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身体とこころの健康を学びあう「まち塾」

患者、健康に関心のある人、医療関係者が平場で学びあう「身体とこころの健康を学びあうまち塾」がこの10月からスタートした。毎回医療の現場からプレゼンターを向かえ、参加者一同で議論し、お互いの疑問や知見を学びあうというものである。第1回の話題提供者は昭和大学病院胸部心臓血管外科の手取屋岳夫教授。毎日、心臓手術をする立場から健康に生きるための学びあいを提唱するという。早速事務局が参加してみた。

日時は平成23年10月3日(月)19時。場所は昭和大学病院の会議室。昭和大学病院には患者など誰でも利用できる「健康の森図書館」がある。当初、まち塾はこの図書館にて定員20名で行われる予定であったが、参加申込者が予定数をはるかに超えたため、急遽別の会議室での開催となった。

4人ずつのテーブルがいくつか用意され、和やかな雰囲気のなかで、会議室正面に映し出されたスライドとともに手取屋教授の話が始まった。

日本人の多くは病死する!(今のところ)
何時かは医療行為の当事者となる!
その時のために、医療に対して自ら考え行動するトレーニングを!

心臓手術の特徴
心臓は休めない、休むとちょっとまずい!
だからとりあえず一定の時間に完結して
その後もとりあえずまずまずは動いてもらわないとまずい!

こうした親しみやすいイントロダクションに続き、手取屋教授が実際に執刀した手術をヘッドカメラで撮影した映像が公開された。日本では約3億円するという「ダヴィンチ」をカリフォルニアで使用したときのもので、手振れ防止機能がついていること、触覚が伝わりにくいこと、セットアップに時間がかかり手術時間が長くなること、針は1本¥3,000〜¥4,000、糸も高額でランニングコストがかかること、骨盤内手術に向いていること、などが解説された。

話題は良い医者の選び方にうつる。

手取屋教授曰く、信頼のおける人から紹介してもらうのが一番良い。ネットの情報は注意。ランキング本や新聞もどういう人がどのような取材をしているかによる。わからないことがあれば医者を質問攻めにするのが良い。その時にどのように説明してくれるか、ただ親切な言い方をするというだけでなく、業界用語を使わずきちんと説明してくれる人が信頼できる。

また、治療成績の公開については、症例コントロールされている可能性があり、本当の実力はなかなかわかりにくいという。日本の心臓手術の成績は世界的にとても良いので、普通の医療機関を選んできちんとコミュニケーションがとれれば良い、とのことだ。

続いて、豚の心臓を用いての手技が、全員の前で公開された。手を動かしながら糸の太さの種類や、冷凍保存されていた心臓が徐々に温度変化する様子なども教えてくれる。

アメリカから空輸されたブタの心臓
アメリカから空輸されたブタの心臓

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手取屋教授により、ブタの心臓を使ってのバイパス手術手技が実際に披露された

使用した心臓の片づけをしながら、参加者からのどんな質問にも即答してくれる。

手術の際、あらかじめ大体の金額を教えてもらえるのか、という質問には、このぐらいかかるということは絶対言うべきとの回答。実際患者から聞かれることもあり、できるだけ答えるようにしているとのこと。そして、治療成績よりも、針1本の値段、保険から支払われる金額、高額療養費制度のことなどをもっと開示したらよいのではないか、と。高額療養費は同一月の負担額が基準となるので、同じ治療であっても月をまたいだりすると人によって支払額が異なる。そうした不公平感が、医療費を少しでも安くおさえたいという患者の思いにつながり不払いがおこる。予約するだけで何万円とかかる病院もある。こうした情報をもっと公開すべきではないかということであった。

終了後、個別に「手術の際に大震災が起きたらどうするのか」と聞いてみた。地震の大きさにもよるが、相当規模の地震が発生したらまず医療従事者の安全を確保する。患者1人の命とそれに携わる5〜6人の従事者の命とどちらを優先するか、その場で瞬時に判断することになる、と。実際、東日本大震災の時、手取屋教授は執刀中だったという。あと数分揺れが長かったら危険であったと振り返っていた。

日常生活で医師とこんなにフランクに長時間お話できる機会はめったにないだろう。健康に関心のある人が気軽に参加できる「まち塾」。医療従事者と市民をつなぐ今後のポテンシャルの高さを予感させる場であった。

参加費は1回ごと2,000円。第2回は11月7日(月)骨のお話、第3回は12月5日(月)お薬のお話、と続く。興味をお持ちになった方は、こちら↓をご参照いただきたい。
(URL: http://www.mori-m-foundation.or.jp/machi/index.shtml )


2011年10月06日