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「都立・広尾病院医療過誤・事件〜経過報告と提言〜」

 
NPO法人 患者のための医療ネット」の第15回セミナー「都立広尾病院医療過誤・事件〜経過報告と提言〜」が、平成17年11月4日(金)、都内で開催された。講師は遺族である永井裕之氏。事故発生から刑事・民事裁判の全てが終わるまでの経過と、医療従事者や一般の方への提言が語られた。セミナー当日の内容から一部をお伝えする。



(裁判の概要)


 講師永井裕之氏の妻は、1999年2月11日、点滴時に消毒薬を誤投薬され急死(都立広尾病院事件)。2005年3月に裁判の全てが終わった。裁判の概要は下表の通りである。

刑事裁判の概要
書類送検
起訴 一審
判決
二審
判決
最高裁
判決
医道審
A看護婦 業務上過失致死容疑

証拠隠滅容疑
起訴

業務上過失致死容疑
有罪

懲役1年
執行猶予3年
3カ月停止
B看護婦 業務上過失致死容疑 起訴

業務上過失致死容疑
有罪

懲役8ヵ月
執行猶予3年
3カ月停止
主治医 業務上過失致死容疑

医師法違反と虚偽公文書作成同行使

証拠隠滅容疑
略式起訴

医師法違反
(罰金2万円)
3カ月停止
(医師法21条で初めて)
院長 業務上過失致死容疑

医師法違反と虚偽公文書作成同行使

証拠隠滅容疑
起訴

医師法違反と虚偽公文書作成同行使
有罪

懲役1年
執行猶予3年
(罰金2万円)
有罪:
同左
有罪:
同左確定
上告棄却
1年間停止
2005/8/10〜
都副参事 医師法違反 起訴

医師法違反
無罪
(医師ではない)


民事裁判の概要
東京都、院長・主治医ら関係者に対し、「個人責任」としての賠償を求める → 東京地裁は認定
誤注射されるという医療事故本体に基づく損害賠償請求に加えて、その後の「事故隠し」を理由とする損害賠償請求 → 東京地裁は認定
本件医療事故は、「組織構造上の過失」、 医療システムの改善が重要であることを訴える →東京地裁は認めず
「死亡確認の立会人と時刻」 →原告主張を東京地裁は認めず
院長は東京高裁に控訴 →東京高裁は「解剖後の遺族に対する説明は不十分で不適切:適時適切に説明する義務を負っている」と元院長の説明義務違反「個人責任」を認定



(医療事故低減に向けて)


 医療システムの欠陥として、効率重視の医療体制、機能しない救急救命システムがある。
 特に問題なのは、看護師に何でも任せすぎていること。もっと他の職能に業務を分担させるべき。今回の事故は、単なる看護師の個人的ミスという問題ではなく、危険なシステムを放置した病院全体の構造的(システム的)欠陥による、起こるべくして起きたものだと永井氏は指摘した。


◎効率重視の医療体制(間違った合理化とマンネリ化)
危険な看護システム
●薬剤準備:ひとつの狭い処置台で3人が同時に作業。その上、体の中に入れるもの(ヘパ生)と体の中に入れてはいけないもの(消毒剤:ヒビグル)を準備
●薬剤師法違反:看護師が薬剤の調合(消毒剤の希釈)
●看護の基本が不十分:ダブルチェックの欠如、投薬作業に複数が関与
機能しない救急救命システム
●エマージェンスコール(緊急連絡):他の病棟の専門医を呼ぶ手段がなかった
●救急救命センター:入院患者は蚊帳の外。外部からの患者だけ?


 永井氏は、これまで遺族として、刑事、民事裁判を傍聴しながら、病院の研修会や大学授業などでの講演活動も行ってきた。「最近は医師が集まる会に呼ばれ始めた。特に今年9月に金沢市医師会で話せたのは嬉しかった」と語る。ただ、まだ遺族を呼ぶことに抵抗のあるところも多いのが現状、それが残念だという。
 
「これからも機会があるたびに自らの体験を語り続けたい」という永井氏。医療従事者には、“各自の意識改革と医療システム改革の推進によって、医療の質向上と医療過誤の低減を!”、一般の方には“自らが選択・決定する賢い患者になり、病院、医者任せからの脱皮を”を訴えていくつもりだそうだ。