は、患者参加の事故防止ということが言われている。病院職員や医学生の前で被害者が実体験を話すという取り組みは、非常にインパクトがある。
 患者側がこれだけ努力し成長しているのだから、医療提供者側もしっかり応えなければならないと痛感したシンポジウムであった。