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患者の理解を深める疾患解説ビデオの活用

 インフォームド・コンセントの必要性は理解していても、限られた診察時間内で十分な説明を行うのは困難を伴うことも多い。国際親善総合病院(神奈川県横浜市泉区、300床)では、病気や治療の説明にビデオを活用することで、患者の理解を促している。それは医療側にもゆとりをもたらす可能性がある。
 


 国際親善総合病院の循環器内科には、「心房細動」「心不全」「心筋梗塞」「狭心症」「心臓カテーテル検査」などのビデオが用意されている。患者は待合室の隅、あるいは診察室の一角にあるビデオデッキで該当する病気のビデオを視聴することが出来る。



診察室の一角に設けられたビデオ視聴コーナー。
ここであらかじめ疾患のビデオを見てから、医師の診察を受ける。



 視聴するタイミングは疾患やビデオの内容によって異なる。診察前に見てもらうものもあれば、検査前や入院時、退院時のものもある。中には合併症の解説ビデオのように、本人用と家族用に分けて用意されているのもある。

 例えば、心房細動の場合。ビデオは病気の症状や原因、合併症などを解説した「疾患編」と、治療方法を解説した「治療編」に分かれている。患者は確定診断が付いた段階で「疾患編」のビデオを視聴し、大まかな病気の知識を得てから、担当医の診察を受ける。その後、治療が必要になった段階で「治療編」のビデオを見る。

 ビデオは1巻あたり10分程度。担当医が登場し、ゆっくりとした口調で解説する。イラストや図、写真なども使われており、理解しやすい内容となっている。

 「これまでは患者ごとに15分〜20分程度かけて同じ説明を行ってきたが、ビデオを事前に見てもらうことで、半分程度の時間で済むようになった。その分を、個々の患者さんの事情に合わせた話しにあてられるようになった」と、同院循環器内科医長の澤野眞人さんはビデオ活用のメリットをこう語る。

 もちろんビデオを見せたからと言って、説明を省くわけではない。患者の理解度を確認しながら診察を行う。また、病気の症状などを説明したパンフレットも用意されており、さらなる理解に役立てようとしている。

 実際に、患者からも「ビデオはわかりやすい」と評判のようだ。同院が行った検証結果でも、ビデオを見せた場合の方が、医師の口頭説明だけの場合よりも、患者の理解が高まることがわかっている。

 この検証作業は、男性19人、女性7人の合計26人に対して行われた。対象になった人は、過去に循環器系疾患での入院や心臓カテーテル検査などの経験がなく、医療職に従事していない健康な成人である。年齢の偏りを減らして2つのグループに分け、一方にはビデオを見せ、他方には医師による口頭説明を実施した。説明する内容と時間は、両者とも同じとした。その後、筆記試験を行って理解度を確認したところ、ビデオを見せたグループの方が点数が高かった。

 そもそも病気の説明にビデオを活用しようと考えたのは、約2年前に遡る。それまでは同じ症状を訴える患者に、医師が同じ説明を繰り返していた。だが、他業界でビデオを用いて顧客に説明を行っているのをヒントに、医療現場でも使えないかと考えたのがきっかけとなった。ビデオをあらかじめ見てもらえば、説明に要していた時間を他の事にあてられると考えた。

 ビデオの製作にあたっては、澤野さんらが原稿と絵コンテを作成し、医療コンサルティング会社がビデオの撮影を行った。

 「医師による解説だけでなく、なるべくイラストや動画を入れて、わかりやすいものを作るよう心がけた」と、澤野さん。 


国際親善総合病院の循環器内科医長の澤野眞人さん。
疾患解説ビデオの製作に携わった。


 現在は、循環器内科だけでなく、消化器内科や産婦人科、放射線科などでも使われており、院内には約30巻程度のビデオがあるという。

 医師を目の前にすると、緊張して、聞きたいことも聞けないという患者の声は多い。ましてや、あらかじめ病気の知識がない者にとって、初めて聞く言葉も多く、一度で医師の説明を理解するというのは至難の業だ。その点、ビデオで予備知識を得ておけば、理解度が深まるのは確かだろう。医師も同じ説明を何度も繰り返す必要がなくなり、浮いた時間を有効に使える可能性は高い。

 同ビデオに興味がある方は、3月22日からクオリティー・オブ・ライフのホームページ(http://www.webqol.co.jp/vtrsample)を通じて、サンプル動画を見ることが出来る。ビデオの製作費用は、1巻あたり10分程度で30万円。既存のサンプルビデオの映像を差し替えるなどの場合は、5〜10万円程度。いずれも取材や撮影などにかかる交通費や宿泊費は別途必要になる。