今回は、最高裁判所のホームページで紹介された最高裁判所判決の中から、都立病院における誤薬投与による死亡事故に関連して、院長に医師法上の警察への届出義務違反という刑事責任(有罪)を認めた判決をご紹介します。事案内容については、一審、二審の判決も参照しました。
この死亡事故については、刑事上も民事上も多くの関係者の責任が司法の場で問われ、争われてきました。 刑事については、今回ご紹介する判決の他に、主治医が医師法違反の罪について罰金2万円の略式命令を受け、看護師2名は業務上過失致死罪で有罪(執行猶予付き)判決を受け、東京都の職員(東京都衛生局病院事業部副参事)は医師法違反の罪につき無罪の判決を受けています。
民事については、平成16年1月30日に、東京地方裁判所で損害賠償請求事件の判決(原告請求を一部認容)がありました。死亡した患者の遺族らが原告となり、東京都、都立病院院長、主治医、事務局長、都衛生局病院事業部部長、および都衛生局病院事業部副参事(肩書きはいずれも事故当時)を被告として、「死亡自体に関する義務違反」及び「死亡後の義務違反」についての損害賠償請求を行ったものです。
東京地方裁判所は、東京都に対しては患者の死亡自体に関する義務違反及び死亡後の死因解明義務・説明義務違反を認め、元院長及び元主治医に対しては死亡後の死因解明義務・説明義務違反を認めました。元副参事については死亡後の死因解明義務・説明義務違反があるとしながらも、地方公務員としての行為であるから国家賠償法が適用され、東京都が損害賠償責任を負い、元副参事は個人責任を負わないと判示しました。
裁判所に問い合わせたところ、元院長については控訴審が係属中であり、他の被告と原告との間の判決は確定しているとのことです。