医療判決紹介:最新記事

選択の視点【No.21、22】

今回は、最高裁判所のホームページで紹介された高等裁判所判決の中から、一審(地裁)の判決が変更された判決をご紹介します。No.21の判決については、一審判決も参照しました。

No.21、No.22の両方の判決で共通しているのは、損害賠償額を算定する際に、「過失相殺」の法理が適用あるいは類推適用されて、患者側の事情を理由に賠償額が減額されている点です。

債務不履行について、民法418条は、「債務ノ不履行ニ関シ債権者ニ過失アリタルトキハ裁判所ハ損害賠償ノ責任及ヒ其金額ヲ定ムルニ付キ之ヲ斟酌ス」

不法行為について、民法722条2項は、「被害者ニ過失アリタルトキハ裁判所ハ損害賠償ノ額ヲ定ムルニ付キ之ヲ斟酌スルコトヲ得」

とそれぞれ過失相殺の規定を置いています。

そして、医療事故の場合にも、「損害の公平な分担」という原則が過失相殺の規定の趣旨であることから、(1)被害者(患者)側の症状説明が不十分、(2)治療過程で医師の指示に従わなかった場合などには、被害者側の過失に過失相殺の適用がなされることがあります。

更に、被害者側の「過失」とはいえなくても、患者側の身体的、心因的要因が原因で損害が発生あるいは拡大したような場合には、加害者に損害の全部を賠償させるのが公平とはいえないとして、過失相殺の規定を類推適用し、賠償額を減額することがあります。

カテゴリ: 2004年5月25日
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