Q: 「備品」と「消耗品費」の違いについて
(更新日:2002-4-17)
A:「備品」は資産に属する勘定科目、「消耗品費」は費用に属する勘定科目です。
 資産計上すべき場合には「備品」、費用計上すべき(またはできる)場合には「消耗品費」という勘定科目を使います。
Q: 減価償却費の計算方法について(p.44)
  国庫補助金を取得した場合の固定資産の取得価額の 例)の中で病院建物の減価償却計算式で定率法を使っています(平成13年度「会計学概論」テキスト44ページ参照)。 以前顧問税理士より「建物の減価償却は定率法は使えない」と言われましたが、定率法の選択も可能なのでしょうか?
(更新日:2002-4-17)
A:会計制度と税法は必ずしも一致しない場合がありますので注意が必要です。会計制度上は企業会計原則においても病院会計準則においても定率法と定額法が認められています。
  税法においては平成10年の改正により平成10年4月以降に取得し、事業の用に供した建物については定額法しか適用することができません。即ち、定率法を認めていません。(平成10年3月以前からある建物、及びその建物に対して平成10年4月以降に施した改良等の資本的支出については従来どおり定率法も適用できます)
  本テキストではまず税務とは切り離して会計学総論・各論を学び(つまり会計の仕組みを理解し)、次いで税務を学んでいただく構成になっており、46ページの例は税務とは関係なく記述したので建物であっても定率法を用いています。この点、例示がわかりにくかったかもしれません。
  ご質問の税理士から聞いたお話は、平成10年4月以降取得の建物に関する税法上の取り扱いを指していることと思います。
Q: 「未払金」と「未払費用」の違いについて
(更新日:2002-4-17)
A:「未払金」は、すでに完了している取引から生じた債務を処理するための勘定科目です。具体的には「自動車の購入代金の未払分」、「未払消費税」などを言います。
   これに対し「未払費用」とは、継続的な役務提供契約において、決算日には既に受けている役務について対価を支払っていないことに対する勘定科目です。具体的には「従業員給与の支払いが20日締め25日払いの場合、決算月の21日から月末までに係る給与が決算日現在未払いとなる。この未払額。」などをいいます。
Q: 「引当金」について
   現在、当病院では「退職給与引当金」と「修繕引当金」を計上していますが、この他に「医療機器等の整備のための引当金」というのは認められるのでしょうか?
(更新日:2002-4-17)
A:認められません。
  引当金の設定要件の中に、「その発生が当期以前の事象に起因していること」があります。引当金とは、まだ具体的に発生していないコストで、当期以前に原因事実が発生しているものを見積もり計上しようというものです。
  例えば退職給与引当金は、現在いる従業員がこの1年勤務した事実によって、まだ退職していないので形(いつまでにいくら支払わなければならないという債務)にはなっていませんが、この人が退職したら発生する、潜在的な債務です。また、修繕引当金は、今年修繕しなかったかもしれませんが、この1年間使用した事実によって、建物などは多少なりとも老朽化が進んでおり、何年か後には修繕の費用が発生するであろう、というものです。よってこれらは「引当金」として計上されます。いずれも「当期以前の事象に起因している」という要件を満たしています。
  しかし、将来のための「医療機器等の整備」は、当期以前の事象に起因しているとは言えないため、税務上も会計上も引当金としては存在しません。将来のための設備投資は、購入した時点で一旦資産として計上し、その後、減価償却によって耐用年数に応じて費用化していくことになります。
  なお、会計上は引当金の性格を有することから引当金を計上すべきと考えられているものでも、そのすべてが税務上の損金と認められるとは限りません。即ち、会計学上の引当金の考え方と税法の規定はイコールではなく、税法では会計上の適正な引当金繰入額の一部を損金と認めているに過ぎません。そこで、会計上は計上すべきであると病院が判断して繰り入れた引当金繰入額のうち、税法上の引当金の繰入限度額(損金算入限度額)を超過した部分については、損金算入を認められません。この様な、税法上の損金算入限度額を超過した引当金繰入れのことを一般に「有税引当て」と言います。病院は費用として計上したのに法人税等の負担は減らない、言い換えれば、法人税等を支払った後の税引後利益の中から引き当てる、という意味でこのように呼ばれています。
Q: 償却資産税について
(更新日:2002-4-17)
A:償却資産税とは固定資産税の一種で、償却資産の保有に対して課税されるものです。
  償却資産とは、土地及び家屋以外の事業の用に供することができる資産で、その減価償却費が、法人税または所得税の所得の金額の計算上、損金又は必要経費に算入されるものをいいます。例えば器具備品、機械装置が該当します。
  なお、自動車税・軽自動車税の課税対象となるものや、取得価額が20万円未満で、3年間で一括償却している資産などは償却資産税の課税対象から除かれています。
Q: 利子所得について
  利子所得は、総合課税所得の計算に算入しなくてよいのですか?
(更新日:2002-4-17)
A:利子所得は、原則として源泉徴収によって課税が完了しますので、確定申告をする必要はなく、総合課税の所得の計算に算入する必要もありません。
  (銀行からの預金利息を確定申告されたことはないと思います。国民全員がこれを確定申告するとすると大きな事務負担になると思われることから、例えば銀行預金利息なら簡易的に国税15%、地方税5%を源泉徴収することをもって課税が完了するという措置が、租税特別措置法によって講じられています。この措置は所得税法ではなく租税特別措置法に定められており、総合課税の所得計算に含めないとは言っても、所得税法上の分離課税される所得であるところの分離課税譲渡所得、山林所得、退職所得とは法体系上性格が異なります。この点は理解しにくいところかもしれませんが、単純に「特例的に源泉徴収で課税完了」と覚えていただくのが良いのではないでしょうか)
  ただし、外国公社債等の利子には源泉徴収の対象とならないものがあります。このようなものは、総所得金額を構成しますので、他の所得と総合して課税されます。
Q: 時価会計その他の新しい会計制度の病院への適用について
  企業の会計制度の見直しが行われているようですが、病院の会計制度も変わるのでしょうか?
(更新日:2002-4-17)
A:上場企業等に対する会計制度について変革が進んでいますが、これらは病院にも義務付けられるものではなく、現時点では直接、病院には関係ありません。
  会計制度は、欧米の会計処理方法へ合わせようとする国際的動きの中で、「国際会計基準」が重要視されるようになってきています。これには、企業の資産や負債を、今までの貸借対照表のような「原価」ではなく「時価」で評価する『時価会計』、潜在的な退職金債務を表に出して、会社の負債として表示する『退職給付会計』、親会社と子会社の業績や財政状態を連結して開示する『連結会計』などがあります。例えば退職給付債務は、上場企業等に対しては全額計上を求めるようになっていますが、病院に対しては少なくとも制度上はそこまで求められてはいません。
  ただしこれからは、世の中の動きと全く無関係ではいられないかもしれません。例えば、金融機関が病院の財務諸表について、「貴院がもし退職給付債務を全額計上したら貸借対照表はどのように変わり、自己資本比率はどのように変わりますか?」という視点で見る、ということもあるかもしれません。
   このようなことを背景に、病院会計の基準を定めている「病院会計準則」の見直しが検討され始めています。具体的には「キャッシュフロー計算書」の作成や上述した「退職給付会計」の導入などが議論されています。今後、「病院会計準則」がどのように見直されるかについて、注意深くキャッチアップする必要がありそうです。
Q: 「消費税」について
 現在5%の消費税(消費税及び地方消費税、以下同じ)が将来もし10%になったら、病院経営はどうなるのでしょうか?
(更新日:2002-5-8)
A: 影響はケース・バイ・ケースです。
 例えば以下のようなコスト構造の病院では約2%の実質コストアップになります。

現状のコスト構造

※1
原価(30)
(消費税5%込み)


人件費(50)



売上高(100)
(課税売上割合10%)


※2
その他の経費(17)
(消費税5%込み)
利益(3)

※塗り潰しの部分…説明を簡素にするため、全て課税仕入と仮定する
※1消費税が5%→10%になると約1.4%増えて約31.4%になる
※2消費税が5%→10%になると約0.8%増えて約17.8%になる

 まず、消費税とは消費者の負担するものですから5%から10%に増えるとその分だけ消費者の負担は増えます。一方、事業者は消費者から売上について預かった消費税から、事業者自身が事業を行うための仕入れ等にかかった消費税を差し引いて、差額を納付しています。もし、売上について預かった消費税より仕入れ等にかかった消費税の方が多ければ、その差額は還付されます。この「仕入れ等にかかった消費税を差し引く」ことを「仕入税額控除」と言います。
 さて、ここで医療機関が一括比例配分方式で消費税を計算する際に「仕入れ税額控除」として認められるのは、仕入れ等にかかった消費税のうち「課税売上割合(売上高のうち消費税が課税される部分の割合)」に対応する部分のみとなります。病院の場合、課税売上割合は大体10~20%ぐらいのようです。つまり残りの80~90%は控除されず持ち出しとなってしまうため「損税」と言われたりしているのです。
 将来、消費税が5%から仮に10%に引き上げられた場合の病院経営への影響を、図のような、売上高100、原価30、人件費50、その他の経費17、利益率3(このうち「原価」と「その他の経費」はすべて税込み課税仕入れと仮定します。)の病院で考えてみましょう。消費税が5%から10%になると減価は約31.4(≒30÷105%×110%)となり、その他経費は約17.8(≒17÷105%×110%)となります。原価とその他経費の合計で約2.2%コストが増加し、そのうち「仕入れ税額控除」されるのは課税売上割合10%に対応する部分だけですので、残りの90%(2.2%×90%=1.98%≒2%)が持ち出しになる、すなわち約2%の実質コストアップになる、という計算になります。
Q: キャッシュフロー計算書について
間接法のキャッシュフロー計算書上、税引前当期利益にプラスするのはどのような仕訳の取引で、マイナスするのはどのような仕訳の取引なのでしょうか。パターン別に示してください。
(更新日:2002-5-9)
A: 間接法キャッシュフロー計算書の考え方を理解するに当たって、各取引の仕訳パターンとキャッシュフロー計算書における調整の関係を結びつけて理解するのはとても良い方法です。
 以下、現金の動きを伴う取引と、伴わない取引に分けて考え方をご説明します。 現金の動きがある取引では、「費用(厳密には収益のマイナスも含む)計上されない現金支出」についてはキャッシュフロー計算書で税引前当期利益にマイナスし、「収益(厳密には費用のマイナスも含む)計上されない現金収入」については税引前当期利益にプラスします。
 現金の動きが無い取引では、「現金支出を伴わない費用」についてはキャッシュフロー計算書において税引前当期利益にプラスし、「現金収入を伴わない収益」についてはマイナスします。

現金の動きの有無 取引の仕訳パターン 税引前当期利益にプラスするかマイナスするか
現金の動きがある取引 (借方)現金 (貸方)収益
(借方)費用 (貸方)現金
(借方)資産 (貸方)現金
(借方)負債 (貸方)現金
(借方)現金 (貸方)負債
(借方)現金 (貸方)資産
調整なし
調整なし
マイナスする
マイナスする
プラスする
プラスする
現金の動きが無い取引 (借方)資産 (貸方)収益
(借方)負債 (貸方)収益
(借方)費用 (貸方)負債
(借方)費用 (貸方)資産
具体例(注)
(借方)減価償却費(貸方)減価償却累計額
(借方)引当金繰入(貸方)引当金
マイナスする
マイナスする
プラスする
プラスする

プラスする
プラスする

 上表中「現金」とは現金および現金同等物を、「資産」とは現金および現金同等物以外の資産を指すものとします。
(注)「(借方)費用/(貸方)負債または資産」の具体例として掲載しました。

 なお、実際には個々の取引の仕訳を見て、その一つ一つを上の表に当てはめてキャッシュフロー計算書を作成することはしません。上記はあくまでも考え方を説明したもので、作成方法の説明ではありませんので注意してください。実際の作成は損益計算書と期首貸借対照表、期末貸借対照表などを基にして行います。
Q: 所得税について
 純損失の繰越控除の適用は、青色申告選択年分に生じた損失についてのみ可能であるが、損失年以降3年間であれば、白色、青色に関わりなく可能でしょうか。
(更新日:2002-9-9)
A: 純損失とは、例えば「その年の個人の事業所得がマイナスだった。他の所得、例えば不動産所得と通算しても、まだマイナスだ」というケースの損失のことを言います。
 税金というのは、人為的に1年で区切って課税をしますので、例えば3年間通して見たらプラスマイナスゼロ、という人であっても、ここ数年赤字基調で、今年はたまたま利益が出た、というようなケースもあります。「今年たまたま利益が出たと言っても、仮に去年と合算したら、2年トータルでは赤字だ」と言う人もいるでしょう。このようなケースでは、今年の利益に所得税を課するのは、少し厳しすぎるでしょう。
 そこで、純損失が出た場合には、一定の要件に基づいて3年間繰り越してよい、という制度になっています。これが純損失の繰越控除です。
 この一定の要件というのが、まず、損失を出した年に青色申告をしていること。次にその年以降、当該純損失を控除する年までの間、確定申告を必ずしていること、となっています。即ち、「今年損失を出しました。青色申告です」という場合には、純損失を繰り越すことができます。次の年、「利益を1000万円出しました。白色申告です。」この場合は純損失の繰越控除は可能です。
 駄目なケースは、今年青色申告で1000万円の損失。次の年、確定申告をしなかった。(たまたま利益が出なかったら、納税の必要が無いので確定申告をしなかった。)次の年、確定申告(白色申告でも青色申告でもよい)をしました。利益が1000万円出ています。2年前の1000万円の損失と通算、つまり純損失の繰越控除の適用ができるか。これはできません。間に1年間、確定申告をしていない年があるからです。
 もちろん、白色申告の年に赤字になってしまった、という場合は、これも駄目です。そのあといくら青色申告に切り替えたとしても、純損失の繰越控除は適用できません。
Q: 所得税の源泉徴収に関して
 非常勤の勤務医に対しては、源泉徴収をしていないケースがあると聞きました。病院等によってやり方が違うことがあるのでしょうか。
(更新日:2002-9-9)
A: 税法は一律に適用されますので、本来あってはいけないことです。ですので、非常勤の勤務医に対して源泉徴収をしていない病院があったとすれば、これは早く是正すべきです。
 実は、非常勤のドクターに対しての源泉徴収というのは、間違って適用されているケースが結構あるようです。本来は給与所得ですので、給与所得の源泉徴収税額表を適用します。また、非常勤ですからメインの勤務先が別にあって、サブとして当院に来ているケースが多いと思いますので、源泉徴収税額表の乙欄を適用して源泉徴収をしなければなりません。それをやらずに甲欄を適用していたり、10%の税率で源泉しているケース等では、税務調査において明らかに問題となるでしょう。従って早急に是正しなければなりません。
 10%で源泉しているというケースは、講演料とか原稿料等に適用される10%という税率を適用しているのでしょうが、あくまでも勤務医の給与は給与所得ですので、給与所得に対して定められた税率を適用して、源泉徴収をしてください。
 税務調査で源泉徴収漏れを指摘され、仮に5年間さかのぼって追徴課税されると、結構大きな金額になると思います(もちろんケース・バイ・ケースです)。
   病院は源泉徴収義務者ですので、その義務を履行しなかった(源泉徴収義務違反)ということで、差額を納めなければなりません。
Q: 病院は、所得税の源泉徴収を勤務医の方、ないしは従業員さんから、預かりそびれた場合、その金額をどうしたらいいのでしょうか。
(更新日:2002-9-9)
A: 所得税は、従業員個人が負担するものです。病院はこれを預かって国に納める義務を負っています。これが源泉徴収義務です。
 例えば、税務調査で源泉徴収漏れを指摘され、5年間さかのぼって追徴されたとします。その場合に、勤務医の先生方や従業員さんに対して、税金を預かりそびれたから今から5年分さかのぼって預かります、と言うことができるでしょうか。
 実務上は、難しいケースが多いと思います。結果、病院が完全に自腹を切ることになりかねません。本来、所得税は個人が払うべきものですが、実務上は税務調査による源泉所得税の追徴は、病院が負担せざるを得ないケースが多いようですので、ご注意ください。
Q: 医療機器の購入について、意思決定プロセスをどのようにしたらよいでしょうか。
(更新日:2003-8-13)
A: 負担能力の観点からの検討が第一点です。すなわち設備投資のサイクル、支払可能額を導き出すための償却前利益。こういうものを常ににらみながら、代金を払っていけるだけの余力はあるかという検討をします。
 第二点として、当該設備投資をした場合と、しなかった場合のシミュレーションが必要になってきます。設備投資をすることによって、購入するのにコストはいくらかかり、維持するのにどのぐらいのコストがかかるか。この見積をするとともに、その設備を購入した場合の効果、実際には、診療報酬がどれだけ上がるか。また、それによって何らかのコストが削減できる、例えば人件費が削減できるとか、物流コストが削減できるとか、そういったコスト減の効果。
 これを数字に落としてシミュレーションして、買った場合と買わなかった場合の採算比較を行うのが一般的です。
 併せて、本来あるべき姿は、例えば向こう5年間の設備投資計画として、病院はこういう方針で、こういう設備を整えていくべきであり、何年後には、この機械は更新しなければいけない、というようなビジョンを常に持っているべきで、それを定期的に見直しながら意思決定していくことが必要だと思います。
Q: 医業において、医薬品以外に棚卸資産の対象となる資産はありますか。
(更新日:2003-8-13)
A: 医薬品以外に、レントゲンフィルム等の医療材料が棚卸資産になります。また、一般的には棚卸資産とは言いませんが、消耗品の類であっても、期末直前に大量に購入されたものについては、棚卸資産をするのが適正です。
 極端なケースを申し上げますと、3月決算の会社で3月30日に郵便切手を1,000万円買ったとしますと、これを全部通信費で費用処理してよいかというと、それは適正ではありません。この切手の中には来年使うものが多いはずですので、いわゆる棚卸資産と言われるものでなくても、金額的に重要性が高いものについては棚卸をすべき、ということも知っておいてください。
Q: 医薬品の仕訳に関して、仕入れたときに資産計上しておき、期末に、当期使った分だけをカウントして、これを費用に振り替えるという処理方法は間違いですか。あるいは、そういうことは一般的にやらないのでしょうか。
(更新日:2003-8-13)
A: 理屈上はそういう処理方法も可能です。可能ですが、そのような処理はしません。なぜしないかと言いますと、医薬品は、基本的には当期のうちに(少なくともなるべく早く)使うことを前提に、日々購入されているからです。
 そうはいっても、仕入れたものを今日、明日で全部使えるわけではありませんし、在庫がなくなっては困るということもありますので、期末になると未使用分が棚卸資産として残ります。
 棚卸資産を資産として認識するのは、元々、次期以降の収益に貢献するために取得(購入)したからではなく、あくまでも、基本的には当期の売上に対応するものとして仕入れたものが、たまたま余っていた部分を資産に計上するという考え方です。これをひっくり返して、買ったときに資産を計上して、棚卸をした時にはじめて原価を認識する方法をとりますと、期中、棚卸をする前に月次の損益計算書を作成しても、医薬品の経費が計上されていないために、利益が過大に出ている損益計算書が、出てきてしまいます。
 損益計算書や貸借対照表というのは、日々記帳した結果できてくるものですから、毎月1回ぐらいは経営者の方がご覧になって、今の経営状況はどうなっているだろうかという概算値をつかむ役割もするわけです。その観点から言っても、期中、買ったときに資産計上をしておく処理はよくありません。
Q: 受診の代金を支払ってくれない患者さんがいます。だからといって、診療を断るわけにはいきません。そういう方に対して、どのような対策ができますか。
(更新日:2003-8-13)
A: 簿記会計の観点からだけお話をします。ご質問の代金を回収できないと判断した場合、貸倒損失をどのタイミングで立てたらよいのかということが問題になります。
 会計上は病院側の判断で、回収不能と適正に判断された段階で、決算書上、貸倒損失を立ててかまいません。この時の仕訳は(借方)貸倒損失、(貸方)医業未収金、となります。
 ただし税務上は、これを損金(必要経費)にできるかというフィルターがもうひとつかかります。有税償却、無税償却の解説のところで出ましたが、税務上の損金(必要経費)算入のための要件を満たす必要がありますので、そう簡単には貸倒損失を損金に落とすことはできません。
 具体的には、相手先が破産したとか、債務超過が1年以上続いて回復の見込みもないというように、相手先の財政状態がわかるのであれば、回収できないという理屈がつきます。一般企業同士の貸付金とか、銀行からある会社への貸付金であれば、今のような判断ができますが、病院と患者さんの間では相手先の財政状態がわからないでしょうから、判断のしようがないと思います。
 そこで、実務的によく使っているもう一つの基準として、取引停止以後1年以上経っても相変わらず回収できないとか、実際に回収しようとすると、回収すべき金額より、取り立て費用のほうがかかってしまうケースについては、貸倒損失で落としてよいという規定が、税法上はあります。ただし、相手先が実は払える体力があるかもしれない。ということは、うまくすれば取り立てができるかもしれないということですので、債権を0にすることはできません。1円だけ残します。この人に対する未収金が1円だけあるということで、一応帳簿には載ります。そういう処理をして、残りを貸倒損失で損金(必要経費)に落とします。
Q: 医療行為に対して消費税を課税すべきケースと、課税しないケースを教えてください。
(更新日:2003-8-13)
A: ご存じのように、社会保険診療については、患者さんから病院に支払う窓口負担も、基金や国保連合会等から支払われる報酬も、消費税非課税の取り扱いになっています。同じ収入であっても、例えば健康診断とか、保険に入っていない方の診療とか、差額ベッド料は消費税の課税取引となっています。
 課税取引については病院が実際に1,000円もらうときに、患者さんから1,050円もらっているかどうかにかかわらず、法律上は課税取引となりますので、仮に1,000円しかもらっていなかったとしても、1,000×100/105が税抜きの収入で、5/105は消費税を預かったものと考えます。
 課税取引と非課税取引の区別は、どうすればよいでしょうかということですが、非課税になるものの代表選手が社会保険診療報酬です。労災や自賠責及び介護保険(一部を除く)にかかる収入も、非課税の取り扱いになっています。
   平成15年度「会計学概論」テキストの186ページに、課税される医業収入と、課税されない医療収入の一覧がありますので詳しくは、こちらをご覧ください。なお、非課税となる医業収入等についての根拠条文は消費税法別表第一(さらに細かくは消費税法施行令第14条、第14条の2)という条文で、ここに限定列挙された項目だけが非課税となります。
 ちなみに、保険証を持ってこなかった方や忘れた方については、保険診療はそのときにはできませんので、あくまでも保険外診療ですから消費税は課税取引です。従って、診療費が1,000円であれば1,050円いただいて、消費税を預かっていただいて構いません(後日、保険証持参時に保険診療に振り替える際には、預かった消費税も返還します)。消費税を預からない場合でも、税務上はあくまでも課税取引ということになりますので、その点もご注意ください。
Q:  医療法人には平成16年度から消費税がかかるのでしょうか。
(更新日:2004-8-16)
A: 消費税の判断基準として、診療期間の場合、保険診療収入以外(自費診療、雑収入)で売り上げが1000万円を超える場合、納税義務の検証が必要になると考えて下さい。ただし、保険収入以外であっても、例えば労災、自賠責は売り上げとはみないという決まりになっています。もともとは売り上げが3000万円というのが消費税の基準でありましたが、税制改正により1000万円までそのハードルが下がってきたということから多くの医療機関で消費税の納税義務が生じるということになります。
 ぜひ顧問の税理士と相談して必ず確認をして下さい。
 ちなみに保険収入以外の売り上げが1000万円を超えるかどうかという判断の時期ですが、例えば平成16年4月1日から平成17年3月31日までの決算期であれば平成14年4月1日から平成15年3月31日までの期間における売り上げ高で今年の消費税を納めるべきかを判断するということになります。
 また消費税を納める場合の届け出についても注意が必要です。管轄の税務署から届く書類には、消費税納税の義務が発生しているかどうかを検証して下さいという注意喚起の文書と届出書が同封されています。
 届出書は、大きくわけて「消費税の課税事業者届出書」「簡易課税制度選択届出書」の2種類が送られてきます。
 「簡易課税制度選択届出書」は非常に重要なところで、おそらく多くの医療機関は消費税ではこの簡易課税制度を選択したほうが納税では有利になります。これは一概にはいえませんが、顧問税理士と是非ご相談下さい。
Q:  患者さんから回収できなかったお金についてどのように処理すべきでしょうか。
(更新日:2004-8-16)
A: 結論からいえば「損失」となります。税金の計算をする上で経費としていってみれば税金で少し取り返すという方法しかないということになります。
 具体的に患者さんから回収できなかったお金を経費にするという点に関しては税務上も非常にデリケートな問題で、税務調査ではそれなりに指摘を受けるケースが多いです。  税務上は3つの取り扱いが経費として認められています。
 1つ目は相手が法律上破産してしまった場合。これは当然回収できないので経費として扱います。
 2つ目は債務超過で、請求しても事実上回収できる見込みがない場合。
 3つ目は長期間経過してとても回収できない場合です。
 期間は具体的に1年を超過した場合ということになります。医療機関では、診療行為が行われてから1年を経過した場合、回収できないのであれば税務上、「損失」として計上することになります。ただ、これはやっかいなことに1年を経過して損失として落とせる額というのが決まっていて、例えば1万円を患者さんから回収しなければならないが1年経過してしまったので1万円を経費にしたい、という場合、税務上は備忘価額1円だけを残して経費に計上するという処理をします。ですから9,999円を経費として1円だけはずっと貸借対照表に残す処理をするようにと税務調査の際に指摘を受けたこともあります。
 いずれにしても、もし患者さんから回収できないのであれば1年という期間が経過した場合、税務上経費として計上できることを確認できればよろしいかと思います。
Q:  医療法人は決済後2ヶ月以内に都道府県知事への決算届けが義務づけられていますが、貸借対照表と損益計算書に加えてキャッシュフロー計算書が必要ではないですか。
(更新日:2004-8-16)
A: 現在、医療法に関しては貸借対照表と損益計算書のみが義務づけられています。三つの重要な計算書類として、貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書があります。
 キャッシュフロー計算書は届け出の書類の中には入っていないので、現在、必ず作らなければならない計算書類には該当しないということになりますが、非常に重要です。
 また経営を考える上でも非常に重要な計算書類になりつつありますので、医療法人会計基準も病院会計準則もキャッシュフロー計算書は必ず作るべしということで議論がすすんでいます。
 その場合の届け出義務との関係はどうなるのかといいますと、厚生労働省へ確認したところ、法律の改正を伴うということになりますので、都道府県知事への届け出に関してキャッシュフロー計算書を含めるかどうかというのは今のところ未定という回答をいただいています。
 ただ先々導入されるであろう医療法人会計基準と病院会計準則ではその作成を義務づけていますし、経営を計る上で非常に重要な計算書類であることはまちがいありませんので、今後はキャッシュフロー計算書も含めて3つの重要な計算書類という認識で経営管理を行っていただけたらと思います。