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No.61「睡眠時無呼吸症候群の患者に対するUPPP手術後、患者が死亡。病院の責任を認める高裁判決」

仙台高等裁判所平成14年4月11日判決 判例タイムズ1182号302頁

(争点)

  1. Aの死亡原因
  2. 過失

(事案)

患者A(昭和23年生まれの男性。軽度の肥満)は、平成4年2月3日から、Y労災病院(Y病院)呼吸器内科のいびき外来で、M医師の診察を受け、同月19日から20日にかけての睡眠時無呼吸モニター検査の結果、睡眠時無呼吸症候群(SAS)と診断され、精密検査の目的で、同年3月17日から24日まで、Y病院呼吸器内科に入院し、口蓋垂軟口蓋咽頭形成術(UPPP)の適応ありとして、手術療法を勧められた。

Aは、平成5年1月18日に手術目的でY病院耳鼻咽喉科に入院し、翌19日、両側扁桃切除術及び口蓋垂軟口蓋咽頭形成術(UPPP)を受けた(本件手術)。本件手術は19日14時38分から17時15分までの間行われた。翌20日午前2時過ぎ頃、病室で付き添っていたAの妻が、Aの呼吸が停止しているようであるとナースセンターに連絡をした。その後Aに対し救命治療が行われたが、20日午前3時30分、Aの死亡が確認された。病理解剖の結果、死因は突然死としか判明せず、解剖に立ち会ったT医師が、急性呼吸不全を死因とする死亡診断書を作成した。

Aの妻、3人の子供及びAの両親が、損害賠償を求めて訴訟を提起した。

(損害賠償請求額)

遺族の請求額:合計 9676万円
 (内訳:逸失利益5950万円+慰謝料2500万円+葬儀費用150万円+Aの父母の慰謝料2名合計で200万円+弁護士費用877万円。端数は一致せず)

(判決による請求認容額)

一審及び控訴審の認容額:遺族合計 9458万円
 (内訳:逸失利益5950万円+慰藉料2300万円+葬儀費用150万円+Aの父母の慰謝料2名合計で200万円+弁護士費用858万円)

(裁判所の判断)

Aの死亡原因

一審判決は、窒息死と認定しましたが、控訴審は致死性不整脈による心臓性突然死と判断しました。

過失

控訴審は、心臓性突然死の原因となる致死性不整脈を引き起こす重要な要因として換気不全があること、SAS自体が呼吸障害を伴うものであることから、SASと突然死の関連が指摘されていること、肥満の患者において、術後の呼吸不全により突然死の発生する危険性が指摘されていることなどを前提に、Aは本件手術後に換気不全の状態にあり、このような状態にある患者の呼吸管理が十分でないときは突然死の生ずる可能性があったからAの呼吸管理については十分な監視態勢が採られるべきであったと判示しました。 そして、Aについて午後5時52分に動脈血ガス分析が行われたが、その後定期的な動脈血ガスの測定が行われなかったこと、血圧の測定も看護記録上午後8時20分を最後に行われていないこと、午後12時にAの酸素マスクが外されたこと、経鼻エアウェイによる軌道確保の処置が講じられなかったこと等を指摘し、本件手術の術後管理態勢は極めて不十分なものであり、担当医師らには術後管理の過失があったと判断しました。

そして、Aに対して適切な術後管理が行われていれば、死亡の結果を回避することができた可能性が高いとして、一審判決の結論を維持し、病院側の控訴を棄却しました。

カテゴリ: タグ:,, 2005年12月 9日
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