医療判決紹介:最新記事

2012年の記事一覧

2012年12月13日
選択の視点【No.228、229】

今回は、検査義務違反や、病理診断後の検査結果を踏まえて再検討すべき義務違反により、病院側の責任が認められた判決を2件ご紹介します。 No.228の事案では、病院側は、検査に遅延があったとしても、それは、患者が主治医の入院勧告を拒否して退院し、その後の外来通院中も入院勧告を拒否し続けていたことにより、...

2012年12月13日
No.229「生検検査で胃癌(低分化腺癌・グループⅤ)と診断されたが、術前の内視鏡検査では、病変が消失。胃を切除後、胃癌ではなかったことが判明。臨床担当医に、術前に病理医に確認し、再検討すべき注意義務の違反があるとした地裁判決」

東京地方裁判所 平成23年5月19日判決 判例タイムズ1368号178頁 (争点) 病理診断における注意義務違反の有無 臨床担当の医師らの手術前総合診断における注意義務違反の有無 因果関係 (事案) X(昭和31年生まれの女性)は他院での一般検診で胃前庭部粘膜の不整を疑われ、平成18年7月27日、精...

2012年12月13日
No.228「悪性リンパ腫のため死亡した患者について、速やかに必要な検査を行わなかったことにより、患者が救命される相当程度の可能性が侵害されたとして、県立病院医師及び県に損害賠償を命じた地裁判決」

大阪地裁 平成15年12月18日判決 判例タイムズ1183号265頁 争点 医師らの検査義務違反の有無 医師らの不法行為と患者Aの死亡との因果関係の有無 事案 A(初診時73歳の男性、眼鏡販売を営む株式会社を経営)は、平成9年5月ころから、下腹部に重苦しい痛みを訴えるようになり、他院で検査を受けるな...

2012年11月 6日
選択の視点【No.226、227】

今回は、美容整形に関する病院側の説明義務違反が認められた判決を2件ご紹介します。  No.226の事案では、手術代金の支払にショッピングクレジット契約が用いられ、開業医がクレジット会社から手術代金の立替払いを受けた後、患者が手術痕が残ったことを理由に、クレジット会社への割賦金の支払いを途中から...

2012年11月 6日
No.227「海外で両眼瞼を二重にする美容整形手術を受けた後、日本で修整手術を受けた女性患者に睫毛の外反などが生じ、希望に添わない結果が発生。開業医の説明義務違反が認められた地裁判決」

東京地裁平成9年11月11日判決判例タイムズ986号271頁 (争点) 説明義務違反の有無 損害額 (事案) X(昭和40年生まれの女性)は、平成3年にアメリカ合衆国において、切開法により両眼瞼を二重にする美容整形手術を受けた。しかし、Xはこの手術の結果、両眼の二重の幅が広...

2012年11月 6日
No.226「腋臭・多汗症の美容整形手術を受けた患者の手術部に瘢痕が残存。開業医の説明義務違反を認め、賠償を命じた地裁判決」

東京地方裁判所平成7年7月28日判決判例時報1551号100頁 (争点) 術後管理にY医師の過失があったか Y医師に説明義務違反はあったか (事案) 美容外科医であるY医師は、Y美容外科医院(以下、Y医院という。)を開設し、本件手術当時、腋臭、多汗症の手術に自ら命名した「Y...

2012年10月 5日
No.225「肩甲難産により死亡した胎児の分娩を担当した市立病院の医師に分娩方法の選択および肩甲娩出術の施行に過失があるとされた事例」

名古屋地方裁判所平成18年6月30日判決判例タイムズ1234号148頁 (争点) 分娩方法選択の過失の有無 肩甲娩出術施行上の過失の有無 (事案) 平成11年3月4日、X1はY市が開設するY病院の産婦人科を受診し、同病院のO医師から妊娠の診断を受けた。分娩予定日は同年11月...

2012年10月 5日
No.224「巨大児を経膣分娩中に、肩甲難産となり、出生児に麻痺障害が生じた。医師の過失を認め、病院側に賠償を命じた地裁判決」

長崎地方裁判所平成11年4月13日判決判例タイムズ1023号225頁 (争点) 麻痺の直接の原因は何か B医師に過失はあったか 使用者責任に基づく損害賠償請求権の消滅時効の成否 (事案) A(出産当時38歳の女性)は、昭和62年8月12日、Y県離島医療圏組合(以下、...

2012年9月13日
No.223「直腸癌の患者に対して直腸切断術後、低酸素脳症から高度障害が生じ、二年半後死亡。開業医の術後管理の過失を認めた地裁判決」

大阪地方裁判所平成19年3月9日判決判例時報1991号104頁 (争点) 術後管理に過失はあったか (事案) 患者A(手術当時68歳の女性)は、平成15年2月27日、胸痛、背部痛を訴えてY医師の開設するY病院を受診した。 検査等の結果、Aに下部直腸癌が認められたことから、平成15...

2012年9月13日
No.222「肝癌治療のため、肝部分切除術および胆のう摘出術を受けた患者に術後出血が生じ、患者が死亡。市立病院の医師につき、術後出血の兆候となる所見を看過し、術後の適切な対応を直ちにしなかった過失があるとした一審判決」

大阪地方裁判所 平成15年9月29日判決 判例時報1863号72頁 (争点) 術後出血の徴候となる所見を看過した過失ないし義務違反の有無 術後管理における過失ないし義務違反と患者の死亡との因果関係の有無 (事案)   患者A(男性・手術時及び死亡時71歳)は、肝癌治療の目的...

2012年8月 8日
選択の視点【No.220、221】

今回は、薬品の誤投与に関する刑事判決と民事判決を1件ずつご紹介します。 No.220の判決紹介にあたっては、判例時報925号136頁の解説も参考にしました。 同解説によると、検察官の求刑は、罰金刑ではなく、医師につき禁錮8月、事務員につき禁錮4月だったとのことです。 No.221の判決の事案では、病...

2012年8月 8日
No.221「子宮内膜症疑いの妊婦に対して、医師の処方とは異なる抗癌剤が渡され、出生した男児に重度の障害。患者親子側の請求を棄却した地裁判決を取り消し、病院の不法行為責任を認めて親子側の請求を認容した高裁判決」

福岡高等裁判所平成8年9月12日判決 判例時報1597号90頁 (争点) 抗癌剤であるユーエフティの服用と障害発生との因果関係の有無 薬剤を交付した職員の過失の有無 (事案) X2(女性)は、昭和59年7月17日、Y法人の経営する病院(以下、Y病院とする)の医師であるH医師の診察を受けた。X2は、こ...

2012年8月 8日
No.220「医院事務員が、糖負荷検査に使用するブドウ糖と誤って届けられたフッ化ナトリウム等の混合粉末を受領、調合し、患者に服用させた結果、患者が死亡。事務員および開業医につき、業務上過失致死罪の成立を認めた上で、罰金刑を宣告した地裁判決」

函館地裁昭和53年12月16日判決 判例タイムズ375号157頁 (争点) Y2事務員に業務者性は認められるか Y2事務員に注意義務違反はあったか Y1医師に注意義務違反はあったか (事案) Y1医師は昭和14年10月にI市においてY内科医院(以下「Y医院」という)を開業し医師として医療業務に従事し...

2012年7月 5日
選択の視点【No.218、219】

今回は入院患者に褥瘡が発症したことについて、病院側の責任が認められた判決と否定された判決を1件ずつご紹介します。 No.218の事案は、一審では2時間ごとの体位変換を行ったとする病院側の主張が採用されて患者の請求が棄却されましたが、控訴審では、看護記録に2時間ごとの体位変換の記載が無いことなどを理由...

2012年7月 5日
No.219「大学病院に入院した患者に褥瘡が発症。病院の褥瘡発生防止義務違反を否定して患者の請求を棄却した地裁判決」

横浜地方裁判所平成14年7月16日判決 判例タイムズ1189号285頁 (争点) 褥瘡発生防止義務違反の有無 (事案) X(本件当時59歳の男性)は、平成8年5月2日、発熱、咳、痰等を訴え、学校法人Yが経営するY大学病院(以下Y病院という)内科・外来を受診した。Y病院内科医師はXの胸部エックス線撮影...

2012年7月 5日
No.218「麻疹脳炎で入院していた患者に褥瘡が発症。病院の責任を否定した地裁判決を変更し、診療契約上の債務不履行に基づく損害賠償責任を認めた高裁判決」

高松高等裁判所平成17年12月9日判決 判例タイムズ1238号256頁 (争点) Y病院が、Xに対し、褥瘡の予防措置を実施したか否か (事案) X(当時38歳の女性)は、平成13年3月16日、Y医療法人の経営する病院(以下、Y病院という)の内科医であるH医師の診察を受け、麻疹及び重症の肺炎(疑い)と...

2012年6月18日
選択の視点【No.216、217】

今回は、手術前に生検をしないまま乳癌の手術を行ったことにつき、病院側の責任が認められた裁判例を2件ご紹介します。 No.216の事案で、裁判所は、当該病院で本件以前に乳房温存療法を実施した例はなく、担当医師が当該病院でも乳房温存療法を採用したいと考えていたことなどの事情を考慮すれば、医師が乳房温存療...

2012年6月18日
No.217「手術前に確定診断をしないまま乳がんと診断し、乳房切除手術、リンパ節郭清をし、術後、内分泌化学療法、放射線治療を行ったが、病理組織検査の結果、非浸潤がんであることが判明した場合に、病院側の過失が肯定された地裁判決」

福岡地方裁判所平成16年2月12日 判例時報1865号97頁 (争点) 医師の過失の有無 プライバシー侵害の有無 (事案) X(昭和38年10月1日生の女性)は、平成10年4月4日、左乳房にしこりがあることから、Y1医療法人の経営するY1病院を受診し、Y1病院に勤務するO医師の診察を受け、触診、超音...

2012年6月18日
No.216「市立病院で、患者の乳腺腫瘍を乳癌と診断し、乳房温存療法による手術を実施したがその後良性と判明。生検を行わずに悪性と診断をした医師の過失を認めて、慰謝料の支払いを市に命じた地裁判決」

名古屋地方裁判所平成15年11月26日判決 判例タイムズ1157号217頁 (争点) 医師が生検を行わず最終診断を癌としたことに過失があるか (事案) X(本件当時45歳の女性)は、平成8年ころ以降、左乳房に示指頭大の無痛性腫瘤があることに気づき、平成9年2月10日(以下平成9年については月日のみを...

2012年5月16日
選択の視点【No.214、215】

今回はMRSA感染について病院の過失が認められた裁判例を2件ご紹介します。 No.214の事案では、病院側は、患者が処方した以外の薬剤を経口服用したり、自己注射をするなど、異常な行動をとっていたことや患者の発言内容から、患者が何らかの作為を行い、それにより感染が発生した可能性が否定できないとの主張を...

2012年5月16日
No.215「市民病院に入院した患者がMRSA敗血症を発生し、転院先の大学病院で死亡。市民病院の担当医らのMRSA感染予防を怠った過失、当該過失と死亡との因果関係を認めた高裁判決」

福岡高等裁判所平成18年9月14日判決 判例タイムズ1285号234頁 (争点) 感染経路 過失の有無 (事案) A(死亡時21歳の女性・短大生)は、平成8年4月24日、両下肢の皮疹等を訴え、Y1市の開設するY1市民病院皮膚科を外来受診し、5月13日、同病院皮膚科に入院した。担当医師Bは、アレルギー...

2012年5月16日
No.214「持続硬膜外ブロック療法を受けた入院患者がMRSAに感染。使い捨て用の器具を繰り返し使用した医師・看護師らの感染防止義務違反を認定した地裁判決」

大阪地方裁判所堺支部平成13年12月19日 判例タイムズ1189号298頁 (争点) MRSAの感染経路および感染原因 Y1病院の責任の有無(感染防止義務違反) (事案) X(昭和30年5月21日生の男性)は、平成5年1月18日交通事故に遭い、Y1医療法人の運営するY1病院(以下Y病院)を受診したと...

2012年4月 6日
選択の視点【No.212、213】

今月は歯科医師の過失が争点になった判決を2件ご紹介します。 No.212の事案では、亡くなった歯科医師が歯科医師賠償責任保険契約を締結していた損害保険会社が補助参加人として訴訟に参加しています。 そして、損害保険会社は、患者が抜歯から他院受診までに期間があることなどを指摘して、本件抜歯によって下顎骨...

2012年4月 6日
No.213「開業歯科医による差歯の交換後、患者に歯痛。非定型歯痛の概念を知らず、咬合調整を繰り返した開業歯科医の過失を認めた地裁判決」

長野地方裁判所上田支部 平成23年3月4日判決 判例タイムズ1360号179頁 (争点) 咬合調整に関する歯科医師Yの過失 Xに対するYの発言が不法行為にあたるか 因果関係 損害 (事案) X(昭和29年生まれ、女性)は、平成18年12月6日、歯がしみると訴え、歯科医師Yが開業するY歯科医院(以下Y...

2012年4月 6日
No.212「親知らずを抜歯する際に、患者の下顎骨を骨折。歯科医師の過失を認めた地裁判決」

富山地方裁判所平成19年1月19日判決 判例時報1986号118頁 (争点) 抜歯と下顎骨骨折との間の因果関係の有無 歯科医師の過失の有無 (事案) 平成16年10月19日、X(当時53歳・女性・自動車部品製造会社勤務)は、歯痛のため、歯科医師であるY(平成16年11月に死亡、以下亡Y)が経営するY...

2012年3月 2日
選択の視点【No.210、211】

今回は、肺癌で死亡した方が受診していた集団検診・定期健康診断でのレントゲンフィルムの読影担当医師の過失が争点となった判決を2件ご紹介します。 No.210の事案で、裁判所は、本件で問題になっているのは、政策的な意味合いにおける集団検診のあり方ではなく、集団検診におけるレントゲンのフィルムを読影する医...

2012年3月 2日
No.211「社内定期健康診断を受けていた社員が肺癌で死亡。医師のレントゲン読影及び診察につき過失を認めながら、延命利益の喪失による損害賠償請求及び不誠実な医療自体についての損害賠償請求を認めなかった地裁判決を維持した高裁判決」

東京高等裁判所平成10年2月26日判決 判例タイムズ1016号192頁 (争点) 医師らの過失の有無 医師の過失と患者Aの延命利益の喪失との間の相当因果関係の有無 不誠実な医療自体についての損害賠償責任の有無 (事案) Aは、損害保険事業を営むY保険株式会社(Y1社)に昭和51年4月に入社した女性社...

2012年3月 2日
No.210「レントゲン撮影を含む市の集団検診を受けていた女性が肺癌により死亡。レントゲン写真の読影担当医師に過失はないとして、遺族の請求を棄却した地裁判決」

仙台地方裁判所 平成8年12月16日判決 判例タイムズ950号211頁 (争点) 集団検診におけるレントゲン写真読影担当医の過失の有無 (事案) A(女性)の居住するB市は、Y(県民の結核を中心とする胸部疾患等の予防及び治療に関し必要な事業を行い、もって県民保健の向上を図ることを目的とする財団法人)...

2012年2月13日
選択の視点【No.208、209】

今回は、産婦人科医師に新生児出生後の転送義務違反が認められた高裁判決(No.208)と、否定された高裁判決(No、209)をご紹介します。 No.208の高裁判決については上告受理申立がなされた後、和解が成立しています。 No.209の紹介にあたっては、判例タイムズ1353号185頁の解説も参考にし...

2012年2月13日
No.209「開業医が前期破水後入院した妊婦を総合病院に転送したが、転送先病院で生まれた新生児に重度の障害。医師の早期の転送義務違反を否定して患者側の請求を棄却した一審判決を維持し、控訴を棄却した高裁判決」

広島高等裁判所岡山支部 平成22年3月18日判決 判例タイムズ1353号 185頁 (争点) 早期に妊婦を転送すべき注意義務の有無 (事案) Xは前期破水を起こしたため、平成15年3月22日午後零時、Y法人が設置し経営しているY産婦人科医院(以下、Y医院)に入院した。Y医院の医師はY医院の代表者H医...

2012年2月13日
No.208「頭蓋内出血が生じ、新生児に脳性麻痺等の後遺障害。患者側敗訴の一審判決を取り消し、医師に分娩後の転送義務違反を認めた高裁判決」

東京高等裁判所 平成13年5月30日判決 判例タイムズ1095号 225頁 (争点) 胎児に負担とならない方法で胎児の娩出を図るか、妊婦を高次医療機関に転送する義務があったのにこれを怠った過失の有無 患児の出生後、早期に新生児救命救急の施設を備えた病院に転送することを怠った過失の有無 (事案) 患児...

2012年1月13日
選択の視点【No.206、207】

今回は、がん患者に対する治験薬投与後、患者が死亡した事案で、病院側の責任が認められた判決(No.206)と否定された判決(No.207)をご紹介します。 No.206の判決では、治験薬を投与した県立病院勤務の医師につき、県の履行補助者として、患者の人権を尊重しつつ、専門医として要求される高度の知識、...

2012年1月13日
No.207「大学病院で、肺がんの治験薬投与から一ヶ月後に患者が死亡。当該治験薬の投与及び当該治験の説明に関する医師の注意義務違反を否定した地裁判決」

大阪地方裁判所 平成23年1月31日判決 判例タイムズ1344号180頁 (争点) 医師の注意義務(適正診療義務ないし説明義務)違反の有無 (事案) A(昭和9年生まれの男性)は、16歳で来日し、大学を卒業した後、複数の会社を設立し、代表取締役を務めるなどの活躍をし、B国立大学校から名誉工学博士の学...

2012年1月13日
No.206「県立病院で卵巣癌の患者に承認前の治験薬を投与したところ、約4ヶ月後に患者が死亡。担当医師の注意義務違反、インフォームド・コンセント原則違反等を認めた地裁判決」

名古屋地方裁判所 平成12年3月24日判決 判例時報1733号70頁 (争点) 注意義務違反の有無 インフォームド・コンセント原則違反の有無 (事案) A(当時45歳の女性)は、昭和63年4月19日、H病院において子宮筋腫と診断され、同月28日にその切除手術が行われたが、開腹の結果右卵巣に悪性腫瘍が...

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