高瀬氏は、パスにおけるリスクマネジメントを、構造化に依存するもの(客観情報の扱い、構造化による問題抽出)と、フィードバック機能に依存するもの(潜在的問題によるバリアンス、アウトカムに表出される問題点)から、例を挙げ、検討する。 「たとえば、手術中に出血したという事例でも、止血がうまくできなかったために出血した場合、重要な血管を損傷したという場合、切ってはいけない動脈を切ってしまった場合がある。この中で、最初のものはどこがいけなかったのかよくわからない。つまり客観性が低いんですが、最後のものは、何が起きたのか、誰がいつ何をやったのかがわかり、客観性が高い。 投薬についても、痛みが激しかったけれども鎮痛剤の投与をしなかったという場合、痛みが激しかったのに、激しくないときに投与する鎮痛剤を投与した場合、鎮痛剤を投与しようとしたけれども、間違えて、整腸剤を投与したという場合があります。この例では、痛みが激しいときに鎮痛剤を投与しなかったのが良かったのかどうか、わかりませんが、違うものを投与したというミスの問題点はすぐわかる。このように、パスは客観性の高いミスに対しては、際立って効果があります」 同様に見ていけば、医療の提供システムに起因して発生するエラーの中でも、情報に関係するミスのかなりがパスによって、クリアーできる。 一方、エラーの中で、ヒューマンに起因するエラーは、パスではほとんど回避できない。 また、プロセスに関するエラー、たとえば、標準の手順ではパス通りにやればよいけれど、標準と違う手順があるときや、患者の状態の評価プロセスにかかわるエラーを改善するのは難しい。バリアンスの問題も、パスそのものに問題があるのか、症例がパスに合わないのか、パスに合わない症例をエントリーしているから、結果的にバリアンスが多発するのか、という判断が必要になる。アウトカムデータの使い方も、漠然と「今年は痛みが強い患者さんが多かったんだよね」というのではなく、それがシステム全体の何に起因するものなのか、という切り分けが必要だ。だが、そうした判断や切り分けは、早期に行わなければ意味がない。そのために必要なのが、「診療情報のインテグリティ(完全性)」やパス全体を統括的に管理する体制だという。 「つまり、パスを導入したら安全管理ができるというのは 幻想であって、医療機関が、極力ヒューマンに起因するミスがないように努力し、ある程度の水準を満たし、それでもリスクが回避できず、新たな方策が見つからないというときには、パスの導入は非常に効果が高いのです。実際にパスを導入してうまくいっている医療機関では、パス以前の体制に加え、運用面、管理面が非常にうまく工夫されています。だから、パスが有効である、と言えるわけです」 |