医療判決紹介:最新記事

選択の視点【No.194、195】

今回は、眼科手術について病院の損害賠償義務が認められた判決と否定された判決を1件ずつご紹介します。

No.194の判決では、医師の術中の過失と患者の術後の視力の低下に因果関係を認めた上で、患者の社会的地位(相当規模の売り上げの会社役員であること)、またそのことを病院側が認識していたことを考慮して、損害項目について詳細な判示をしました。他方で、従来通りの報酬を会社から受けていた点については、その間の逸失利益を否定しました。年商約530億円の会社の役員であった患者が、「長時間の会議の後などに、目がかすみ、頭が重くなり、何も考えられないような状態になるのが、カイロプラクティック等の施術を受けると、元の状態に戻る」などと供述し、裁判所は、この患者の供述は症状との関係で自然なものであり、また、患者はその有効性について感じるからこそ、業務に支障をきたしつつも、頻繁に上記の施術を受けていると考えられるとして、施術の有効性についての患者の供述が信用できると判示しました。

No.195の判決では、執刀医が手術中に患者の眼球壁が通常より薄い印象を受けたことを認めましたが、そこから本件手術中に灌流針が脱落する可能性までは予見できたとしても、灌流針の脱落により脈絡膜出血が発生しうることを具体的に予見することは不可能であるとして、眼球壁が通常より薄い印象を受けた後に縫着できない構造の灌流針を用いたことをもって、過失と評価することはできないと判示しました。

両判決とも実務の参考になろうかと存じます。

カテゴリ: 2011年7月 8日
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