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選択の視点【No.98、99】

今回は、定期金賠償が認められた判決を2件ご紹介します。

損害賠償は、将来の損害も含めて一括払いが一般的です。これに対して定期金賠償とは、例えば「生存する限り1ヶ月ごとに30万円支払え」というように、定期的な金銭支払による賠償方法です。総額が決まっておらず、支払期ごとに発生するという点で、総額が決まった債権を分割払いする方法とは区別されます。

従来、定期金賠償判決が十分利用されてこなかった理由の一つとして、その後の事情変更に対応できないということがありましたが、平成10年以降の新民事訴訟法の117条では、「後遺障害の程度、賃金水準その他の損害額の算定の基礎となった事情に著しい変更が生じた場合には、その判決の変更を求める訴えを提起することができる。ただし、その訴えの提起の日以後に支払期限が到来する定期金に係る部分に限る」と定めて、そのような事情変更リスクに対応できるようにしました。

(参考文献:学陽書房「医療事故の法律相談」124頁、日本評論社「別冊法学セミナーNo.152基本法コンメンタール/新民事訴訟法I」243頁)

No.98の判決は、新民事訴訟法施行前の判決ですので、直接新法117条の規定が適用されるわけではありませんが、判決中で、類推適用されることが望まれるとの意見が述べられています。

No.99の判決は、一審判決後控訴されましたが、控訴審で和解が成立したとのことです。

この判決でも、患者が現実に入院し、その結果入院に伴う費用が、判決で定期金賠償を認めた自宅介護に要する費用を上回ることとなった時には、民事訴訟法117条に定める訴えを提起することも考えられると示唆しています。

両判決とも実務において参考になると思いますので紹介します。

カテゴリ: 2007年7月13日
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