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院内暴力防止に向けた啓発ポスターの活用

2014年5月2日掲載の「病院における患者・家族の暴力に対する医療安全力を高める体制の醸成」(https://www.medsafe.net/recent/161anzenryoku.html)について、三木明子教授から新たな情報を教えていただきました。その後、ポスターは4種類追加され、三木教授の講演内容はYouTubeでもご覧いただけるようになりました。今回、追加情報をQ&Aでご紹介いたします。

Q1.追加した4種類のポスターの特徴を教えてください。
A1.ポスターを選定する際に、以下の説明を参考にしてください。
追加した7枚目のポスター

すでに6種類のポスターについては、2014.5.2の記事に掲載しています。

追加した7枚目のポスターは、暴力に限定せずに、病院内のあらゆるトラブルの発生を防止することを意図して作成しています。

防犯カメラは証拠能力が高いです。そのため、『病院の安全を守ります』という言葉とともに、防犯カメラが暴力発生の抑止力になることを期待し、また実際に暴力発生時には証拠を残すことの重要性をアピールするために、作成しています。

8枚目のポスター

8枚目のポスターは、『「暴力」「セクハラ」「迷惑行為」等が行われた場合には、診療不可能と判断し退院・退去していただきます。』と、退院・退去の方針を明記しています。

事件が発生すると立ち入り禁止の規制線のテープが張られますが、そのことをイメージして、これ以上、迷惑行為、セクハラ行為、暴力行為をやめてください、一線を越えないでくださいというメッセージを込めて、作成しています。

9枚目のポスター

9枚目のポスターは、『「暴力」「セクハラ」「迷惑行為」等が行われた場合には、警察に通報することがあります。』と、警察通報の基準があることを明記しています。

医療機関において、迷惑行為等が発生したら、すぐに警察に通報する姿勢があることを、パトカーのイラストとともに示し、視覚的にアピールしています。

10枚目のポスター

10枚目のポスターは、『病院内での「暴言」「暴力」「悪質クレーム」 絶対に許しません!』と、あらゆる暴力行為を許さない強い方針を示しています。

最も暴力等の被害を受ける職種は看護師のため、3枚目のポスターは、女性看護師をイメージしました。次に被害を受けるのは、女性の医師や事務職員です。そのため、女性医師をイメージしたポスターを作成しています。

Q2.医療機関向けのポスターはどのようなコンセプトで作りましたか?
A2.患者・家族の皆様と職員にとって、暴力のない安全で安心な医療機関となるように願って作成しています。

作成した10種類の暴力防止啓発ポスターは、患者から職員への暴力に焦点を当てています。しかし、病院内で発生する暴力は、患者から職員への暴力だけではありません。患者どうしの暴力、職員どうしの暴力、職員から患者への暴力も存在します。言うまでもなく、病院においてはいかなる暴力の発生も防止する必要があります。

Q3.ポスターの活用方法について、教えてください。
A3.各医療機関の実情にあわせてポスターを選び、許可をとって「病院長」「○○警察署」と明記すると良いでしょう。

職員の意識や暴力の被害状況は、医療機関ごとに異なります。各医療機関の実情にあわせてポスターを選ぶことをお勧めします。ポスターで示している暴力には、「セクハラ」「迷惑行為」「悪質クレーム」「暴言」と様々な表記があります。さらに刑法を示したポスター、具体的に禁止事項を明記したポスターもあります。各医療機関の医療安全の研修で、職員に投票してもらって、掲載するポスターを決定するという方法もあります。これは職員の啓発教育にもつながります。いずれにしても、暴力のない医療機関を目指すためにポスターを貼るだけではなく、職員にも周知しておく必要があります。

病院長や警察署の許可をとって、「病院長」「○○警察署」と明記するとさらに病院の方針が明確になり、良いでしょう。

Q4.ポスターを利用すると、料金はかかるのでしょうか?
A4.ポスターの利用は無料です。

ポスターは、以下のサイトから無料でダウンロードできます。使用承諾の許可は不要ですので、ご自由にお使いください。

http://www.kmu.ac.jp/faculty/fon/field/topics/seishinkango/index.html

Q5.暴力のKYT場面集は、どのように作成されたのですか?
A5.患者からの暴力発生の被害事例をもとに作成しています。

これまでに皆様のご協力をいただき、患者からの暴力発生の被害事例をもとに暴力のKYTの場面を作成し、書籍で紹介しています(三木明子,友田尋子:事例で読み解く 看護職員が体験する患者からの暴力.東京:日本看護協会出版会,75-76,184-193,2010./三木明子:ガマンしない、させない!院内暴力対策「これだけは」(日本医療マネジメント学会監修,坂本すが編,三木明子編著).大阪:メディカ出版,1-175,2017.)。

暴力のKYT場面集は、無料でダウンロードできます(ただし解説は載っていませんので、場面ごとの対応方法については書籍を参考にしてください)。ポスター同様、使用承諾の許可は不要ですので、研修にご活用ください。

http://www.kmu.ac.jp/faculty/fon/field/topics/seishinkango/index.html

Q6.その他、研修で使用できるツールはありますか?
A6.暴力防止対策の講演内容を収録したYou Tubeを、医療安全の研修にご活用ください。

YouTube(https://www.youtube.com/watch?v=wScZCIokq88)で「集中教育講座 すべてわかる医療機関・介護施設での産業衛生 3.医療機関・介護施設における暴力防止対策」を公開しています。50分ほどの内容ですので、医療安全の研修としてご活用ください(日本産業衛生学会医療従事者のための産業保健研究会、2014年10月29日公開)。

プロフィール

三木明子(みきあきこ)

関西医科大学看護学部・看護学研究科 教授。
1999年3月、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。博士(保健学)。宮城大学看護学部看護学科、岡山大学医学部保健学科、筑波大学医学医療系を経て、2018年4月より、現職。
日本産業精神保健学会理事・編集委員、日本産業看護学会理事・研究委員長、日本産業ストレス学会理事・編集委員・産業看護職委員長、日本看護学教育学会評議員・専任査読者、日本精神保健看護学会代議員・査読委員、日本産業衛生学会編集委員、日本行動医学会編集委員、日本看護科学学会和文誌編集委員、日本看護研究学会査読委員などを務める。

三木明子:患者トラブル解決マニュアル(日経ヘルスケア編),第1章 院内暴力対策.日経BP社,9-78,2009.
三木明子、友田尋子:看護職が体験する患者からの暴力.日本看護協会出版会,2-228,2010.
和田耕治、三木明子、吉川徹:医療機関における暴力対策ハンドブック.中外医学社,1-173,2011.
三木明子:ガマンしない、させない!院内暴力対策「これだけは」(日本医療マネジメント学会監修,坂本すが編,三木明子編著),メディカ出版,1-175,2017.

カテゴリ: タグ:,, 2019年1月 9日
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