組織風土の重要さ |
不祥事や大事故につながる組織的違反が、組織の風土と深くかかわりがあるという意識は、トラブルを経験した企業の内部でも直感的にあるようです。組織の風土に問題があると、組織的違反が起こりやすく、違反が改善、解消されにくくなります。風土が属人的であると、対人関係への配慮をきちんとしなければ、言わなければならないことを言いにくい職場になることがわかっています。この小さな躊躇が、医療事故の原因になっている可能性も高いのです。 |
■あなたの組織は属人的ではありませんか?ここで、あなたの職場の属人度チェックをしてみましょう。
以上の5つの項目にいくつあてはまるでしょうか。3つ以上は危険ゾーン、4つ以上ならばあなたの職場風土に問題が起こっている可能性があります。 |
属人風土と組織的違反の関係 |
社会心理学グループ(※)では、組織風土の属人思考と組織的違反の関係に着目し、過去2回にわたり、首都圏の企業や官公庁・役所などの従業者を対象に大規模な社会心理学調査を積み上げてきました。 |
研究では、まず、調査対象者に「属人風土の尺度測定」「命令系統の整備尺度」「違反容認の雰囲気尺度」という3つの尺度を用いて質問を行い、組織風土が違反の容認に与える影響(組織的違反を容認するかどうかという価値観)について検討することを目的としました。 続く研究では、前述の研究で用いた3つの尺度に加え、「組織の属人思考の程度と組織的違反の件数尺度」を用いる事で、組織風土と実際の違反行動の件数(組織風土の属人度が高いと、実際に違反の件数が多いかどうか)まで踏み込んだ調査を行っています。その結果、属人思考と組織的違反の間に非常に強い関連が確認され、属人思考の排除が、風土刷新、および組織的違反の防止に有効であるという結論が導きだされました。 組織風土の属人思考をデータというかたちで確認し、風土と違反の関わりを客観的にとらえることは、効力ある風土改革に不可欠であると考えます。 |
問題意識の改革と健全な風土づくりを |
組織や職場は、多かれ少なかれ権威主義的な制度や風土を持っているものです。 病院の職場にも相応な権威が機能していることは自然なことです。重要なのは、組織が本来の権威としての機能を果たさず、形骸化した状態で、責任の遂行を妨げる要因として機能することがあり得るということを知ることです。 職場の上下関係が一見は厳しくなくとも、組織風土が属人的であると、言わなければならないことを言いにくい職場になることがわかっています。 産業界では、自分の組織における不正を知っていると答えている人が、およそ21%もいます。そのうち、56%の人がどこにも言わずにすませています。このようなパーセンテージは医療界でも類似しているのではないでしょうか。この56%の躊躇のかなりの部分が、上司や先輩に相談しにくいということが中核になっています。 医療機関においても、組織風土の属人性はとめられます。これらの問題を克服しようと考え始めるのは、あなた自身の問題意識です。「問題を言いだしにくい」「違反を注意しづらい」など、このような小さな躊躇を克服するためにも、職場風土をまず意識してみることが大切です。 |
[参考文献、資料の紹介] 組織の社会技術シリーズ1、2、3 著 岡本浩一・今野裕之/新曜社 無責任の構造 著 岡本浩一/PHP新書 医療コンプライアンス推進ビデオ「小さな躊躇を克服しよう」/科学技術振興機構 権威主義の正体 著 岡本浩一/PHP新書 |
[取材を終えて]病院では大変高度な安全対策が求められる。しかしながら、どれぐらいの安全率をもとめていけばよいのか、必ずしも認識されてはいない。仮に一人の職員が50年に1回重大な事故を発生すると仮定する。50年に1度の医療事故は非常に低いように思われるが、1000人のスタッフが勤務する病院では、病院として年間20回になってしまうという。病院として50年に1度の事故の発生にとどめるためには、一人あたりの職員の事故の発生率は5万年に1回という計算になる。このことは、意識改革や風土を改革しないままに病院の規模を拡大すると、かえって医療事故の増加が懸念されるということである。人手が足りないからといって安全対策ができないと決め込まずに、まず、基本を守ること。そして、安全を大切にする意識改革や組織の健全な風土づくりを行い、そのうえでバランスよく病院が発展していくことが望まれる。 岡本氏より動画メッセージを頂いています。(1分1秒:5.21MB) |


