医療判決紹介:最新記事

選択の視点【No.126、127】

今回は、術後管理が問題となり、病院側の損害賠償義務が認められた判決を2件ご紹介します。)

No.126の事案では、患者遺族が受給した遺族(厚生)年金について、「年金の受給者が不法行為によって死亡した場合、その相続人が被害者の死亡を原因として遺族年金の受給権を取得したときは、支給を受けることが確定した遺族年金の限度で、これを加害者の賠償すべき損害額から控除すべきである」として、損害賠償額から控除しました。)

これは、法律上の明文の規定はありませんが、損害の公平な分担の観点から、患者が、医療事故に起因して得た利益が、事故による損害を埋め合わせるものであるとみられるときには、加害者の損害賠償額から控除する「損益相殺」という理論によるものです。)

No.127の事案では、医師らの注意義務違反と患者の死亡との間の因果関係は認められませんでしたので、死亡に伴う損害である逸失利益(生存していたら得られたであろう収入)の賠償は認められませんでした(因果関係が認められるためには、「注意義務違反がなければ患者が死亡しなかったであろう高度の蓋然性」が必要であるというのが現在の裁判実務です)。)

しかし、本件では、死亡との因果関係はないとしても、「医師らの注意義務違反がなければ、患者が死亡しなかった相当程度の可能性」があったとして、患者のその可能性を侵害したことについて、患者に対する慰謝料(可能性を侵害された患者が被った精神的苦痛への慰謝料)を損害賠償として支払う義務があると認めました。)

両事件とも実務の参考になるかと存じますので、ご紹介します。

カテゴリ: 2008年9月 5日
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