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■傾向分析と対策指針
改善案をより具体化させるためには、発生事象の傾向分析を行います。つまり、中身の分析です。事前に集めておいたインシデント・ヒヤリハット事例からカテゴリ別にわけた件数グラフ(図4)を作成します。グラフからはどのカテゴリのインシデント・ヒヤリハットが多いかが視覚的にわかります。このグラフから、発生事象の傾向を分析します。この傾向分析は、それぞれの要因を抽出し、その要因別に背景となっている因子を見つけ出し、個別に対応策を練っていくという流れです(図5、図6)。
そのデータをいかに読み解くか、また組織の実態がどうなっているかを合わせて、答えを導きます。ただし、ヒューマンファクターを深く学んだからといって、適切な対策を指摘できる訳ではありません。これは、ヒューマンファクターの専門家は、分析の専門家であって、対策立案といったコンサルティングの専門家ではないからです。したがって、現実的には、これらの要因の抽出や対策の立案は、(ヒューマンファクターとコンサルティングという両面の)センスがある人でないと難しいです。さらに、このようなセンスはただ経験をつめばよい、誰かに学べばよいというわけでもありません。「組織の中を歩けばわかる」という人もいるようですが、これは極めて稀なケースです。
収集したデータから、その背後要因を的確に分析し、その現場に即した適切な対策を立案するということは、一般のリスクマネージャーにとっては非常に難しいといえます。現場での他の業務をも行いながらという状況では、現場のリスクマネージャーに任せられるのは、インシデント・ヒヤリハット事例の集計までが限界でしょう。データを収集さえできれば、病院にいる人ならだれでも適切な対策を出せるということはありません。道具は誰でも使うことができますが、道具をつかって何を行うかはその人のセンスに依るところが大です。これらのことを踏まえると、現場の医療安全担当者に求めることは、ヒューマンファクターの基本的な考え方を知り、組織がどのような特性をもつかを把握するところまでだと思います。適切な対策立案まで求めることは、酷だと思います。
現実的には現場のリスクマネージャーにヒューマンエラー防止活動すべてが任せっきりになっている場合が多いかもしれません。しかし、より実質的なヒューマンエラー防止を確立させるためには、分析し対策を立てることができる能力をもつ人材を探し、そこに組織のデータを回し、対策方針立案までを依頼し、そのような人・組織からの提案を、現場のリスクマネージャーが検討する。できれば、そのような人・組織と現場のリスクマネージャーが定期的に検討会を開くことが理想的です。ただ残念ながら、そのような人材は(現在の日本では)非常に少ないです。
したがって、プロフェッショナルな問題解決のセンスをもった人材をどのように体系的に育成していくかが、今後、医療現場に関わらず種々の分野における課題だと思います。
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