医療判決紹介:最新記事

選択の視点【No.50、51】

今回は医療事故で研修医に刑事責任が課せられた判決を2件ご紹介します(No.51の判決中、看護婦と記載されている箇所は看護師に修正してご紹介しています)。

刑事事件の判決なので、紹介の仕方が、民事事件とは若干異なり、損害賠償額などの記載はありません。

両方の判決とも、研修医であれ、医師として患者の診療を行う以上、一定の注意義務を負うとの前提にたって、過失の有無を判断しています。

No.50の事案である医療事故において、検察庁は、ICUで患者に付き添っていた臨床研修医と、ICUの管理責任を行う麻酔科部長(医師)の2名の刑事責任を問い、このうち、麻酔科部長(医師)については、略式命令(被疑者の同意がある場合に、50万円以下の罰金・科料の事案について、公開法廷での手続を省略し書面審理で行う簡易な手続)による罰金30万円が処せられています。臨床研修医だけが、公判請求(公開の法廷で行う裁判の請求)されて、禁錮刑(刑務所に入りますが、刑務作業をしなくてもいい点が懲役刑とは異なります)を求刑されました。判例タイムズの解説によると、求刑は禁錮1年だったようです。

2人に対する検察庁の対応の違いから、検察側は、臨床研修医の責任が麻酔科部長よりも重大であったと判断したことが伺われます。

しかし、裁判所は、臨床研修医に対して検察官の求刑した禁錮刑ではなく、罰金刑を選択し、しかも罰金の金額は麻酔科部長よりも低い20万円との判決を下しました。

臨床研修医の責任について、検察庁と裁判所の判断が分かれたケースといえます。

カテゴリ: 2005年7月20日
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