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    <title>医療安全推進者ネットワーク</title>
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    <updated>2026-10-09T05:52:41Z</updated>
    
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    <title>選択のポイント【No.560、561】</title>
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    <published>2026-10-09T05:52:00Z</published>
    <updated>2026-10-09T05:52:41Z</updated>

    <summary>今回は、術式選択に関連して医師の過失が争点となった裁判例を２件ご紹介します。 Ｎ...</summary>
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    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="https://www.medsafe.net/">
        <![CDATA[<p>今回は、術式選択に関連して医師の過失が争点となった裁判例を２件ご紹介します。</p>
<p>Ｎｏ．５６０の事案では、裁判所は、判決中で、被告病院に設置された事故調査委員会が実施した医療事故調査の報告書を引用しています。そこには、被告病院の緊急時の医療体制に関し、（ア）急変時の相談機関として導入されているТ―ＩＣＵ（遠隔集中治療支援システム）がうまく活用されているとはいえない。（イ）夜間や休日にいつでも緊急開腹手術ができる体制が整備されていない。（ウ）被告病院で緊急開腹手術を行うことができない場合に、速やかに開腹手術可能な病院に転送する体制が整えられていない。（エ）輸血の発注から実施までに１時間以上かかる。ことが問題点として指摘されています。</p>
<p>Ｎｏ．５６１の事案では、被告医師らの説明義務違反も認められました。そして、裁判所は、原告が本件手術を受けるか否かについて相応に迷っていたとうかがわれること、原告は本件手術当時３３歳と若年で、その症状もめまい等の重篤なものではなかったこと等に照らせば、被告医師らから、ＴＶＥを実施する可能性があることや、原告のＤＡＶＦに対してはＴＶＥではなくＴＡＥを実施することが一般的であること等について適切な説明を受けていれば、ＴＶＥを実施する可能性のある本件手術には同意しなかった高度な蓋然性があったと判断しました。</p>
<p>両事案とも実務の参考になるかと存じます。</p>
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    <title>No.561「同意を得た術式と異なる術式により手術を実施し、患者が硬膜下血種により左半身に麻痺が残存。病院の責任が認められた事案」</title>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="https://www.medsafe.net/precedent/hanketsu_0_561.html" />
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    <published>2026-10-09T05:50:06Z</published>
    <updated>2026-10-09T05:50:42Z</updated>

    <summary>横浜地方裁判所令和７年７月１６日判決　判例タイムズ１５４５号１７９頁 （争点） ...</summary>
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        <name>管理者</name>
        
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        <category term="医療判決紹介" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="https://www.medsafe.net/">
        <![CDATA[<h3>横浜地方裁判所令和７年７月１６日判決　判例タイムズ１５４５号１７９頁</h3>

<h4>（争点）</h4>
<p>手術においてＮＢＣＡを用いてＴＶＥを実施したことが不法行為ないし債務不履行に当<br>たるか否か</p>

<p class="note">＊以下、原告を◇、被告を△と表記する。</p>

<h4>（事案）</h4>
<p>◇（平成３０年１月当時３３歳の女性・美容師）は、平成２９年８月ごろ、めまい等を主訴として、Ａクリニックを受診し、同クリニックにおいて「右後頭葉動静脈奇形～硬膜動静脈廔」と診断され、医療法人社団である△の経営する病院（以下「△病院」という。）を紹介された。</p>
<p>◇は、平成２９年８月２５日、△病院を初めて受診し、院長のＢ医師(以下「Ｂ医師」という。)に対し、主にめまいの症状があることを伝えた。</p>
<p>◇は、同年９月１１日から同月１３日までの間、脳血管撮影検査のために△病院に検査入院し、同月１５日までの間に、テント下もしくはテント内小脳皮質静脈にシャントポイント（動脈と静脈が連結した位置）を持つ「non-sinus type」のＤＡＶＦ（硬膜動静脈瘻。脳脊髄を包む硬膜内を走行する硬膜動脈が、本来であれば毛細血管を経由した上で静脈と連結するところ、毛細血管を経由することなく直接に静脈に連結するシャント疾患。動脈を流れる高圧の血液が静脈に流れ込むことによって、逆流等の循環障害を引き起こし、脳内出血等を引き起こすおそれがある。ＤＡＶＦのうち、動脈が静脈洞（脳の全ての静脈血が心臓に戻る際に通る硬膜内の太い静脈）に連結するものを「sinus type」といい、静脈洞ではなく、通常の細い畳宇脈に連結するものを「non-sinus type」という。）であると診断された。</p>
<p>◇は、平成２９年９月２２日、Ｂ医師から、検査結果や手術を勧める旨の説明を受けたものの、知人の医師を同席した上で改めて説明を受けたいとの意向を示し、同年１１月２４日に再び説明の機会を設けることとなった。</p>
<p>◇は、平成２９年１１月２４日、◇の母親及び知人の医者を同席うえ、Ｂ医師から、今後の治療方針やＤＡＶＦに対する治療のための手術（以下「本件手術」という。）に関する説明を受けた。Ｂ医師は、同日、◇に対し、「硬膜動静脈廔塞栓術の説明と同意書」と題する書面（以下「本件説明書」という。）を交付した。</p>
<p>上記説明において、Ｂ医師は、「やっぱり、リスクの高いことはしたくないので。症状は今はないもんだから。ある程度、このシャント量、動脈から静脈に行く短絡シャント量をできるだけ少なくしておくだけでも別に効果は違う」「だからまずは、あのー、消せるもので消していって。で、どうしてもダメな場合は静脈からまた考えますよってこと」「まず動脈。できるだけ奥まで詰めればそんなリスクは少ない。」「リスクはゼロとはいえないけれど、でも、これ頭の外なんで、比較的、その万が一何かそうなったとしても、脳出血のそういったリスクは少ない。だからできるだけ動脈側からまずやるだけやって、で、何回かに分けてね」「できるんだったら、静脈からで完治させてあげたいっていうのがこちらの希望なんだけど。まぁ、それはその時の手術におけるリスクとそこまでやれる、やれる安全性とリスクと天秤にかけて考えます。とりあえずは一旦はこの量を減らすことをやったほうがいいんじゃないかと思います」などと説明をした。</p>
<p>また、◇が治療経過について質問したところ、Ｂ医師は「大体動脈の治療に関しては、２回から３回。２回で終わるかもしれないし、３回ちょっとかかっちゃうかも」などと回答した。</p>
<p>◇は、平成３０年１月１１日、Ｂ医師に対し、署名押印をした本件説明書を交付し、同月１３日に本件手術を受けるために△病院へ入院した。</p>
<p>◇は、平成３０年１月１５日午前９時５０分から同日午後０時３０分までの間、全身麻酔下で本件手術を受けた。本件手術は、Ｂ医師及びＣ医師(以下「Ｃ医師」という。)により実施された。</p>
<p>Ｂ医師は、本件手術前の時点においては、動脈側からのアプローチであるＴＡＥ（経動脈的塞栓術。ＤＡＶＦに対する治療法の１つであり、シャントポイントの動脈側にマクロカテーテルを通し、動脈側を塞栓する治療法）を実施する予定であったものの、本件手術開始後、静脈からのアプローチであるＴＶＥ（経静脈的塞栓術。シャントポイントの静脈側にμカテーテルを通し、静脈側を塞栓する治療法）を試みたところ、比較的容易にカテーテルがシャントポイントに到達したため、そのままＴＡＥを実施することなくＴＶＥを実施することとした。</p>
<p>Ｂ医師は、シャントポイントの静脈側からコイル及び液体塞栓物質であるＮＢＣＡを用いて塞栓し、これよりシャントポイントが消失したことを確認した上、本件手術を終了した。　　</p>
<p>◇は、本件手術直後である平成３０年１月１５日午後０時５０分頃、病室に戻ったものの、頭痛スケール９／１０に相当する頭痛や嘔気を訴え、エリーテン(嘔気止め)及びアデフロニック(鎮痛剤)の処方を受けた。しかし、◇は、同日午後２時頃にも頭痛スケール８／１０に相当する頭痛を訴え、同日午後３時には「さっきよりましですが、痛いです」と述べ、この時点では頭痛スケール５／１０と判断されたが、午後３時５０分にも頭痛及び嘔気を訴え、酸素マスクを拒否して外すような状態となった。</p>
<p>Ｃ医師は、同日午後４時１５分頃、◇に対し、頭部ＣＴ検査を実施したところ、◇は急性硬膜下血腫(硬膜とくも膜の間に血液が溜まった状態)であると診断され、同日午後５時頃、緊急開頭手術を受けた(以下「本件緊急手術」という。)。</p>
<p>◇は、本件緊急手術により一命はとりとめたものの、左上肢と左下肢に麻痺が残存し、同年７月１日、同障害を理由とする身体障害者手帳(１級)の交付を受けた。</p>
<p>そこで、◇は△病院の医師(以下「△医師ら」という。)には、◇の同意を得ることなく、適応のない本件手術を実施した過失等があるなどと主張して、△に対し、使用者責任または債務不履行に基づき、損害賠償請求をした。</p>

<h4>（損害賠償請求）</h4>
<dl class="common-dl8">
<dt>患者の請求額：</dt>
<dd>２億８３６８万１４１２円 <br>（内訳：入院治療費１５２万９２４０円＋入院雑費６５万５５００円＋長下肢装具代１４万０６９４円＋+後遺障害逸失利益７９５３万１４２８円＋将来介護費１億３６０２万４５５０円＋慰謝料４０００万円＋弁護士費用２５８０万円）</dd>
</dl>

<h4>（裁判所の認容額）</h4>
<dl class="common-dl4-2">
<dt>認容額：</dt>
<dd>１億９３８７万２８６１円<br>（内訳：治療費及びリハビリテーション費用１５２万９２４０円+入院雑費６５万５５００円＋下肢装具代１４万０６９４円＋後遺障害逸失利益４８５７万８７００円＋将来介護費１億０１６４万３９２２円＋後遺障害慰謝料２３７０万円+弁護士費用１７６２万４８０５円）</dd>
</dl>

<h4>（裁判所の判断）</h4>
<h5>手術においてＮＢＣＡを用いてＴＶＥを実施したことが不法行為ないし債務不履行に当たるか否か</h5>
<p>この点について、裁判所は、以下（１）（２）等の理由から、本件手術において、◇はＴＶＥを実施するに同意しておらず、△医師らによるＴＶＥの実施は医師の裁量を逸脱しており、違法性阻却事由としての患者の同意を欠くものであって、不法行為及び債務不履行を構成すると判断しました。</p>
<dl class="common-dl0">
<dt>（１）◇の同意の有無</dt>
<dd>
<p>裁判所は、Ｂ医師の平成２９年１１月２４日の説明時の発言内容や質問に対する回答内容に照らせば、かかる説明を受けた患者は、本件手術において、まずは危険性の少ない動脈側からのアプローチ(ＴＡＥ)を実施するものであると考えるのが通常であり、本件手術後、いずれかの時点において、静脈側からのアプローチ(ＴＶＥ)を実施する必要が生じる可能性を認識することはできたとしても、少なくとも本件手術において、静脈側からのアプローチ(ＴＶＥ)を実施する可能性があると認識することは極めて困難であると判示しました。</p>
<p>また、Ｂ医師は同日の診療録において、「数回のＴＡＥの後にＴＶＥを考慮」と記載しているのであって、Ｂ医師自身も本件手術においてはＴＡＥを実施し、本件手術後に、改めてＴＶＥを実施することを前提としていたことがうかがわれると指摘しました。</p>
<p>そうすると、◇が本件手術においてＴＶＥを実施する可能性があることに認識していた又は認識し得たとはいえず、本件手術においてＴＶＥを実施する可能性があることを前提として、本件手術に同意したと認めることはできないと判断しました。</p>
</dd>
</dl>
<dl class="common-dl0">
<dt>（２）裁量逸脱の有無について</dt>
<dd>
<p>この点につき、裁判所は、Ｂ医師は、◇に対し、自ら動脈からのアプローチ(ＴＡＥ)の方が静脈からのアプローチ(ＴＶＥ)よりリスクが少ない旨の説明を実施しており、ＴＡＥとＴＶＥはそれぞれ危険性の異なるものであるとの認識を有していたとうかがわれること、△も「non-sinus type」のＤＡＶＦに対しては、ＴＶＥではなく、ＴＡＥを実施することが一般的であることはおおむね認めていること、実際に「non-sinus type」ないしテント部のＤＡＶＦについては、ＴＡＥを治療の基本とする文献のあること、◇の提出する鑑定書においてもＴＶＥにはＴＡＥとは異なる危険性があることについて指摘されている等の各種事情を踏まえると、仮に、◇のＤＡＶＦに対し、事前にＴＡＥを実施することなくＴＶＥを実施することが、本件手術当時の医療水準を逸脱したものとはいえないとしても、少なくとも、本件手術においてＴＶＥを実施するためには、患者である◇に対し、本件手術においてＴＶＥを実施する可能性があることを伝えた上で、その同意を得る必要があったというべきであり、△医師らがこのような説明や◇の同意を得ることなく、本件手術においてＴＶＥを実施したことは、医師の裁量逸脱する違法なものであったといわざるを得ないとしました。</p>
<p>裁判所は、◇は、ＴＶＥを実施する可能性があることを前提として、本件手術に同意したものとは認められず、△医師らが、◇の承諾なく、ＴＡＥからＴＶＥに術式を変更したことは、医師の裁量を逸脱したものとして違法であり、違法性阻却事由としての患者の同意を欠くものであって、診療契約上の債務不履行及び不法行為を構成すると判断しました。</p>
</dd>
</dl>

<p>以上から、裁判所は、上記（裁判所の認容額）の範囲で◇の請求を認め、その後判決は確定しました。</p>

]]>
        
    </content>
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<entry>
    <title>No.560「内視鏡的粘膜下層剥離術（ＥＳＤ）を受けた８４歳患者が出血性ショックにより死亡。適応を欠く手術をしたとして医師の注意義務違反を認めた地裁判決」</title>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="https://www.medsafe.net/precedent/hanketsu_0_560.html" />
    <id>tag:www.medsafe.net,2026://2.1301</id>

    <published>2026-10-09T05:48:42Z</published>
    <updated>2026-10-09T05:49:34Z</updated>

    <summary>東京地方裁判所令和３年８月２７日判決　判例時報　２５４２号７０頁 （争点） 患者...</summary>
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        <name>管理者</name>
        
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    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="https://www.medsafe.net/">
        <![CDATA[<h3>東京地方裁判所令和３年８月２７日判決　判例時報　２５４２号７０頁</h3>

<h4>（争点）</h4>
<p>患者に内視鏡的粘膜下層剥離術（ＥＳＤ）の適応があったか否か</p>

<p class="note">＊以下、原告を◇<sub>1</sub>および◇<sub>2</sub>、被告を△と表記する。</p>

<h4>（事案）</h4>
<p>Ａ（死亡時８４歳の男性）は、平成３０年（以下、同年の出来事を指す場合には記載を省略する。）３月２８日、医療法人社団である△の開設する病院（以下「△病院」という。）消化器内科を受診し、小球性貧血の精査及び消化管出血疑いのため、４月４日に造影ＣＴ (腹部・骨盤)検査を、同月１３日に上部内視鏡・下部内視鏡検査をそれぞれ受検することとした。</p>
<p>Ａは、△病院において、これらの各検査を受けたところ、胃に腫瘍が認められ、生検が実施されたほか、Ｓ状結腸憩室が確認された。</p>
<p>Ａは、４月２５日、△病院の消化器内科を受診し、胃癌疑い(病理検査：Ｇｒｏｕｐ４)、ピロリ感染胃炎、膀胱結石、結腸憩室との診断を受けた。</p>
<p>Ａは、△病院において、５月１１日に造影ＣＴ(胸部・腹部・骨盤)検査を、６月２日に、腹部超音波・胃透視検査を受け、ＥＳＤ（内視鏡的粘膜下層剥離術）の治療を受ける方針となった。ＥＳＤとは、早期胃癌等に対する内視鏡治療の一つであり、高周波デバイスを用いて病巣周囲の粘膜を切開し、さらに粘膜下層を剥離して切除する治療方法である。</p>
<p>Ａは、６月１１日、△病院の消化器外科を受診し、Ｄの診察を受けた。Ｄは、Ａに対し、ＥＳＤが適応外であることを説明したが、ＡがＥＳＤの実施を強く希望したため、確実に腫瘍が取れる保証はなく、取れたとしても追加切除が必要になる可能性があること、術中に穿孔が生じた場合や、出血コントロールがつかない場合にはＥＳＤを中止する可能性があり、緊急開腹手術になる可能性もあることを説明した上、Ｄ医師による本件ＥＳＤを７月１８日に実施することとした。本件当時、Ｄ医師の医師としての経験年数は３０年以上３５年未満であり、ＥＳＤの経験も豊富であった。</p>
<p>Ｄ医師は、６月１６日、Ａ及びその家族に対し、Ａの胃に悪性と思われる腫瘍があること、通常であれば開腹手術の適応であるが、Ａが強く希望したため、例外的に内視鏡治療であるＥＳＤを行うこととしたこと、ＥＳＤで腫瘍を切除できるかは不明であり、確実に取れる保証がないこと、術中に大量出血や穿孔が生じ、緊急開腹手術になる可能性があること、ＥＳＤによる治療が難しい場合には、後日開腹手術を実施することを説明した。</p>
<p>術前検査により、本件でＥＳＤの対象とされた腫瘍（以下「本件病変」という。）は、約９ないし１０ｃｍ大の隆起した腫瘍であること、造影ＣＴにおいて異常に太い腫瘍内血管があることが確認されていた。ただし、病巣は胃内に限局しており、リンパ節転移や遠隔転移は確認されていなかった。</p>
<p>Ａは、７月１８日（以下、同日などの出来事を指す場合には、記載を省略し、時刻のみを記載する。)、本件ＥＳＤを受けるために△病院に入院した。</p>
<p>Ｄ医師は、午後１時５分、Ａと家族に対し、腫瘍を切除できない可能性があること等を説明した上で、午後１時２４分、本件ＥＳＤを開始した。なお、午後１時１５分時点におけるＡのバイタルは、血圧が１４５／６６ｍｍＨｇ、心拍数が８４ｂｐｍ、ＳｐＯ2数値が９７％であった。</p>
<p>Ｄ医師は、午後１時３３分、本件病変周囲の粘膜の切開を開始した。前壁側約半周の粘膜の切開はトラブルなく終了し、午後１時５２分から切離面に太い血管が何度も確認されたため、止血をしながら施術を継続した。</p>
<p>Ｄ医師は、午後３時頃から、大きなしこり部分の切除を開始した。</p>
<p>Ｄ医師は、午後４時２０分頃、Ａの血圧が８６／５３ｍｍＨｇと低下したところ、これを出血のためと判断し、午後４時２３分、ボルベン輸液(循環血液量の維持に用いる薬剤)の急速投与を指示し、同投与が開始された。 Ｄ医師は、午後４時２５分にはＡの血圧が１０３／４０ｍｍＨｇと回復した頃から、本件ＥＳＤを継続した。</p>
<p>また、Ｄ医師は、午後５時頃から、腫瘍により視野が妨げられることが多くなり、止血に難渋するようになったことから、本件病変を一括切除することを諦め、剥離していた腫瘍を分割切除し、一旦治療を終了する方針へと切り替えた。</p>
<p>Ａの血圧は午後６時頃から急速に低下し、午後６時７分には胃の穿孔が確認された。Ｄ医師は、（１）午後６時４３分の採血の結果、Ｈｂ (ヘモグロビン)値が１０.４ｇ／ｄｌであり、本件ＥＳＤの開始から約５時間で２ｇ／ｄｌほどしか低下していなかったことから、出血量は多くないと考えたほか、（２）血圧低下の原因は、胃を拡張させるために炭酸ガスを注入していることにある、（３）右鼠径部の脈拍が触知できていることから、血圧は７０台を保っていると考え、直ちに輸血する必要はないと判断し、凝固血塊を吸引するなどしながら施術を継続した。なお、前記（１）の検査結果にはエラー表示がされていたが、Ｄ医師はこれを見落としていた。</p>
<p>Ａの血圧は、午後７時１５分、６８／２０ｍｍＨｇと急激に低下した。Ｄ医師は、鼠径部の脈拍が触知できることを確認した上で、補液をしながら本件ＥＳＤを継続し、午後７時２３分にはスネア(高周波の電流を流して病変を焼き切る器具)による本件病変の分割切除を開始した。Ｄ医師は、午後７時３０頃分から午後８時頃にかけて、Ａの低血圧状態に対して、ボルベン輸液５００ｍｌを３本投与したほか、ノルアドレナリン(昇圧剤)やビカネイト(循環血液量及び組織間液の減少時における細胞外液の補給や補正、代謝性アシドーシスの補正に用いるもの)を投与し、午後７時４５分と午後７時５３分にはクリップによる止血を実施した。</p>
<p>Ｄ医師は、午後８時頃の採血の結果、Ｈｂ値が４.５ｇ／ｄｌと急速に貧血が進行していることを確認し、輸血が必要であると判断した。また、Ｄ医師は、血液ガス検査の結果(ｐＨ６.８９１)、アシドーシス(血液が酸性になること)が進行していると判断し、脱気をするとともにメイロン(炭酸水素ナトリウム液。アシドーシスを改善する。)を追加投与し、その後も、ノルアドレナリンやビカネイト、メイロン等を追加投与した。</p>
<p>Ｄ医師は、午後８時３８分、輸血が到着するまでの間に、更に出血しないように、一旦ＥＳＤを中止することとし、脱気をしながら全身状態を落ち着かせることに専念した。</p>
<p>Ａに使用する輸血は午後９時３０分に△病院に到着した。Ｄ医師は、午後９時３４分からＡに対する輸血を開始し、輸血によりＡの血圧が徐々に回復していることを確認した上で、午後１０時８分と午後１０時９分にはクリップによる止血を行い、これにより出血が止まったと判断した。</p>
<p>Ｄ医師は、午後１０時２５分、止血を確認し、午後１０時３１分の採血の結果、Ｈｂ値が８.４ｇ／ｄｌ、ｐＨが７.１８２と改善したことを確認して、午後１０時５４分、Ａを内視鏡室から病棟へ移送した。</p>
<p>Ａについては、帰室後も低血圧状態が続き、Ｄ医師や△病院消化器外科医師において、Ａに対する輸血及びノルアドレナリンやメイロン等の投与が行われた。</p>
<p>Ｄ医師は、７月１９日午後１時６分、Ａのバイタルサインが安定しないため、出血の可能性が高いと考えて、胃カメラを実施したところ、複数箇所から細やかな出血があることを確認し、内視鏡で止血した。</p>
<p>Ａは、７月１９日午前１時２９分、心停止となった。Ｄ医師と△病院の消化器外科医師らは、同日午前２時１５分まで心臓マッサージを継続したものの、心停止の波形は変わらず、Ａについては同日午前２時４４分、死亡が確認された。</p>
<p>そこで、Ａの相続人である◇らが、Ｄ医師には、適応外のＥＳＤを実施した注意義務違反が認められると主張して、△に対し、使用者責任による損害賠償請求権に基づき請求した。</p>
<p>△病院に設置された事故調査委員会（以下「調査委員会」という。）は、本件に関し、医療法６条の１１に基づく医療事故調査を実施し、報告書（以下「本件報告書」という。）を作成した。</p>

<h4>（損害賠償請求）</h4>
<dl class="common-dl4-2">
<dt>請求額：</dt>
<dd>遺族２名合計３２９２万２０２４円 <br>（内訳：葬儀関連費用１５０万円＋墓石彫刻費用４万６４４０円＋逸失利益５３８万２６７３円＋死亡慰謝料２０００万円＋近親者固有の慰謝料遺族２名合計３００万円＋弁護士費用２９９万２９１１円）</dd>
</dl>

<h4>（裁判所の認容額）</h4>
<dl class="common-dl4-2">
<dt>認容額：</dt>
<dd>遺族２名合計３１６８万２６７２円<br>（内訳：死亡慰謝料（近親者の慰謝料を含む）２２００万円＋逸失利益５３８万２６７３円＋葬儀関連費用１５０万円＋弁護士費用２８０万円。相続人が複数のため端数不一致）</dd>
</dl>

<h4>（裁判所の判断）</h4>
<h5>患者に内視鏡的粘膜下層剥離術（ＥＳＤ）の適応があったか否か</h5>
<p>この点について、裁判所は、調査委員会は、本件報告書において、本件ではＥＳＤの適応がなかったとして、◇の主張に沿う見解を示しているとしました。</p>
<p>裁判所は、△は、これに対して積極的に反論していない上、本件報告書に示された見解は、医学的知見や診療経過等に即したものであり、基本的にこれを採用することが相当であると判示しました。</p>
<p>すなわち、ＥＳＤに係る各ガイドラインにおいて、病変が一括切除できる大きさと部位にあることがＥＳＤの適応の基本的な考え方とされており、潰瘍所見の有無に応じて２ないし３ｃｍが一つの指標として掲げられるところ、本件病変はこれを大幅に上回る約９ないし１０ｃｍ大の腫瘍であった。この点に加え、術前の造影ＣＴにおいて、異常に太い腫瘍内血管が認められていたことにも照らすと、本件ＥＳＤにおいては、処置に長時間を要し、多量の出血が見込まれることが事前に予想されていたといえる(ＥＳＤは一般的にも出血を伴うことが指摘されているが、本件では前記事情からより一層出血の危険があったといえる。)。Ａが本件当時８４歳と高齢であったことに照らすと、そのような長時間の施術や出血に耐えうる状況であったとは認め難く、術後の穿孔や出血のリスクもあったといえると指摘しました。</p>
<p>裁判所は、これらの事情を総合的に考慮すると、Ａが開腹手術よりも内視鏡治療の実施を希望していたことを踏まえても、本件ＥＳＤは適応を欠くものであったといわざるを得ないとしました。</p>
<p>よって、Ｄ医師には、適応を欠く本件ＥＳＤを実施したことにつき、注意義務違反が認められるとしました。</p>
<p>以上から、裁判所は、上記（裁判所の認容額）の範囲で◇らの請求を認め、その後判決は確定しました。</p>
]]>
        
    </content>
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    <title>「命を守る」を土台に、食の安全にも向き合う―― 済生会千里病院の取り組み</title>
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    <published>2026-09-25T04:24:17Z</published>
    <updated>2026-09-25T04:27:26Z</updated>

    <summary> 入院患者が75歳以上の場合、入院後初回の食事の主食は「全粥」、副食は「一口大」...</summary>
    <author>
        <name>管理者</name>
        
    </author>
    
        <category term="最新動向" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="https://www.medsafe.net/">
        <![CDATA[<div class="common-wrap margin-bottom10">
<p>入院患者が75歳以上の場合、入院後初回の食事の主食は「全粥」、副食は「一口大」に調理して提供する――。社会福祉法人恩賜財団大阪府済生会千里病院（以下、千里病院、327床）が2020年10月１日から実施している取り組みです。医療安全の視点から取り入れている窒息予防策の一環。千里病院は大阪府北部の豊能医療圏で救急医療と地域医療の中核を担っています。全国に病院・診療所を展開する済生会グループの中でも、救急医療の実践的な人材育成や地域住民への啓発活動を先駆的に手がけてきた病院の一つです。その姿勢は救急の現場だけでなく、入院患者の日常的な療養環境の安全確保にも一貫して表れています。同院の全体像と、その中でも特徴的な「窒息事故を防止するための食事提供」という取り組みを中心に紹介します。</p>
</div>

<div class="contents">
<h3>地域医療と救急医療の中核機能を担う</h3>
<p>千里病院は、千里ニュータウンの健康管理体制を担う目的で開設された歴史を持ち、現在は総合病院として、また大阪府がん診療拠点病院として地域医療を支えています。</p>
<div class="contents-c margin-bottom10">
<a href="../files/recent/184safety/img01.jpg" rel="lightbox" class="vertical" title="病院外観（南西面）">
<img src="../files/recent/184safety/thumb_img01.jpg" alt="病院外観（南西面）"></a><br>
<span class="img-coment margin-bottom5">病院外観（南西面）</span>
<span class="font-s gray">※クリックで拡大</span>
</div>
<p>大阪府立救命救急センターの運営を引き継いだ経緯もあり、１次救急から３次救急まで病院を挙げて対応できる体制を整備。災害拠点病院として災害管理棟を設置し、DMATカーを導入するなど、広域災害医療にも力を入れています。</p>
<p>さらに、地域医療支援病院・がん診療拠点病院として、登録医制度を通じて近隣の開業医と密に連携するほか、訪問介護ステーション、緩和病棟も併設するなど、地域の医療機関との連携を強化してきました。</p>
<div class="contents-c margin-bottom10">
<a href="../files/recent/184safety/img02.jpg" rel="lightbox" class="vertical" title="緩和病棟">
<img src="../files/recent/184safety/thumb_img02.jpg" alt="緩和病棟"></a><br>
<span class="img-coment margin-bottom5">緩和病棟</span>
<span class="font-s gray">※クリックで拡大</span>
</div>
<p>同院の救命救急センターは、2002年に日本で初めて「千里メディカルラリー」を開催したことでも知られています。メディカルラリーとは、救急医療の模擬現場を再現し、特殊メーキャップを施した模擬患者を医療チームが限られた時間内で的確に判断・処置できるかを競う実践型の技能コンテストで、日本最大級の規模を誇り、毎年全国から多くの医療チームが参加しています。この取り組みは同院発祥にとどまらず、他の医療機関にも広がり、全国的な取り組みへと発展してきました。</p>
<p>また、心肺蘇生を含む応急手当への理解と意識向上を目的に、子どもや保護者、学校関係者が参加する「千里子どもメディカルラリー」も日本で初めて開催しています。地域住民自身が救命の担い手となることを目指した取り組みであり、地域全体の救命率向上に寄与しています。</p>
<p>さらに、将来の医療人材育成を目的とした「学生メディカルラリー」も実施しており、若い世代が実践的に救急医療を学ぶ機会を提供しています。こうした一連の活動を通じて、同院は救急医療体制の充実と質の向上を図るとともに、地域社会全体の福祉向上に貢献しています。</p>
</div>

<div class="contents">
<h3>医療安全を重視した運営を心がける</h3>
<p>同院は「心のこもったチーム医療を行う」という行動規範を掲げ、医療安全を重視した運営を行っています。医療行為である以上、ミスや事故が起こり得ることを前提に、そうした事態が生じた際には患者の命と安全を最優先に、調査・検討会を実施し、患者や家族への誠実な説明に努めています。</p>
<p>インシデント・アクシデントレポートの事例は週１回程度のカンファレンスで共有され、医療安全対策委員会の構成員や各部門の安全管理責任者が参加。カンファレンスの結果や対策は迅速に現場へフィードバックされるとともに、医療安全対策委員会でも改めて検討を行い、必要な対策を病院全体で共有する仕組みが整えられています。報告の内容によっては、できる限り現場に赴いて聞き取りを行うなど、丁寧な事実確認も重視されています。</p>
<p>医療安全に関わる現場では、患者を最優先に考えることはもちろんのこと、職員個人に責任を押し付けるのではなく、病院全体として安全を保つ姿勢が貫かれている点が特徴です。こうした組織的な安全文化が、後で紹介する食事提供をめぐる取り組みの土台にもなっています。</p>
</div>

<div class="contents">
<h3>きっかけは院内の窒息事例</h3>
<p>こうした医療安全への姿勢が具体的な形となって表れているのが「窒息事故を防止するための食事提供」への取り組みです。これは、院内で食物による窒息事例が発生したことをきっかけに始まりました。当時は食事提供や摂取状況の評価に関する院内の取り決めがなく、何を観察すべきか、どの食事形態を選べば安全なのかという基準もありませんでした。</p>
<p>折しも担当者が2010年に摂食・嚥下障害看護認定看護師の資格を取得したこともあり、摂食嚥下機能を踏まえて安全に食事を提供できる体制づくりが本格的に検討されることになりました。</p>
<p>入院患者は、環境の変化や体調の変化によって、入院前とは異なる状況に置かれます。よほどのことがない限り、入院前に食べていた食事形態より固いものを新たに食べられるようにはならないという前提のもと、平成19年度厚生労働科学特別研究「食品による窒息の現状把握と原因分析」を基礎に、院内での対策が検討されました。</p>
<p>具体的には、まず入院前の生活状況・食事状況・咀嚼状況・義歯の使用有無などを把握するための「食事に関する質問用紙」を作成。患者の状態を把握しきれていない入院後第１食目が最も窒息リスクが高いことから、医師が用いる「食事選択についてのフローチャート」と、看護師が入院時に用いる「窒息のリスクが高い患者の抽出用紙」を整備しました。リスクの高い患者については、第１食目を看護師が必ず観察することとし、その観察内容を明確にするため「食事摂取状況の評価」の様式も作成しています。</p>
<div class="contents-c margin-bottom10">
<p class="no-indent"><a href="../files/recent/184safety/184safety01.pdf" target="_blank">【様式（１）】食事に関する質問用紙.pdf</a></p>
<p class="no-indent"><a href="../files/recent/184safety/184safety02.pdf" target="_blank">【様式（２）】食事選択のフローチャート（一般）.pdf</a></p>
<p class="no-indent"><a href="../files/recent/184safety/184safety03.pdf" target="_blank">【様式（３）】食事選択のフローチャート（救急）.pdf</a></p>
</div>
</div>

<div class="contents">
<h3>入院後第１食は一律に｢全粥・一口大｣</h3>
<p>マニュアルは2010年から運用を開始していますが、数年ごとに発生した誤嚥・窒息インシデントのたびに見直され、改訂を重ねてきました。医師や看護師には異動や入れ替わりがあり、危機意識は時間とともに薄れがちだからです。</p>
<p>そうした中で、医師が食事内容を都度選定することの難しさが浮かび上がり、2020年度の改訂では「後期高齢者食」という区分を新設。75歳以上の患者については、入院後第１食目を一律「全粥・一口大」で提供することとしました。75歳未満の患者については、従来どおり質問用紙をもとにしたフローに沿って食事形態を選定しています。</p>
<div class="contents-c margin-bottom10">
<a href="../files/recent/184safety/img03.jpg" rel="lightbox" class="vertical" title="嚥下食の例：主食全粥、副食極刻み４～５品／食、５分粥軟菜食、とろみつ餡かけ付き">
<img src="../files/recent/184safety/thumb_img03.jpg" alt="嚥下食の例：主食全粥、副食極刻み４～５品／食、５分粥軟菜食、とろみつ餡かけ付き"></a><br>
<span class="img-coment margin-bottom5">嚥下食の例：主食全粥、副食極刻み４～５品／食、５分粥軟菜食、とろみつ餡かけ付き</span>
<span class="font-s gray">※クリックで拡大</span>
</div>
<p>さらに2024年の改訂では、看護師による食事摂取状況の評価が十分に定着していないという課題を受け、評価項目を危険度別に色分けし、視覚的に理解しやすい様式へと見直しました。評価を行う意味そのものを理解してもらい、評価結果を次の看護へつなげることを目的とした改訂です。</p>
<div class="contents-c margin-bottom10">
<p class="no-indent"><a href="../files/recent/184safety/184safety04.pdf" target="_blank">【様式（４）】食事摂取状況のチェックリスト.pdf</a></p>
</div>
<p>この取り組みは、インシデントをきっかけに医療安全管理室・栄養科・摂食嚥下障害看護認定看護師が会議を重ねて検討を進める体制で推進されてきました。</p>
<p>導入にあたって留意したのは、多忙な業務の中でも継続してもらえるよう、手順を複雑にしすぎないことです。一方で看護師にとってはカルテ入力の増加や、初回食事評価を担う人員の確保といった課題もあったため、入力状況を確認しながら繰り返しアナウンスと周知を行いました。</p>
<p>また、後期高齢者食として一律「全粥・一口大」を提供する運用については、自歯で元気に食事を摂れる高齢患者や、粥を好まない患者への配慮も必要でした。そこで、入院１食目は食札に形態を明記せず、看護師が摂取状況を観察したうえで食事形態を引き上げられると判断すれば説明を行い変更するという段階的な運用とすることで大きな苦情につながらずに定着させることができました。</p>
</div>

<div class="contents">
<h3>開始から15年、見えてきた手応えと課題</h3>
<p>取り組み開始から改訂を重ねて15年が経過し、食事の質問用紙から窒息リスクの高い患者の抽出用紙の記載がないと食事提供ができない（入院前の食事状況が分からないため）と立ち止まって確認する看護師が増えたといいます。誤嚥インシデントが起きた際には、マニュアルのどこに不備があったかを振り返るツールとしても機能しています。</p>
<p>一方で、運用面での課題も残っています。スタッフの入れ替わりは４月の新規採用だけでなく、中途採用や応援看護師、医師のローテーションなど年間を通じて発生するため、マニュアルの周知徹底が容易ではありません。</p>
<p>新人研修での説明だけでは日常業務の中で忘れられてしまうことも多く、各診療科・病棟での現任教育や、摂食嚥下支援チームのリンクナースによる支援に頼らざるを得ないのが実情です。この点については、摂食嚥下支援チームのリンクナース会で継続的に調査・修正を行っています。</p>
<p>また、後期高齢者の増加に伴い「全粥・一口大」の提供対象が拡大する中で、一口大にカットする作業が給食業者の人員・労働時間の負担になっていることも明らかになりました。委託業者側からは一口大提供の廃止についての申し出もあり、現在は医療安全管理室・栄養科・摂食嚥下支援チームが連携し、就業時間や人件費に関する資料をもとに、マニュアルの改訂内容や食事オーダーの見直しを含めた検討を進めています。併せて、一口大に代わる咀嚼調整食の試食会も行われ、一口大でなくても軟らかい食事を提供できる可能性が探られています。</p>
</div>

<div class="contents">
<h3>医療の質支える先駆性と地道な安全対策</h3>
<p>入院という環境の変化は、高齢者に限らずどの年代の患者にも喉に詰まらせるリスクをもたらし得るものです。食事は本来、生活を楽しく彩るものですが、入院中は制限を伴わざるを得ません。</p>
<p>それでも、まずは安全に食事ができることを第一に、患者一人一人の病状や嚥下機能に合わせた食事選択を行い、医療従事者が患者の食事によりいっそう関心を持てるよう、マニュアルの遵守と定着を図っていく方針です。併せて、人事課や各部署のオリエンテーションへの参画を通じて、マニュアルの周知をさらに進めていきたいとしています。</p>
<p>こうした取り組みの根底には「摂食嚥下支援チームの活動そのものを拡大していく必要がある」という認識もあります。マニュアルの運用によって、窒息リスクの高い患者を把握し、食事摂取状況を評価できる体制は整ってきましたが、摂食嚥下障害のある患者への介入や多職種連携を通じて、その患者にとっての食事のゴールをチームで検討するところまでは、すべての患者に行き渡っているわけではありません。窒息リスクの高い患者ほど、摂食嚥下支援チームが積極的に介入すべきだという考えのもと、リンクナースを含め、現場が気軽に相談できる環境をさらに広げていくことが課題として挙げられています。</p>
<p>同院はこうした地道な取り組みについて「一人でも多くの患者が入院中に安全に食事を摂取できるよう働きかけができているのではないか」と捉えています。入院は疾病による環境や体調の変化を伴い、これまで問題なく食べられていた食事が突然のどに詰まるリスクにつながることも起こり得ます。</p>
<p>食事は本来、生活を潤す楽しみの一つですが、まずは安全に食べられることを土台に据えたうえで、患者を取り巻く多職種のチームが連携し、支えていく姿勢が今後も求められています。救急医療における全国的な先駆性と、日常診療における地道な安全対策の両輪こそが、千里病院の医療の質を支えているといえるでしょう。</p>
<div class="contents-c">
<a href="../files/recent/184safety/img04.jpg" rel="lightbox" class="vertical" title="病院外観（南東面）">
<img src="../files/recent/184safety/thumb_img04.jpg" alt="病院外観（南東面）"></a><br>
<span class="img-coment margin-bottom5">病院外観（南東面）</span>
<span class="font-s gray">※クリックで拡大</span>
</div>
</div>

<div class="contents">
<div class="sign">企画・取材：伊藤公一</div>
</div>]]>
        
    </content>
</entry>

<entry>
    <title>選択のポイント【No.558、559】</title>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="https://www.medsafe.net/precedent/hanketsu_0_558-59.html" />
    <id>tag:www.medsafe.net,2026://2.1299</id>

    <published>2026-09-11T01:47:47Z</published>
    <updated>2026-10-01T07:00:21Z</updated>

    <summary>今回は、病院側の注意義務違反と患者（受診者）の死亡との間の因果関係は否定されまし...</summary>
    <author>
        <name>管理者</name>
        
    </author>
    
        <category term="医療判決紹介" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="https://www.medsafe.net/">
        <![CDATA[<p>今回は、病院側の注意義務違反と患者（受診者）の死亡との間の因果関係は否定されましたが、注意義務違反がなければ（注意義務を尽くしていれば）患者がその死亡の時点においてなお生存していた相当程度の可能性があったと認定した判決を２件ご紹介します。</p>

<p>Ｎｏ．５５８の事案では、患者遺族側（控訴人ら）は、平成２２年内視鏡検査において、胃穹㝫部を撮影した写真が全体２０枚中わずか２枚とごく少なく、その２枚が異常部位を正確に撮影したものではない事実は、担当医師が、当該病変部位を精査せず、病変部位を見落としていた可能性を基礎づけるものと評価することができる旨主張しました。しかし、控訴審裁判所は、平成２２年内視鏡検査において、担当医師は、平成２１年部位に該当する部分について腫瘤用の病変の有無を観察した結果、それが認められないとの診断をしたものと考えられ、異常所見がなければあえてその部分に接近して撮影しないと考えられることにも照らし、控訴人らの主張するような写真についての指摘をもって、担当医師が、当該病変部位を精査せず、病変部位を見落としていたことが導かれるものとはいえないと判示して、患者遺族側の主張を採用しませんでした。</p>

<p>Ｎｏ．５５９の事案では、慰謝料８００万円を相当と判断するにあたり、裁判所は、腹部造影ＣＴ検査の読影報告書には、肝細胞癌の疑いがあること、ＥＯＢ造影ＭＲＩ検査の適応であることの記載が含まれているにもかかわらず、医師は約２年８か月もの長期間にわたり、検査をすることなく肝細胞癌を発見できなかったとして注意義務違反の程度は大きいと指摘しました。更に、患者は、被告病院において消化器専門医の受診を継続していたにもかかわらず、約２年８か月もの間、再発率が高く生存率の高くない疾患である肝細胞癌の確定診断を受けることができず、放置されたまま、その治療を受ける機会を失ったと指摘しました。そして、患者が、早期に発見されていれば完治できていたのではないかとの期待を抱くのは無理からぬことであるところ、この期待を失わせる結果となり、治療を受けることのないままに肝細胞癌を進行させた上、交渉過程において、被告病院の院長が注意義務違反を否定する発言をするなどしていたのであるから、本件注意義務違反によって患者の受けた精神的苦痛は極めて大きいというべきであると判示しました。</p>

<p>両事案とも実務の参考になるかと存じます。</p>]]>
        
    </content>
</entry>

<entry>
    <title>No.559「肝細胞癌の疑いのある患者にＥＯＢ造影ＭＲＩ等の検査を実施していたならば、患者が死亡時点においてなお生存していた相当程度の可能性を肯定し、病院に損害賠償を命じた地裁判決」</title>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="https://www.medsafe.net/precedent/hanketsu_0_559.html" />
    <id>tag:www.medsafe.net,2026://2.1298</id>

    <published>2026-09-11T01:46:26Z</published>
    <updated>2026-09-11T01:47:13Z</updated>

    <summary>東京地方裁判所令和６年９月１３日判決　判例タイムズ１５３１号１７０頁 （争点） ...</summary>
    <author>
        <name>管理者</name>
        
    </author>
    
        <category term="医療判決紹介" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="https://www.medsafe.net/">
        <![CDATA[<h3>東京地方裁判所令和６年９月１３日判決　判例タイムズ１５３１号１７０頁</h3>

<h4>（争点）</h4>
<ol>
<li>本件注意義務違反がなかったならば患者がその死亡の時点においてなお生存していたであろうことを是認し得る高度の蓋然性があるか（これが認められれば、注意義務違反と死亡との間の因果関係が肯定される）</li>
<li>仮に１が認められないとしても、本件注意義務違反がなかったならば患者がその死亡の時点においてなお生存していた相当程度の可能性が存在するか</li>
</ol>
<p class="note">＊以下、原告を◇、被告を△と表記する。</p>

<h4>（事案）</h4>
<p>Ａ（昭和２５年生まれの男性）は、平成２８年１０月１２日、蜂窩織炎で医療法人である△の開設・運営する病院（以下「△病院」という。）に入院し、同年１１月８日に腹部造影ＣＴ検査を受けた。</p>
<p>△病院に勤務するＯ医師（以下「Ｏ医師」という。）は、腹部造影ＣＴ検査の読影報告書を受け取った。同報告書には「肝硬変、肝Ｓ７多血性病変、肝臓Ｓ２早期増強域：Ｓ７病変はＨＣＣに相当。Ｓ２についてはＡＰシャントとの鑑別が問題となる。ＥＯＢ造影ＭＲＩ検査の適用です。」と記載されていた(なお、ＨＣＣとは肝細胞癌のことを指す。)が、Ｏ医師は、Ａに対し、ＥＯＢ造影ＭＲＩ検査を実施しなかった。</p>
<p>しかしながら、Ａは、平成２８年１１月８日当時、肝Ｓ２に腫瘍径１３ｍｍ、ステージⅠ、腫瘍数１の肝細胞癌を発症していたことが、後に判明した。</p>
<p>Ａの平成２８年１１月８日時点の肝機能の状態は、脳症及び腹水がなく(各１点)、ビリルビン値が１.３ (１点)、アルブミン値が３.９ (１点)、プロトロンビン活性値が６８ (２点)でＣｈｉｌｄ‐Ｐｕｇｈ分類Ａ(合計６点)であった。</p>
<p>Ａは、令和元年７月２日、腹部造影ＣＴ検査を受け、その際、肝Ｓ２の腫瘍は、腫瘍径５６ｍｍ、ステージⅡの肝細胞癌が発見された。</p>
<p>Ａは、Ｐ大学医学部付属Ｑ医院(以下「Ｑ医院」という。)消化器内科のＲ医師 (以下「Ｒ医師」という。)による焼灼療法を希望し、同月２７日に同病院に入院した。この際、Ｑ医院の医師は、Ａに対し、肝切除が第一選択となること、焼灼療法は標準治療となっていないこと、どうしても希望するのであれば焼灼療法をすることを説明した。Ａは、焼灼療法を希望し、Ｒ医師によるマイクロ波焼灼術及びラジオ波焼灼術を受け、同年８月１８日にＱ医院を退院した。</p>
<p>Ａは、その後も、Ｑ医院に通院し、検査を受けていたところ、令和２年１月２７日のＥＯＢ造影ＭＲＩ検査により、肝Ｓ２に８ｍｍの結節病変が発見された。そして、同年４月１日のＥＯＢ造影ＭＲＩ検査を経て、肝細胞癌の再発と診断された。</p>
<p>その後、再びラジオ波焼灼術等を受けたものの、本件訴訟提起後の令和５年９月２７日、肝細胞癌破裂により死亡した。</p>
<p>そこで、◇(Ａの死亡後、その相続人であるＡの姉◇が訴訟手続きを承継した。)は、△に対し、Ｏ医師は、造影ＣＴ検査の結果を受け、平成２８年１１月８日以降、速やかにＥＯＢ造影ＭＲＩ検査等の検査をする義務があったにもかかわらず、それを怠った注意義務違反があると主張して、損害賠償請求をした。</p>
<p>本件で、Ｏ医師には腹部造影ＣＴ検査の結果を受け、平成２８年１１月８日以降、速やかにＥＯＢ造影ＭＲＩ検査をする義務があったにもかかわらず、それを怠った注意義務違反（以下「本件注意義務違反」という。）が存在することについては、◇と△との間に争いがない。</p>

<h4>（損害賠償請求）</h4>
<dl class="common-dl10">
<dt>患者遺族の請求額：</dt>
<dd>２４０１万８２８１円<br>＜内訳：ア　注意義務違反と死亡との間の因果関係が認められる場合<br>死亡慰謝料２０００万円＋葬儀関係費用１５０万円＋診療記録開示手数料５万０５０６円＋医療保険料２８万４２９５円＋弁護士費用２１８万３４８０円（合計２４０１万８２８１円）<br>イ　生存の相当程度の可能性の侵害だけが認められる場合<br>死亡慰謝料１０００万円＋診療記録開示手数料５万０５０６円＋医療保険　料２８万４２９５円＋弁護士費用１０３万３４８０円（合計１１３６万８２８１円）＞</dd>
</dl>

<h4>（裁判所の認容額）</h4>
<dl class="common-dl4-2">
<dt>認容額：</dt>
<dd>９１８万４８０１円<br>（内訳：慰謝料８００万＋診療記録開示手数料５万０５０６円＋医療保険料２８万４２９５円＋弁護士費用８５万円）</dd>
</dl>

<h4>（裁判所の判断）</h4>
<h5 class="number-headline"><span>１</span>本件注意義務違反がなかったならば患者がその死亡の時点においてなお生存していたであろうことを是認し得る高度の蓋然性があるか（これが認められれば、注意義務違反と死亡との間の因果関係が肯定される）</h5>
<p>この点について、裁判所は、肝細胞癌は、治療方法が肝切除であっても、焼灼療法であっても、５年再発率が７０から８０％とされ、再発率が高いといえるとしました。また、ステージⅠの肝細胞癌であっても、５年相対生存率が６３％から７０％、１０年相対生存率が３４.５％とされ、Ｒ医師によるラジオ波焼灼術を受けた肝細胞癌患者では、単発、腫瘍径３ｃｍ以内、Ｃｈｉｌｄ‐Ｐｕｇｈ分類Ａに限った場合でも、５年生存率は７４％、１０年生存率は４１.３％であるため、生存率が高い疾患であるとはいえないと指摘しました。</p>
<p>これらの事実関係を踏まえると、Ａが、平成２８年１１月８日以降、速やかにＥＯＢ造影ＭＲＩ等の検査を受けることにより、ステージⅠの肝細胞癌であるとの確定診断を受け、その治療を受けていたとしても、令和５年９月２７日までの約７年間のうちに肝細胞癌が再発する可能性は相当程度に高いものであったといわざるを得ず、その結果死亡していた可能性があることは否定できないと判示しました。</p>
<p>裁判所は、そうすると本件注意義務違反がなかったとした場合に、Ａがその死亡の時点において、なお生存していたであろうことを是認し得る高度の蓋然性があるものと認めることはできないと判示して、本件注意義務違反とＡの死亡との間の因果関係を否定しました。</p>
<h5 class="number-headline"><span>２</span>仮に１が認められないとしても、本件注意義務違反がなかったならば患者がその死亡の時点においてなお生存していた相当程度の可能性が存在するか</h5>
<p>この点について、裁判所は、肝細胞癌の肝切除の場合の予後因子として、腫瘍径、腫瘍数、脈管浸潤の存在、肝機能が挙げられているところ、Ａは、平成２８年１１月８日時点で、肝細胞癌の腫瘍径は１３ｍｍと比較的小さく、腫瘍数は１個のみ、脈管浸潤はなく、Ｃｈｉｌｄ‐Ｐｕｇｈ分類Ａと肝機能が良好であったのであるから、比較的良好な予後が期待できる状態であったということができると指摘しました。</p>
<p>このことに、肝細胞癌患者の相対生存率等を考慮すれば、仮にＡが、同日以降、速やかにＥＯＢ造影ＭＲＩ等の検査を受けることにより、ステージⅠの肝細胞癌であるとの確定診断を受け、その治療を受けていれば、その死亡の時点においてなお生存していた相当程度の可能性が存在するものと認められると判断しました。</p>
<p>以上から、裁判所は、上記（裁判所の認容額）の範囲で◇の請求を認め、その後判決は確定しました。</p>]]>
        
    </content>
</entry>

<entry>
    <title>No.558「胃がん検診における注意義務違反と受診者死亡との因果関係は否定したが、注意義務を尽くしていれば、受診者が死亡時において生存していた相当程度の可能性があった判断をした高裁判決」</title>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="https://www.medsafe.net/precedent/hanketsu_0_558.html" />
    <id>tag:www.medsafe.net,2026://2.1297</id>

    <published>2026-09-11T01:44:05Z</published>
    <updated>2026-09-11T01:44:58Z</updated>

    <summary>東京高等裁判所平成３０年９月２６日判決　ウェストロージャパン （争点） （注意義...</summary>
    <author>
        <name>管理者</name>
        
    </author>
    
        <category term="医療判決紹介" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="https://www.medsafe.net/">
        <![CDATA[<h3>東京高等裁判所平成３０年９月２６日判決　ウェストロージャパン</h3>

<h4>（争点）</h4>
<ol>
<li>
<dl class="common-dl">
<dt>（注意義務違反１）</dt>
<dd>△<sub>２</sub>医師は、平成２２年内視鏡検査に関して、更に病理組織検査を実施すべき注意義務があったのに、これを怠ったか否か</dd>
</dl>
</li>
<li>
<dl class="common-dl">
<dt>（注意義務違反１の２）</dt>
<dd>△<sub>２</sub>医師は、平成２２年内視鏡検査の当日(平成２２年２月１５日)か、遅くとも検診終了から1週間後(同月２２日)までに、この内視鏡検査が途中で中断したこと、及びそのためにエックス線検査で異常が疑われた部位を正確に撮影できなかったことをＡに告知すべき注意義務があったのに、これを怠ったか否か</dd>
</dl>
</li>
<li>
<dl class="common-dl">
<dt>（注意義務違反２）</dt>
<dd>△<sub>２</sub>医師は、平成２２年エックス線検査に関して、更に内視鏡検査を要すると診断し、指導すべき注意義務違反があったのに、これを怠ったか否か</dd>
</dl>
</li>
<li>
<dl class="common-dl">
<dt>（注意義務違反２の２）</dt>
<dd>△<sub>２</sub>医師は、平成２２年エックス線検査の当日(平成２２年１２月１日)か、遅くとも検査終了から１週間後(同月８日)までに、エックス線検査の客観的な所見、すなわち、一昨年、昨年と同様に穹窿部に粘膜異常所見があったことを認識及び精密検査の要否等をＡに説明・告知すべき注意義務があったのにこれを怠ったか否か</dd>
</dl>
</li>
<li>
<dl class="common-dl">
<dt>（注意義務違反３）</dt>
<dd>（原審からの主張に、当審において時的因子を追加）<br>△<sub>２</sub>医師は、平成２３年エックス線検査(平成２３年７月１６日)の終了後、同月２１日までにＡの胃の穹窿部に隆起性病変があることを認識し、その内視鏡検査の必要性を認識していたのであるから、その１週間後である同月２８日までに(読影委員会による２次読影の結果が判明した平成２３年８月４日以降は当然に)、上記エックス線検査の診断内容をＡに通知して、医療機関において精密検査を受診するよう指導すべき注意義務あったのに、これを怠ったか否か</dd>
</dl>
</li>
<li>注意義務違反３とＡの死亡との間の因果関係の有無及び生存の相当程度の可能性の侵害の有無</li>
</ol>

<p class="note">＊以下、原告を◇<sub>１</sub>ないし◇<sub>３</sub>、被告を△<sub>１</sub>および△<sub>２</sub>と表記する。</p>

<h4>（事案）</h4>
<p>Ａ（死亡時７８歳）は、医療法人社団である△<sub>１</sub>が開設する△クリニック(以下「△診療所」という。)において、△<sub>１</sub>の代表者兼△診療所の医師である△<sub>２</sub>医師をその担当医師として、平成１２年以降、毎年胃がん検診(市が実施する胃がん検診事業(本件検診事業)に係る個別検診方式によるもの)を受診していた。</p>
<p>そして、平成２１年以降、△<sub>２</sub>医師は、△診療所において、Ａに対し、平成２１年エックス線検査(同年１０月１４日)、平成２２年内視鏡検査(同年２月１５日)、平成２２年エックス線検査(同年１２月１日)、平成２３年エックス線検査(同年７月１６日)を行っていた。しかるに、Ａは、平成２４年８月２日、肝臓がん(◇らは、胃がんからの転移によるものであると主張する。)により死亡するに至った。</p>
<p>そこで、Ａの相続人(妻及び長男、二男)である◇らが、△らに対し、△<sub>２</sub>医師には、上記胃がん検診に関して注意義務違反があり、これにより、Ａの死亡又はその生存に係る相当程度の可能性の侵害にかかる損害が発生したなどと主張して、△<sub>１</sub>に対しては、医療法６８条、一般法人法７８条又は債務不履行による損害賠償請求権に基づき、また、△<sub>２</sub>医師に対しては不法行為による損害賠償請求権に基づき、連帯して金員の支払いを求めた(◇らは、△らの各損害賠償債務は不真正連帯債務の関係にあるものとして、国家賠償法１条１項該当性も併せて訴求した。)。</p>
<p>第一審（東京地方裁判所平成３０年５月２６日判決）は、担当医師である△<sub>２</sub>医師において、平成２３年エックス線検査の終了後、その診断内容をＡに通知して医療機関において精密検査を受診するよう指導すべき注意義務に違反したと認定し、その上で、同違反とＡの死亡との因果関係は認められないが、同違反により、Ａの生存に係る相当程度の可能性(Ａが死亡した平成２４年８月２日にはなお生存していた相当程度の可能性)の侵害にかかる損害(精神的苦痛)が認められるとした。</p>
<p>そして、その慰謝料額と弁護士費用が損害額であるとし、不法行為損害賠償に基づくこれらの金員及び遅延損害金の連帯支払い請求の限度で、◇らの請求を認容した。</p>
<p>そこで、◇らはこれを不服として控訴した。</p>

<h4>（損害賠償請求）</h4>
<dl class="common-dl16">
<dt>控訴審での患者遺族の請求額：</dt>
<dd>遺族３名合計６０１９万００９９円<br>（内訳不明。ただし慰謝料は１０００万円）</dd>
</dl>
<h4>（控訴審裁判所の認容額）</h4>
<dl class="common-dl4-2">
<dt>認容額：</dt>
<dd>２２０万円<br>（内訳：慰謝料２００万円＋弁護士費用２０万円）</dd>
</dl>
<h4>（原審裁判所の認容額）</h4>
<dl class="common-dl4-2">
<dt>認容額：</dt>
<dd>２２０万円<br>（内訳：慰謝料２００万円＋弁護士費用２０万円）</dd>
</dl>

<h4>（控訴審裁判所の判断）</h4>
<h5 class="number-headline"><span>１</span>（注意義務違反１）について</h5>
<p>この点について、裁判所は、平成２１年エックス線写真からは、内視鏡検査を勧めるような病変はあっても、積極的に胃がん又は胃腺腫を疑うべき所見が得られているとはいえないものであり、また、これを受けた平成２２年内視鏡検査における内視鏡写真１０からも、直ちに胃がん、又は胃腺腫を疑うべき異常所見が存在したものとは認められないものであると判示しました。</p>
<p>そして、平成２２年内視鏡検査の際、平成２１年部位において、胃がん又は胃腺腫、前がん病変を含め、◇らの主張するような、病理組織検査を実施すべき病変が、内視鏡検査において認識可能な程度に存在していたことを具体的に裏付けるに足りる積極的な根拠はないとしました。</p>
<p>裁判所は、以上総合すると、たとえ平成２３年部位については胃がんにかかる病変であることが確定されているとしても、平成２２年内視鏡検査の際、平成２１年部位(平成２０年部位、平成２２年部位、平成２３年部位と同一の部位)を内視鏡で観察した場合に、既に病変が、病理組織検査をすべき異常所見として認識すべき状態で存在していたということはできないものというほかはないと判示して、注意義務違反１を否定しました。</p>
<h5 class="number-headline"><span>２</span>（注意義務違反１の２）について</h5>
<p>この点について、裁判所は、△<sub>２</sub>医師は、既に穹窿部の画面での確認を終了しており、その後、Ａの苦痛に対応して撮影を止めたことがあったとしても、そのことから直ちに、Ａに対し、平成２２年内視鏡検査が途中で中断し、もしくは十分に精査できなかったことが導かれるものとはいえず、◇らの主張する、説明・告知義務を肯定することはできないとしました。</p>
<p>なお、◇らは、検査の不十分性だけではなく、写真を正確に撮影できなかったことを説明・告知すべきであった旨も主張しましたが、平成２２年内視鏡検査において、△<sub>２</sub>医師は、平成２１年部位に相当する部分について腫瘤様の病変の有無を観察した結果、それが認められないとの診断をしたものと考えられ、異常所見がなければあえてその部分を撮影しないことにも照らせば、◇らの主張するような写真撮影自体に係る事項をＡに説明・告知すべきだったということもできないというべきであるとして、注意義務違反１の２を否定しました。</p>
<h5 class="number-headline"><span>３</span>（注意義務違反２）について</h5>
<p>この点について、裁判所は、平成２２年エックス線写真は、明らかに胃がん又は胃腺腫を疑うべき所見であるとはいえないものである上、△<sub>２</sub>医師の診断の後に２次読影を行ったｂ医師会の読影委員会(医師複数名)も、平成２２年エックス線写真につき異常所見なしとの診断をしたものであるとしました。また、平成２２年部位の大きさ及び性状については、平成２２年エックス線写真上、平成２０年部位及び平成２１年部位と比していずれも有意な変化がないものであるところ、平成２２年内視鏡検査において、平成２１年部位を内視鏡で観察した場合に、病変が、病理組織検査をすべき異常所見として認識すべき状態で存在していたということはできないと指摘しました。</p>
<p>裁判所は、これらに照らせば、△<sub>２</sub>医師が平成２２年エックス線写真につき異常所見なしとの診断をしたことについては、胃がん検診を行う医師に係る医療水準に照らして直ちに不適切であったとまではいえず、◇らが主張するように、△<sub>２</sub>医師が、検査結果と異なる虚偽の記載を行い、胃がん検診の趣旨・目的から逸脱した行為をしたものとして、注意義務違反２の行為をしたものと認定することはできないと判断して、注意義務違反２を否定しました。</p>
<h5 class="number-headline"><span>４</span>（注意義務違反２の２）について</h5>
<p>この点について、裁判所は、△<sub>２</sub>医師が平成２２年エックス線検査後、胃がん検診票において「所見なし」と記載し、その旨の検査結果(本人控え)をＡに交付したものであるとしても、△<sub>２</sub>医師が平成２２年エックス線写真につき異常所見なしとの診断をしたことについては、胃がん検診を行う医師に係る医療水準に照らして直ちに不適切であったとではいえないものであるとしました。これに照らせば、△<sub>２</sub>医師が、穹窿部に粘膜異常所見があったという事実自体の告知・説明に係る法的義務までを肯定することはできないと判示して、注意義務違反２の２を否定しました。</p>
<h5 class="number-headline"><span>５</span>（注意義務違反３）について</h5>
<p>この点について裁判所は、注意義務違反３は、読影委員会による２次読影への結果が判明した平成２３年８月４日以降において認められるというべきであるとしました。</p>
<p>裁判所は、本件検診事業に係る個別受診方式による検査結果の通知等に関する仕組みについて検討しても、同仕組みにおいては、個別受診方式で胃部エックス線検査を実施した医師が、当該エックス線写真の１次、２次読影結果に基づいて精密検査を要するとの所見を得たとき、当該受診者に対し、速やかにその旨を通知すべきであるものとされている旨認定するのが相当であるとしました。そうすると、２次読影結果が判明する前に、法的義務として△<sub>２</sub>医師において注意義務３が発生していたと帰結することはできないとして、平成２３年８月４日以降における注意義務違反３を認定しました。</p>
<h5 class="number-headline"><span>６</span>注意義務違反３とＡの死亡との間の因果関係の有無及び生存の相当程度の可能性の侵害の有無</h5>
<p>この点について、裁判所は、△<sub>２</sub>医師の本件注意義務違反３については、原判決説示の限度で認められるものであるところ、本件胃がんに係る手術が１ヵ月程度早く実施されたとしても、既にその時点において、本件胃がんの血行性転移が生じていた可能性は相当にあったものと考えるのが合理的であり、Ａが平成２４年８月２日に死亡することを避けられた高度の蓋然性があったとまでは認められないとしました。裁判所は、他方、本件に係る事情の下においては、△<sub>２</sub>医師がこのような義務を尽くしていれば、Ａがその死亡の時点(平成２４年８月２日)においてなお依存していた相当程度の可能性があったものというべきであるとしました。</p>
<p>以上から、裁判所は、上記（控訴審裁判所の認容額）の範囲で◇らの請求を認めて同旨の原判決は相当であるとして、本件控訴を棄却しました。</p>]]>
        
    </content>
</entry>

<entry>
    <title>その煙、本当に見えていますか？　サージカルスモークと病院の安全管理</title>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="https://www.medsafe.net/recent/183smoke.html" />
    <id>tag:www.medsafe.net,2026://2.1296</id>

    <published>2026-08-28T06:34:12Z</published>
    <updated>2026-08-28T06:35:08Z</updated>

    <summary> 日本バプテスト病院　外科副部長大越香江氏 電気メスやレーザー、超音波メスで組織...</summary>
    <author>
        <name>管理者</name>
        
    </author>
    
        <category term="最新動向" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="https://www.medsafe.net/">
        <![CDATA[<div class="contents">
<p class="txt-r">日本バプテスト病院　外科副部長<br>大越香江氏</p>
</div>
<div class="common-wrap margin-bottom20">
<p>電気メスやレーザー、超音波メスで組織を切開・凝固する際に発生する「サージカルスモーク」は有害な化学物質や微粒子、時にウイルスを含むため、手術室スタッフの呼吸器刺激、頭痛、吐き気、長期曝露による発がんリスク、感染伝播が問題視されている。日本では関連学会がガイドラインを策定し、局所排煙装置の使用や換気改善を推奨しているが、米国の21州が適用しているような法的義務化には至っておらず、導入は施設ごとの取り組みにとどまっているのが現状だ。この問題の第一人者である日本バプテスト病院外科副部長の大越香江氏は、2026年７月２、３日に開催された第76回日本病院学会の講演で警鐘を鳴らした。講演内容を紹介する。</p>
</div>

<div class="contents">
<h3>サージカルスモークとは何か？　その成分と身体へのリスク</h3>
<p>手術室に勤務されていない方や、これまで意識したことがない方には「サージカルスモーク」と言われてもピンとこないかもしれません。これは手術中に電気メスや超音波凝固切開装置、レーザーといった「熱」を発する器具で組織を切開・焼灼・止血する際に、もくもくと立ち上る煙の総称です。細胞を焼くわけですから、当然さまざまな物質が空気中に放出されます。</p>
<p>含まれる物質で最も多いのは水分です。文献によっては「成分の95％が水分である」と記載されているものもありますが、その根拠となる原典を突き止めることは難しく、正確な割合は不明な点もあります。実際には破壊された細胞の破片や、そこに潜んでいたウイルス・細菌も煙に巻き込まれ、微細化すればPM<sub>2.5</sub>と呼ばれる有害な微粒子となり、ベンゼンなどの揮発性有機化合物（VOC）も微量ながら含まれることが分かっています。</p>
<p>手術室の医療従事者は、これらの物質を毎日毎日、呼吸によって体内に吸い込んだり、皮膚に付着させたりしているのが現状です。PM<sub>2.5</sub>は喘息発作の誘因になるだけでなく、心筋梗塞や狭心症など心血管系への影響、呼吸器疾患のリスク、さらには認知症リスクを高めるのではという研究も進められています。ベンゼンも大量曝露で明確な発がん性を示す物質です。</p>
<p>電気メスを使うたびに立ち上る白い煙には、細菌、ウイルス、微粒子、細胞片、VOCといった身体に有害となりうる物質が含まれ、術者だけでなく麻酔科医、看護師、臨床工学技士もその場にいる全員が毎日これを吸い続けているという事実を、まず正しく認識する必要があります。</p>
</div>

<div class="contents">
<h3>電気メスで１グラム焼いた煙はタバコ６本相当？</h3>
<p>私が消化器外科医でありながらこの研究を熱心に続けている理由は非常にシンプルで「サージカルスモークが嫌いだから」です。研究の動機には「好きだから掘り下げる」と「嫌いだから、あるいは問題だから、どうにかしたい」の二種類があると思いますが、私は完全に後者です。外科医仲間に聞くと「仕事をしている実感があってあの匂いが好きだ」という人も稀にいますが、大半は「好きでも嫌いでもない」と答えます。一方、手術室看護師にアンケートを取ると「嫌いだ」の割合が圧倒的に高くなります。</p>
<p>私は幼少期に小児喘息を患い、成長とともに治っていましたが、30代になって風邪をひいた後に咳だけが１、２カ月も止まらなくなりました。あまりに激しく咳き込むため先輩医師から「結核だったら大変だから」と勧められ、京都大学医学部附属病院の呼吸器内科を受診した結果、診断は「咳喘息」でした。それ以来、手術中に電気メスの白い煙を吸った瞬間、明らかに咳が悪化するという自覚症状を持つようになりました。自分の身体がこれほど敏感に反応するなら、同じ環境で働く他の医療従事者にも苦しんでいる人がいるのではないか----これが私のリサーチクエスチョンの始まりでした。</p>
<p>文献を調べると「電気メスで生体組織を１グラム焼灼した際の煙は、タバコ６本分に相当する」（※１）という、この分野で非常によく引用される有名なデータがありました。手術中に肝臓や脂肪組織、乳腺組織などを扱う量は１グラムどころではありません。また、レーザー使用時の１日の曝露量を計算した研究（※２）では「フィルターなしタバコを１日27～30本吸った量に匹敵する」との報告もあります。これらの数字の厳密な比較はさておき、私たちはそれほどの環境に毎日、何年、何十年と身を置き続けているのです。</p>
<p>※１＝Tomita Y, et al. Mutat Res 1981; 89: 145-149</p>
<p>※２＝Hill D, et al. Surgical Smoke - a health hazard in the operating theatre. A study to quantify exposure and a survey of the use of smoke extractor systems in UK plastic surgery units. Journ Plas Reconstr Aesthet Surg . 2012; 65: 911-6</p>
</div>

<div class="contents">
<h3>潮目を変えた新型コロナウイルスのパンデミック</h3>
<p>サージカルスモークの有害性は化学物質や微粒子だけでなく、ウイルスや細菌といった感染性病原体が煙を介して周囲に伝播する感染リスクにも及びます。</p>
<p>別の子宮頸癌手術の研究では、患者の子宮頸部のHPV陽性率94.8％に対し、手術中に発生したサージカルスモークの29.9％からウイルスDNAが検出され、さらに立ち会った従事者の鼻粘膜からも1.5％の割合でHPVのDNAが検出されました。他人の子宮頸部を焼灼した煙に含まれるウイルスを自分の鼻に付着させたい医療従事者は一人もいないはずです。幸いこの研究では３～６カ月の追跡調査で全員が陰性化しており、検出されたのは感染力のないDNA断片だった可能性もありますが、同様の手術を毎日繰り返せばリスクは蓄積していくでしょう。</p>
<p>私は2015年、サージカルスモークの問題点をまとめたレビュー論文を外科学会の英文誌「Surgery Today」に発表しましたが、当時の日本ではこの言葉すらほとんど知られておらず、外科医からは反応がありませんでした。潮目が大きく変わったのは2020年のコロナ禍です。同年３月30日、米国内視鏡外科学会（SAGES）や欧州の学会が「新型コロナウイルスがサージカルスモークに含まれる可能性があるため対策を強化せよ」と突如共同提言を出し、日本の外科学会もわずか数日後の４月１日にこれを訳したような提言を発表しました。しかし排煙装置もない現場は「対策をしろ」と言われて大混乱に陥り、この時期、私の過去の論文へのアクセス数と引用数は爆発的に増加しました。</p>
</div>

<div class="contents">
<h3>手術室内のPM<sub>2.5</sub>測定と医療従事者の切実な声</h3>
<p>未知のウイルスへの恐怖からサージカルスモークへの関心が高まる中、私は「実際に手術室でどれほどの有害物質が飛散しているのか」を可視化するため、レストランでタバコの煙に含まれるPM<sub>2.5</sub>を測定した論文を見つけ、著者の先生にご相談して同じ手法で手術中のPM<sub>2.5</sub>を測定することにしました。</p>
<p>術者に粉塵計を背負ってもらい、前胸部にサンプリングチューブを固定して手術中のPM<sub>2.5</sub>濃度をリアルタイムで測定したところ、たとえば乳房切除術中に組織を電気メスで連続して切り進める時間帯には数値が急激に跳ね上がりました。術者の前胸部ではPM<sub>2.5</sub>濃度が1000マイクログラム/立方メートル以上に達しました（手術中の短時間測定値と単純に比較することはできませんが、参考までに、環境省が定めるPM<sub>2.5</sub>の環境基準は、1年平均値15マイクログラム/立方メートル以下、かつ1日平均値35マイクログラム/立方メートル以下です）。電気メスを使わず待機している時間は数値がほぼゼロに下がる一方、組織を焼灼し続けている間は高濃度曝露が続きました。</p>
<div class="contents">
<div class="imgcenter">
<a href="../files/recent/183smoke/img01.jpg" rel="lightbox" class="vertical">
<img src="../files/recent/183smoke/thumb_img01.jpg" alt="術中リアルタイム PM2.5 測定"></a><br>
<span class="font-s gray">※クリックで拡大</span>
</div>
</div>
<p>一方、腹腔鏡下胆嚢摘出術などの腹腔鏡手術では、術中のPM<sub>2.5</sub>のピークはほとんど観察されませんでした。気腹によりガスが腹腔内に閉じ込められ、トロッカーから適切に排煙処理されていれば室内に漏れ出さないためです。ただし腹腔鏡手術でも、最初の皮膚切開や最後の閉腹時に電気メスを使えば、やはりその瞬間にPM<sub>2.5</sub>濃度は急上昇します。</p>
<p>また、私たちは2018年７月、コロナ禍以前の手術室勤務者103名（外科医36％、麻酔科医15％、看護師49％）を対象に意識調査を行いました。「勤務中に咳が悪化する」と答えた人は約９％、「勤務するようになってから日常的に咳が増えた」は14％に上り、全体の１～２割弱が呼吸器症状を訴えているという事実は無視できません。</p>
<p>自由回答欄には「咳が出始めると手術中に止まらず辛い」「煙を吸うとくしゃみが頻発する」「頭痛がしたり鼻の奥が痛くなったりする」「数日間、焦げ臭さが鼻の粘膜に残っている気がする」「妊娠中は独特な臭気で気分が悪くなり耐え難かった」といった切実な声が並び、有害性を認識すると「排煙装置を導入してほしい」と希望するようになるのかなと感じました。</p>
</div>

<div class="contents">
<h3>医療者と患者を守るための「対策の３本の柱」</h3>
<p>サージカルスモークの害から手術室にいるすべての人を守るには、体系的なアプローチが必要です。私は対策の柱を「個人防護具（PPE）の適切な着用」「局所排煙装置の徹底」「換気・空調の最適化とレイアウトの意識」の３本と考えています。</p>
<p>まず、第１の柱である「個人防護具」についてです。「普通のサージカルマスクで煙は防げるのでは」とよく聞かれますが、答えは明確に「ノー」です。マスクと顔の間には必ずわずかな隙間があり、煙は容易に侵入します。マスク越しでも焦げ臭さを感じるのがその証拠で、顔の皮膚や頭皮、首元も常に煙に晒され続けます。</p>
<p>ある麻酔科医から「手術室で働くとアトピー性皮膚炎が急激に悪化し夜も眠れないほど痒くなるが、周囲には気のせいだと言われる」と相談を受けたことがあり、サージカルスモークが皮膚炎に直接関与していたというエビデンスはないのですが、その方は後に麻酔科から皮膚科へ転科されました。マスクやゴーグルは必須ですが、それだけでは不十分なのです。</p>
<p>そこで重要になるのが第２の柱である「局所排煙装置」です。サージカルスモークは発生源のすぐ近く（できれば２～５cm以内）で直接吸引するのが最も効率的で、電気メス先端に吸引口が一体化した「排煙機能付き電気メス」も開発されています。これを導入すると、組織を焼いた瞬間に出る白い煙が、術者の顔に届く前に吸引口へ吸い込まれていきます。高性能HEPAフィルターで0.1マイクロメートルの微粒子を99.999％除去する、局所排煙装置を使用することが非常に有効です。</p>
<div class="contents">
<div class="imgcenter">
<a href="../files/recent/183smoke/img02.jpg" rel="lightbox" class="vertical">
<img src="../files/recent/183smoke/thumb_img02.jpg" alt="手元で排煙する：排煙機能付きペンシル型電気メス"></a><br>
<span class="font-s gray">※クリックで拡大</span>
</div>
</div>
<p>最後に、第３の柱である「手術室の換気・空調」です。一般的な手術室は天井から清浄な空気が吹き下ろされ、足元の排気口から吸い込まれる一方向の流れ（ダウンフロー）で作られています。献体を用いて電気メス使用時の気流を可視化する実験を行ったところ、何も対策をしなければ煙が術者の顔面を直撃することが確認されました。</p>
<p>一方向の気流を作る「プッシュプル換気」を行うと煙は術者から遠ざかりますが、風下にいる麻酔科医らへ煙を押し流すリスクを伴うため、局所排煙装置と気流をうまく組み合わせることが不可欠です。さらに、風下の排気口やHEPAフィルターの前に麻酔器やカート、引き出しなどを無造作に置くと、それだけで室内の気流が乱れ、排気効率が著しく低下します。</p>
</div>

<div class="contents">
<h3>誰もが安心して働ける手術室の環境づくりを</h3>
<p>日本手術医学会が発行する最新の『手術医療の実践ガイドライン（第４版）』でも、環境整備の章（第９章）やME機器・サージカルスモークの章（第10章）でその毒性（血液、ウイルス、細菌、発がん物質の含有リスク）が明確に注意喚起されるようになり「吸込口の前に物品を置くと気流が乱れるため、カートや備品を置いてはならない」といった具体的な行動指針まで明記されています。</p>
<p>海外、特に米国ではさらに先進的な取り組みが進んでおり、全50州のうち21州（４割強）で局所排煙装置の使用が州法によって既に義務化されています。これは米国手術室看護師協会（AORN）をはじめとするスタッフ側の声と権利が、労働環境の改善を求めて勝ち取った成果でもあります。</p>
<p>ひるがえって日本の現状は、まだガイドラインに推奨として記載されている段階に過ぎず、実際の導入や運用は各病院や執刀医の裁量に委ねられています。排煙装置付きの電気メスは先端が太くなり重量も増すため、外科医からは「操作の角度が合わず面倒」「使いにくい」と敬遠されがちですが、医師だからといって常に正しい対策を自発的に行うとは限らないという現実を直視しなければなりません。</p>
<p>サージカルスモークを吸い込むリスクに晒されているのは、執刀している外科医だけではありません。頭側にいる麻酔科医、器具を出す手術室看護師、MEなど、すべてのスタッフが同じ部屋の空気を吸っています。だからこそ、この対策を「外科医だけの問題」にしてはならないのです。</p>
<p>さらに言えば、この対策は医療従事者の労働環境改善だけでなく、患者さんの安全と満足度にも直結しています。全身麻酔ではなく局所麻酔や腰椎麻酔など意識のある状態で電気メスやレーザーを使った治療を受ける患者さんにとってもやはり不快で恐怖を感じさせるものだろうと思います。手術室の空気がクリーンに保たれていることは患者さんの安心感にもつながる大切な要素なのです。</p>
<p>パンデミックが起きてから慌ててその場しのぎの対策をするのではなく、日頃の業務の中からサージカルスモークの害を正しく理解し、意識を変え、排煙装置と気流のダブル対策を徹底していくこと。それこそが、これからの時代の手術室に求められる真の安全管理であり、すべての医療従事者と患者さんの健康を守るための第一歩となります。</p>
<div class="contents">
<div class="imgcenter">
<a href="../files/recent/183smoke/img03.jpg" rel="lightbox" class="vertical">
<img src="../files/recent/183smoke/thumb_img03.jpg" alt="まとめ"></a><br>
<span class="font-s gray">※クリックで拡大</span>
</div>
</div>
</div>


<div class="contents">
<div class="sign">企画・取材：伊藤公一</div>
</div>]]>
        
    </content>
</entry>

<entry>
    <title>選択のポイント【No.556、557】</title>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="https://www.medsafe.net/precedent/hanketsu_0_556-57.html" />
    <id>tag:www.medsafe.net,2026://2.1295</id>

    <published>2026-08-07T04:49:49Z</published>
    <updated>2026-08-07T04:50:14Z</updated>

    <summary>今回は、説明義務違反が争点となった裁判例を２件ご紹介します。 Ｎｏ.５５６の事案...</summary>
    <author>
        <name>管理者</name>
        
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        <category term="医療判決紹介" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="https://www.medsafe.net/">
        <![CDATA[<p>今回は、説明義務違反が争点となった裁判例を２件ご紹介します。</p>
<p>Ｎｏ.５５６の事案では、病院側は、患者が植皮手術を受けなかった蓋然性は認められず、また、でん部を採皮部とする手術を選択する合理性もないから、説明義務違反と本件手術との間の相当因果関係はないと主張しました。しかし、裁判所は、本件手術は一刻を争うなど特に緊急性を要するものであったとは認められない上、患者が本件病院の医師から植皮手術を提案されるも、本件手術まで植皮手術を受けることはなく、他の医療機関を受診するといった行動をとっていること、加えて、植皮手術における採皮部分としては、頭部のほかにも、でん部、大腿及び背部などが、採皮部となる余地があり、他の部位を選択することの合理性も十分にあったことからすれば、手術後の整容について関心を抱いていた患者の両親において、本件手術による禿髪のおそれなどを説明された場合になお本件手術を受けることに同意したとは考え難いとして、病院側の主張を採用しませんでした。</p>
<p>Ｎｏ．５５７の事案の紹介にあたっては、一審判決（令和５年１２月１４日神戸地裁判決）も参考にしました。</p>
<p>一審で病院側は、本件ミエログラフィー実施前の段階で、患者がいち早く歩けるようになって自宅に戻りたい旨を強く要望していたことからすれば、法的に要求される説明を尽くしていたとしても、患者はＬ１／２の穿刺を承諾していた可能性が極めて強く、説明義務違反と損害との間に因果関係がない旨主張しました。しかし、一審裁判所は、Ｌ１／２への穿刺は、通常行われるミエログラフィーの際に選択される穿刺箇所への穿刺とは、内容・程度等が明らかに質的に異なる重大なリスクを伴うものであるのに対し、本件ミエログラフィーは術前評価のために行うにすぎず、患者の症状を直接解決するものではなく患者の上記要望実現には直結しないし、術前評価としても限界があるものであることをも踏まえると、上記リスク告知を含む適切な説明が尽くされていれば、患者がＬ１／２の穿刺によるミエログラフィーを受けなかった高度の蓋然性があるといえるとして、病院側の主張を採用しませんでした。</p>
<p>両事案とも実務の参考になるかと存じます。</p>]]>
        
    </content>
</entry>

<entry>
    <title>No.557「県立病院整形外科の医師がミエログラフィー（脊髄造影検査）を実施したところ、患者に脊髄損傷に伴う左下肢麻痺等の障害が残存。一審と同じくＬ１／２の穿刺を行ったことについての過失と説明義務違反を認めた控訴審判決」</title>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="https://www.medsafe.net/precedent/hanketsu_0_557.html" />
    <id>tag:www.medsafe.net,2026://2.1294</id>

    <published>2026-08-07T04:48:16Z</published>
    <updated>2026-08-07T04:48:54Z</updated>

    <summary>大阪高等裁判所令和６年７月５日判決　医療判例解説（２０２５年２月号）１１４号５１...</summary>
    <author>
        <name>管理者</name>
        
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        <category term="医療判決紹介" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="https://www.medsafe.net/">
        <![CDATA[<h3>大阪高等裁判所令和６年７月５日判決　医療判例解説（２０２５年２月号）１１４号５１頁</h3>

<h4>（争点）</h4>
<ol>
  <li>医師にミエログラフィーの際にＬ１／２に穿刺を行ったことにつき過失があったか否か</li>
  <li>医師に説明義務違反があったか否か</li>
</ol>

<p class="note">＊以下、原告を◇、被告を△と表記する。５個の腰椎(第１～５腰椎)については、それぞれＬ１～５と表記し、椎間レベルをＬ１／２ (第１腰椎第２腰椎椎間レベル)などと表記する。</p>

<h4>（事案）</h4>
<p>◇（当時８６歳の男性）は、妻を介護しながら自宅で生活していたほか、要支援１の認定を受けており、杖を用いて歩行したり、腰痛を理由に買物代行サービスを週に一度利用していた。</p>
<p>◇は、平成２８年１月１７日から、腰痛等を理由に医療法人社団Ⅴ整形外科クリニック(以下「Ⅴ整形外科」という。)に通院加療し、頸椎症、変形性腰椎症との診断の下、牽引等で治療を受けていたが、同年５月下旬から６月初旬ごろ、左下肢痛が出現して歩行困難となった。Ⅴ整形外科は、同月２８日付で地方公共団体である△県が設置運営する病院（以下「△病院」という。）に対し、◇が左下肢痛を発症し、ＭＲＩ検査を施行したところ、Ｌ３／４にて狭窄を認めたなどとして、「腰部脊柱管狭窄症、頸椎症、変形性腰椎症」との診断名で、◇を精査・加療目的で紹介した。</p>
<p>△病院のＡ医師は、Ｖ整形外科からの紹介を受け、同月２９日以降Ａの診療をするようになった。なお、Ａ医師は、平成１５年６月から令和３年冬頃まで、△病院で整形外科医として勤務し、脊髄疾患等に関して多数の執刀経験を有する者である。</p>
<p>Ａ医師は、Ｖ整形外科の情報提供を踏まえ、当初、Ｌ３／４狭窄の場合に一般的にみられる、Ｌ４神経根の圧迫を想定したが、同外科で撮影されたＭＲＩ画像や、ラゼーグテスト等諸検査の身体的所見に照らし、Ｌ４ではなく、Ｌ３神経根の圧迫を疑った。</p>
<p>そこで、Ａ医師は、同年７月７日、◇に対して、Ｌ３／４の穿刺によるミエログラフィー（脊髄造影検査）及び、その後のＣＴ検査(ＣＴミエログラフィー)を実施したところ、Ｌ３神経根への造影剤による描出が確認されなかった。これを受け、Ａ医師は、同日、Ｌ３神経根に対して神経根ブロック注射をしたところ、◇の左下肢痛が激的に改善したことから、更にＶ整形外科とは異なる断面で撮影する形でのＭＲＩ検査、Ｌ３／４の椎間板造影検査を行い、これらの結果を踏まえ、◇の痛みの原因が主として、Ｌ３／４の外側ヘルニアであると判断した。</p>
<p>Ａ医師は、このような判断のもと、同月１９日、当該椎間板ヘルニアを切除する手術(外側開窓ヘルニア切除術)を行い、同手術により、◇の腰椎及び左下肢痛が軽快し、◇は短期間のリハビリを経た後、△病院を退院した。</p>
<p>◇は、平成２９年３月、Ｌ１圧迫骨折が認められたが、コルセット装着等のみの保存的療法の限度での対応がされた。</p>
<p>◇は、平成３０年１０月１０日頃、腰痛、左下肢痛を自覚し、同月１５日、△病院の整形外科を受診した。</p>
<p>平成３０年１０月１７日、△病院はＭＲＩ検査を施行し、Ｌ２腰椎の新鮮圧迫骨折と、Ｌ３／４の腰部脊柱管狭窄を認めた。</p>
<p>そして、Ｌ２椎体の骨癒合が得られた後も下肢痛等が軽快しなければ、Ｌ３／４のＰＬＩＦ（腰椎後方進入椎体間固定術）を行うとの治療方針の下、骨癒合を待ったが、同年１２月時点でも生活に支障を来すほどの左下肢症状が残存していただけではなく、右下肢症状も出現してきたため、これらの下肢症状を改善するため、ＰＬIＦを行うこととし、その術前の評価のため、本件ミエログラフィーを実施することとなった。</p>
<p>Ａ医師は、本件ミエログラフィー実施直前の段階で、◇にはラセーグ徴候を認めたため、この狭窄箇所から一般的に想定できる、Ｌ４神経根症状があると考えたが、これに加え、前記の経過から、外側ヘルニアの再発による左Ｌ３神経根の圧迫については留保を付しつつも疑いをもっていた。Ａ医師は、これに先立って、平成３０年１２月６日、◇に対して、今後予定される手術の内容のほか、本件説明文書に沿って、ミエログラフィーに関する説明を行った。</p>
<p>本件説明文書には、ミエログラフィーの合併症として頭痛及び造影剤アレルギーが挙げられているほか、「その他、あらかじめ確認できない患者様の身体的個人差もあるため、非常にまれなことですが、予測できない事態が生じる可能性があることについてもご承知願います。」との記載があり、他にミエログラフィーに付随する危険性に言及する記載はない。　</p>
<p>◇は、平成３０年１２月１２日、△病院に入院した。この時、◇は歩行器にもたれるような状態で病室内を歩行していた。</p>
<p>平成３０年１２月１３日、本件ミエログラフィーが実施された。</p>
<p>Ａ医師は、本件ミエログラフィー実施に当たり、◇を側臥位にして背を丸めさせ、同医師は背側に立ち、Ｌ４／５の腰椎棘突起の間から穿刺を試みたが、針先が骨に当たり脊柱管内に到達しなかった。Ａ医師はさらに、Ｌ５／Ｓ１ (第１仙椎)、Ｌ３／４、Ｌ２／３の穿刺を順に試みたが、いずれも針先が脊柱管内に到達することができなかった。</p>
<p>そこで、Ａ医師は、Ｘ線の透視下にてリアルタイムで針先の位置を確認しながら、１ｍｍずつ慎重に針を進める形で、Ｌ１／２の穿刺を行うこととした。</p>
<p>Ａ医師は、◇の脊髄円錐が、Ｌ１／２高位にあるため、Ｌ１／２の穿刺が下位腰椎と異なり脊髄円錐損傷のリスクがあることを認識していたが、◇に対して、特段の説明を行うことなく、Ｌ１／２に穿刺を開始した。Ａ医師が、Ｌ１／２からの穿刺が可能と考えたのは、◇の脊髄円錐の位置と穿刺する針先の位置関係は、ＭＲＩ画像上、硬膜と脊髄円錐(下端部)との間には、間隔があることが確認できており、本件ミエログラフィー実施時の脊髄円錐の位置は、◇に背を丸めさせたことにより、ＭＲＩ画像におけるよりも、さらに若干針から遠い腹側に位置することになると考えたことによるものであった。</p>
<p>Ａ医師が穿刺を終え、髄液圧測定及びクエッケンテストを経て、造影剤注入の段階に入り、相当程度まで注入した段階で、◇が痛みを訴え始め、体動したが、そのまま残りの造影剤を注入し、穿刺針を抜去した。</p>
<p>Ａ医師は、腰部脊柱管狭窄症のような変性の強い疾患に関しては、術前検査として、原則全例ミエログラフィーを実施していた。また、△病院は、医師側からのニーズもなかったため、ＭＲＩミエログラフィーを施行できる体制は執ってなかった。</p>
<p>◇は、本件ミエログラフィー実施中に痛みを訴え、その後病室に帰室した段階で、左下肢の膝立ができなくなり、左下肢の指先がわずかに動く程度となったほか、膀胱直腸障害を生じ、バルーンカテーテルの使用を要することとなった。</p>
<p>その後、△病院において入院治療が行われ、◇は平成３１年２月５日に△病院からＷリハビリテーション病院に転院し、令和元年５月８日に同病院を退院したが、その後も、自宅で介護を受ける生活を余儀なくされた。</p>
<p>◇の上記痛みは、本件ミエログラフィーの穿刺による脊髄円錐損傷によるものであり、これにより、◇には左下肢麻痺及び膀胱直腸障害の後遺障害が生じた。</p>
<p>そこで、◇は、△が、Ａ医師には、（１）本件ミエログラフィーの際に、脊髄損傷の高度の危険性があるＬ１／２の穿刺を行った過失がある、（２）脊髄損傷の高度の危険性があることについて説明することなく、Ｌ１/２の穿刺を行ったことにつき、説明義務違反があるなどと主張して、△に対し、使用者責任または診療契約の債務不履行に基づく損害賠償請求をした。</p>
<p>原審（神戸地裁令和５年１２月１４日）は、本件ミエログラフィーにつきＬ１／２の穿刺を行ったことについて過失が認められ、Ｌ１／２の穿刺を行うことについての説明義務違反にも違反するとして、◇の請求を一部認容した。</p>
<p>△は、原判決の敗訴部分を不服として控訴した。</p>
<h4>（損害賠償請求）</h4>
<dl class="common-dl4-2">
<dt>請求額：</dt>
<dd>３２０２万１４３４円<br>（内訳：治療費８６万７４３１円＋入院雑費２２万２０００円＋家屋改造費４３２０円＋将来介護費等１０５２万７６８３円＋傷害慰謝料２５０万円＋後遺障害慰謝料１５００万円＋弁護士費用２９０万円）</dd>
</dl>

<h4>（裁判所の認容額）</h4>
<dl class="common-dl7">
<dt>原審認容額：</dt>
<dd>２１６１万００９０円<br>（内訳：治療費８６万７４３１円＋入院雑費２２万２０００円＋家屋改造費４３２０円＋将来介護費等６４５万６３３９円＋傷害慰謝料２１０万円＋後遺障害慰謝料１０００万円＋弁護士費用１９６万円）</dd>
<dt>控訴審認容額：</dt>
<dd>１９０４万００６４円<br>（内訳：治療費８６万７４３１円＋入院雑費２２万２０００円＋家屋改造費４３２０円＋将来介護費等４４４万６３１３円＋傷害慰謝料２１０万円＋後遺障害慰謝料１０００万円＋弁護士費用１７６万円）</dd>
</dl>

<h4>（裁判所の判断）</h4>
<h5 class="number-headline"><span>１</span>医師にミエログラフィーの際にＬ１／２に穿刺を行ったことにつき過失があったか否か</h5>
<p>この点について、裁判所は、一般的に、脊髄円錐はＬ１／２付近に存在するため、ミエログラフィーのためにＬ１／２に穿刺することはいかに慎重に手技を行ったとしても、また、脊髄円錐とＬ１／２との間に間隔が空いていることが確認された場合であっても、他の部位からの穿刺に比して、針が脊髄円錐と接触することによる脊髄損傷の危険性が常にあり得るとの点で、より危険性が高くなる関係にあるとしました。そして、もとより、脊髄を一度損傷すれば運動機能等に重大な障害が残り、これを回復することが非常に困難であること、他方で、ミエログラフィーが患者のくも膜下腔にまで針を穿刺して造成剤を注入する方法により実施されるため、検査時に患者の僅かな動きや体勢の変更等、術者で制御できない不測の事態が生じうることも併せると、Ｌ１／２の穿刺は他の部位からの穿刺に比して相当程度危険性の高い手技であるといえると判示しました。そのため、医学上、一般的にミエログラフィーにおける穿刺は下位腰椎とされ、Ｌ１／２の穿刺は注意すべきであり、必要性が低ければ避けるべきと解されるのであり、かかる危険性に鑑みると、ミエログラフィーを行うに当たっては、当該症例において、Ｌ１／２の穿刺を行う場合であっても、他の部位からの穿刺とは異なり、このような身体に対する別段の危険を正当化し得るに足りる高度の必要性が求められるというべきであると判示しました。</p>
<p>そして、脊椎外科を専門とする医師からは、既に責任病巣が特定されており、本件ミエログラフィーの実施の必要性は低いとの意見が述べられている一方で、本件ミエログラフィーの必要性に関して△が指摘する事項（責任病巣を特定・確認する必要性、手術計画を詳細に立案する必要性）は、いずれも根拠として十分とはいえないのであって、本件ミエログラフィーにつき、Ｌ１／２の穿刺を正当化し得るに足りる高度の必要性があったということはできないと指摘しました。しかるに、Ａ医師はＬ１／２の穿刺に当たって、本件ミエログラフィーの必要性と、Ｌ１／２の穿刺による危険性との衡量や代替手段の有無等について、熟慮することなく、その必要性についての判断を誤ったものであり、その判断に過失があったと認定しました。</p>
<p>なお、控訴審において、△は、ミエログラフィーの経験が豊富なＡ医師が、◇のＬ１／２の状態を踏まえ、細心の注意を払いながら穿刺を実施したところ、予見が不可能又は著しく困難な◇の大きな体動により、脊髄円椎に針が接触したものと考えられるから、◇に対するＬ１／２への穿刺の危険性が極めて高いとはいえず、身体に対する別段の危険を正当化し得るに足りる高度の必要性が求められるとまではいえないと主張しました。</p>
<p>控訴審裁判所は、しかし、患者のくも膜下腔まで針を穿刺して造影剤を注入するというミエログラフィーの方法に鑑みれば、術者としては患者が大きな体動することも想定すべきであって、◇に対するＬ１／２の穿刺の危険性は高いというべきであるから、△のこのような主張を採用することはできないとしました。</p>

<h5 class="number-headline"><span>２</span>医師に説明義務違反があったか否か</h5>
<p>この点につき、裁判所は、ミエログラフィーの際に一般的に穿刺箇所として選択される下位腰椎とは異なり、高位のＬ１／２に穿刺する方法でのミエログラフィーは、脊髄損傷という重大なリスクを有するものであって、通常行われるミエログラフィーとは身体に対する侵襲の内容、程度が明らかに質的に異なるのであるから、本件ミエログラフィーの事前説明において、通常の穿刺方法を前提とする一般的な説明にとどまり、Ｌ１／２の穿刺特有の脊髄損傷のリスクについて具体的な説明が行われていない以上、Ａ医師は、Ｌ１／２に穿刺する前の段階で、◇に対し、改めて本件ミエログラフィーの必要性の内容、程度、Ｌ１／２に穿刺することに伴う脊髄損傷のリスク、他の代替手段の有無等を具体的に説明した上で、Ｌ１／２に穿刺する方法でのミエログラフィーを受けるのかを熟慮し判断する機会を改めて与える必要があったというべきであると指摘しました。しかるにＡ医師は当初予定していなかったＬ１／２に穿刺する前に、その方法による脊髄損傷のリスク等に関する具体的な説明を何らしていないのであるから、説明義務違反があると認定しました。</p>
<p>なお、控訴審において、△は、Ａ医師において予見し得なかった◇の大きな体動という事象を前提に、詳細な説明を尽くすべき義務があるとするのは妥当でないと主張しましたが、控訴審裁判所は、Ａ医師において◇が大きな体動をすることも想定すべきであったとして△の主張を採用しませんでした。</p>
<p>以上から、控訴審裁判所は、上記（控訴審認容額）の範囲で◇の請求を認め、その後判決は確定しました。</p>]]>
        
    </content>
</entry>

<entry>
    <title>No.556「頭皮を採取して腋窩部に移植する分層植皮手術において、患児に禿髪が生じる。医師の手技上の過失は否定されたが、説明義務違反が認められた地裁判決」</title>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="https://www.medsafe.net/precedent/hanketsu_0_556.html" />
    <id>tag:www.medsafe.net,2026://2.1293</id>

    <published>2026-08-07T04:45:50Z</published>
    <updated>2026-08-07T04:46:39Z</updated>

    <summary>福島地方裁判所いわき支部令和２年３月１２日判決　ウェストロージャパン （争点） ...</summary>
    <author>
        <name>管理者</name>
        
    </author>
    
        <category term="医療判決紹介" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="https://www.medsafe.net/">
        <![CDATA[<h3>福島地方裁判所いわき支部令和２年３月１２日判決　ウェストロージャパン</h3>

<h4>（争点）</h4>
<ol>
<li>医師に手技上の義務違反があったか否か</li>
<li>説明義務違反及び因果関係があったか否か</li>
</ol>

<p class="note">＊以下、原告を◇、被告を△と表記する。</p>

<h4>（事案）</h4>
<p>◇（平成１９年生まれの男性・本件手術当時３歳）は、平成２２年２月１日、誤ってシチューをこぼした際にやけどを負い、地方自治体である△の開設する病院（以下「△病院」という。）を受診したところ、顔面熱傷、前胸部熱傷と診断された。</p>
<p>◇は、同日△病院に入院し、Ｄ医師（昭和５９年５月医師免許を取得して平成７年５月から△病院の形成外科に所属する）が担当医師となった。Ｄ医師が医師免許取得後、本件手術までの間に行った植皮手術は約２０００例であり、そのうち頭部を採皮部とする植皮手術は約３０例であった。頭皮以外では、大腿部、背部及び腹部などを採皮部とした植皮手術を行ったことがあった。</p>
<p>その後、◇は、胸の一部を残して上皮化したと診断され、同月９日に退院した。退院後、◇は、同月１２日、同月１６日及び同月１９日△病院を受診した。</p>
<p>△病院の医師は、◇の腋窩部の状態に鑑みて、◇の両親に対して植皮手術を提案したが、◇の両親は、植皮手術によらない治療法を調べるため、これを留保した。</p>
<p>◇は平成２２年２月２３日、Ｉ病院を受診した。担当したＥ医師は、◇の両親に対して湿潤治療について説明し、プラスモイストで被覆し、顔面にワセリンを塗布した。</p>
<p>平成２２年２月２５日、◇がＩ病院を受診したところ、両側前胸部、腋窩及び上腕については、周辺部から上皮化が進んでおり、感染症状がなかった旨診断された。</p>
<p>同年３月９日に◇がＩ病院を受診した際も同様であった。</p>
<p>◇は同月２３日にＩ病院を受診したところ、瘢痕拘縮は起きていないようであるが、創が収縮していると診断された。</p>
<p>◇は、同年７月２８日にＩ病院を受診した際、両側腋窩の瘢痕拘縮を認められた旨の診断を受けた。</p>
<p>平成２３年２月１４日、◇は△病院を受診した。Ｄ医師は、両腋窩及び顔面の瘢痕を認めるとともに、特に右腋窩は拘縮が強いと判断し、右腋窩の植皮手術等を提案した。その際、◇の両親は、手術による傷が目立たないようにしたいと考えたことなどから、でん部からの採皮を要望したのに対し、Ｄ医師は、でん部を採皮部とした場合、手術後、日常生活において、採皮部に疼痛が生じるなどの支障が生じるため、適当でないなどと考えて、頭部からの採皮を提案した。◇の両親は、頭部を採皮部とする植皮手術によって禿髪にならないかについてＤ医師に質問をした。Ｄ医師は、◇の両親に対し、「実施するのは分層植皮であり、禿げないよう毛根を残すようにする。採皮しても毛が生えてきて目立たなくなる。通常は２週間程度で生えてくる。」と説明した。◇の両親は、Ｄ医師の説明を踏まえ、頭皮を採皮部とする分層植皮手術を受けることに承諾した。</p>
<p>同年３月１日、◇の母は△病院で麻酔科の医師から行われる麻酔の概要等について説明を受けた上で、◇の代理人として、◇が麻酔を受けることに同意した。また、採皮部位は頭皮とし、顔面についての手術については今回行わないこととした。</p>
<p>平成２３年３月８日、◇の父は、◇の病態及びその外科的治療の必要性について説明を受け了知したとして、手術を施行することに承諾し、同日、◇は手術のため△病院に入院した。</p>
<p>平成２３年３月９日、Ｄ医師らは、◇に対し、採皮部である頭皮に生理食塩液を注入して、採皮部位を平たんにした上で、採取する皮ふが約０.３ｍｍになるように設定したフリーハンドデルマトームを用いて頭皮を採取し、採取した頭皮の全部について、その一部はシートのまま、残部はメッシュグラフトⅡデルマトームを利用してメッシュにした上で、右腋窩に移植する本件手術を行った。本件手術においては、フリーハンドデルマトームや生理食塩液のほか、ベスキチン(被覆材)などが用いられた。</p>
<p>平成２３年３月９日、本件手術後に◇の後頭部から出血があったため、ガーゼで◇の後頭部を固定したが、その後も後頭部からの出血があり、ガーゼ交換をした。</p>
<p>また、同日の本件手術後、Ｄ医師は、◇に対し抗菌薬（セファメジン）を投与し、同月１４日にも抗菌薬（セフゾン）の内服を行うとともに、◇の家族に説明の上、抗菌薬を処方した。</p>
<p>平成２３年３月１４日、◇の植皮部の生着は良好な状態にあり、同月１５日には生着が良好と診断されたことなどから◇は△病院を退院した。</p>
<p>平成２３年３月１８日、◇はＳ大学総合医療センターを受診した。採皮部には被覆材(ベスキチン)が固着、残存していたが、無理にはがすことはしなかった。同月２３日の時点でも、◇の頭部には被覆材が付着しており、少しずつはがしたものを、なお付着していた。</p>
<p>同月２６日、◇はＳ総合医療センターを受診した。その際、◇の頭部(被覆材個着)については、明らかな感染兆候は見られない旨診断されたほかは、◇頭部に発毛が見られない理由について、上皮化が遅れている場合には発毛が見られないことがあり得る旨の説明を受けた。また、◇の腋窩部についてはほぼ上皮化したと診断された。</p>
<p>平成２３年３月３１日、◇は△病院を受診した。その頭部について、上皮化傾向と診断されたが、右側頭部の浸出液を吸い取り被覆材（エスアイエイド外用）が貼付された。</p>
<p>平成２３年４月９日の時点において、採皮部である◇頭部には、発毛している箇所が見られたほか、浮腫状の肉芽などが見られた。</p>
<p>平成２３年４月１２日、◇が△病院を受診したところ、採皮部に感染が見られたため、Ｄは当該部位に消毒剤(ポピヨドン液)で消毒し、被覆材(アクアセルＡＧ)で創部の処置を行った。同月２２日に◇が△病院を受診した際にも、上皮がない状態での感染がまだある旨診断されるとともに、植皮部は良好である旨診断された。</p>
<p>同年５月２日、◇は△病院を受診し、頭部の消毒などの処置を受け、プロスタンディン軟膏とリンデロンＶＧ軟膏を処方された。◇は、採皮部はわずかに上皮化したとうかがわれる旨診断された。</p>
<p>同月７日、◇が△病院を受診したところ、頭部に感染兆候はないが、処置は同様に継続する旨診断された。</p>
<p>同月２０日、◇は△病院を受診し、頭部の消毒や軟膏の塗布などの処置を受けた。◇は、頭部の感染は落ち着いてきた旨及び腋窩については未だ硬いが両手挙上はできる旨診断された。</p>
<p>同年６月２日、◇が△病院を受診したところ、上皮化していない部分があと少しである旨診断され、同月１６日に◇が△病院を受診した際には、採皮部は上皮化した旨及び右腋窩は硬い旨診断された。</p>
<p>同月８月１１日、◇は△病院を受診したが、その際、Ｄ医師は◇の頭部に禿髪の状態がある旨診療記録に記載した。また、同年１０月７日に◇が△病院を受診した際に、対応した医師も「頭皮の禿髪は？」と診療記録に記載した。</p>
<p>平成２４年２月１日、◇はＩ病院を受診した。その際、◇頭部には幅３ｃｍの禿髪が３か所認められ、◇腋部の移植片からは発毛が認められた。</p>
<p>平成２４年２月２４日、◇の両親が△病院に来院し、◇頭部の禿髪が気になる、なぜこうなったのか、植皮部に毛が生えてるのは採皮が深かったからではないのかなどと発言した。</p>
<p>同年３月８日、◇が△病院を受診し、Ｄ医師は◇の両親に対し、◇頭部の禿髪などについて説明した。</p>
<p>平成２９年６月当時、◇頭部には、長方形状(幅３～３.５ｃｍ、縦３～１０ｃｍ)の禿髪が３か所あり、◇腋部からは発毛している。</p>
<p>そこで、◇は、Ｄ医師による、本件手術で予定されている採皮の範囲を超えて頭皮を採取したという手技上の過失及び本件手術に際して頭皮の採皮手術により頭髪が生えなくなる可能性に関する説明を怠った過失により、本件手術後、◇の頭皮から頭髪が生えない状態（禿髪）となり、精神的苦痛を被ったとして、△に対し、債務不履行に基づき、損害賠償請求を行った。</p>

<h4>（損害賠償請求）</h4>
<dl class="common-dl4-2">
<dt>請求額：</dt>
<dd>８００万円<br>（内訳：慰謝料８００万円）</dd>
</dl>

<h4>（裁判所の認容額）</h4>
<dl class="common-dl4-2">
<dt>認容額：</dt>
<dd>２００万円<br>（内訳：慰謝料２００万円）</dd>
</dl>

<h4>（裁判所の判断）</h4>
<h5 class="number-headline"><span>１</span>医師に手技上の義務違反があったか否か</h5>
<p>この点について、裁判所は、まず、◇頭部に生じた禿髪のうち、移植部である◇腋部から発毛が見られる限度においては、本件手術において頭皮を採取する際に毛根をも採取したことによって生じたものと認められるものの、◇の禿髪全体が生じた原因については、本来手術において頭皮を採取する際に毛根をも採取したことにあると認めることには疑問が残り、感染により禿髪が生じた可能性が否定できないから、◇の禿髪全体が本件手術によって毛根を採取したことによって生じたとまでは認められないと判断しました。</p>
<p>次に、裁判所は、本件手術において頭皮を採取する際に移植部である◇腋部から発毛が見られる限度で毛根をも採取したことにつき、手技上の注意義務違反が認めるかを検討しました。</p>
<p>採皮部の選択について、Ｄ医師は、日常生活における動作に際して疼痛が現れるなどの支障が大きくなく、毛髪が生えてきて、手術創などが目立たなくなることを理由に、頭皮を採皮部に選択し、◇の両親に提案しているとしました。このような採皮部の選択理由は、医療文献等において、頭皮は植皮手術における採皮部として、採皮後の疼痛が少ないことや採取後の瘢痕が目立たないなどの利点を有することが指摘されていることに照らし、一応の合理性を有するものと認められるとしました。そして、採取方法について、Ｄ医師は、生理食塩液を頭皮に注入した上で採取する皮ふの厚さが０．３ｍｍになるよう設定したフリーハンドデルマトームを用いて採皮するという方法を選択していると判示しました。この方法は、採皮部を採皮しやすい状態にした上で、採取する皮ふの厚さを設定した採皮に用いる器具を使用して採皮を行うものであり、採皮の際に必要以上に深く採皮するおそれを低減させる方法といえ、本件手術において頭皮を採取する際に毛根をも採取するおそれを最小限化させる合理的なものと認められると指摘しました。</p>
<p>また、本件手術で頭皮を採取する際に、過度に深く頭皮を採取したとも認められないから、本件手術の具体的な態様について不適切な点があったと認めることもできないと判示しました。</p>
<p>以上によれば、本件手術は、合理的な理由に基づいて採皮部を選択した上、頭皮を採取する際に毛根をも採取するおそれを最小限化する合理的な採取方法がとられたものであったと認められ、このような採取方法に基づいて行われた本件手術も、過度に深く頭皮を採取するような態様でされたものとはいえないと判示しました。</p>
<p>裁判所は、よって、本来手術が手技上の注意義務に違反したものであると認められないと判断しました。</p>

<h5 class="number-headline"><span>２</span>説明義務違反及び因果関係があったか否か</h5>
<dl class="common-dl0">
<dt>（１）説明義務違反の有無</dt>
<dd>
<p>裁判所は、この点について、Ｄ医師は、形成外科医として、相当の経験、知見等を有しており、当然、採皮の際に誤って深く採取した場合はもとより、そうでない場合でも、毛根が真皮の浅い部分に存在し得るために頭皮を採取する際に毛根をも採取するおそれがあること(Ｄ医師は、実際に自ら担当した、本件以前の症例では、禿髪を生じた例がなかったものの、禿髪が生じる可能性があること自体について認識していた旨供述する。)や、感染による脱毛のおそれがあることを把握し、かつ、植皮手術の採皮部位として、頭部以外にも、大腿、背部及び腹部などが候補となり得ることを把握していたものと認められるとしました。</p>
<p>しかも、◇の両親が、△病院の医師から植皮手術を勧められた際にこれ以外の治療方法を求めて留保したこと、その後、Ｄ医師が植皮手術の必要性を踏まえてその提案をした際も、◇の両親は、その必要性を認めたものの、採皮部としてでん部とすることを求め、Ｄ医師がでん部は適切ではないと考えて頭皮を採皮部とすることを提案した後も禿髪が生じないかといった質問を受けるなとしていたのであるから、◇の両親が手術後の整容面を意識し、頭部を採皮部とした場合に、禿髪が生じるおそれについて関心を有していたことを認識していたというべきであると指摘しました。</p>
<p>さらに、本件手術は、本件熱傷後の治療の状況等を踏まえ、既に上皮化した◇の右腋窩部の拘縮を取り除くために植皮の目的としたものであり、その必要性自体をもとより否定できないものの、一刻を争うなど特に緊急性を要するものであったというべき事情も見当たらないと指摘しました。</p>
<p>裁判所は、以上の◇の両親の関心及びＤ医師の認識に加えて、本件手術が一刻を争うなと特に緊急性を有するものであったとも認められないことからすれば、△としては、頭皮を採皮部とする本件手術を受けることについて、◇の法定代理人である◇の両親から同意を得るに先立ち、本件手術により禿髪が生じるおそれのほか、頭部やでん部以外を採皮部とする植皮手術の可能性やそのメリットデメリットについて、◇(実際には、幼児であり、意思能力のない◇に代わって本件手術を受けるかどうかを決定すべき、◇の法定代理人親権者である◇の両親)に対し、説明をすべき義務を負っていたというべきであるとしました。</p>
<p>裁判所は、しかしながら、Ｄ医師の供述等の関係証拠を踏まえても、◇の両親が本件手術に同意するに先立って受けた説明は、手術に際して毛根を残すようにする、採皮しても毛が生えてきて目立たなくなるといったものにとどまり、禿髪のおそれや頭皮やでん部以外の箇所を採皮部とする可能性について説明がされたものとは認められないから、△病院の医師であるＤ医師すなわち△の履行補助者が、その説明義務を怠ったもの、すなわち△に債務不履行があったものというべきであると判断しました。</p>
</dd>
</dl>

<dl class="common-dl0">
<dt>（２）説明義務違反と本件手術との間の相当因果関係</dt>
<dd>
<p>この点につき、裁判所は、◇の両親が、頭皮を採皮部とする本件手術を行った場合に禿髪が生じるおそれがあることや頭部やでん部以外の部位を採皮部とする植皮手術の可能性について説明を受けた場合に、禿髪が生じるおそれを懸念して頭皮を採皮部とする本件手術に同意せず、それゆえ本件手術が行われなかった高度の蓋然性が認められると判断しました。</p>
</dd>
</dl>

<dl class="common-dl0">
<dt>（３）説明義務違反と◇頭部に生じた禿髪との間の相当因果関係</dt>
<dd>
<p>この点につき、裁判所は、本件手術後に◇頭部に生じた禿髪全体について、その発生原因が毛根を採取したことによるか感染により毛根が死滅したことによるかのいずれであっても、本件手術と相当性を有すると認められるから、本件手術と◇頭部に禿髪が生じたこととの間には、相当因果関係が認められると判断しました。</p>
<p>そして、裁判所は、△の説明義務違反と、本件手術及び本件手術後に生じた◇頭部に生じた禿髪全体との間には相当因果関係があると認定しました。</p>
</dd>
</dl>

<p>以上から、裁判所は、上記（裁判所の認容額）の範囲で◇らの請求を認め、その後控訴されましたが控訴審で和解が成立して裁判は終了しました。</p>]]>
        
    </content>
</entry>

<entry>
    <title>多様化時代にリーダーシップある医師を育てる～その指導に愛はある！</title>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="https://www.medsafe.net/recent/182leadership.html" />
    <id>tag:www.medsafe.net,2026://2.1292</id>

    <published>2026-07-30T07:44:28Z</published>
    <updated>2026-07-30T07:49:05Z</updated>

    <summary> 札幌医科大学泌尿器科学講座／医療安全・病院管理学　講師　西田幸代氏 一般財団法...</summary>
    <author>
        <name>管理者</name>
        
    </author>
    
        <category term="最新動向" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="https://www.medsafe.net/">
        <![CDATA[<div class="contents">

<ul class="common-ul">
<li>札幌医科大学泌尿器科学講座／医療安全・病院管理学　講師　西田幸代氏</p></li>
<li>一般財団法人　日本リーダーシップ・ウェルビーイング医学会／大阪市立総合医療センター小児集中治療部　赤嶺陽子氏</p></li>
<li>広島大学ハラスメント相談室　北仲千里氏</p></li>
</ul>

<p>医療分野における女性の活躍推進やジェンダーダイバーシティの確立は、組織の持続的な発展において不可欠なテーマとなっている。こうした中、一般社団法人日本泌尿器科学会は2026年４月23～26の４日間、国立京都国際会館で開いた『第113回日本泌尿器科学会総会』（JUA2026）で「多様化時代にリーダーシップある医師を育てる～その指導に愛はある！」と題するダイバーシティ推進委員会企画を催した。「指導医教育コース認定プログラム」の一環で、公益社団法人日本医師会ドクターサポートセンターが共催した。登壇した西田幸代、赤嶺陽子、北仲千里の各氏の講演要旨をまとめた。</p>

</div>

<div class="line-box-top">

<div class="contents">
<h3>「ともに創るリーダーシップ―泌尿器科学会の明日に向けて―」</h3>
<p class="txt-r">西田幸代氏</p>
<div class="contents">
<h4>組織としての取り組みと現状の課題</h4>
<p>西田氏は日本泌尿器科学会（JUA）のダイバーシティ推進委員会に約10年間携わってきた経験から、女性医師の活躍とリーダー登用に向けた歩みについて語りました。</p>
<p>JUAでは2021年に理事代議員への女性登用を要望し、特定のグループ参加を促進する「クオーター制」の導入を求めました。その結果、2023年には理事枠、2024年には代議員枠に女性枠が設置されるに至りました。</p>
<p>また、学会等での女性座長を増やすため、2021年に女性座長候補者リストを作成したものの、対象となる女性指導医の約半数から｢選ばれたくない｣という消極的な回答を得たといいます。その背景には、自身の力不足や興味のなさに加え「女性という理由だけで選ばれたくない」という心理的抵抗が存在していました。</p>
<div class="contents">
<div class="imgcenter margin-bottom20">
<a href="../files/recent/182leadership/img01.jpg" rel="lightbox" class="vertical" title="JUAダイバーシティ推進委員会によるクォータ制導入">
<img src="../files/recent/182leadership/thumb_img01.jpg" alt="JUAダイバーシティ推進委員会によるクォータ制導入"></a><br>
<span class="img-coment">JUAダイバーシティ推進委員会によるクォータ制導入</span><br>
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</div>
</div>
</div>
<div class="contents">
<h4>リーダー職への昇進意欲と自己効力感</h4>
<p>西田氏が一橋大学経済研究所の臼井恵美子教授と共同で行った、札幌医大の卒業生（平均年齢40代半ば）を対象とした調査では、リーダー職に就いていない女性の約半数が「リーダーになることをまったく希望しない」と答え、消極的な層を含めると約８割が意欲をもたないという結果が出ました。一方で、男性は強く希望する人から、まったく希望しない人まで等しく分散していました。</p>
<p>このジェンダー差は個人の問題ではなく、社会や組織の構造的要因によるものと分析されます。特に｢やれと言われればやれなくはない｣と考える男性に対し、女性は｢なれる気がしない｣と感じてしまう傾向があり、ここには自己効力感（セルフエフィカシー）の差が関係しています。</p>
<p>心理学者アルバート・バンデューラが提唱した自己効力感を高める４つの要因（達成経験、社会的説得、代理経験、生理的状態）の中で、最も迅速に効果を発揮するのが、身近な手本となる「ロールモデル（代理経験）」です。</p>
</div>
<div class="contents">
<h4>新たなリーダー層の提示と「OFFUCUROの会」</h4>
<p>従来の「声が大きい、強い」といったトップダウン型のリーダーではなく、現代に求められるのは「みんなで意見を出し合い、チームとして成長していく」リーダー像です。</p>
<p>しかし、家事や育児などの時間的制約、あるいは「女性が働くのはかわいそう」といった周囲の無意識のバイアス（アンコンシャス・バイアス）により、学習やトレーニングの機会が平等に与えられていない現状があります。</p>
<p>こうした課題を解決するため、2024年夏に40代以上の女性泌尿器科医の長期的キャリアを考えるコンソーシアム、通称｢OFFUCUROの会（Over Forty Female Urologists Consortium_UROlogy）が立ち上げられました。</p>
<p>調査によると、40代以上の女性医師は有意に女性のロールモデルをもっており、キャリアの成熟に伴ってリーダーへの意欲（モチベーション・トゥ・リード）や自己の利益を度外視してでも役割を全うしようとする姿勢が高まることが分かっています。</p>
<div class="contents">
<div class="imgcenter margin-bottom20">
<a href="../files/recent/182leadership/img02.jpg" rel="lightbox" class="vertical" title="Motivation to Lead スコア">
<img src="../files/recent/182leadership/thumb_img02.jpg" alt="Motivation to Lead スコア"></a><br>
<span class="img-coment">Motivation to Lead スコア</span><br>
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</div>
</div>
<p>西田氏は、次世代に前向きな連鎖を生むために、座長や演者などの機会を提供して多様なロールモデルを提示し続けること、そして今後は全国レベルで人材を発掘する「スポンサーシップ」、大学の垣根を越えた「メンター制度」、国際連携、そして業務効率化や研究支援を推進していくことが重要であると結びました。</p>
</div>
</div>

<div class="contents">
<h3>「愛は感情ではなく選択である：奉仕の覚悟・サーバントリーダーシップと次世代に向けたWellbeing-centered Leadership」</h3>
<p class="txt-r">赤嶺陽子氏</p>
<div class="contents">
<h4>医師のリーダーシップ教育の必要性</h4>
<p>小児科医であり、小児集中治療（ICU）を専門とする赤嶺氏は、ハワイ大学への留学時に医師向けのリーダーシップ教育に触れた経験から、日本における指導医層への教育の重要性を訴えました。</p>
<p>赤嶺氏は、現代の医療現場において「診療だけしていればいい時代は終わった」と指摘します。従来の価値観や前任者の模倣による指導は若手には通用せず、パワーハラスメントと捉えられて指導医自身が追い込まれるリスクがあるからです。</p>
<p>また、医師のバーンアウト（燃え尽き症候群）は個人の問題ではなく、組織や上司のふるまいと直結していると指摘します。さらに、女性医師支援についても「両立を支援し、守る」だけでなく「成長できる機会を提供する」視点への転換が必要です。</p>
</div>
<div class="contents">
<h4>バーンアウトの組織的損失とウェルネス</h4>
<p>リーダーは、メンバーのバーンアウトがもたらす悲惨な結末を理解していなければなりません。個人レベルではメンタルヘルスの悪化や最悪の場合の過労死・自殺につながり、組織レベルでは医療の質の低下、医療ミス、生産性の低下、そして離職の増加を引き起こします。熟練したスタッフの離職は病院の経営を直撃するため「患者を守りたければ、まず職員を守れ」というのが近年の国際的な潮流です。</p>
<p>米国のメイヨ―クリニックが提唱する｢ウェルネス・センタード・リーダーシップモデル｣では常にメンバーを大事にすること（Care About People Always）を基盤に据え、関係性を培った先に組織の変革（インスパイア、チェンジ）があるとされています。</p>
<p>リーダー自身の充実感がチームのウェルビーイングの最大要因であり、リーダーが消耗していればチームも消耗します。</p>
<p>こうした背景から、赤嶺氏は2025年に「一般社団法人日本リーダーシップ・ウェルビーイング医学会」を設立し、医師向けのリーダーシップ育成プログラム『GROW & THRIVE』を開始しました（※）。</p>
<div class="contents">
<div class="imgcenter margin-bottom20">
<a href="../files/recent/182leadership/img03.jpg" rel="lightbox" class="vertical" title="エビデンス：指導医のふるまいが、チームのWell-beingを決める">
<img src="../files/recent/182leadership/thumb_img03.jpg" alt="エビデンス：指導医のふるまいが、チームのWell-beingを決める"></a><br>
<span class="img-coment">エビデンス：指導医のふるまいが、チームのWell-beingを決める</span><br>
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</div>
</div>
</div>
<div class="contents">
<h4>「愛」を行動として示すサーバントリーダーシップ</h4>
<p>次世代リーダーシップの例として赤嶺氏が解説したのが、支援と奉仕を軸とする「サーバントリーダーシップ」です。これは従来のトップダウン型のピラミッド組織をひっくり返し、リーダーが土台となって全体を下から支える概念です。</p>
<div class="contents">
<div class="imgcenter margin-bottom20">
<a href="../files/recent/182leadership/img04.jpg" rel="lightbox" class="vertical" title="サーバントリーダーシップとは？">
<img src="../files/recent/182leadership/thumb_img04.jpg" alt="サーバントリーダーシップとは？"></a><br>
<span class="img-coment">サーバントリーダーシップとは？</span><br>
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</div>
</div>
<p>このリーダーシップの根底にあるのは、書籍『ザ・サーバント』に記された「Love is not a feeling. It is a behavior」(愛は感情ではなく、行動である)という原則です。</p>
<p>ここでの「愛」とは、見返りを求めず、他者のために尽くす「アガペー愛」を指し、相手への好き嫌いの感情にかかわらず「どう振舞うか」という選択と行動の問題を意味します。</p>
<p>求められるふるまいは次の９つです。</p>
<ul class="common-ul">
<li>忍耐（Patience）：困難な状況で自制心（セルフコントロール）を保つこと</li>
<li>優しさ（kindness）：注意を払い、評価し、励ますといった行動で示すこと。「私（I）」を主語にしたメッセージが有効</li>
<li>謙虚（Humility）：虚偽や高慢さがなく、部下の前で自分の間違いを認め、謝罪できること</li>
<li>敬意（Respectfulness）：相手を重要人物として扱い、年齢や立場に関係なく、話を最後まで聞くこと</li>
<li>無私（Selflessness）：自分のニーズよりも相手のニーズを優先して考えること</li>
<li>赦し（Forgiveness）：悪いことをされたときに、怒りを捨てて報復心を抱かないこと</li>
<li>正直（Honesty）：チームを欺かない誠実さをもつこと</li>
<li>献身（Commitment）：一度決めた選択を貫き、やりきること</li>
<li>奉仕と犠牲（Service and Sacrifice）：自分の欲求を脇に置き、他者のために最高の利益を追求する覚悟をもつこと</li>
</ul>
<p>赤嶺氏は、これらはリーダーの性格ではなく選択であり、話を最後まで聞く、成長を認めるといった小さな行動を明日から一つでも実践することがチームを変える第一歩になると語りました。</p>
<p>※<a href="https://www.weleadjp.com/grow-thrive">https://www.weleadjp.com/grow-thrive</a></p>
</div>
</div>

<div class="contents">
<h3>「リーダーシップ育成」（外科系育成）を取る中で起きるハラスメント　その『良かれ』は大丈夫？」</h3>
<p class="txt-r">北仲千里氏</p>
<div class="contents">
<h4>職場の安全配慮義務とセクシャルハラスメントの構造</h4>
<p>社会学者として大学内でハラスメント相談対応にあたる北仲氏は、ハラスメントの本質と、特に医学系組織において発生しやすい事例について解説しました。</p>
<p>組織や管理職には、職員が安全に勤務できる環境を整える法的な「安全配慮義務」があります。ハラスメントを防止するだけでなく、発生防止や発生時の適切な対処が義務付けられています。</p>
<p>ハラスメントの中でも、世界で最初に概念化されたセクシャルハラスメントは「女性が職場で対等な仲間として扱われなかった状況」を背景に生まれた言葉です。セクハラは「対価型セクハラ」と「環境型セクハラ」に大別されます。</p>
<p>対価型セクハラは職務上の権限（評価や採用など）を引き換えに、性的な要求を押し付けるもので、単なる不快感の問題ではなく、職権濫用であり、職業人・指導者としての倫理的に許されない行為です。</p>
<p>環境型セクハラは職場内に性的な噂や不適切な掲示物があり、環境自体が不快で業務に支障をきたすものです。特定の部下のみを贔屓（ひいき）することで周囲にモヤモヤを生じさせるケースもこれに該当します。</p>
</div>
<div class="contents">
<h4>アカデミックハラスメントと医学界特有の課題</h4>
<p>大学や研究の現場で行われるパワハラは「アカデミックハラスメント」と呼ばれます。これはセクハラとは異なり、業務・指導の範疇で行われるため、判断には｢必要性｣と「相当性」という基準が用いられます。正当な指導や激しい学問的議論、不合格判定などはハラスメントには当たりません。</p>
<p>しかし、指導を放棄する「ネグレクト」、過去のミスを何時間もねちねちと問い詰める行為、本人の意思を無視した関連病院への配置などは、相当性を欠くとして問題視されます。</p>
<p>また、医学系では、研究成果の追求による過重労働の美談化やそれに伴う研究不正の強要、さらに「オーサーシップ（論文の著者資格）」を巡るハラスメントが頻発しています。関与していない医師の名前を載せる「ギフトオーサー（名誉オーサー）」や、実際に貢献した若手の名前を載せない「ゴーストオーサー」などの存在です。</p>
<p>国際医学雑誌編集者委員会（ICMJE）の厳格な著者基準を満たさない論文著者が、日本の医学界において大量に見られる現状があり、これが若手の不満やモヤモヤを生む温床となっています。</p>
<div class="contents">
<div class="imgcenter margin-bottom20">
<a href="../files/recent/182leadership/img05.jpg" rel="lightbox" class="vertical" title="ICMJEの統一投稿規定">
<img src="../files/recent/182leadership/thumb_img05.jpg" alt="ICMJEの統一投稿規定"></a><br>
<span class="img-coment">ICMJEの統一投稿規定</span><br>
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</div>
</div>
<p>ハラスメントが放置されると、優秀な若手研究者が組織や日本から流出するだけでなく、風通しの悪さから医療方針に関する意見具申ができなくなり、重大な医療事故や法令違反を招く危険性もあります。</p>
</div>
<div class="contents">
<h4>加害者処罰から「柔軟な解決（調整）」への転換</h4>
<p>ハラスメントを公に訴え、事実を調査して加害者を処罰することは、ハードルが非常に高く、多くの被害者のニーズとも一致していません。そこで現在、広島大学をはじめとする一部の大学では、白黒をはっきりさせる調査を行うほかに、より小さな段階で「調整」と呼ばれる柔軟な解決を導入しています。</p>
<div class="contents">
<div class="imgcenter margin-bottom20">
<a href="../files/recent/182leadership/img06.jpg" rel="lightbox" class="vertical" title="近年の大学のハラスメント対応のトレンド">
<img src="../files/recent/182leadership/thumb_img06.jpg" alt="近年の大学のハラスメント対応のトレンド"></a><br>
<span class="img-coment">近年の大学のハラスメント対応のトレンド</span><br>
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</div>
</div>
<p>このアプローチは、加害者の処罰を目的とするのではなく「困っている被害者が再び元気に働ける・学べる環境を取り戻すこと」をゴールとしています。具体的な手法として、以下のようなものが挙げられます。</p>
<ul class="common-ul">
<li>教員側に悪意があったかを追求せず、相性や卒業のメリットを優先して「指導教員や研究室を柔軟に変更する」</li>
<li>「空間やチーム、建物などを分ける」ことで、物理的な接触を断つ</li>
<li>事実関係の確定はしなくとも、該当者へ「注意を促すイエローカード（警告）」を出す</li>
</ul>
<p>現在、日本では依然として、ハラスメントに関する法制度やクリニック等の小規模組織における相談体制に課題が残されているものの、このような柔軟な環境調整の仕組みを望む声は多く、他大学や組織でも導入が進みつつあります。</p>
</div>
</div>

<div class="sign margin-top50">
<p>企画・取材：伊藤公一</p>
</div>

</div>]]>
        
    </content>
</entry>

<entry>
    <title>人生100年時代における医療の引き際と「暮らし」を支える在宅医療の役割</title>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="https://www.medsafe.net/recent/181home.html" />
    <id>tag:www.medsafe.net,2026://2.1291</id>

    <published>2026-07-28T02:11:14Z</published>
    <updated>2026-07-28T02:11:46Z</updated>

    <summary> 医療法人悠翔会　理事長 内閣府　規制改革推進会議　健康・医療・介護WG　専門委...</summary>
    <author>
        <name>管理者</name>
        
    </author>
    
        <category term="最新動向" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="https://www.medsafe.net/">
        <![CDATA[<div class="contents">

<p class="txt-r">医療法人悠翔会　理事長<br>
内閣府　規制改革推進会議　健康・医療・介護WG　専門委員<br>
佐々木淳氏</p>

<p>高齢者のケアでは、単に病気を治療するだけでなく、本人の価値観や生活の質（QOL)を尊重し、医療リスクとQOLのバランスを取りながら、本人・家族・医療者が共に最善の選択を考える「共同意思決定」が重要だ。従って、医療は特定のリスクをゼロにすることを目指すのではなく、患者と対話し、何が本人にとっての幸福かを考え、共有し、QOLを重視したリスク管理を行うべきではないか――。医療法人悠翔会理事長で内科医の佐々木淳氏は自らの経験を踏まえ、人生100年時代の在宅医療の在り方をそのように唱えた。2026年４月18、19の両日、大阪府立国際会議場で開かれた『第12回日本医療安全学会学術総会』における佐々木氏の講演「地域医療における『リスク』と向き合う」の要旨を紹介する。</p>

</div>

<div class="line-box-top">

<div class="contents">
<h3>私たちが直面する「長寿」という最大のリスク</h3>
<p>私が従事する在宅医療の世界では、病院とは異なる別のリスクがあるということを常々感じながら仕事をしています。</p>
<p>現代の日本において、長寿は喜ばしいことであると同時に、予期せぬ形で自分のコントロールできない方向に人生が進んでいくという、ある種の「ライフリスク」をはらんでいます。</p>
<p>日本の男性の平均寿命は約82歳。女性はさらに長生きであり、2000年以降に生まれた子どもたちに至っては、２人に１人が100歳まで生きる時代が来るとも言われています。</p>
<p>しかし、ここで注目すべきは「健康寿命」と「平均寿命」の間に横たわる、男性で約８年、女性で約10年というギャップです。</p>
<p>国を挙げた健康増進プロジェクトにより、健康寿命そのものは延伸しているものの、それを上回るペースで平均寿命が延びているため、この格差は縮まっていません。</p>
<p>私たちは生き物である以上、30歳ごろをピークとして身体機能は徐々に低下し、85歳を過ぎれば２人に１人が要介護状態に、95歳を過ぎれば大半の人がなんらかの認知機能低下を抱えるようになります。</p>
<p>つまり、超高齢期における要介護や認知症は「予防し、克服すべき対象」ではなく、生物として「受け入れるべき対象」なのです。人生の最終段階において、私たちはこの現実とどう向き合い、どのような医療を選択すべきなのでしょうか。</p>
<div class="contents">
<div class="imgcenter margin-bottom20">
<a href="../files/recent/181home/img01.jpg" rel="lightbox" class="vertical" title="人間はだれもが歳をとる">
<img src="../files/recent/181home/thumb_img01.jpg" alt="人間はだれもが歳をとる"></a><br>
<span class="img-coment">人間はだれもが歳をとる</span><br>
<span class="font-s gray">※クリックで拡大</span>
</div>
</div>
</div>

<div class="contents">
<h3>医療から「暮らし」へのグラデーション</h3>
<p>急性期医療の役割が「病気の原因を突き止め、治療して元通りに治すこと」であるならば、在宅医療の役割は「医療ではどうにもならない老化や老衰を受け入れ、最期まで穏やかに過ごせるように支えること」にあります。</p>
<p>人間は、単に生物として生かされているだけでは幸福を感じられません。退職や喪失によって失われた「社会とのつながり」を再構築し、たとえ車いす生活であっても、認知症が進んだとしても、本人が「自分らしい人生を生きている」と思える環境を整えることが重要です。</p>
<p>身体機能の回復が難しいのであれば、周囲の環境を調整することで、残された機能の中で本人の望む暮らしを実現する――これこそが在宅医療の本質的な仕事です。</p>
<p>臨床の現場ではしばしば「どこまで治療するか」という点ばかりが議論されがちですが、本当に優先されるべきは患者自身の価値観です。</p>
<p>「最期までどのように生きたいか」「人生において大切にしたいことは何か」｢絶対に避けたい状況は何か｣など、生活に根ざした意向を丁寧にくみ取った上で、初めてそれに並走する形で医療の在り方を検討していく必要があります。</p>
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<a href="../files/recent/181home/img02.jpg" rel="lightbox" class="vertical" title="「治療」はどこまで？">
<img src="../files/recent/181home/thumb_img02.jpg" alt="「治療」はどこまで？"></a><br>
<span class="img-coment">「治療」はどこまで？</span><br>
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<h3>高齢化社会で歪む医療ニーズと救急・入院医療の逼迫</h3>
<p>現在、都市部を中心に救急搬送件数は右肩上がりに増加していますが、その要因を紐解くと、増加しているのは後期高齢者の搬送のみであり「次世代」の搬送は増えていません。</p>
<p>さらに重大なのは、搬送された高齢者の55％が「軽症」であり、緊急受診の必要性が低かったという事実です。この背景には、介護施設などで「転倒して頭を打ったから、念のためにCTを撮る」といった、ガイドラインに沿った過度なリスクヘッジの意識があります。</p>
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<a href="../files/recent/181home/img03.jpg" rel="lightbox" class="vertical" title="高齢者の搬送は軽症が多い">
<img src="../files/recent/181home/thumb_img03.jpg" alt="高齢者の搬送は軽症が多い"></a><br>
<span class="img-coment">高齢者の搬送は軽症が多い</span><br>
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<p>同様の構造は入院医療にも見られます。日本の国民医療費の約半分は70歳以上の高齢者が占めており、その医療費の７割近くが入院医療費です。</p>
<p>急性期病院の入院患者の大部分を後期高齢者が占める中、彼らが入院する主原因は70～80代がピークとなる動脈硬化性疾患やがんではなく、85歳以降に激増する肺炎や骨折といった「脆弱性疾患」です。</p>
<p>超高齢者が肺炎や骨折で入院した場合、仮に退院できたとしてもADL(日常生活動作）は大きく低下します。</p>
<p>入院生活による身体機能や認知機能の低下（HAP：病院獲得性機能障害）という新たなリスクを考慮すると｢何かあったら病院に入院させれば安心｣という従来の常識は、超高齢者には必ずしも成り立たないのです。</p>
<div class="contents">
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<a href="../files/recent/181home/img04.jpg" rel="lightbox" class="vertical" title="超高齢者は何で入院している？">
<img src="../files/recent/181home/thumb_img04.jpg" alt="超高齢者は何で入院している？"></a><br>
<span class="img-coment">超高齢者は何で入院している？</span><br>
<span class="font-s gray">※クリックで拡大</span>
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<h3>「治せる病気は治すべき」という倫理の盲点</h3>
<p>医療者が陥りがちな罠に「治せる病気があるのだから、治療しなければならない」という義務感があります。しかし、治療を行うことで、かえって患者を不幸にするケースは少なくありません。</p>
<p>例えば、誤嚥性肺炎を繰り返す94歳の女性が急性期病院に入院したとします。病院側は「安全に、確実に肺炎を治すため」に２週間の禁食措置を取り、ベッド上に安静とします。</p>
<p>しかし、その結果として認知症が進行し、さらに別の肺炎を併発して禁食期間が長引けば、肺炎が治ったころには寝たきりになり、自力で食べる機能を完全に失ってしまう（廃用症候群）という悲劇が起こります。</p>
<p>病院側が「２週間を安全に乗り切る」という短期的な医療リスクヘッジを優先した結果、患者のその後に続く「数年の人生」における最大の満足を奪ってしまった例です。</p>
<div class="contents">
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<a href="../files/recent/181home/img05.jpg" rel="lightbox" class="vertical" title="階段状に衰弱が進み...">
<img src="../files/recent/181home/thumb_img05.jpg" alt="階段状に衰弱が進み..."></a><br>
<span class="img-coment">階段状に衰弱が進み...</span><br>
<span class="font-s gray">※クリックで拡大</span>
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<p>生存中央値が２年ほどである超高齢の患者に対して、若年層と同じような厳格な血糖管理や血圧管理、生活制限を課す意味がどこまであるのでしょうか。</p>
<p>医療を加えることや生活を制限すること自体が、結果として患者の口腔機能や身体機能を破壊し、生活の質（QOL)を著しく損なう最大の「リスク」になり得ることを医療者は認識しなければなりません。</p>
</div>

<div class="contents">
<h3>共同意思決定（SDM）のプロセスと家族の葛藤の緩和</h3>
<p>患者本人が意思表示できない状況や認知症の進行により、複雑な治療のメリット・デメリットを理解できない場合、医療者はその判断を家族に委ねがちです。</p>
<p>しかし、過酷な二者択一を迫られた家族は、後に深刻な罪悪感や精神的負担を抱えることがさまざまな研究で明らかになっています。</p>
<p>この課題を解決するのが、医療者と家族（および本人）が共に最適な選択肢を形づくっていく「共同意思決定（SDM）」のプロセスです。SDMは「医療の適応」｢本人の意向｣｢患者を取り巻く環境｣「地域や家族のサポート体制」という４つの要素を整理し、何が最善かを対話を通じて探っていきます。</p>
<p>家族に対して、ただ「入院させますか、家で見ますか」と選択を迫るのではなく「おばあちゃんがもし、自分の気持ちをストレートに表現できるとしたら、なんと言うでしょうか」と問いかけ、家族が本人の代弁者となれるよう寄り添う伴走が必要です。</p>
<p>日ごろから関わりをもつ在宅医療チームが、家族と共に判断の責任を分かち合うことで、モヤモヤとした葛藤を少しずつ言葉にし、納得のいく看取りの選択へと導くことが可能になります。</p>
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<a href="../files/recent/181home/img06.jpg" rel="lightbox" class="vertical" title="意思決定した後が重要">
<img src="../files/recent/181home/thumb_img06.jpg" alt="意思決定した後が重要"></a><br>
<span class="img-coment">意思決定した後が重要</span><br>
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</div>
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<div class="contents">
<h3>限界効果を見極め、死生観を共有できる社会へ</h3>
<p>リスク管理の努力を２倍にすれば、リスクが半分になるわけではありません。医療や安全対策には必ず「天井効果（限界効果）」が存在し、どれほど厳格な制限を設けても、高齢者が「生きていくこと自体のリスク」をゼロにすることは不可能です。</p>
<p>ちょっとしたリスクを極限まで排除しようとするあまり、ベッドへの縛り付けや過度な禁食を強いることは本人の尊厳と幸福を損なう本末転倒な行為といえます。</p>
<p>人生の後半を進むにつれ、積極的な医療による「生命の延長効果」は短くなり、相対的に医療的管理の必然性は低下していきます。その代わりに必要とされるのは、本人が毎日を楽しく過ごせる環境を整える「ケア」の充実です。</p>
<div class="contents">
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<a href="../files/recent/181home/img07.jpg" rel="lightbox" class="vertical" title="リスクの限界効果">
<img src="../files/recent/181home/thumb_img07.jpg" alt="リスクの限界効果"></a><br>
<span class="img-coment">リスクの限界効果</span><br>
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</div>
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<p>おいしいものを食べれば窒息のリスクがあり、外に出れば転倒のリスクがあります。どこまでのリスクを許容し、本人の「やりたいこと」を優先するか、その限界点を社会全体で共有していく必要があります。</p>
<p>３カ月から１年のうちに必ず死を迎える超高齢者の患者に対して「何かあったらどうしよう」と右往左往する問いの立て方自体が間違っているのかもしれません。</p>
<p>避けられないその時が来るまで、どうすれば本人が最もハッピーに生きられるか。この問いかけを医療者、家族、そして社会全体が共有し、医療の「引き際」を前向きに捉えていくことこそが人生100年時代を豊かに締めくくるための鍵となりそうです。</p>
</div>

<div class="sign margin-top50">
<p>企画・取材：伊藤公一</p>
</div>

</div>]]>
        
    </content>
</entry>

<entry>
    <title>原因追及ではなく｢うまくいったこと｣に着目する。前向き医療安全のススメ</title>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="https://www.medsafe.net/recent/180positive.html" />
    <id>tag:www.medsafe.net,2026://2.1290</id>

    <published>2026-07-16T01:27:19Z</published>
    <updated>2026-07-16T01:27:56Z</updated>

    <summary> 医療法人徳洲会　八尾徳洲会総合病院 医療安全管理部　部長／徳洲会グループ本部　...</summary>
    <author>
        <name>管理者</name>
        
    </author>
    
        <category term="最新動向" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="https://www.medsafe.net/">
        <![CDATA[<div class="contents">

<p class="txt-r">医療法人徳洲会　八尾徳洲会総合病院<br>
医療安全管理部　部長／徳洲会グループ本部　医療安全部門　顧問<br>
近畿大学医学部・近畿大学病院　客員教授<br>
辰巳陽一氏</p>

<p>医療安全は、事故を減らし、患者を守るために生まれた活動である。しかし、その取り組みがルールの追加や原因追及に偏ると、現場にとっては「責められる」「仕事を増やされる」活動として受け止められることがある。医療には不確実性があり、危険を完全になくすことはできない。それでも医療者の営みは続いていく。では、現場を疲弊させず、安全をより確かなものにしていくには、どのような医療安全が必要なのだろうか。辰巳陽一氏は、2026年4月18、19の両日、大阪府立国際会議場で開かれた『第12回日本医療安全学会学術総会』の大会長講演「前向き医療安全のススメ」で、失敗を責めるだけではなく、日常の成功や現場の適応にも目を向ける医療安全のあり方を提案した。 </p>

</div>

<div class="line-box-top">

<div class="contents">
<h3>新たな視点「前向き医療安全」を提唱</h3>
<p>辰巳氏は冒頭、本総会ポスターのメインビジュアルに葛飾北斎の代表作『富嶽三十六景』の「甲州石班澤（こうしゅうかじかざわ）」を採用した意図を紹介している。遠景の富士山、中景のうねる波、近景の断崖上で働く漁師はそれぞれ、厳然と存在する目標、なくなることのない環境が生み出す危険、その間で続く人の営みをなぞらえているとしたうえで「これは単なる風景画ではなく、不確実で危険で苛酷な環境の中で脈々と続く人の営みを描いている」。そして「不確実で苛酷な環境｣は医療安全を巡る現在の状況の例えであり、ここで漁師が魚を逃がしたり、海に落ちたりしたとして、果たして責められるべきものなのだろうかと問いかけている。</p>
<div class="contents">
<div class="imgcenter margin-bottom20">
<a href="../files/recent/180positive/img01.jpg" rel="lightbox" class="vertical" title="本総会ポスターのメインビジュアル">
<img src="../files/recent/180positive/thumb_img01.jpg" alt="本総会ポスターのメインビジュアル"></a><br>
<span class="img-coment">本総会ポスターのメインビジュアル</span><br>
<span class="font-s gray">※クリックで拡大</span>
</div>
</div>
<p>辰巳氏は連綿と伝えられてきたこれまでの医療安全活動が「事故に潜むエラーを探し出して、次からは犯さないように命令をする、ともすれば『責める文化』の香りのする『後ろ向き』といえるものであった」としたうえで「近年はその概念が変わろうとしているはず」と指摘し「ノンテクニカルスキル、レジリエンス、心理的安全性、ポジティブ・アプローチなどという概念とともに、エラーの存在を認める、エラーから学ぶ、安全を維持するために微調整することの重要性が謳（うた）われている」と述べた。</p>
<p>そして、医療安全は決して虐めることや他人の尻拭いが目的ではなく、もっと前向きなものとして捉えるための背景を考えてみたい」と講演の狙いを語った。</p>
</div>
</div>

<div class="contents">
<h3>「やめること」も医療の質に含まれる</h3>
<p>辰巳氏は医療の質と業務との関係について「従来の活動が『不足を埋める』足し算型で発展してきたため『やめる・減らす』といった対応は後ろ向き・リスクと捉えられやすい」と認識。「本質的には、やめることも医療の質に含まれているはず」との見方から</p>
<ol class="common-ol">
<li>Value-based healthcare（価値に基づく医療）⇒価値の低い医療や不必要な検査・介入を減らす／やめる</li>
<li>Choosing Wisely（「やらなくていい医療｣を明示する運動）⇒"不要な対策をやめること＝質文化"の明文化</li>
<li>Lean／無駄の排除（トヨタ生産方式由来）⇒価値を生まない活動＝無駄を削り、価値を生む活動に集中</li>
</ol>
<p>――などが該当するのではないかと述べている。</p>
<p>また、不要な対策を増やし続けること自体が負担増やエラー誘発、形骸化、思考停止のリスクとなる点にも懸念を示した。</p>
<p>上記を踏まえて、辰巳氏は医療安全活動に取り組む流れを次のように示した。</p>
<ol class="common-ol">
<li>医療事故の原因を究明する</li>
<li>医療事故にならない理由を究明する</li>
<li>医療事故を回避する方策を検証する</li>
<li>医療行為が成功する方策を検証する</li>
<li>医療現場に、これらの方策を強要する</li>
<li>医療現場に、これらの方策をやりたくさせる</li>
<li>医療現場による方策の実効性を確認する</li>
<li>方策の妥当性を再検討する</li>
<li>方策を再度実施する、方策を中止する</li>
<li>患者・家族の視点を組み込む</li>
<li>システムとして学習する（組織学習）</li>
</ol>
<p>（１）～（４）は知の生成、（５）～（６）は実装、（７）～（９）は改善サイクル、（10）～（11）は患者参加・患者経験値――とまとめることができる。</p>
<p>辰巳氏は「患者は、単なる『安全の受益者』ではなく転倒予防や服薬、ICなどのすべてに関与する『共創者』であり、今後の医療安全では必須項目になる」と強調。上記（１）～（９）が"個別改善"に寄っていることから「個別改善で終わらせぬデータ化と共有、組織知化を進め"学習する組織"の視点が必要」と説いた。</p>
</div>

<div class="contents">
<h3>医療には100％の安全はないという観点</h3>
<p>辰巳氏は本総会の開催テーマのキーワードでもある｢前向き医療安全｣を</p>
<ol class="common-ol">
<li>「医療安全と現場との前向きな関係構築＝現場を責めないという意味の前向き」</li>
<li>「医療安全の前向きな運用＝過去を責めずに学び、活かすという意味の前向き」</li>
<li>「医療安全の前向きな概念の習得＝医療安全を"面白い学問"として捉えるという意味の前向き（ただし、面白いは"Funny"ではなく"Interesting"である）」</li>
</ol>
<p>という３階層に分けて「医療安全は患者との関わりや多様な学問（哲学、心理学、組織構造学など）のエッセンスが詰まった分野であり、単に責任を追及するだけでは不十分で、相手が行動したくなるように働きかける視点が重要」と訴えた。</p>
<p>３階層の第一の「医療安全と現場の前向きな関係構築」について辰巳氏は「薬には効果もあれば副作用もある。手術にも合併症という、期待に反する事故が一定の確率で発生する。医療従事者も人であり、勘違いし、やり間違え、忘れる。時に医療のシステムそのものが原因となって生じる事故もある」として、医療には100％の安全はなく「人は間違いを犯すもの」という観点からシステムの改善に取り組んだり、失敗（ヒューマンエラー）への対策を進めたりする必要があるとの見方を示した。</p>
<p>そして「一部の医療安全管理者は『結果が悪ければ犯罪である』という、責める信念を持っているが、この医療安全の"錦の御旗"の下に責める感覚は避ける必要がある」。責めた結果、医療者は医療安全に対して「医療事故報告（インシデント・アクシデント報告）はペナルティだから報告したくない、関わりたくない｣という捉え方をしがちと辰巳氏は説明。実害を生み出しかけたインシデントが責められ、実害を未然に防いだ事例は褒められると「責められたと思った医療スタッフはたいていインシデントを出すのをやめ、医療安全が嫌いになる」というメカニズムに言及した。</p>
<p>辰巳氏は「医療安全が重要であることに異論はないものの、安全担当者たちに『安全規則を定め、現場に励行させればよい』との考えが医療安全・病院幹部に蔓延している｣と現状を分析。その一方で「安全規則が生産性を阻害することがあり、時には別のリスク（時間的・心理的）を生むこともある。状況が変化する現場では規則を守れない場合も起きるため、さらに安全規則が増える」と現場で起こり得る実態に触れた。</p>
<p>一般的に規則が増えるほど、守れないルールを押し付けられるほど違反数は増加する。その結果、ますます職場での違反が横行する。つまり、医療安全が違反を増やしていると辰巳氏は警鐘を鳴らす。</p>
</div>

<div class="contents">
<h3>ポジティブ・インシデント報告を推奨</h3>
<p>３階層の第二の「医療安全の前向きな運用」で辰巳氏は「安全には『Safty-Ⅰ』と『Safty-Ⅱ＋レジリエンス』という２つの定義がある」として「あえて医療事故の良い点に目を向けるポジティブ・インシデント報告」を推奨した。</p>
<p>Safty-Ⅰは事故などの悪い点を見つけ、分析し、改善策を講じるアプローチ。従来の医療事故調査に近い手法で危険を減らすのに役立つ。Safty-Ⅱは「日常業務がなぜうまくいっているのか」に着目し、その成功要因を分析・活用するアプローチで、現場スタッフのレジリエンス（微調整力）を重視する。</p>
<p>レジリエンスは状況の変化に対応し、うまく業務を遂行する能力で「学習する」「観察する」「予見する」「対応する」という４つの力で構成される。手術時に術者が経験に基づき、リスクを摘む見えにくい微調整などがこれにあたる。</p>
<p>ポジティブ・インシデント報告では、未遂事故（インシデント）がなぜ未遂で済んだのか、未然に防げた理由（内因、外因、ソフト、ハード）を添える。事故（アクシデント）がなぜ、そのレベルで済んだのかについても、その理由があれば添える。事故の中に、今後活かせるポイント（学習・観察・対応・予見）があれば、取り上げて共有する。</p>
<p>つまり「動的なレジリエンスのコツの瞬間の動きを切り取って共有すること」の大切さを辰巳氏は唱える。</p>
<div class="contents">
<div class="imgcenter margin-bottom20">
<a href="../files/recent/180positive/img02.jpg" rel="lightbox" class="vertical" title="ポジティブ・インシデント報告のすすめ！">
<img src="../files/recent/180positive/thumb_img02.jpg" alt="ポジティブ・インシデント報告のすすめ！"></a><br>
<span class="img-coment">ポジティブ・インシデント報告のすすめ！</span><br>
<span class="font-s gray">※クリックで拡大</span>
</div>
</div>
<p>また、改善に向けた前向きな取り組みとして米国のMarshall Goldsmith氏が提唱する「FeedbackからFeedforwardへ」というチーム力向上ためのアプローチ法を紹介した。</p>
<p>その要点は「過去は変わらないが、未来は変えることができる。改善方法を身に付ければチャンスはまた与えられる」というもので「"正しい"を学ぶほうが"悪い"を学ぶよりもより生産的」で「過去には触れず、将来のポジティブで前向きなことを話題にする」｢行為に注目し、個人には注目しない｣というスタンスである。</p>
<p>その延長線上で辰巳氏は「原因追及ではなく、うまくいったことに着目する」探求アプローチの考え方に触れ「なぜ、そのエラーを発見できたのか」といった成功側面に注目し、発見者を称賛して知見を共有することの大切さを力説した。</p>
</div>

<div class="contents">
<h3>医療組織にも「動的平衡」のスタンスを</h3>
<p>冒頭で紹介した本総会のポスターには「前向き医療安全のススメ！」というテーマの下に「案外おもしろいよ！　医療安全」というメッセージが吹き出しで添えられている。</p>
<p>「この際の面白さはFunnyでもDifficultでもなく、Interesting」と辰巳氏は言い切る。学問としての医療安全を巡ってはこれまで「心理的安全性／多様性（DEI）｣｢Safety-Ⅰ／Safty-Ⅱ（レジリエンス）｣「ノンテクニカルスキル」｢適応課題／技術課題」など数多くの概念が示され、論議されてきた。</p>
<p>それらを踏まえて、辰巳氏は、組織の機能を維持するための概念として「動的平衡／ミニマリズム」の考え方を紹介した。３階層の第三の「医療安全の前向きな概念の習得」の実践編でもある。</p>
<p>動的平衡は自然界（生物学・化学）において重要な概念とされ、生物が分解と生成を繰り返し、変化に適応しながら一貫性を保つ仕組みである。「スタッフが入れ替わる医療組織も、変化に対応し全体として機能する動的平衡を保つ必要がある」と辰巳氏は言う。</p>
<div class="contents">
<div class="imgcenter margin-bottom20">
<a href="../files/recent/180positive/img03.jpg" rel="lightbox" class="vertical" title="医療組織と細胞における動的平衡モデル">
<img src="../files/recent/180positive/thumb_img03.jpg" alt="医療組織と細胞における動的平衡モデル"></a><br>
<span class="img-coment">医療組織と細胞における動的平衡モデル</span><br>
<span class="font-s gray">※クリックで拡大</span>
</div>
</div>
<p>辰巳氏は医療安全における動的平衡を理解するための要素として、再構築、調整、補完の３つを挙げる。再構築は「継続的な再学習」、調整は「共通言語での微調整」、補完は「多様性を認め、助け合う関係」などと言い換えることができる。</p>
<p>なぜ事故に至らなかったか、被害を最小限に食い止められた要因を報告・共有する「ポジティブ・インシデント報告」、過去の失敗に触れず、これからどうするかという未来志向で建設的に話し合う「Feedforward」、エラーの原因追及だけでなく、なぜ発見できたかという成功側面に着目する｢探求アプローチ｣などはいずれも旧来の医療安全対策から一歩踏み出した今日的な手法といえるだろう。</p>
<p>辰巳氏は「医療安全におけるミニマリズムは現場の適応力を損なわない形で業務を再設計する視点として有用である」と断言。</p>
<p>「すべてを守ろうとせず、守るべきものを動的に選び直す」</p>
<p>｢変化する状況に応じてマニュアルをアップデートする文化｣</p>
<p>｢すべてを記録するのではなく、意味あるものだけ記録し、深く共有する意識」</p>
<p>｢インシデント報告のミニマル化（件数減ではなく質の重点化）と動的学習｣</p>
<p>――などと、動的平衡を維持するためのミニマリズムの可能性を示した。</p>
<p>「単なる風景画ではなく、不確実で危険で苛酷な環境の中での人の営みを描いている」という「甲州石班澤」の絵解きからから始まった講演は「波は消えない、それでも営みは続く」という力強いメッセージで締めくくられた。</p>
<div class="contents">
<div class="imgcenter margin-bottom20">
<a href="../files/recent/180positive/img04.jpg" rel="lightbox" class="vertical" title="前向き医療安全への心がけ">
<img src="../files/recent/180positive/thumb_img04.jpg" alt="前向き医療安全への心がけ"></a><br>
<span class="img-coment">前向き医療安全への心がけ</span><br>
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</div>
</div>

<div class="sign margin-top50">
<p>企画・取材：伊藤公一</p>
</div>

</div>]]>
        
    </content>
</entry>

<entry>
    <title>選択のポイント【No.554、555】</title>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="https://www.medsafe.net/precedent/hanketsu_0_554-55.html" />
    <id>tag:www.medsafe.net,2026://2.1289</id>

    <published>2026-07-10T03:26:55Z</published>
    <updated>2026-07-10T03:27:32Z</updated>

    <summary>今回は、歯科医師が業務上過失致死罪で有罪となった刑事事件の判決を２件ご紹介します...</summary>
    <author>
        <name>管理者</name>
        
    </author>
    
        <category term="医療判決紹介" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="https://www.medsafe.net/">
        <![CDATA[<p>今回は、歯科医師が業務上過失致死罪で有罪となった刑事事件の判決を２件ご紹介します。</p>


<p>Ｎｏ．５５４の判決紹介にあたっては、一審判決（東京地裁平成２５年３月４日判決。判例時報２１９０号１３３頁）も参考にしました。一審判決の量刑の理由として、被告人（歯科医師）は、かなりの症例数を誇るインプラント治療の専門家でありながら、インプラント治療を行う医師の間で安全性や有用性に問題があるとされていた方法を、疑問を抱くことなく有効な治療法であると軽信して採用していた。インプラント手術という歯科医療の中でも侵襲性の高い治療を行っているにもかかわらず、臨床歯科医師に期待される医療の一般水準に対応する努力を怠っていたというほかないと指摘しました。他方、患者遺族との間で和解が成立し、和解金として５９３５万５１３７円を支払ったことや、前科はなく、これまで歯科医師として長年診療を続けてきたことなどを酌むべき事情と認めました。</p>


<p>Ｎｏ．５５５の事案では、歯科医師の弁護側は、原判決につき、偶発症の抽象的な可能性を認識しただけで、すべての抽象的な可能性のある疾患を疑い、診察や検査を網羅しなければ過失犯となるとするのは、医療者に不可能を強いるものであると主張しました。しかし、控訴審裁判所は、原判決は、被告人（歯科医師）が、偶発症に陥っている抽象的な可能性を認識したと判断しているのではなく、複数の歯科医師のほか、複数の医師ら医療関係者の供述を踏まえ、本件当日、本件歯科医院で歯科治療が行われた直後の午後５時１０分頃、被告人（歯科医師）が患児の父親から患児の異常を訴えられた時点で、問診、視診若しくは触診により患児の全身状態を十分に確認し、又はパルスオキシメーターによる動脈血中酸素飽和度及び脈拍数の測定等を行っていれば、患児が急性リドカイン中毒を含む偶発症に陥っている可能性があり、放置すれば死亡する可能性があることを認識し得たものと認められ、かつ、遅くとも午後５時３０分頃までには、患児の救命処置に移ることは可能であったところ、その時点で被告人（歯科医師）が、業務上の注意義務を履行していれば、患児の死亡を避けられたと判断しているのであるから、弁護側の主張は前提を欠くとして採用しませんでした。そして、患児は、本件当日、本件歯科医院において、リドカインを主成分とする局所麻酔剤を用いた歯科治療を受けた直後に容体が急変しているのであり、かつ、両親が、その旨をしきりに訴えていたのであるから、被告人（歯科医師）において、患児のリドカイン中毒を疑う契機が十分あったことも明らかであると判示しました。</p>


<p>両事案とも実務の参考になるかと存じます。</p>]]>
        
    </content>
</entry>

</feed>
