Q: 「医療事故により患者が死亡した場合、患者の葬儀費用も、医療側の損害賠償責任の対象となる。」について、正解は「○」になっていますが、詳しく教えてください。
(更新日:2008-5-22)
A:本設問は,損害賠償請求における「損害」には,どのような 性質のものが含まれているかについての理解を問うものです。財産的損害のうち,積極的損害の一つの例として葬儀費用が挙げられることは,医療事故だけでなく,交通事故など,損害賠償請求訴訟におけるごく一般的な理解といえます。
Q: 「医師が抗がん剤の量を間違えて10倍量の投与をし、患者が重大な傷害をおった場合、その医師は、患者が傷害をおった時から2年間は、業務上過失傷害罪で、刑事起訴される可能性がある。」について、詳しく教えてください。
(更新日:2008-5-22)
A:Q28の問題文中にある、業務上過失傷害罪は「5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する」に該当します。よって、「5年以下の懲役〜」が対象となる刑事訴訟法250条の該当箇所は、第5号の「長期10年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については5年」になりますので、公訴時効の期間は「5年」となります。第6号では「長期5年未満の懲役〜」となり「5年以下」は含まれませんので、第5号を参照することになります。
Q: 診療当時の医療水準について
  新しい治療法が浸透するまでにはある程度の時間が必要です。例えば学会レベルの知識と一般臨床医の知識には乖離があります。この場合、裁判官はどのような基準で、医療行為の過失の有無を判断するのですか。
(更新日:2008-5-22)
A:この点につき、最高裁判所は、平成7年6月9日、未熟児網膜症をめぐる事件において、判決を出しています。以下がその判決の関連部分です。

「ある新規の治療法の存在を前提にして検査・診断・治療等に当たることが診療契約に基づき医療機関に要求される医療水準であるかどうかを決するについては、当該医療機関の性格、所在地域の医療環境の特性等の諸般の事情を考慮すべきであり、右の事情を捨象して、すべての医療機関について診療契約に基づき要求される医療水準を一律に解するのは相当でない。そして、新規の治療法に関する知見が当該医療機関と類似の特性を備えた医療機関に相当程度普及しており、当該医療機関において右知見を有することを期待することが相当と認められる場合には、特段の事情が存しない限り、右知見は右医療機関にとっての医療水準であるというべきである。そこで、当該医療機関としてはその履行補助者である医師等に右知見を獲得させておくべきであって、仮に、履行補助者である医師等が右知見を有しなかったために、右医療機関が右治療法を実施せず、又は実施可能な他の医療機関に転医をさせるなど適切な措置を採らなかったために患者に損害を与えた場合には、当該医療機関は、診療契約に基づく債務不履行責任を負うものというべきである。また、新規の治療法実施のための技術・設備等についても同様であって、当該医療機関が予算上の制約等の事情によりその実施のための技術・設備等を有しない場合には、右医療機関は、これを有する他の医療機関に転医をさせるなど適切な措置を採るべき義務がある。」
Q: 求償権について
  医療事故の損害賠償金を医療機関の開設者が患者に支払った場合、開設者は、その支払い額を、事故を発生させた医療者に請求することはできますか。
(更新日:2008-5-22)
A:民法715条3項は、下記のように規定し、開設者が、支払った損害賠償金を、事故を発生させた医療者に請求することができることを示しています。

第七百十五条  ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
2  使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。
3  前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。


Q: 薬の添付文書が、医療従事者の過失の認定に影響するという趣旨のことを聞きますが、裁判等で問題になっているのですか。
(更新日:2008-5-22)
A:関連の裁判例として、最高裁判所平成8年1月23日第三小法廷判決があります。この判決は、以下のように述べています。

「医薬品の添付文書(能書)の記載事項は、当該医薬品の危険性(副作用等)につき最も高度な情報を有している製造業者又は輸入販売業者が、投与を受ける患者の安全を確保するために、これを使用する医師等に対して必要な情報を提供する目的で記載するものであるから、医師が医薬品を使用するに当たって右文書に記載された使用上の注意事項に従わず、それによって医療事故が発生した場合には、これに従わなかったことにつき特段の合理的理由がない限り(下線は筆者)、当該医師の過失が推定される。・・・本件麻酔剤を使用する医師は、一般にその能書に記載された2分間隔での血圧測定を実施する注意義務があったというべきであり、仮に当時の一般開業医がこれに記載された注意事項を守らず、血圧の測定は5分間隔で行うのを常識とし、そのように実践していたとしても、それは平均的医師が現に行っていた当時の医療慣行であるというにすぎず、これに従った医療行為を行ったというだけでは、医療機関に要求される医療水準に基づいた注意義務を尽くしたものということはできない」
Q: インフォームド・コンセントに関して-記録-
 インフォームド・コンセントが得られたことは、文書として残すべきですか。
(更新日:2008-5-22)
A:インフォームド・コンセントにおいては、医師の説明と患者の同意という行為があればよく、同意につき患者から文書を得ることは理論的には必要ではありません。
ただ、無用な紛争を回避するためには、インフォームド・コンセントを書面で得ることは重要な意味があります。例えば、手術の合併症が生じた場合において、患者が「合併症の発生につき説明を受けていなかった。説明を受けていれば、この医療の実施には同意しなかった」と言ったとします。この際、医療側が、合併症につき説明をしたうえで手術について同意が得られていたことを説明するためには、患者から得た同意文書があったほうが、その説明をより正確に行うことが出来ます。(いうまでもありませんが、インフォームド・コンセントを得る手続きは、医療従事者・患者間のコミュニケーションツールとなってこそ意味があります。)
Q: インフォームド・コンセントに関して-手術同意書の有効性-
  「手術の同意書は意味がない」とききますが、これはどういう意味ですか。
(更新日:2008-5-22)
A:「手術においてどのような結果が生じても意義を述べません」等、事前に損害賠償請求権を放棄させるような内容の文書は無効です。公序良俗違反等がその根拠です。「意味がない」とは、このような文書を指しているものと思われます。インフォームド・コンセントが得られたことを記載する書面は、前述のとおり重要な書類です。
Q: 最近の医療事故訴訟の状況について
医療事故損害賠償請求訴訟は、現在、どのような状況にありますか。
(更新日:2008-5-22)
A: 第一審裁判所における医療事故損害賠償請求訴訟の状況は、下記の表のようになっています。

新受件数 既済件数 未済件数 認容率(%) 平均審理期間(月)
平成9年 597 527 1,673 37.3 36.3
平成10年 632 582 1,723 43.5 35.1
平成11年 678 569 1,832 30.4 34.5
平成12年 795 691 1,936 46.9 35.6
平成13年 824 722 2,038 38.3 32.6
平成14年 906 869 2,075 38.6 30.9
平成15年 1,003 1,035 2,043 44.3 27.7
平成16年 1,110 1,004 2,149 39.5 27.3
平成17年 999 1,062 2,086 37.8 26.9
平成18年 913 1,139 1,860 35.1 25.1
(最高裁判所ホームページより作成)

Q: 精神科病院、あるいは一般病院に入院中の患者が自殺した場合、医師がその自殺を予期できなかったとしたら、担当医師、あるいは病院管理者の責任はどうなるのでしょうか。
(更新日:2008-5-22)
A:予期できなければ、過失は肯定されません。過失(注意義務違反)は、結果予見義務違反と結果回避義務違反とで判断されますが、前者の結果予見義務違反とは、注意をしていれば結果の発生を予見することができたにもかかわらず、それを怠り、結果の発生を予見しなかったことです。