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患者と医師の関係改善に役立つセカンドオピニオン

セカンドオピニオンを求める患者が増えている。昨秋、「セカンドオピニオン外来」を設置した東邦大学医学部付属大森病院(東京都大田区、1,041床)では、セカンドオピニオンが患者と主治医の関係改善に役立っているという。インフォームドコンセントを強化する役割も果たしているようだ。その事情を取材した。
 

特定機能病院に広がるセカンドオピニオン外来

 2003年9月、東邦大学医学部付属大森病院は「セカンドオピニオン外来」を開設した。セカンドオピニオンを受けたいと希望する患者や家族を対象に、専門診療科(28科)の診療部長(教授あるいは助教授)が相談に応じている。

 患者は、現在かかっている医師(主治医)の紹介状と検査データを持参する。セカンドオピニオンは患者だけでなく、紹介状を書いた医師にも報告される。

 「患者さんの中には、主治医に紹介状を書いてもらうのをためらう人もいる。遠慮があって言い出しにくいようだ。だが、セカンドオピニオンは、主治医のファーストオピニオンがあるからこそ成り立つもの。勇気を出して、主治医に切り出して欲しい」と、同院病院長の小山信彌さんは話す。

 こうしたセカンドオピニオン外来の開設が、東京都の特定機能病院を中心に広まっている。同院の他、国立がんセンター中央病院、帝京大学付属病院、日本医科大学付属病院、東京医科歯科大学付属病院でも、専門外来を開設して対応している。

 きっかけは、東京都の特定機能病院の病院長らをメンバーとする「東京都特定機能病院医療連携推進協議会」での話し合いだ。患者のセカンドオピニオンへの期待が高まる中、特定機能病院がそれらにどう関わっていくべきかが課題となり、平成14年から2年間かけて検討された。

 協議会では、セカンドオピニオンの目的と共通認識が決められた。その目的は、1.患者による治療法の選択と決定を支援すること、2.主治医と患者、その家族との信頼関係を強固にすることだ。

 共通認識は、1.主治医は患者がセカンドオピニオンを希望した場合、医療機関に情報を提供し、患者の選択に協力する、2.主治医はセカンドオピニオン実施医療機関に必要な診療情報や検査データなどを提供する、3.セカンドオピニオンを実施する場合は、治療行為は行わない、4.患者はセカンドオピニオン終了後に主治医に戻ることとし、セカンドオピニオン実施医療機関はその内容を主治医に提供する、というもの。

 都内の特定機能病院と都立病院は、これに従い各院で取り組みを進めていくことになった。


相談内容は前向きなセカンドオピニオンに限定

 東邦大学医学部付属大森病院もこの協議を踏まえ、セカンドオピニオン外来を開設するための準備委員会を設置。医師や看護師、事務職員が委員となり、内容の検討や準備が進められた。

 とはいえ、当初は医師の中に専門外来の設置に反対する者もいたという。セカンドオピニオンが医療訴訟につながりかねないという懸念があった。それらに対し小山さんは、「万一の時の責任は全て引き受ける」と説得。理解を得られるようになった。

 どの時間帯で対応するかも課題だった。医師からは、「一般診療とは別にして欲しい」という声が多かった。一般診療では他の患者も多く、患者も医師も落ち着いて話しが出来ないからだ。その結果、事前予約制とし月曜日と水曜日、金曜日の午後2時から対応することとなった。

 また、相談内容は治療に関するものとし、医療費や医療訴訟に関する相談は除外した。さらに、これから行う治療についての相談に限定。過去の治療に対するセカンドオピニオンは患者にとって必ずしも良い結果を生まず、医療訴訟に発展する可能性があると考えたからだ。


セカンドオピニオンの共有化で患者と主治医の関係改善

 開設から9カ月が経過したが、毎月10件以上の問い合わせがあるという。そのうち実際に来院したのは40人程度だ。主治医にセカンドオピニオンを希望する旨を患者が話したことで、主治医から病気についての詳しい説明を受け、来院しなくて済む場合も多いようだ。

 来院した患者には、毎回アンケート調査を実施しているが、全員が「利用して良かった」と答えている。相談は1時間に及ぶことが多いが、患者はゆっくり時間をかけて相談できたことに満足しているようだ。

 そうしてセカンドオピニオンを受けた患者は、その後に主治医のいる医療機関に戻り、治療を続けている人がほとんどだという。

 「主治医にセカンドオピニオンを戻すことで、患者とその情報を共有し、その後の治療方針について話し合いができる。その結果、互いの信頼関係が強まる。かつては患者と主治医の信頼関係は厚く、何でも相談できた。今は患者の大病院志向の高まりと、医療への不信感から、両者の関係がねじれている。こうしたねじれを解消するのもセカンドオピニオンの役割。収支は合わないが、病院サービスの一環として位置づけている」と、小山さん。

 ただ、数は少ないが、中には主治医を変えたいと希望する患者もいるという。

 「患者にとって医師の敷居はまだまだ高い。医師の接遇マナーにも改善の余地がある。医師はインフォームドコンセントをしたつもりでも、患者は病気について理解していないことも多い。この点は反省すべきかもしれない。患者もセカンドオピニオンに過剰な期待を寄せず、まずは主治医にしっかり疑問点などを聞いて欲しい。それに応じない医師ならば、その時こそ医療機関を変えた方が良いでしょう」と話している。



セカンドオピニオンを受け付ける窓口。
1カ月あたり10件程度の問い合わせがあるという。



東邦大学医学部付属大森病院の病院長、小山信彌さん。