医療判決紹介:最新記事

2024年の記事一覧

2024年7月10日
選択のポイント【No.506、507】

今回は施設入居中の高齢者への対応に関し、医師の過失(注意義務)が認定された裁判例を2件ご紹介いたします。 No.506の事案では、原告側は、看護師及び医師の、吐物の吸引や救命行為の過失も主張しました。しかし、裁判所は、看護師が吐物の吸引を行った際の患者の姿勢について、看護師の証言に反する客観的な証拠...

2024年7月10日
No.507「特別養護老人ホームの入所者が、容態急変後に死亡。遺族の請求を全部棄却した一審判決を取り消して、適切な医療処置を行うべき義務違反があったとして、慰謝料請求を認めた高裁判決」

東京高等裁判所令和2年8月19日判決 判例時報2472号18頁 (争点) 医師に適切な医療処置を施すべき義務違反があったか否か *以下、原告を◇1ないし◇4、被告を△1および△2と表記する。 (事案) 平成27年12月28日、A(大正10年生まれ。死亡時94歳の女性)は、社会福祉法人であるIが経営す...

2024年7月10日
No.506「介護老人施設の入所者が誤嚥により死亡。施設の医師に麻痺性イレウスを疑って転院させるべき注意義務の違反を認め、死亡を避けられた相当程度の可能性を侵害したことによる慰謝料の支払いを施設経営者に命じた地裁判決」

釧路地方裁判所帯広支部 令和4年3月30日 ウェストロージャパン (争点) Bの死亡に至る機序(イレウスにより死亡したか) イレウスを前提とする過失の有無 イレウスを前提とする結果回避可能性の有無 *以下、原告を◇、被告を△と表記する。 (事案) 平成28年4月5日(以下、特段の断りのない限り同年の...

2024年6月10日
選択のポイント【No.504、505】

今回は、新生児の脳性麻痺につき、医師の責任が認められた地裁判決を2件ご紹介します。 No.504の事案では、被告の医師は、△は、新生児の脳性麻痺は、出生時に既に存した先天的疾患によると主張しました。 しかし、裁判所は、事実経過によれば、新生児は、吸引分娩で出生したものの、外見上異常はなく、出生体重も...

2024年6月10日
No.505「核黄疸により新生児が脳性麻痺に陥ったのは、医師が血清ビリルビン値の計測および交換輸血を怠ったためであるとして医師の注意義務違反を認めた事案」

東京地方裁判所八王子支部 平成6年11月15日判決 判例タイムズ892号226頁 (争点) 新生児が核黄疸であったか否か 新生児が核黄疸に罹患したことにつき医師に注意義務違反があったか否か *以下、原告を◇1ないし◇3、被告を△と表記する。 (事案) ◇2(女性・初産婦)は、昭和62年11月8日、分...

2024年6月10日
No.504「新生児が脳性麻痺に至ったのは、医師が、脱水症状及び低血糖症に対し電解質を含まない過剰輸液を行ったためであるとし、医師に損害賠償が命じられた地裁判決」

前橋地方裁判所平成元年12月19日判決 判例時報1357号115頁 (争点) 医師に新生児低血糖症及び脱水症状に対して適切な処置を施す義務違反があったか否か *以下、原告を◇1ないし◇3、被告を△と表記する。 (事案) ◇2は、昭和58年7月13日、産婦人科医である△医師の経営する医院(以下、「△医...

2024年5月10日
選択のポイント【No.502、503】

今回は、骨折の治療に関して医師の責任が認められた判決を2件ご紹介します。 No.502の事案では、医師は、阻血回避処置のうち、固定の中止や筋膜切開については、固定を続けた場合に比べて骨の癒合が悪くなるから、フォルクマン拘縮症以外の可能性がある場合には、軽々に固定をやめ筋膜切開に踏み切るべきではないと...

2024年5月10日
No.503「交通事故での大腿骨粉砕骨折等を負った患者がその後大腿骨骨髄炎に罹患し、大腿部切断。細菌検査義務違反があったとして医師の過失を認めた高裁判決」

名古屋高等裁判所平成2年7月25日判決 判例時報1376号69頁 (争点) 医師に細菌検査義務違反があったか否か *以下、原告を◇、被告を△1および△2または合わせて△と表記する。 (事案) 昭和49年10月30日、Aは交通事故に遭遇し(加害車両運行供用者は株式会社である◇)、△1医師の経営する病院...

2024年5月10日
No.502「5歳児が左腕を骨折し、阻血からフォルクマン拘縮症を発症。経過観察を怠り、必要な回避措置を取らなかった医師の債務不履行を認め、患者の請求を全額認容した地裁判決」

東京地方裁判所 平成元年11月28日判決 判例タイムズ722号264頁 (争点) 医師に、フォルクマン拘縮症回避のための処置をとる医療契約上の義務違反があったか否か *以下、原告を◇、被告を△と表記する。 (事案) ◇(昭和47年生まれで事故当時5歳の男児)は、昭和53年(特段の事情のない限り同年の...

2024年4月10日
選択のポイント【No.500、501】

今回は、薬剤の投与に関する医師の注意義務違反(過失)が認められた裁判例を2件ご紹介します。 No.500の事案では、病院側は、処方を行わなかったことにつき、十二指腸潰瘍に対する間歇療法(再発の都度、初期療法を繰り返す)に合致するものであるから、過失とならないと主張しました。 しかし、裁判所は、本件事...

2024年4月10日
No.501「ワーファリンを継続使用していた慢性心房細動の患者に対し、医師がイグザレルトへの切り替えに伴うワーファリンの休薬を指示した後、患者が心原性脳塞栓症を発症して死亡。医師に薬剤投与に関する注意義務違反が認められた事案」

東京地方裁判所令和5年9月29日 判例タイムズ1514号 185頁 (争点) 医師に薬剤投与に関する注意義務違反があったか否か 医師の注意義務違反と原告らの損害との因果関係 *以下、原告を◇1ないし◇3、被告を△と表記する。 (事案) A(昭和11年10月生まれの男性)は、従前、高血圧症、心房細動の...

2024年4月10日
No.500「十二指腸潰瘍が悪化し穿孔が生じて患者が死亡。抗潰瘍薬を処方漏れした医師の過失が認められた地裁判決」

静岡地方裁判所浜松支部平成22年2月22日判決 ウェストロージャパン (争点) 医師に診療上の過失があるか否か 医師の過失と結果との間の因果関係 *以下、原告を◇1ないし◇3、被告を△と表記する。 (事案) A(平成16年10月当時77歳の女性)は、昭和60年、乳がんの手術を受けた。また、そのころか...

2024年3月 8日
選択のポイント【No.498、499】

今回は、麻酔のミスについて、医師の過失が認められた事案を2件ご紹介します。 No.498の事案では、過失について病院側は争わず、損害額等が争点となりました。 そして、重度の後遺障害を負ったロシア国籍女性の将来介護費の算定にあたり、原告側は、「寿命は、生活の本拠における食料、気候、医療水準等の生活環境...

2024年3月 8日
No.499「整形外科において、患者が肩関節脱臼の整復治療にあたり局所麻酔を投与された後、低酸素脳症となり、後遺障害が残存。医師に麻酔薬の投与における過失を認めた地裁判決」

京都地方裁判所令和3年11月9日判決 ウェストロージャパン、裁判所ウェブサイト (争点) 患者が局所麻酔中毒によって呼吸停止に至ったか 医師に手技上の過失ないし義務違反があったか否か *以下、原告を◇、被告を△1および△2と表記する。 (事案) 平成28年4月15日、A(66歳の女性・家事および夫の...

2024年3月 8日
No.498「無痛分娩のための腰椎麻酔の後、母親が心肺停止状態になり、心肺停止後脳症等の障害を負い、重症新生児仮死の状態で出生した子は約6年後に死亡。麻酔薬注入時の医師の注意義務違反を認め、合計で約3億円の損害賠償を命じた地裁判決」

京都地方裁判所令和3年3月26日判決 判例時報2512号60頁 (争点) 債務不履行に基づく損害賠償請求権の帰属主体 損害額 *以下、原告を◇1ないし◇3、被告を△と表記する。 (事案) 平成24年11月5日、◇1(昭和51年生まれのロシア国籍の女性・妊娠39週0日)は、破水したことにより、△診療所...

2024年2月 9日
選択のポイント【No.496、497】

今回は、医師の説明義務違反が認められた判決を2件ご紹介いたします。 No.496の事案では、病院側は、本件手術が患者の病態に対し、唯一最後の治療方法で、速やかに行う必要性と緊急性があった旨強調しましたが、裁判所は、唯一最後の治療方法であるからといって説明義務が軽減ないし免除される理由とはなり得ないし...

2024年2月 9日
No.497「動脈瘤の疑いから術前検査として患者の同意を得た心臓カテーテル検査につき、明らかな動脈瘤がないことが判明して術前検査としては不必要になったが、医師がその説明をせず、狭心症の確定診断目的で同検査を行ったことにつき、慰謝料が認められた地裁判決」

横浜地方裁判所平成29年2月23日判決 医療判例解説70(2017年10月)号47頁 (争点) 心臓カテーテル検査に関する説明義務違反の有無 *以下、原告を◇、被告を△1ないし△4と表記する。 (事案) 平成27年12月18日(以下、特段の断りのない限り同年のこととする)、◇(本件入院時69歳の女性...

2024年2月 9日
No.496「糖尿病網膜剥離手術により患者が失明。医師の説明義務違反を認めたが、説明義務違反と失明との相当因果関係は否定し、慰謝料と弁護士費用の損害賠償を病院側に命じた地裁判決」

名古屋地方裁判所昭和59年4月25日判決 判例タイムズ540号276頁 (争点) 説明義務違反の有無 損害 *以下、原告を◇、被告を△1及び△2と表記する。 (事案) ◇(会社経営者男性。失明時54歳)は、幼児期から左眼がほとんど視力のない弱視(30ないし55センチメートル手動弁)であった。昭和38...

2024年1月10日
選択のポイント【No.494、495】

今回は、術後管理上の過失が認められた判決を2件ご紹介します。 No.494の事案では、病院側は、患者のトイレでの転倒は、患者のつまずきや、滑ったためだと主張しました。しかし、裁判所は、一般に、下血を含む出血があれば、貧血が起こり、貧血の症状として脳細胞への酸素供給が不足することや、これに体動や排便時...

2024年1月10日
No.495「脳内出血の手術を受けた患者が急性呼吸不全により死亡。鼻出血の継続による気道閉塞を予見すべきだったのに、経過観察指示しかしなかった当直医に注意義務違反を認めた地裁判決」

京都地方裁判所令和4年3月9日判決 医療判例解説105(2023年8月)号10頁 (争点) 当直医に注意義務違反があるか否か *以下、原告を◇、被告を△と表記する。 (事案) A(判決中に年齢の明記はないが、70代男性と思われる。)は、平成28年1月4日(以下、特に断りのない限り同年のこととする。)...

2024年1月10日
No.494「虫垂切除術の後、患者がトイレ内で貧血により失神して転倒し、重篤な後遺障害が残った。医師・看護師らに術後管理上の過失があったとして、病院側の責任が認められた地裁判決」

名古屋地方裁判所豊橋支部平成15年3月26日判決 判例タイムズ1188号301頁 (争点) 医師の過失の有無 看護師らの過失の有無 *以下、原告を◇、被告を△と表記する。 (事案) ◇(昭和45年生まれで、転倒事故当時26歳の女性)は、平成8年7月4日(以下、年月を記載していない日付は、平成8年7月...

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