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選択の視点【No.122、123】

今回は,専門医療機関への転送が問題となった判決を2件紹介します。

No.122の判決は、正月の4日の金曜日に急性白血病の患者が受診した事案です。開業医は専門医療機関への転送が必要であると判断をしましたが、検査結果が当日の夜にならないと分からないと思いこんで、午後3時30分頃にFAXされた検査結果に夜まで気が付きませんでした。また、開業医は、自分の信頼する医師のいる専門医療機関に翌週の月曜日に連絡をとって転送するつもりでおり、FAXの結果に夜まで気が付かなかったことや、医師と直接連絡がとれなければ、転送の受け入れが難しいとの経験に基づく判断から、正月の4日の金曜日には転送するための努力をしなかったことなども裁判所からは落ち度として指摘されています。

経験に基づく判断が、思いこみによる過失につながることがあるという一事例として意義があろうかと存じます。

No.123の判決の事案では、ある保険会社が被告となった医療法人に補助参加しており、さらに別の保険会社が医療法人が契約していた賠償責任保険の適用の有無をめぐって、保険会社が訴訟に独立当事者参加を申し立てて、保険金の支払債務が存在しないことの確認を求めています。保険の適用の有無については紹介内容からは外していますが、補助参加と独立当事者参加について、簡単にご説明しますと、補助参加というのは利害関係を有する第三者が、当事者の一方を補助するために当事者に準じる立場で訴訟に加わることで、独立当事者参加というのは、自己との関係でも審判を求め、三者間での紛争を一挙に解決するために訴訟に加わる制度です。

ですから、No.123の判決では、おそらく、補助参加した保険会社は、Y医療法人が敗訴すれば、損害賠償義務については、その会社の保険の適用があることを前提にY医療法人をサポートするために訴訟に参加したものと思われます。

他方、独立当事者参加を申し立てた保険会社に対しては、裁判所は、保険契約が本件事故に適用されるかどうかは、医療法人が損害賠償責任を負うかどうかの結論とは無関係であるなどを理由に、独立当事者参加の申し立てとしては不適法ではあるが、独立の訴えの提起と解して、患者側と医療法人との訴訟に併合して審理しました。

どちらの判決とも実務上の参考になると考え、紹介します。

カテゴリ: 2008年7月10日
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