医療判決紹介:最新記事

選択の視点【No.160、161】

今回は喘息の持病のある患者に関する判決を2件ご紹介します。

No.160の事案では、一審の神戸地方裁判所の判決(判例時報1446号121頁)も参考にしました。一審では必要かつ十分な問診がなされなかったとして、患者遺族の請求が一部認容されましたが、控訴審では問診をしていても患者の症状が急激に悪化する危険を予見できたわけではないし、症状の急激な悪化を回避する可能性もなかったとして、医師の過失を否定しました。

No.161の事案では、医師が患者に処方した気管支拡張剤の副作用について説明したかどうかという事実関係も争点になっていましたが、裁判所は、(1)医師側の供述は具体的な記憶に基づくものではなく、一般的な話として初診の患者に処方する際には副作用を説明しているというにすぎず、極めて曖昧であることや、(2)仮に医師が副作用について説明したとすれば、過去に心房細動の激しい発作を起こしたことがある患者が副作用として不整脈が生じる場合があることを知りながら全量服用したことになり、患者の行動として不自然であることなどを根拠に、医師が処方した気管支拡張剤の副作用として不整脈があることについて説明したことはないと認定しました。

また、病院側は、薬局から患者に交付された薬剤情報提供書に薬剤の説明が記載されていたことから説明義務を果たしたという主張もしましたが、薬剤情報提供書には副作用の発生する可能性や具体的内容についての記載は一切なく、そもそも薬剤の副作用については処方する医師が自ら患者に説明すべきであって、薬局の薬剤情報提供書で代替できないと判示して病院側の主張を採用しませんでした。

両事案とも実務の参考になろうかと存じます。

カテゴリ: 2010年2月18日
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