医療判決紹介:最新記事

選択の視点【No.396、397】

今回は転院・他科の紹介に関する医師の過失が認められた事案を2件ご紹介します。

No.396の事案では、患者が総合病院で最初に受診した脳神経外科の医師が、患者は同病院の耳鼻咽喉科で受診することを望まなかった旨の供述をしましたが、裁判所は、医師の供述はそれ自体不自然であり、患者が翌日自らの意思で同病院の耳鼻咽喉科の診察の申込みをしている事実に照らし、たやすく信用できないとして、医師の供述を採用しませんでした。

No.397の事案では、裁判所は、脊髄などの中枢神経は、いったん神経細胞が虚血状態になったり壊れたりして傷むと再生せず、ひとたび悪化した神経症候を回復させることは、中枢神経系の血管障害の性質上困難であること、鑑定意見、患者の神経症状の実際の経過などを挙げた上で、実際に転送された日よりも5日前に転送されていた場合には、実際の施行日よりも4日前までには転送先の病院において血腫の摘出手術を受け得たと推認されると判示し、その場合、右上肢の筋力低下及び感覚障害、左下肢の軽度の筋力低下及び感覚障害が後遺症として残存するにとどまり、四肢麻痺という重篤な後遺症は残存しなかったものと推認されると判示しました。

両事案とも実務の参考になろうかと存じます。

カテゴリ: 2019年12月10日
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