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高度情報化薬局における医療安全対策

今国会に提案されている医療法改正案では、医療安全対策の一層の充実を図る観点から現在、病院・有床診療所に義務付けられている医療安全確保体制を、無床診療所・歯科診療所・助産所・薬局にも広げることが盛り込まれた。従来、薬局では調剤過誤防止対策を中心に医療安全に取り組んできたところだが、法律で義務化されることにより、改めてハード、ソフト面からの見直しが迫られることになる。



総合処方監査システムが威力を発揮
 神奈川県を中心に関東地区で15店舗を展開する望星薬局。大手の調剤薬局チェーンのように派手な出店を繰り広げるわけではないが、15店舗それぞれが地域薬局の中核的な役割を担う重厚な存在となっている。

 薬局の多くは今回の医療法改正案で薬局にも医療安全対策が義務付けられることの認識が薄いのが現状。法案の成立後、省令等で詳細が明らかになるが、「当薬局ではまったく心配していません」というのは、望星薬局の三溝和男専務取締役。
 安全対策はハード面とソフト面に分けて考えられるが、まず、ハード面では、調剤薬局で最も重要なチェック機能としての処方せん監査の充実がある。

 同社が採用している「総合処方監査システム」は、監査項目や監査内容などの点で、通常のレセコン機能をはるかに凌ぐ優れもの。添付文書の医薬品情報を処方監査システム用にコード化しており、用量、薬物相互作用、重複薬投与、禁忌などの医薬品情報と、アレルギー、妊娠の有無、原疾患・既往歴、生活環境、年齢などの患者情報による監査結果が画面で表示され、調剤の可否がデジタル的に判断される。人的な判断ミスが入る余地がなく、処方せんの安全性確保ではかなり精度が高いシステムということができる(図表1参照)。

 処方監査システムを通って、実際に調剤を行う際に計量ミスを発見し、防止するシステムとして威力を発揮しているのが「散剤監査システム」。散剤の調剤ミスは患者に重大な健康被害を与えてしまう場合が多い。薬剤師が気をつけなければならないのは、処方せんの記載量が主薬量(力価)なのか、重量なのか、処方せんの記載医薬品は原末か倍散なのかなどの判断が問われるケース。さらに紛らわしい医薬品の読み違え、医薬品瓶の取り違いなど慎重な対応が求められる。
 同社では、すべての薬局で散剤監査システムを導入している。「散剤監査システム」は、計量すべき医薬品名と重量を表示し、医薬品の製品バーコードと秤量された重量を入力値と比較してチェックするもの。正しく計量されていないと作業が完了しない(計量記録用紙の印刷ができない)ようになっている。また、計量記録紙は薬剤師による最終監査で確認されることになっている。

 このほか、同社では一昨年より携帯情報端末(PDA)を用いたヒート錠のピッキング監査システムの導入も順次進めている。これらの機能を持つ「調剤支援システム」は本部と各薬局をつないでいる。本部にマスターサーバーが設置されており、ここで各薬局に来局する患者IDを一元管理している。同社の複数の薬局で同じ患者が調剤を受けている場合でも、1人の患者のIDは全薬局で1つというように管理することで、重複投薬などを防ぐことができる。現在は、医療機関や薬局で「お薬手帳」が普及してこうした重複投薬を防ぐ役割を担っているが、同社の場合、1983年からシステムとして取り入れていることが大きな特徴だ。


本部と各薬局で安全管理体制構築
 調剤過誤やヒヤリ・ハット事例は、システムが充実したからといって完全に防止することは不可能。人間が介在する限り、必ずミスは起こる。そこで重要なのがミスを起こすことを前提とした対応だ。同社は2000年に全社的な安全管理体制を構築した(図表2参照)。本部に委員長以下8人で構成する安全管理委員会(担当部長=西郷勝行取締役)を設置。各薬局には薬局長をトップにした安全管理検討会を設けた。本部の安全管理委員会が最初に手がけたのが安全管理計画の立案。具体的には、安全管理要綱に基づき、全薬局に共通する「過誤管理マニュアル」を策定、これに基づき各薬局の事情を考慮した「過誤管理マニュアル」をそれぞれに策定した。各薬局ではマニュアルに沿って、現場に落とし込んだガイドラインを策定した。また、過誤が起こった場合の対応マニュアルも策定した。これは順次改訂を加えている。

 本部と各薬局が策定した各種マニュアルは実際に運用されて初めて効果を発揮する。例えば、調剤業務では、間違えやすい医薬品の保管、管理、ピッキング、調剤監査などは調剤作業標準に基づいて業務を行うことが義務化され、調剤作業標準も毎年見直して改善を図っている。
 それでもヒヤリ・ハット事例は少なからず生じる。こうした事例は毎月1回、インシデント報告として本部の安全管理委員会に報告される。また報告を受けるだけではなく、どこの薬局でも起こりえる事例として各薬局に還元されていく。過誤が起こった場合も同様に対応している。

 ルーチンの業務以外にも、各薬局では過誤防止対策に取り組むことが義務付けられている。薬局ごとにテーマを決めて、「今月はこの分野を取り上げ重点的に取り組む」などを徹底している。

 さらに毎年2回、「安全管理強化月間」を設定、安全管理の重要性を認識させるイベントを開催している。イベントでは、各薬局が薬局内の自主点検を行う。この結果は本部に報告されるが、再度本部の委員が出向いて再度チェックを行う。自主点検と本部スタッフによるチェックにはタイムラグがあるが、自主点検時に発見した不都合が改善されているかどうか、なお不都合がある場合には改善勧告をして、その結果の報告書の提出を義務付けている。このような取り組みは、社内のイントラネットで他の薬局にも情報として流れていく。各薬局がそれを参考にさらに改善を加えるよう促すためだ。

 このような取り組みの成果について西郷担当部長は「過誤が生じないような仕組みを組織的に設定し、文書でも表現することにより、全薬局のスタッフが共通の認識を持てるようになった」と話す。従来は各薬局や薬剤師の経験に依存することが多かった過誤対策だが、それでは薬局ごとの温度差が生じてしまう。また個人薬局では常に同じ薬局で業務を行うが、組織的な体制の中では、配置転換もある。配置が変わるたびに安全管理体制の仕組みが違っていたのではミスを誘発しかねない。西郷担当部長は、「システム化によって安全管理体制がかなり整備されてはいるが、システムに頼らず薬剤師ひとり一人が安全確保に尽力するという意識が重要。そのための努力は怠ってはならないと思う」と話す。


図表1. 望星薬局の総合処方監査システム


図表2. 安全管理体制のドキュメント


服薬指導現場


待合室


望星築地薬局の前景


安全管理委員会担当部長の西郷勝行さん