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『小児医療施設の安全管理』

〜宮城県立こども病院の取り組み〜

写真=星芳夫課長

宮城県立こども病院は2003年11月に開院し、04年4月、05年4月と段階的に診療科を整備、現在は21診療科と160床の病床を備えた東北地方で大規模な小児専門医療施設として機能している。質の高い医療を提供するとともに、家族と一緒に過ごす、遊ぶ、学ぶなどの子どもの権利を重視しながら設計された。子どもが利用する医療施設だからこそ、一般の病院以上にハード、ソフト両面の安全管理も求められる。同病院の安全管理の取り組みについて、総務課の星芳夫課長に聞いた。

子どもが利用する施設

転倒や転落の防止は万全に

同病院は、1階に外来診療部門、放射線部門、臨床検査部門などと院内学級や図書室などの成育支援部門、2階以上に病棟、その対側の2階に薬剤、栄養部門を、3階には高度治療部門として、手術室、ICUのほか、NICU、MFICUなどを配置している。

水平移動を基本にした平面型であることから、上下の移動はほとんど必要なく、車椅子やベビーカーでも容易に動くことができる。診療室と処置室を隣り合わせにするなど、利用者が最短で移動できる動線も確保している。

同病院は利用者の多くが子どもであるため、転倒や転落などの事故防止対策にはとくに注意を払っている。

駐車場およびエントランス

写真=エントランス
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宮城県では冬場の気温が低く、雪が降る日も多い。そのため駐車場や玄関周辺は雪や凍結による転倒の危険がある。

「幼い子どもは上手に歩けませんし、ベビーカーや車椅子を使う患者さんもいます。赤ちゃんを抱いて荷物を持っているお母さんはバランスも悪いので、ちょっとした転倒でも大けがにつながることが少なくありません。そこで駐車場からエントランスまでの地面に電熱線を埋設して、冬場は融雪や乾燥を行い、足元が滑らないような工夫をしています」

またエントランスには二重のドアを作り、ドアとドアの間にスペースを設けて院内に冷たい風や雪が入り込むのを防いでいる。

廊下

写真=廊下
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廊下には滑りにくい床材(毛足のないパンチカーペット)を使用。

パンチカーペットはある程度クッション性があるため、転倒してもけがをしにくい。また、写真ではわかりにくいが、廊下の壁側にはくぼみをつけてある。このくぼみがあると埃やごみが広がりにくく、掃除がしやすいという。

写真=うがい手洗い所
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また清潔を保つために、廊下のあちらこちらにうがいや手洗いができるようなスペースを子どもの背丈に合わせて設けている。

高い位置からの転落防止対策

写真=防護ガラス
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写真は4階分が吹き抜けになっているアトリウムの2階部分だが、当初は音符を模した柵だけがついていた。しかしさまざまな背丈の子どもが利用することなどを配慮し、あとから手前に落下防止用のガラスを取り付けたという。

「この建物は子どもが利用する施設ということで、設計の段階で多くの安全対策がなされています。しかし実際に建物を利用していく中で気がつくこともあり、そのための対策は随時取り入れるようにしています。子どもは予想もつかないような行動をとることもあるので、念には念を入れることが大切だと考えています」と星課長は話している。

病棟はスタッフの目が届く配置に

入院期間中の生活の場となる病棟は、高度医療を行う診療部門とは一線を画し、家と同じようにくつろぐことができる設計になっている。各フロアとも個室が多いが、入り口にガラス窓を設け、スタッフの目が行き届くようにした。

各フロアの中央にはナースステーションを兼ねた「スタッフステーション」を配置。壁やガラス窓で囲わず、子どもの目線に合わせた低めのカウンターが置かれており、看護師に限らずすべての病棟スタッフの拠点として機能している。

壁がないおかげでスタッフステーションからはすべての病室の入り口を見渡すことが可能だ。子どもたちや家族からもスタッフに声がかけやすい。

子どもたちが安全で快適に過ごせるスペースを

病院の1階は外来のスペースが中心で廊下を中心にして片側に診療室が並び、反対の窓側には独立したプレイルームのほか、おもちゃがおかれたテーブルがあるスペースが設けられている。さらに、授乳やオムツ替えのスペース、具合が悪いこどもが横になれるようなベッドなどが1箇所ではなく、院内のあちらこちらに配置されている。

写真(左)=プレイルーム/写真(中)=休憩ベッド/写真(右)=プレイスペース
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「予約制にして待ち時間を極力少なくするようにしていますが、ゼロにすることはむずかしい。患者さんの中にはまだ月齢の小さい子どももいますし、とても具合の悪い子どももいます。イスを並べただけの待合室で同じように順番を待っているのは辛いもの。それぞれの状況に合わせてできるだけ楽に過ごしてもらえるよう、配慮しています」と星課長は言う。

さらに、呼び出し用のPHSを患児の保護者に貸し出し、診療時や会計時までの待ち時間を好きな場所で自由に過ごしてもらう取り組みも行っている。退屈せずに過ごしてもらえるのはもちろんのこと、感染性の病気の疑いのある子どもも、他の子どもから離れたところで気兼ねなく過ごしてもらうことができる。

入院患者に24時間面会が可能
感染や連れ去り対策を万全に

同病院では入院患者の家族の場合は、24時間いつでも面会ができるようにしている。

「入院中は、病気に対する不安はもちろんのこと、いつもとは違う環境で過ごさなければならないなど、大変なストレスがかかります。子どもの場合はさらにストレスは大きいもの。家族がそばにいるだけでも良く眠れるし、安心します」と星課長は言う。

24時間の面会を可能にするためには、
◆感染抵抗力が低下している子どもの医療安全面
◆子どもの連れ去りなどの管理面
の両面からの安全対策が非常に重要だったという。そこで、同病院では独自の面談基準を設定。面談基準に合致した者にのみ、面会証を発行するシステムを採用している。

面会基準(http://www.miyagi-children.or.jp/guide/04.html)

「医療安全面で最も注意しているのは、家族を含めて外部から面会に来る者の感染症の既往と予防接種歴です。とくに15歳以下の子どもが面会を希望する場合には、必ず母子手帳の記録で確認するようにしています。治療の影響などで極端に抵抗力が落ちているお子さんの場合、感染は大きな問題ですから」と星課長は言う。

写真=インターホンの写真
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また、管理面ではチェックを強化。面会証を持っていても、病院の入り口と、病棟の入り口で二重のチェックを受ける。通常、病棟の入り口は施錠されているため、インターホンを鳴らして看護師を呼び出さなければ中に入ることはできない。今年(2006年)1月に同じ仙台市内の某病院で、新生児が部屋から連れ去られる事件が起きたということもあり、厳重に管理するようにしているそうだ。

プライバシーの保護も重視

写真=プレート
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なお、処置の際の患者の取り違えなどの予防策として、氏名の確認は欠かせないが、同病院では病棟の廊下など多くの人の目に触れるスペースでは個人情報が漏れないように配慮している。たとえば病室の前には氏名を隠すことのできるプレートを設置。

通常は部屋番号しかわからないが、必要なときには星型の蓋を開けると氏名が確認できる仕組みになっている。

「この病院の基本理念の中には、子どもの権利を尊重し、子どもが主役となる心の通った医療を提供することに加えて、高度な専門知識と技術にささえられた、良質で安全な医療を行うことが盛り込まれています。子どもたちが安心してここで病気を治すことができるように、さまざまな面で安全対策に取り組んでいきたいと考えています」と星課長は話している。