2年前に誕生した慣れ初めさんが問診と触診の練習を目的としているのに対し、石乃さんは神経内科患者に特化した問診と視診の練習用に開発された。現在、重症筋無力症の症状がプログラミングされており、医師の問いかけに対して「まぶたが重いです」「手が肩より上に上がりません」などと答えながら、顔の表情を変えたり、肩を物憂げに動かして見せたりする。医師はその答えや動きを拠り所に適切な判断を下せるように訓練する。 例えば「力が入りません」という訴えと動きに対し、その原因が神経性のものか、筋肉に由来するものか、電解質の不足によるものかを判断するためには、どう聞けばよいのかといったシミュレーションができる。 身長157センチの成人女性を想定した石乃さんは自重を支えるだけで精一杯のため、シリコンカバーで覆われている頭部と両手部を除いて剥き出しのまま。「できる限り人間らしい雰囲気や仕草の臨場感を出すのに心を砕いた」(同)。例えば、これまでは遮断機のような単純な動きしかできなかったシミュレーターとは一線を画し、メカニズムや制御装置の改良で肩関節や肩甲骨の滑らかな動きを再現できるようにした。 現在は重症筋無力症の診断に限定した動きとシナリオが用意されているが、先行き、神経内科の扱うすべての症状に対応できるプログラムを組み込んでいく計画。また、決められた台詞の中から最適なものを選択して会話する現在の方式を音声認識システムの活用による自由会話方式に改める。冒頭で紹介した問診ロボットはその特化型だ。 高橋教授は「電卓の普及が数学の教え方を変えたように、ヒューマノイド型ロボットの普及が医学教育そのものを大きく変えることになるだろう」とバーチャルシステムの活用がもたらす教育環境の変化を予言する。 |