医療判決紹介:最新記事

選択のポイント【No.482、483】

今回は、歯科医師の過失が認められた裁判例を2件ご紹介します。

No.482の事案では、判例時報2428号61頁に掲載された一審判決とその解説も参考にしました。

この事案で、一審は、歯科医師はあくまでも治療期間の目安として1年間と説明したものであり、全く医学的根拠を欠くものではないことを考慮すると、歯科医師に治療期間に関する説明義務違反があったとは認められないとしましたが、控訴審は説明義務違反を認めました。

また、患者側は、アンカーインプラントの埋入から2年6ヶ月後の他院での抜去操作(他院で使用しているインプラントと異なるものであったため、抜去用の器具が使用できず、鉗子などを用いて抜去した)中にインプラントが破折したことに関し、被告に埋入から2年経過時のアンカーインプラントの抜去義務違反があった旨主張しました。

しかし、裁判所は、一審、控訴審とも、矯正歯科医師の「埋入期間が2年6か月となったことが抜去時の破折の原因となったとは考えがたく、インプラントの除去には破折防止のため同一のメーカーの除去ツールを使用するのが一般的であり、別の歯科医師が除去する場合には埋入した前医にインプラントのメーカー・種類を照会すべきである」との意見を根拠に、アンカーインプラントの抜去義務違反は否定しました。

No.483の事案では、インプラント体を埋め込む手術で、患者の三叉神経が損傷したか否かも争点となりました。

裁判所は、CT画像上、当該インプラント体は患者の下顎管に明らかに触れていると読影でき、患者の三叉神経(下顎神経)に著しく近接し、圧迫している可能性は十分にあるといえること、患者は手術の翌日以降、痛みや違和感、知覚鈍麻の症状を訴えていたこと、患者が他の病院の歯科口腔外科で左側三叉神経障害と診断されたこと等を根拠に、インプラント治療に関わる代表的な偶発症と同様に、手術によって埋入されたインプラント体が患者の下顎管に触れ、三叉神経を圧迫したことによって、患者に左側三叉神経障害が生じた事実が推認されると判断しました。

両事案とも実務の参考になるかと存じます。

カテゴリ: 2023年7月10日
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