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選択のポイント【No.480、481】

今回は、腰椎穿刺に関連して、医師の過失が認められた裁判例を2件ご紹介します。

No.480の事案では、損害の算定にあたり、裁判所は、患者は、両下肢の不全麻痺、知覚障害と直腸膀胱障害があり、独立歩行や自力排泄が困難であって付添看護が必要な状態にあり、これらの神経障害自体の回復の可能性はほとんどないことを指摘する一方、上半身は正常に機能しており、知的障害は全くなく、患者がまだ幼児であって、将来の正確な長期予測は不確定要素が多くて困難であることも考慮すれば、労働能力の5割を喪失したと認定しました。

No.481の事案では、患者が死亡直前に罹患していた水頭症が非交通性水頭症であったか、交通性水頭症であったかについても解剖所見では明らかとならず、争点の一つでした。

この点につき、裁判所は、患者が罹患していた結核性髄膜炎の場合、炎症がくも膜下腔に広がって癒着をきたし、くも膜下腔、脳底槽の閉塞、くも膜顆粒での髄液交通路の閉塞等の脳室外の通過障害を起こして交通性水頭症となることがあるが、患者の髄膜炎が結核性髄膜炎であって、結核菌が頭蓋底から検出されたことから、Aの水頭症が非交通性水頭症ではなく交通性水頭症であった可能性を否定することはできないとしつつ、他方、結核性髄膜炎の場合、炎症が脳室に波及して脳室炎等が発生したときには脳室壁の癒着や脳室内隔壁、第4脳室出口部の閉塞をきたし、脳室内の通過障害を起こして非交通性水頭症となりうるが、平成7年2月15日に患者が全身けいれんを起こした上、患者の前頭葉からも結核菌が検出されていることから、結核性髄膜炎が髄膜脳炎まで進行し、脳実質に炎症が広がっていたことが認められると指摘しました。

そして、非交通性水頭症の場合、脳室が急速に拡大するところ、患者の側脳室、第3脳室、第4脳室が同年2月6日の時点では正常の大きさであったのにその9日後にすぎない同年2月15日の時点では顕著に拡大しているから、患者の水頭症は交通性水頭症である蓋然性よりも非交通性水頭症であった蓋然性の方が高かったということができると判断しました。

両事案とも実務の参考になるかと存じます。

カテゴリ: 2023年6月 9日
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