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選択の視点【No.344、345】

今回は小児科での死亡事故で、転医義務が争点となった事案を2件ご紹介します。

No.344の事案では、医師側は、診察日に医師が処方した薬を患者(2歳の女児)の両親がその指示通りに服用させなかったことなどを理由に、過失相殺を主張しましたが、裁判所は、母親が直後の受診日に医師に薬の不服用について告げ、医師もその事実を了知していたことが認められるのであるから、この薬の不服用が患者の死亡に対して直ちに重大な影響を与えたとまでは解し難いとして、過失相殺の主張を採用しませんでした。

No.345の事案では、当初の主治医も訴訟の被告とされましたが、裁判所は、当初の主治医の患者(11歳の男児)に対する健康管理措置、ステロイド剤離脱に関する措置、喘息の根治治療法として試みた措置のいずれについても、特に医師としての裁量の範囲を逸脱し、その注意義務に違反するものと解することはできないとして、当初の主治医の責任を否定しました。

また、裁判所は、損害額のうち、逸失利益算定にあたり、患者が人工呼吸の実施により救命されたとしても、満18歳に達するまでにその重篤であった喘息の疾患が安定して、通常の労務に就労し得たか、さらには就労後においても一般勤労者と同様にその勤務を継続しえたかが疑問として残ると判示し、一般的な逸失利益の算定額の約3分の1が相当と判断しました。

両事案とも実務の参考になろうかと存じます。

カテゴリ: 2017年10月 6日
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