医療判決紹介:最新記事

医療関連訴訟の判例・裁判例からは多くを学べます。彼らは何故勝訴し、何故敗訴したのでしょう。

2025年9月11日
選択のポイント【No.534、535】

今回は施設入居者のてんかん発作に関する施設の責任が認められた裁判例を2件ご紹介いたします。 No.534の事案では、遺族は、入居者が他の入居者から暴行被害を受けていたことについても施設側に慰謝料請求をしました。 そして、裁判所は、被告(社会福祉法人)は知的障害児施設を設置運営し、寮等の施設において、...

2025年9月11日
No.535「てんかん発作により障害者総合福祉施設の入所者が死亡。救急要請が遅れたことにつき施設職員の注意義務違反を認めた地裁判決」

横浜地方裁判所令和6年1月31日判決 判例タイムズ1531号177頁 (争点) 施設職員に過失があったか否か *以下、原告を◇、被告を△と表記する。 (事案) 社会福祉法人である△が運営する障害者総合福祉施設(以下「△施設」という。)は、常時介護を要する重度障害者に対し、利用者個々の特性に応じた介護...

2025年9月11日
No.534「知的障害児施設の寮の入所者が浴室内で溺死。損害賠償に関して最低賃金額を基礎収入として逸失利益を算定すべきとした地裁判決」

青森地方裁判所平成21年12月25日判決 判例時報2074号113頁 (争点) 責任分担法理の準用による賠償額の減額の可否 逸失利益の算定 *以下、原告を◇1及び◇2、被告を△1及び△2と表記する。 (事案) A(死亡当時16歳・重度の知的障害を有する男性)は自閉症、てんかん、行動障害及び重度の知的...

2025年8月 7日
選択のポイント【No.532、533】

今回は、癌で死亡した患者につき、いわゆる「相当程度の可能性の侵害」が認められた裁判例を2件ご紹介します。 最高裁判所平成12年9月22日判決は、「医師の医療行為が、その過失により、当時の医療水準にかなったものでなかった場合において、右医療行為と患者の死亡との間の因果関係の存在は証明されないけれども、...

2025年8月 7日
No.533「医師が肝細胞癌の疑いのあった患者に対してEOB造影MRI検査等を実施せずその後患者が肝細胞癌破裂により死亡。医師の注意義務違反と患者の死亡との因果関係は否定したが、生存していた相当程度の可能性の侵害を認めて慰謝料の支払いを命じた地裁判例」

東京地方裁判所令和6年9月13日判決 判例タイムズ1531号170頁 (争点) 医師の注意義務違反と死亡との間の因果関係及び生存の相当程度の可能性の有無 *以下、原告を◇、被告を△1及び△2と表記する。 (事案) W(昭和25年生まれの男性)は、平成28年10月12日、医療法人である△1の開設する病...

2025年8月 7日
No.532「胃がん検診における医師の注意義務違反と患者死亡との間の因果関係は認められないが、患者の生存に係る相当程度の可能性が侵害されたとして病院側に慰謝料の支払いを命じた一審判決を維持した高裁判決」

東京高等裁判所平成30年9月26日判決 ウェストロー・ジャパン (争点) 平成23年X線検査の終了後、Aの胃の穹窿部に隆起性病変があることを認識し、その内視鏡検査の必要性を認識していた医師につき、X線検査の診断内容をAに通知して医療機関において精密検査を受診するよう指導すべき注意義務違反の有無 *以...

2025年7月10日
選択のポイント【No.530、531】

今回は、放射線治療に関して、医師の過失が認められた裁判例を2件ご紹介します。 No.530の紹介にあたっては、一審判決(東京地裁平成4年4月10日判決)も参考にしました。 No.530の事案では、耳鼻咽喉科の医師が、患者の頸部腫脹を悪性腫瘍と判断し、放射線照射が必要であると考え、放射線科に治療を依頼...

2025年7月10日
No.531「肺の腺様嚢胞癌の治療中の患者が放射線脊髄症により死亡。国立病院の医師らに脊髄の放射線照射を回避すべき措置を怠った過失を認めた地裁判決」

東京地方裁判所平成7年9月22日判決 判例タイムズ916号192頁 (争点) 放射線治療の方法に過失があるか否か *以下、原告2名をあわせて◇ら、被告を△と表記する。 (事案) A(昭和7年生まれの主婦)は、昭和59年5月22日国である△の設置・経営する病院(以下「△病院」という。)で検査を受けたと...

2025年7月10日
No.530「放射線治療を受けた患者が、速中性子線照射の後遺症で放射線脊髄炎となったのは、大学病院の医師に放射線治療の継続について過失があったからと判断された高裁判決」

東京高等裁判所平成6年1月24日 判例タイムズ873号204頁 (争点) 医師に注意義務違反(速中性子線治療を継続すべきでないのにこれを継続した注意義務違反)があったか否か *以下、原告を◇、被告を△と表記する。 (事案) ◇(昭和57年当時42歳)は、昭和55年4月21日、5、6年前から右頸部にリ...

2025年6月10日
選択のポイント【No.528、529】

今回は麻酔注射における医師の過失が認められた裁判例を2件ご紹介します。 No.528の事案では、患者の損害について、裁判所は、患者(もともと針生検前の麻痺の程度が相当重い糖尿病患者)は、本件医療事故がなかったとしても車椅子での生活を余儀なくされ日常的に介護を要する状態であり、家事労働に従事することは...

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