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ネットワークを活かした県立病院の事故防止の取り組み


 前回紹介した東金病院の医療事故をきっかけに、千葉県は県立病院における医療事故対策を積極的に推進してきた。その内容には、県立病院ならではの特徴を生かしたものがあるようだ。
      

事故報告システムの統一化

 千葉県には7カ所の県立病院(県リハビリセンターを含めると8カ所)がある。それら各病院で起こったインシデントや事故は、所定のルールに基づいて、千葉県健康福祉部県立病院課(以下、千葉県)に報告されることになっている。

 千葉県では、インシデントと事故のレベルを以下のとおり定めている。
  
レベル0
ある医療行為が患者に実施されなかったが、仮に実施されたとすれば何らかの被害が予測される場合
レベル1
事故による被害が生ぜず、その観察によっても問題が生じない場合
レベル2
事故によりバイタルサインに変化が生じ、心身への配慮や検査の必要が生じた場合
レベル3
事故により治療の必要が生じた場合、および当初必要でなかった治療や処置が新たに必要となり、入院日数の増加や外来回数の増加が必要になった場合
レベル4
事故により傷害が重篤で、傷害が残る可能性が生じた場合
レベル5
事故により、死亡した場合

 県立病院はこの定義に基づき、各病院で起こったインシデントや事故を千葉県に報告している。レベル0からレベル2は、内容と発生場所の件数を集計して、所定の様式で毎月報告。レベル3以上は、所定の「事故報告書」にその内容を詳細に記載して、速やかに報告。レベル4以上の事故が発生した時は、速やかに院長から県に報告し、対策を協議することになっている。これら件数は毎月1回集計され、千葉県から各県立病院にフィードバックされることになっている。

インシデント及び事故のレベル別 報告の概要

 「患者管理や看護に関するものが34%と最も多く、次に注射、採血、点滴に関するものが21%、与薬に関するものが16%と続いている」と、千葉県健康福祉部県立病院課の山下朱實主幹はいう。

 このような報告システムが確立したのは、2001年1月から。前年5月に起こった県立東金病院の透析事故がきっかけとなった。県は2000年11月に「千葉県立病院における医療事故防止のための安全管理指針」を作成。各病院はこれに基づいて、「医療事故対策要綱」を作成し、組織的に事故防止に取り組むこととなった。

 指針では、前出のインシデントや事故の定義をはじめ、それらを報告するよう義務づけている。また、事故が発生した時の病院側と県の対応も明確にした。さらに、各県立病院が「医療事故対策委員会」を設置する他、各部署にリスクマネジャーを配置し、それらを統括するジェネラルリスクマネジャーも置くようにした。


事故発生時の報告ルート(例)


リスクマネジメント部会の活動とその成果

 2001年4月には、各病院にリスク担当副看護部長制も導入した。これは看護部の副看護部長を2人体制とし、そのうちの1人をリスクマネジメント担当としたものだ。看護部における統括リスクマネジャーとして、また、ジェネラルリスクマネジャーと連携し組織全体のリスクマネジメント対策にもあたることになっている。

 県では、このリスク担当副看護部長をメンバーとした、「リスクマネジメント部会」も設置した。この部会は看護師の確保と資質の向上を図るための「看護職員定着対策委員会」の下部組織に位置付けられている。

 リスクマネジメント部会は2カ月に1回開催。全病院の看護事故の集計やその原因分析をはじめ、各病院における事故対策活動を共有したり、県全体で改善が必要な内容を検討している。

 「注射事故を防止するため、注射器の色とその使用方法を統一し、県が一括してその注射器を購入したこともあります。昨年は、身体拘束抑制廃止基準も作成しました。事故事例の分析にしても、他の病院のやり方を学ぶことが出来ます。リスクマネジメントは地道な仕事ですが、8人が集まれば意欲的になりますし、共同研究にも発展します」と、山下主幹はリスクマネジメント部会のメリットをこう話す。

 このリスクマネジメント部会で検討された内容や、各病院の看護部における事故対策は、イントラネットでも公開されている。病院職員は他の病院の事故対策などを参考にすることが可能となっている。



各県立病院看護部のホームページはイントラネットでつながっており、
職員は他病院の取り組みを参考に出来る。

 
 リスクマネジメント部会における今年度の活動テーマは、転倒転落事故の防止策をはじめ、作業環境の見直し、現場で活用しやすいマニュアルの作成方法など、多岐にわたる。各病院のリスクマネジメントが適切に行われているかどうかを検証するため、他病院のリスク担当副看護部長によるパトロール(クロスパトロール)も実施する予定だという。

 県立病院の経営環境は悪化しているため、財政面における制約はある。しかし、必要なものは一括購入することでコスト削減につながる可能性はある。1カ所の病院では事故防止対策にも限界があるが、8カ所が集まればさまざまな情報や知恵が結集され、機動力も高まる。これからも県立病院の特性を生かした事故防止対策が講じられることを期待したい。



右側が千葉県健康福祉部県立病院課の山下朱實主幹、左側が山之内秀好副主幹。
山下主幹は昨年3月まで東金病院の看護部長だった。


千葉県立病院の概要

病院名 所在地 病床数(床) 職員数(人) うち医師数(人) うち看護師数(人)
がんセンター 千葉市 341 413 60 244
救急医療センター 千葉市 100 272 37 160
精神科医療センター 千葉市 50 77 8 40
こども病院 千葉市 203 338 40 241
循環器病センター 市原市 220 344 49 223
東金病院 東金市 191 205 22 128
佐原病院 佐原市 241 236 28 149
小計 1,346 1,885 244 1,185
千葉リハビリテーションセンター 千葉市 279 321 18 156
合計 1,625 2,206 262 1,341