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選択の視点【No.132、133】

今回は、薬剤投与後の経過観察・監視義務に関連して病院側の損害賠償責任が認められた判決を2件ご紹介いたします。

No.132の判決紹介にあたっては、一審判決(前橋地方裁判所平成11年2月3日判決・判例時報1698号114頁)も参照しました。また、病名や医療従事者の職業名につきましては、現在の用語に改めました。

No.133の事案では、胎児の時点で死亡していたのか、出生後に死亡したのかについても争点となりました。この違いは損害賠償の金額に影響します。出生後の死亡であれば、逸失利益(生涯を通じて稼働して得られたであろう利益)や固有の死亡慰謝料が損害賠償の対象となりますが、出生前死亡(いわゆる死産)であれば、逸失利益や固有の慰謝料は否定されます。本件の事案でいえば、原告の請求金額のうち、4790万4103円、裁判所の認容額のうち2853万7368円が、出生前死亡であれば損害賠償の対象とはなりませんでした。

裁判所は、母体分離後、強心剤の投与中に心電図モニター上に心拍数90台の波形が数分間表れたことを捉えて、生命徴候があったとして、出生後の死亡と判断しました。

両判決とも実務の参考になろうかと存じます。

カテゴリ: 2008年12月18日
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