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「患者の権利と医療の安全」

今回は、樋口範雄教授と児玉安司弁護士のもとに集まった研究会が重ねてきた研究成果として出版された書籍「患者の権利と医療の安全」をご紹介します。

本書の序章では具体的な事例から従来の法的思考を問い、第Ⅰ部では患者の権利をめぐる論点、第Ⅱ部では国際化や医療技術の発展に伴う課題の諸論点が検討され、第Ⅲ部では古くて新しい課題である医療事故の「解決」のあり方について諸外国の議論を含めて論じられています。

そして、最終章は物理学者ハイゼンベルクの次のような言葉を引用して結ばれています。
「自然科学では、よいそして実りのある革命は、まずある狭い輪郭のはっきりした問題をとくことに限ったときに、しかも最小限の変更にとどめるよう努力したときにだけ、ただそのときだけ遂行され得ます。歴史においてもまた、最も永続的な革命は、ただ狭く限られた問題を解決し、そしてできる限りわずかしか変更しないようなものであるはずだと、私は考えることができます。」

興味を持たれた方は是非ご覧になってみてください。

(「はしがき」より抜粋)

本書では、...従来医療者との対立強化の文脈で捉えられてきた「患者の権利」論が、医療者と市民が共に歩むことを志向した議論にもなりうる可能性や、医療事故をめぐる説明や謝罪が患者とその家族だけではなく医療者をも立ち直らせる契機になりうることなどを論じている。

ISBN: 978-4623059584
365ページ
ミネルヴァ書房 (2011-2-28初版第1刷発行)
岩田太【編】
定価:本体\6,000+税

目次

序章
医療と法を考える—5つの具体的な事例から
第Ⅰ部
患者のための医療を考える
第1章
患者の権利と法の役割
第2章
同意能力のない子に対する親の治療拒否をめぐる対応—医療ネグレクトへの介入
第3章
似て非なる「日本式インフォームド・コンセント」を超えるために
第Ⅱ部
様々な課題—医療へのアクセス、国際化、先端医療
第4章
医療へのアクセスとアメリカの医療保険改革法の成立
第5章
医療通訳の普及に向けて—外国人患者の権利保護の視点から
第6章
渡航医療(メディカルツーリズム)と国際規制について
第7章
死体に対する遺族の権利について
第8章
医学研究における医療情報の保護
第9章
医療機器と医薬品に関連する製造物責任
第10章
医学と利益相反—近年のアメリカ法の動向
第Ⅲ部
医療事故からの克服を目指すために
第11章
患者の遺族に対する医師の説明義務
第12章
チーム医療における説明義務
第13章
産科医療補償制度に見る日本の医事紛争解決システムの方向性
第14章
医療事故、Open Disclosure、謝罪—法はいかに被害者と「加害」医療者を支援すべきか
第15章
ニュー・ジーランドに学ぶ医療紛争の解決のあり方
第16章
医療安全・医事紛争の10年をふりかえって
カテゴリ: 2011年5月30日
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