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「医療安全を考慮した医薬品包装」−医療現場における医薬品バーコードの活用−

池田和之氏

池田和之氏

2013年5月30日、創業50周年を迎えた株式会社岩田レーベル主催の技術講演会が都内で開催された。今回はその中から奈良県立医科大学附属病院 薬剤部の池田和之氏の講演「医療安全を考慮した医薬品包装」の一部をご紹介する。

「医療安全を考慮した医薬品包装」
−医療現場における医薬品バーコードの活用−

奈良県立医科大学附属病院 薬剤部
日本医療情報学会認定 上級医療情報技師
池田和之氏

医薬品バーコードの活用

医薬品バーコードは、そもそも間違わないようにする、少なくとも間違ったことがわかるようにするために、薬剤の取り揃え、注射薬の混合、配置薬の管理、納品・返品処理、添付文書の閲覧などの場面で活用が想定される。

たとえば注射薬の混合の場面では、まずバーコードによる登録→注射薬の混合一覧の作成→混合記録注射ラベルの発行など行い、透明な液体がいくつか混ざっていても見た目ではわからないが、バーコードを利用し確認することで事後の監査や混合の実績調査にも活用できる。

また、配置薬の管理として、配置薬をバーコードにより登録することで、配置薬使用済み一覧表の作成、配置薬集計表補充リストの作成ができる。さらに返品薬の管理としては、返品薬一覧により在庫管理、払い出し履歴の調整を行うこともできる。

薬剤の取り揃え
薬剤の取り揃え
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注射薬の混合
注射薬の混合
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配置薬の管理
配置薬の管理
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返品薬の管理
返品薬の管理
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当院では、輸血部における特定生物由来製品の管理、注射薬調剤、麻薬の混合調整、抗がん剤混注支援、などの場面で医薬品バーコードを活用している。注射薬鑑査システムでは、間違った医薬品のバーコードを通し払いだそうとすると注意喚起の警告音が鳴る。その際、消音ボタンをクリックして音を消し、警告表示画面を閉じないと次の作業に進めないようになっている。このようなバーコードによる医薬品管理を導入することによって、調剤ミスは減少した。

注射薬鑑査システム
注射薬鑑査システム
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医薬品バーコードの課題

1.医薬品バーコードの特徴を理解したシステムの開発

バーコードを活用するためには「医薬品バーコード」「情報システム」「バーコードリーダー」の3つが必要である。

少し前の調査結果であるが、バーコードによる読み取りでは、特にスタックシンボル(二層型、印字スペースが極めて少ない商品向け)の読み取りが悪かった。背景色では、「透明に黒字」の組み合わせが読み取りにくかった。

また、全てのリーダーで医薬品バーコードが読み込めるわけではない。同じような形のリーダーでも、設定により読み込みを制限している場合もあり、読めるものと読めないものがあることに注意が必要だ。用途に合わせたシステム・運用の構築が求められる。

2.利用可能なバーコードの表示、情報提供

ところで、平成24年6月29日には「医療用医薬品へのバーコード表示の実施要項」の一部改正について()が出されている。そのポイントは2つ。「販売包装単位へのJANコード表示に終了期限」「内服・外用薬の調剤包装へのバーコード表示」である。現在、販売包装単位のバーコードはGS1とJANの併記が必要となっているが、平成25年10月(工場出荷分)からはJANコードの表示は必要なくなる。そして平成27年7月(工場出荷分)からはGS1のみの表示となり、JANは表示しなくなる。JANコードを流通管理や受発注・棚卸などの在庫管理等に利用している医療機関は、管理方法の変更の検討が必要だ。とはいえ、予算の問題もあろう。システムの改修が追いつかないところもあるはずだ。JANコードの表示を通知の期間内で、できるだけ長く継続していただきたい。そして、JANコードがなくなることを、多方面から積極的に情報提供してほしい。

新バーコード表示スケジュール
新バーコード表示スケジュール
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3.積極的な利用促進

課題の3つ目はバーコード表示の意義を理解することだ。医薬品バーコードを表示している企業関係者の多くがまだ意義を理解していない。これでは十分な活用は望めない。製品普及のプロセスとしてイノベーター理論では普及率16%の壁ということが言われる。市場全体の16%を超えたあたりから大きく普及率が上昇するというものだ。医薬品バーコードはまだまだイノベーター(市場全体の2.5%)の段階である。物の安全、使用の安全のための調査・情報提供は企業の責務である。医療機関での利用促進に向けて、まず、企業関係者がバーコードの意義を理解して、医療関係者に伝えてほしい。

 http://www1.mhlw.go.jp/kinkyu/iyaku_j/iyaku_j/anzenseijyouhou/298-1.pdf

既に、特定生物由来製品、生物由来製品及び注射薬(生物由来製品を除く。)のアンプルやバイアル等についてはバーコードが表示されているが、この改正により、内用薬のPTP包装シートや外用剤のチューブ等にもバーコードが表示されるようになる。一方、PTP包装シート100枚入りの箱などの販売包装単位に表示されているJANコードや、これらの販売包装単位の箱が10箱入った梱包段ボール箱等に表示されているITFコードが削除されることになる。

カテゴリ: タグ:, 2013年6月12日
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