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「裁判となった医療過誤事件の事故発生から和解成立まで」

〜医師の一言の不足が6年4ヶ月の裁判に〜

 本書には、事件発生から裁判、和解成立に至るまでの「できごと」が、原告側弁護士の目を通して詳細に綴られている。そして、被告側においては原告側以上に尋問などの作業が要求されたであろうことが想定される。被告医師は最初から「私には落ち度がない。もしあったとすれば、食事の注意を申し上げなかったことだ」と述べていた。たった一言「2、3時間は絶食しなさい」という注意をしなかったばかりに、人命を失わせ、6年以上にわたり民事裁判を闘わなければならないことになったのだ。あくまでも原告側の立場から記載されているものに限られているが、医療裁判の全体像を把握することに役立てるよう、本書における民事裁判の流れ、数字、用語を時系列に整理してみた。
ドキュメント 医療過誤事件-弁護士の医療裁判レポート- 
著者  千田實(ちだ みのる)
発行所 本の森
定価  本体3,000円+税
ISBN4-938965-36-4

(本書の内容)
平成6年に山形県で起きた1件の医療過誤事件。ほんのわずかの“ケアレスミス”が、働き盛りの男性A氏の命を奪うこととなった。
6年4ヶ月に及ぶ医療過誤裁判を、岩手県一関市の原告側受任弁護士自らが振り返り、ドキュメント形式で紙上に再現。大量の裁判文書、法廷での尋問録を収録し、医療過誤裁判のあるがままの姿を紹介している。

(事案の概要)
平成6年1月24日、A氏は勤務先が実施する成人病予防検診の結果、胃と肝機能の異常を指摘され、二次検査を受けるように指示された。A氏は新聞の広告欄に掲載されていたB医院に赴き、二次検査を受けた。3月28日B医院のC医師は、A氏に対しERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)を実施。同日、B医院を退出したA氏は帰宅直後食事をし、横になっていたところ急に腹痛を訴えた。A氏の妻が、C医師へ電話で問い合わせ、指示に従い薬を飲ませたが、痛みは増すばかり。再度電話で問い合わせ、A氏の妻がA氏をB医院へ連れて行った。B医院にて治療を受けたが、症状は改善せず、重症の急性膵炎と診断され、翌々日死亡した。

(訴訟の内容)
損害賠償請求(医療過誤)事件
請求額 金9,496万3,009円
原告  A氏の妻、長男、長女、父、母
被告  B医院、C医師

 
主な争点
 
      (1)被告C医師の過失の有無        
  1. 被告B医院におけるERCP実施以前の説明義務違反の過失
  2. 術式選択の過失
  3. 手技の過失
  4. 術後管理・指導(食事の注意等)
       (2)上記過失とA氏死亡の結果との因果関係の有無
       (3)過失相殺の成否
       (4)原告らの損害


 (流れで見る)
 


 (数字で見る)

A氏死亡  平成6年4月2日
裁判開始 平成6年11月1日

第一審(山形地方裁判所)での裁判:23回
第二審(仙台高等裁判所)での裁判: 3回 

弁護士事務所への来所数
A氏の父:17回
A氏の母: 4回
A氏の妻: 3回

裁判での尋問回数
A氏の父:2回
A氏の妻:1回

和解成立 平成13年1月12日(裁判開始から6年4ヶ月)
和解条項 
  1. 控訴人(=一審被告)らは、被控訴人(=一審原告)らに対し、各自、本件損害賠償債務として、金7,530万円の支払い義務のあることを認める。
  2. 控訴人らは、被控訴人らに対し、前項の金員を平成13年2月末日限り、被控訴人代理人の口座に振り込む方法により支払う。
  3. (以下省略)


 (用語で見る) 
陳述書
民事訴訟において当事者その他の関係人の陳述を記載した書証。
訴状
民事訴訟法上、第一審の裁判所に提出することによって訴えの提起を行う書面。当事者、法定代理人、請求の趣旨及び請求の原因がその必要的記載事項である。
期日
訴訟法上は、裁判所、当事者その他の関係人が一定の場所に会合して訴訟行為をする時間を意味する。
答弁書
民事訴訟法上、訴状や上訴状に記載された原告や上訴人の申立てに対し、被告や被上訴人がする最初の応答を記載した準備書面。
準備書面
民事訴訟手続きにおいて、当事者が口頭弁論で陳述しようとする事項を記載した書面。陳述しようとする事項を予告するため、期日前に裁判所に提出しなければならない。
証拠申出書
相手側に証拠の提出を促すように、裁判所に対して提出する書類。
鑑定申立書
主張事実を立証するために鑑定をしてもらうように、当事者から裁判所へお願いをする書類。
進行協議期日
民事訴訟法第95条 〆枷十蠅蓮口頭弁論の期日外において、その審理を充実させることを目的として、当事者双方が立ち会うことができる進行協議期日を指定することができる。この期日においては、裁判所及び当事者は、口頭弁論における証拠調べと争点との関係の確認その他訴訟の進行に関し必要な事項についての協議を行うものとする。
民事訴訟法第96条 〆枷十蠅蓮当事者が遠隔の地に居住しているときその他相当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、裁判所及び当事者双方が音声の送受信により同時に通話をすることができる方法によって、進行協議期日における手続きを行なうことができる。ただし、当事者の一方がその期日に出頭した場合に限る。
協議
法令上は、問題となっている事項に関して相手方に対し必要な説明を十分に行い、相手方の意見を聞いた上で一定のことを行う場合に用いられる。
鑑定書
訴訟法上は、裁判所から指示された事項について、裁判官の知識経験を補充するため、学識経験のある第三者(鑑定人)がその判断を報告するために作成した書面をいう。
附帯控訴
控訴に際しては、控訴人=控訴した側は、一審判決のどこに不服かを主張しなければならず、この不服の範囲を控訴審の中で拡大することができる。これと公平をはかるために、被控訴人=控訴された側も、控訴審において、一審判決を自分に有利に拡張する申立ができる。これを附帯控訴という。
上申書
検事や裁判官に対して、自ら進んで提出する私信(手紙)のこと。弁護士の立場からは法律に関係する内容しか提出できないため、裁判官に主張してほしいことを弁護士にお願いしても断られることがある。その際には、当事者が「上申書」として直接裁判官に提出することができる。又、弁護士から当事者に「上申書」の提出を勧めることもある。書式や内容に決まりや制限はない。
回答書
照会された事項に対して回答するもの。
和解
争っている当事者が互いに譲歩して、その間に存在する争いをやめることを訳する契約。和解によって当事者間の法律関係は確定し、当事者はそれに反する主張をすることができなくなる。和解後に、反対の確証が現れても同様であり、和解によって権利が移転し、あるいは消滅したものとされる。

※参考文献 有斐閣「法律用語辞典」
        有斐閣「法律学小事典第3版」
        有斐閣「六法全書」